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2回戦の始まりは、お電話です。

あれから1カ月以上、音沙汰無し。

お付き合いとは、こんなものでしょうか・・・。せめて電話でも、いやメールでも構わないのだが。


大学が違って、学部も違うと接点と言えば、・・・・ないです。


「いい加減、メールぐらいいいじゃん・・・」


お互いにタイミングが合わないと3ヶ月くらいは、顔も見なければ連絡も取らない事が当たり前なのが、私たちだ。

普段は、大学の講義や友人と遊んで、休日は、バイト三昧のあの男に私からモーションをかけるというのは、かなり勇気が必要になる。


やっとその勇気を出せるまでに2週間。スマートホンを握りしめて3時間。

だが最後の一押しが出来ない。乙女の心は、は複雑なのだ・・・(あっ自分で言って鳥肌立った)。


私からモーションをかけるというのは、まるで・・・・。

断じて違う、断じて・・・だってこれは、生存確認ですから。


今は、夜の9時。

バイト中なら出ないだろうし、休んでたならいいのだ。コールは、3回までと決めてスマートホンを握りしめ5分。

未だに押せない。


女々しいと自分を鼓舞してなんとか指を動かす。

耳から聞こえるコール音。

1回・2回そして3回目が鳴り終わった。ダメかっとそう思って耳を離そうとした瞬間、声が聞こえた。


『もしもし・・』


『あっ・・・あの、私だけど』


『おう、どうした?』


いつもの調子でそう言うこの男は、わかっているのだろうか、これが1か月半ぶりの会話だと言うのを。


『ごめん・・・今大丈夫?』


『おう、でどうした?』


『どうしたって・・・』


おい、それが仮にも彼女に1か月半、音信不通の奴のセリフなの?とそう返してやりたいのを喉で抑える。


『お前から電話って珍しいし、なんかあったか?』


そう言われて初めて私は気づいたのだ。この電話は、私があいつに掛けた初めての電話であったという事に・・・それにうろたえてもしょうがないと私はすぐに話を進めた。


『えっと・・今バイト先なの?』


『いや家だけど、』


『そう、じゃあさ、今日作りすぎたシフォンケーキ持って行っていい?』


『あぁ、お前また作ったの?好きだな』


『お夜食です。彼氏さん』


『・・・』


そこで無言になるところがあいつらしい。ケーキは、今朝作ったものだがシフォンケーキが好きなあいつに持って行こうと思ったから作ったわけじゃない。

ただベーキングパウダーという材料がなかったから卵のメレンゲを作っただけです。

ついでのついでです。


『さんきゅ・・待ってる』


本気で照れてます?好敵手、ちょっろいぞ、こら。


『う・・・ん』


電話が切れて数秒。思考の切り替えは、大事です。


冷蔵庫の中のタッパを持って、エレベーターに乗り数十秒。

現在インターフォンを押そうとしてます。おばさんが居ればおばさんが出てくれるだろうしこれを渡せばそれで終わりだ。


ピーンポーン・・・ガチャ


せめて10秒の間が欲しかったのに、まさかの2秒!早すぎです好敵手。私じゃない人だったらどうする、確認しろ!


「よっ!」


「こんばんわ、孝之(たかゆき)


「おう・・・」


二言会話。もういい加減慣れても来たけど・・一応1ヶ月半ぶりだぞ?


「おばさんは?」


「今日は、研修会に行ってて遅いらしい。」


「そっか、じゃあ・・・はい、これ」


タッパの中には、アールグレイという紅茶の葉をしっかりと抽出して入れた本格派だ。

さっぱりしてるから夜食にはぴったりだと思う。


「おう・・・うまそう・・・」


その場でタッパを開けて中身を確認する顔は、本当に嬉しそうなのでこの一か月半の放置は、不問としてやろう。

私もちょろい・・・。


「よろしい。じゃあ、これで」


「逃げるなよ・・・これ一緒に食うぞ。」


疑問符はどこ・・・。2回戦が始まります。




















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