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探し物は、見つからない。

2年ぶりに通された好敵手の部屋は、少しだけ変化していた。

漫画や楽譜らけだった本棚は、教科書と医学書のゾーンが出来ているし、フィギュアのあった場所が撤去されていてそこには、現在開かれているノートパソコンがあった。

脱ぎっぱなしのパーカーがぐしゃとなっているところは、変わらないのでついそれを手に取って畳む。


「家のインスタントコーヒーでいいよな、」


「うん、っていうかなんかやってたんでしょ?忙しいならいいから」


「いいよ、丁度キリがいいから。」


そう言って台所に行く好敵手。部屋の間取りは、上下階なので大体一緒だし部屋の配置もうちとほぼ変わらない。男子のくせにそれなり片付いては、いる。ただ今はなにかやっていたのフローリングの上に教科書が散乱しているのは、しょうがないだろう。


さて手持無沙汰だ・・・作業中なら勝手に片付けてたら問題だろうと空いてる場所を見つけてそこに無造作に置いてあるクッションを掴み座る。

これって一応彼氏の家に来た彼女ってポジションですが・・・なぜでしょうか、ドキドキがない。


ドキドキがないのよ、結局。

いくら幼馴染とはいえ、互いの部屋に入るなんて中学からやってないが、それでも高校では、借りたいCDを借りに3回だけ入った。

模様替えは、されてないし、散らばってた漫画や本もない。

見学は、数十秒で終了。


幼馴染とお付き合いは、ドキドキがないのが難点です。 


ふと本棚に目をやれば1か所だけ本が飛び出ていたので気になって手を伸ばす。

分厚いその本の題名は、≪ベートーベン大全集≫ そして付箋が貼られているのを確認して開けば、テンペストのところだった。


「ばーか・・・」


独り言がもれたのは、テンペストの文字の横に書かれた≪好きなやつ 8月29日まで≫を読んだからだ。

最初の好きなやつは、鉛筆だが日付の方は、赤いペンで。

そっと本棚に戻せば、いくつかの楽譜がまだちゃんと収められていてあいつらしく作曲家ごとに分けられている事に気づいた。

そして異様に少ないラヴェルの数に笑う。リストが30冊ぐらいあるのにまさかの2冊って、どんだけらしいのだろうと笑いながら、部屋の奥に置いてある電子ピアノを見る。


まだ、孝之は戻らないので・・・ドキドキを求めてみました!!


セオリー通りに行けばベットの下だろうと覗き込んで見る。

うっすらほこりが積もっている奥には、何冊かの本の影・・・。


「早速ですか・・・、」


ひねりがないと思いながら手を伸ばす。さてとこれこそ男子学生のお約束!

≪エッチな本≫ですね! 隠してもわかっちゃうのが幼馴染です!


ドキドキしながらそっと取り出せば・・・・・


「解剖医学全集・・・・・杉田玄白かっ!しかもグロイッ!」


返せっ私のドキドキッ!

解剖学書を置いてもう一冊取り出そうと手を伸ばした時、後ろから聞き覚えのありすぎる声が掛かった。


「何してんの?」


「っ!」


ギャーっ!なんてタイミングですかっ!好敵手。


勢いよく振り返れば、湯気の上がるマグカップとタッパ―から出されてちゃんと皿にのせられた私の特製シフォンケーキをお盆に乗せ持っている好敵手が、呆れたと書かれた顔で私を見ていた。


「・・・・えっと・・・」


「正直に言えよ?」


わーーー久しぶりの笑顔、でも後ろには般若が見えるのは何故でしょう。


「あの・・っちょっと・・探し物を」


「ふーーん、何を?」


このまま誤魔化しても後で吐かされます。これは経験上わかってますので・・・正直に言ってみました。


「エロ本探しをっ!」


「どこの女に彼氏の部屋でエロ本探すアホがいるんだっ!!この鈍感女ーーーーー!!」


孝之の悲鳴に近い怒鳴り声が秋の夜空に響き渡った。


だって・・・ドキドキがないのがいけないんですっ!

私が悪い・・・悪いんですよね。


ごめんなさい。





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