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負け戦などしません。

現在戦闘着を着用中です。

持っているドレスの中でも胸元のカットが少し大胆なものを選んだのは、理由がある。


色気で誤魔化せ大作戦だ。

いつもとは違う私を見せて戸惑うあいつを翻弄してやり、そのまま全てをこちらのペースで進めて何もなかった事にしようという作戦だ。


「いけるっ・・・はず。」


鏡の前の自分は、少し年上に見える。つけまつ毛もばっちりアイメイクは、ネコ目とカラーコンタクトで目力アップ。リップは、わずかに色を濃くして。

胸は、それなりに大きいと友人からもお墨付き。くびれを持たせるための腰のリボンをしっかり結べば鏡の中の自分に少しだけ自信がついた。


髪は緩く巻いて、緩めにアップにまとめて後れ毛をわざとたらす。イヤリングは金のハート、動きに合わせて揺れるタイプだ。


「女子力総動員・・・って感じだな」


我ながら呆れるほどの気合の入れっぷりだ。これって逆に誤解させないだろうか。

だがもう作戦変更はできない。


ピーンポーン。

試合開始のゴングが鳴った。



ーーー


玄関を開けた私をまるでハトが豆鉄砲を食らったような顔で見つめる好敵手。

作戦は、現在進行中。


「もしもーし・・・ちょっと」


「わ・・わりぃ・・」


そのまま俯く幼馴染らしくない動きに私も気になった。


「こんばんわ?」


「あぁ、・・・おばさんは?」


「お母さんとお父さんは、昨日から熱海旅行中です。」


「い・・・いないの?」


「そうだけど・・」


何をうろたえる好敵手?とにかく私は、今夜は大人な女なのだ。小さなことは気にしないでやろう。


「そうか・・・その・・・行くぞ」


「うん」


試合はここからだ。玄関以外の戸締りと電気を消して部屋を出て、私は勝負に挑んだ。


ーーーーー


すみません、早急に敵前逃亡を図りたくなってきました。

誰かーーーー。


好敵手の車に乗せられ連れられて着いた場所は、なんと高級ホテルでした。

おい、勤労学生・・・無駄遣いだよ。

賢明にもそれを口に出さない私は、ウエイターに案内されホテル内の高級レストランの特別席に座った。


「すぐにディナーをお運びいたします。それではごゆっくり」


そう言って美しい所作でウエイターがテーブルを去った。


「孝之さん・・・いくらなんでもこれってどうなの?」


「どうって・・・なにか悪いか?お前フランス料理も好きだったろう。」


そう好きなのだけど・・・こんなシュチュエーションで食べる事となろうとは思わない。

ニヤリと笑う好敵手を前に私は静かに冷や汗を流していた。


「うん、イタリアンの次にね。」


「ならいいじゃん。ほら運ばれてくるぞ」


あーワゴンに載せられた前菜と食前酒が私を追い詰める。


「一応二十歳になったけど車だから、ノンアルな」


そうシャンパングラス越しに笑う男は、本当に私の幼馴染でしょうか?


「当たり前・・・それより、誕生日おめでとう、孝之」


「サンキュ・・お前もな」


「うん・・・」


グラスを掲げて乾杯の仕草、今日は紺のジャケットに黒のインナー。腕には確か大学入学祝いで買ってもらったらしい少し高めの腕時計。

悔しいけどちょっとかっこいいのだ。


「今日は、思ったよりめかし込んだな」


「・・・そうしろって言ったのそっち」


「おう・・ちょっとびくったわ」


褒めてるのよね?それは。


「そう・・・あっおいしい。」


口に入れたテリーヌについそう口にでだ。

今はこの料理に逃げておこう。


まだ負けてないですよ。まだ・・・。








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