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第二回箱舟会議


「第2回、箱舟会議ぃぃぃぃぃぃ!!」


「わー、ぱちぱち」

「………」

「………」


骨の体から叫ぶように発せられたその声に対して返ってきたのは私の手からうち出る小さな拍手の音だけだった。

私の両隣には影と人が確かに座っているはずなのだがなんの音も聞こえてこない。

そんな二人の様子を見て音頭をとったダームさんは無駄だと感じたのか「ふぅ」とため息をついて着席した。


そしてそれを待っていたかのように隣に立っていたラストちゃんがダームさんの膝の上に乗っかる。



「さて、今回の議題はなんと2つもあるので1つずつ消化していきましょう。ということで議題その1、うちのギルドに新しいお仲間が増えました」


「んなっ!!? 私はそんなこと聞いていないぞ!! おい骨野郎、これはどういうことだ!!?」


「ギルドマスターはたしかにリリンさんですが承認権はメーフラさんにもありますからね。つまりこれはメーフラさんが招いたことですので文句があるならそちらへどうぞ」


「む? メーフラ様が……ならいいだろう」


「そういうことなので、入ってきてください」


ダームさんの呼びかけに応えるように部屋に入ってくる4つの影ーーーーーーーーあれ? 4つ?

確か私がギルドに誘ったのってーーーーー


4つの影は順番に姿を見せる。

まずは1つ目、流動体のナイスガイ(自称)のドゲザさん。

私の知らない間にボス種になったらしくその圧倒的な禍々しさは他のスライムを圧倒する。

ただ、どこまでいってもスライムなのでダームさんの方が禍々しかったりする。



2つ目、無機質な癒しことエターシャさん。

殺戮に特化した人形の私とは対照的な回復に特化した人形。

今は『聖宮女人形』という通常種族で真っ当な進化を繰り返しているらしく、ドゲザさんの毒で相手が倒れるまで回復を繰り返すという一種のハメプレイのようなことをやっているらしい(ダームさん情報)




ここまではわかる。何せこの2人をこのギルドに誘ってみたのは私だからだ。

あと2人、グラロさんとレーナちゃんも誘ってみたんだけど断られた。

グラロさんに聞いた理由としては「レーナが最近別のものにハマり出した」からだって。

わかってはいるんだけどこうやってゲームを引退していなくなる人がいると少し寂しくなるよね。


しかし愉快なこともある。


参考ついでに「何にハマったのですか?」と聞いてみたらだ、帰ってきた答えが


「『THE・調薬』っていうゲームなんだけど……知ってる?」


だった。

えぇ知ってますとも、そのタイプのゲームについては私はよーく知っております。

そう返そうと思ったが黙っておいた。レーナちゃんの将来に期待かもしれない。



それはともかく、だ。



前2人はわかっていたが残りの人影は誰のだろう?


私が首をひねっているとすぐにそれが明らかになった。


「メーフラちゃん、久しぶりね」


「………はい?」


「あれ? 私のことを忘れたのかしら?」


入ってきたのは真っ白な少女ーーーーー


「あれはそういう顔じゃない、な。多分だが、どうしてここにって思っている」


そして真っ黒な男だった。

というか、やばい神様セットだった。どうしてここに?ダンジョンは大丈夫なんだろうか?


私は2人をここに招き入れたであろう人物に顔を向ける。


「あの、ダームさん? ご説明をしていただけますか?」


「えっ? この人たちがメーフラさんのフレンドだからーって言ってたから一応連れてきてみたんだけど、違ってた?」


………違わないけど、違うんだよなぁ。

私は心の中でため息をこぼした。


そんな私のことは御構い無しに無情にもギルド加入申請の通知が私の目の前に現れた。

リンさんにも同じものが行っていることだろう。


「メーフラ様、どうs「却下してください」わかった」


その一瞬のやりとりで私の目の前から通知が消える。リンさんは私の指示を聞き入れてくれたみたいだ。

しかしそうすると白い神様こと雪姫が黙ってはいなかった。


「ちょっとっ!? どうして拒否するのよ!」

「普通は、そういうもの、だ。悪かったな、うちのバカが迷惑をかけて……俺たちは、もう帰るから、気にしないでくれ」

「帰らないわよ!!」

「わがままを………チッ、相変わらずの馬鹿力が……」


暴れる雪姫をそのパートナーであるヴァニが押さえつけようとする。しかしながらその膂力には大きな差があるのだろう。

羽交い締めにしているヴァニの腕が徐々に開いてきている。


このままではすぐにでも拘束が外れてしまうだろう。

なんというか、ヴァニさんも苦労しているんだなと思わせる一幕だった。

しかしこのまま見ていては状況は好転しないので私は1つの提案をした。


「雪姫さん、私は何もいじわるで仲間に入れないわけではないのです。それをわかってもらうためにこのまま次の議題に行きませんか?」


「ん、メーフラさんがそういうなら次に行こうか? でも、あとでそこの人たちについての説明をしてもらうからね」


ドゲザさんとエターシャさんが促されて席に座る。

場所的にはダームさんの両隣だ。

そしてリンさんとアスタリスクさんの隣に雪姫、ヴァニがそれぞれ座る。

雪姫は突然暴れ出しても対応がしやすいようにとヴァニがどこからか取り出した真っ黒な鎖で椅子に縛り付けられていた。


鎖が体に食い込んで微妙にエッチな雰囲気が出ているが、この場には紳士と女子しかいない。

まじまじと見るような真似をする人はいなかった。

それに、当人も縛られることを気にしていないーーーー いや、ちょっと嬉しそうだった。



「2つ目の議題、それはとあるギルドにギルド戦を申し込まれました」


「そんなもの、いつものように断って仕舞えばよかろう?」


「そういうわけにも行かなくてね」


「実は申し込んできているギルドは私の弟とリンさんの妹が運営しているギルドなのです」


「むっ、ということはあれか?」

「あれです」


「成る程、となると断ることはできんな。それで、いつだ?」


「来月の10日です」


「チッ、その日は外せん仕事があるのだが、変えることはできんのか?」


「それはできません」


まさかのリンさんは不参加ですか。これでこのギルドの防衛力が半減したと言っても過言ではないかもしれない。

万全の状態で堅護たちと戦いたかったんだけど、人員に欠けができてしまった。


リンさんの不参加が確定したところで他にその日ログインできない人がいないか問いかけたが、他にはいなかった。

アスタリスクさんもちゃんと来てくれるらしい。


やったね。


「ところで、今まで全部申請を断ってきたから知りませんがギルド戦って具体的に何をするのですか?」

「ざっくり言ったら第1回イベントの攻城戦を小規模にしたみたいなやつだね。お互いの砦を攻めあって壊す、もしくは敵を全滅させる。そうすれば勝ちの単純なルールだ。攻城戦との違いは砦にあの時の城みたいなステータスがない、というのと使われる砦はお互いのギルドホームをそのまま使う感じだね。あ、安心していいよ。ギルド戦でホームを壊されても大した被害にはならないから。精々、ギルド資産が減るくらいだからね」


ダームさんはそう締めくくった。よかった。複雑なルールだったら私が理解ができないところだったからね。


私たちが理解したことを確認してダームさんが小さく補足をしてくれた。

実はこのギルド戦、ギルドホームをそのまま砦として使うという関係上、建物内やホーム扱いされている庭などにあらかじめ罠を仕掛けておいて敵を迎え撃つという手が使えるらしい。


私たちのギルドホームはリンさんの意向により罠の設置などはしない方針で行くが、堅護たちのホームは罠があると考えて動いた方がいいだろう。


どんな罠があるかな〜

落とし穴や弓矢トラップとかの定番もの?

釣り天井や毒ガスみたいなちょっとだけひねったやつ?

もしかして踏んだタイルが数センチだけ下がるとか、壁にペイントをしておくとかのダームさんがかつて使ってきたトラップとかもあるのかな?


もしそうなら、少しだけ楽しみだなと感じた。


「で、これが私がギルドに入れない理由にどう関係してくるのかしら?」


ダームさんがギルド戦の説明を一通りしてくれたところで縛られたままの雪姫が口を開く。



「いや、ですから今から私たちはギルドメンバーで戦う予定があるんですよ? そんな中にあなたたちが入ったらゲームバランスが壊れるじゃないですか」


「もう十分壊れている気がするけどね……(ボソッ」

ん? 今ダームさんが何か言った気がする………まぁいいや。


「えー、いいじゃん。壊そうよ、バランス。雪姫バランス壊すのだーい好き」

「このバカ、空気を読むことはできんみたいだ。すまん」


ヴァニさんはこのギルド戦、何か私たちにとって意味があるものだと先ほどの会話で読み取ってくれたらしく空気を読んで退散しようとしている。

いや、この人はそもそもすぐに帰ろうとしていたか。

じゃあなんでここにきたって感じだけど……まぁほぼ確実に雪姫が連れてきたんだろうなぁ。


しかしどうやってヴァニを引きずってきたのだろうか?


あそこにはプレイヤーがいないと入れないって言って私を拉致ったことがあるんだけど、まさか別の人でもやった?

それともあのまま今日まで居座ってた?


真実は神のみぞ知るってことかな?



「いやいや私もはいるー」ってな感じで暴れようとする雪姫。

椅子がガタガタ揺れていて、鎖もギリギリ音を立てて今にも弾けてしまいそうだった。


そこで見かねたダームさんが妥協案を出してくれた。


「それではこうしてみてはいかがでしょう。まずお二人をギルドに入れる。そしてギルド戦当日は参加しない、というのは?」


「譲歩してくれて感謝する。おいバカ、お前もこれでいいな?」


「えー、私も戦いたい。だっていつまでたっても私のところに人が来ないんだもん!」


「………当日は俺がこいつを抑える」

「そうしてください」



こうして話はまとまった。


私たちのギルドはこの世界において最強の切り札を2つほど手に入れた。


















会議も終わり解散となった。

リンさんは仕事が忙しい時期だからと謝りながらログアウトしていった。

仕事が忙しいのに呼び出してしまった私の方が謝りたい気持ちでいっぱいだ。


ドゲザさんとエターシャさんは

「じゃあ俺たちはギルド戦に向けて自己強化に励むとするよ。作戦は多分ダームの旦那が立ててくれるんだろう?」

「メーフラさん、回復役が欲しかったらいつでも声かけてね。私は人形であっても癒すことができるのだーわっはっは、ってことで行ってきます」


と言って狩りに出かけていった。


今のレベル帯とパーティ構成なら『金狼の聖森』が一番効率が良く狩りができるとか言ってたけど、私はお生憎様使えそうな狩場は『白き生命の最高神殿』と『虚無城』くらいしか知らないから言われても分からなかった。



その2つのダンジョンの主人は片方が片方を引きずるようにして帰っていった。

どちらがどちらかは想像に任せる。



ダームさんは会議室に残って何かをしている。



そして残った1人はラウンジにいた。


少し疲れたように座っていた彼に私は話しかける。


「アスタリスクさん、少しいいですか?」


「………いくらでもいいぞ」


「ありがとうございます。では遠慮なくお願いさせていただきますが、私の特訓に付き合ってくださいませんか?」


「………喜んで」



私はアスタリスクさんを伴ってこの世界から姿を消した。

最後の戦いに備えて、もうすでに極限まで極め切った自分の技の限界を超えるために………



正確には、ーーーーーーーーー超えた限界を降ろし切れるようにするために………











HJネット大小説賞の二次選考をこの作品が突破していました………マジカ

でも最終の突破は難しんだろうなと………とりあえず祈っときます


Q、ところで以前「そーかちゃん病院送りルートはすでにない」みたいなこと言ってましたが、これはつまり「弟くんの恋の行方だけでは終わらない」と思ってもいいんでしょうか?アスタリスクさん活躍します?

A、ヒント:決戦は土曜日(休日)どういう結末になるかは決めていますが、流石にここでネタバレするわけにはいかないので伏せさせていただきます。




Q、もうすぐ終わる感じなのかな?

A、本当は両陣営の準備を事細かに書こうかな〜とか思っていたのですが、これ多分何も書かずに戦闘中に全部見せた方がいいやつですよね。

そう考えると割と終わりは近いのかもしれません。



ブックマーク、pt評価、感想待ってます。





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お姉ちゃんの頑張りが書籍化しました。
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[良い点] いつも面白い! [一言] 魔王スライム?どこぞの転生者のリ〇ル・テンペストさんが思いうかんででくりゅのぉ!俺だけかな?
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