デート?いえただの暇つぶしです。
日々は滞りなく過ぎて行く。
ラーメンを食べて、ビタミンの代わりにとコンビニで買った栄養ドリンクをあいつの鞄にこっそり入れてからもう一か月が経った。
遂にやってきたゴールデンなウィーク。
今年は日取りが悪い、中2日が休日でないので大学に行かなければならない。
だがゴールデンである事に変わりない。
友達と一緒にカラオケや映画と遊んで食べてと2日間羽目を外して、2日間大学に通った。
そしてゴールデンウィーク最終日。午前10時に鳴り響いたのは、インターフォン。
昨日というより今日の朝、明け方まで借りてきたDVDを見てた私に、無情にも母は言い放つ。
「孝之くん来たけど、どうするの?」
どうするって何を?そう返せば母は、にこやかに告げた。
「いい加減起きて顔洗って着替えて来なさい。孝之くん待ってるんだから」
だからなぜ待つのだとそう叫びたいのを何とか堪えて私は洗面所に向かった。
顔を洗って着替えて、リビングに向かえば、ここは、お前の家かというくらいにくつろいだ格好の幼馴染が居る。
「なに?」
不機嫌なのは、5時間の睡眠時間では足らなかったからだ。
「ひでぇ顔。一応女だろう?」
「うるさい、でこんな時間に何しに来たの?」
要件はさっさと終わらせたい。
「これ、この間の礼。」
「礼?ってなに?」
「ドリンク、これ無料券な。バイト先の先輩からもらったんだよ。今年は先輩が落ち武者らしい」
全くもって意味の分からない話。先輩が落ち武者ってなにがあった、先輩。
「ごめん、もっとわかりやすく」
分かりやすく説明されたのは、バイト先の先輩が某デパート内で特設設営されたお化け屋敷でバイトをするらしい。そこの無料優待券をもらったのだが、行かないかというお誘いだ。自宅最寄駅から2駅の近場だし、先輩から女の子を連れて来るように言われたのが昨日だという事で都合のよさそうな私を選んだらしい。
「梨桜行ってきたら?今日は寝るって言ってたんだから暇でしょう?」
「えー、いやお母さん・・・」
「行くの?行かねぇの?」
孝之は、出されたお茶を飲み干して立ち上がった。
「いや、行かない」
「行きます。」
重なった言葉の片方は、母のもので私は、もちろん前者だ。
「梨桜、明日は学校なんだから楽しんできなさい。」
「いや、だから寝てたいというか休みたいんですが」
「じゃあ、俺一人か・・・」
孝之が母にお茶の礼を告げてリビングを出て行こうとすると母からの痛い視線とかち合う。
最初から私に拒否権は、なかったのだ。
「行ってきます。」
昨日のまま置いてあった鞄を手に私は孝之の背中を思いっきり押して家を出た。
マンションを出ると孝之が先に歩いて行ってしまった。
お前が誘ったんだから少しはエスコートしろという意味も含めてその背中をバックで叩けば通行人に奇異の目を向けられた。
これは、デートではない。




