寂しいとは、言いません。
さて、現在お説教が始まって5分。コーヒーも冷めて来ました。
「だから、ごめんって」
「ほう、なにが?」
「何って・・・エロ本探してごめんね?だって前は写真集だったから」
以前入った時には某アイドルの写真集を見つけてしまったからつい好奇心に負けてしまったのだ。
「あのなぁ・・」
「次は、探さないから」
「あたり前だっ・・・デリカシーはないのか?」
そう言いながら私のシフォンケーキを現在3切れ目・・・大丈夫だろうか?こんな夜にそんなに食べて。
「失礼な・・・あるけど・・」
だってドキドキが欲しかったんだとは、口がさけても言えない。
やっと怒りが収まったらしい幼馴染がため息を吐いた。これでお説教は終わりだろう。
「で・・・急に電話なんて、どうしたんだ?」
「えっ?」
急な話の転換について行けないでいるとコーヒーを一口飲んでから私を見つめた。
これは、誤魔化したい。電話をした理由なんて1か月半も音信不通で不安になったからなんて、絶対この好敵手じゃない彼氏は、喜んでからかって来るに決まってる。
「ケーキ・・・作りすぎたから」
「ふーん・・・で、本当は?」
流石、見抜くのが早いね好敵手。
「だから、ケーキを作りすぎたから、お夜食に献上に参ったの。」
「そう、で?」
なんとしても理由を聞き出すつもりらしい。ならこちらもしっかりと言い訳しないといけない。
「・・・もう、私の事好きじゃなくなったのかな?という確認です。」
「はっ?」
ポカンという擬音ぴったりの顔で私を見る幼馴染を私は、見つめ返す。
さて1か月半の間彼女を放置しておいてもこいつは、なにも変わらない。彼女と幼馴染の差とは何ぞやという具合だ。
やっぱり、恋には成れない。
だけどそれでも私は、いいのだ。好きという気持ちは、いくつもの色を持っているのだから。
「ケーキおいしい?」
「あぁ、じゃなくて・・・なんだよ今の」
どっちが鈍感なんだか、ほんとにしょうがない奴だ。
「なんでしょう?」
「はぐらかすな・・・意地っ張り。」
そう言って立ち上がるあいつ、部屋を出て行くのだろうか・・・。ここは、私の部屋じゃないんだから、出て行くなら私だろう。
そう思って私も立ち上がろうとした時、いきなり髪に触れられた感覚がした。ここには、私と幼馴染しかいないのだから誰が触ってるかだなんて考えなくてもわかる。
「ちょっ」
机を挟んでいるのに、ちょっと怖い。
「悪かった・・・」
そう言って私を撫でるのは、本当に幼馴染いや好敵手なのだろうか。
子供扱いされているのかとも思ったけどそうじゃない気もするのは、その手があまりにも優しいからだ。
「・・・何が?」
「・・・不安なんだろう?」
完璧な誤解だ。 でもこんな風に言うという事は、これは経験済みな事なのだろうとわかった。
前の彼女から何か言われた事があるから私もそうだと思ってるのだ。
「さぁ?」
「本当に意地っ張りは変わらねぇな・・・梨桜」
久しぶりに名前を呼ばれた。最近は、お前とかおい、とかそんな風ばっかりで名前を呼ばれる事が少ない。
「うるさい・・・お互い様」
髪を触る手をそっと外させる。こんなに近くに居られるのも後9か月ちょっとなんだぞ。好敵手・・・。
「かわいくなっ!」
「かわいいなんて思ってないくせに・・・」
170㎝近い身長の女がかわいいなんて思われるわけがない。
かっこいいとかなら何度か言われたけど・・・。
「ばーか」
自然に近くなる距離・・・これって、もしかして・・キスなの?
タイミング違うでしょ、ちょっと待って!好敵手じゃなかった。彼氏さん。
「あっ・・」
どうなったかって?されましたけど、おでこに。
デコチューって恥ずかしくないですか、好敵手・・・、これが私の幼馴染です。
寂しいとは言わない。だって好きの色が変わってないから。




