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陽の献身

 二人と別れた後、私は素早く件のゲームを購入して即座に家にあるVRマシンに寝転んだ。


あまりゲームをやらない私のVRマシンは長期間停止していたためかいくつかの設定を要求される。普段なら気にならないところなのだが、今はそれが煩わしいことこの上なかった。

なるべく最速で設定を終わらせた私は早速ゲームの起動、パッケージ版のため無駄なダウンロード時間は省かれているため割とすぐにゲームを開始することができた。


すぐにキャラメイクが始まる


『まずは陣営を選んでください』

『魔or人』


確か堅護君は人族陣営って言っていたよね?なら迷うことはないね。

私は人を選択する。


『次に種族を選択してください』


私の目の前にいくつかの選択肢が現れる。ここではファンタジー世界において定番のエルフやらドワーフや、見たことないカカリアやミシェードとかいう選択肢もあった。

この中から私が選んだのはエルフだ。


理由?

男の子ってエルフの子が大好きなんでしょ? 彼もきっと好きなはず。

間違っても嫌いではないと思うから


『次にメイン職を選びましょう』


ここでも大量の選択肢。

運営の方針としてプレイヤーのプレイスタイルによって多様なキャラを作れるようにしている……らしいのでこういうところでも選択肢は多い。

ここは献身的な女性だということを見せるために「神官」にした。

これで堅護君がどれだけけがをしてもすぐに手当てをしてあげられる。そしてけがを手当てする人は大切だから堅護君は私を必然的に守ってくれざるを得ない!!

なんて完璧な職業選択!


『次にサブ職を選びましょう。項目から一つ選んでください』


はい、もう面倒なので料理でいいです。

そんなことより早く始めさせてください。


『キャラの見た目を調節できます』


堅護君にはありのままの私を見てもらいたいので変更は無しです。

そんなことより早く彼に会わせてください。


『キャラの名前を設定してください』

あー、せっかくだし名前で呼んでほしいから「陽」でいいかな?


『すでに同じ名前のプレイヤーが存在します』


…………ちっ誰だよ私の名前先に使ったやつ。絶対に許さん。

まぁいい。名前の重複があったところで適当な記号でも混ぜておけば問題はないでしょ。


ということで私の名前は「陽1号」に決定した。


『了解しました。あなたは人族ですので、人族の街、「コスモール」が初期地点となります。それではご健闘をお祈りします』

キャラ設定を終了すると私の視界が真っ暗になる。

そして気づいたときには私は街の中で一人ぽつんとたたずんでいた。


「ようこそ、『Monster or Humans』の世界へ、私はチュートリアル担当のAI、NAVIです。これからチュートリアルを開始しますがよろしいですか? ちなみに、このチュートリアルはスキップすることも―――――」

「スキップして」

「了解しました。チュートリアルをスキップします。これにてチュートリアルを終了します」


いちいち面倒な説明を聞いて彼を待たせたくなかったのでチュートリアルはスキップした。

するといつの間にか私の周りには先ほどまでなかった人だかりができていた。なぜ?と思ったが、そんなこと私にとっては些細なことであったため気にしなかった。


「堅護君……いや、こっちではガト君だっけ? を早く探さないと、それと一応あの女も……」

しかし探すといってもこの大きな町の中でどうやって探せばいいのかいまいちわからない。道行く人にガト君の場所を知らないかと聞いてもきっと無駄だろう。

彼は確かにかっこいい男の子であるが、有名人というわけではないと思うから。

私がどうしようかとうなっていると探そうとしていたその人が向こうからやってきた。


「おーい、こっちこっち!!」

「あ!! たかm……じゃなくてガト君!!」



彼は少しだけ離れた場所でこちらに向かって大きく手を振っていた。ゲームの中での彼は普段は見ることのない藍色の鎧を身に着けてその背中には大きな盾を背負っていた。

兜はかぶっていなかったのでそのかっこいい顔は隠されないでさらされている。だからこそ、その人の現実の姿が高峰堅護だということは一瞬で分かった。

私は彼のもとへとすぐにはせ参じる。


「よく私のことを見つけられたねガト君」

「まぁゲームのスタート地点は人族ならみんなここからだからな。それに、顔とかいじってないみたいだしすぐにわかったよ」

「えっとさっそくだけどフレンド申請送ったほうがいいよね? っていうことではいこれ」


『フセンからフレンド申請が届きました』

『ガトからフレンド申請が届きました』


2人からのフレンド申請。

私はすぐに承認する。そして私はUIからフレンドリストを開く。そこには確かに「ガト」の文字が書かれており、私と彼はそこら辺の有象無象とは違う一段階進んだ関係であることを証明している。

そのことに私はうれしくなり顔が少し緩んだ。

しかしあまり彼に緩んだ顔は見せられないと思い、すぐに引き締めようと意識する。


あぁ、堅護君、少なくともこれで私たちは友達まではいったから、あとは恋人に昇華するだけだね


おっと、また顔が緩み始めた。

いけないイケナイ


「それでガト君、私はまずは何をすればいいのかな?」

「えっと……クラスは何を選んだ?」

「メインは神官、サブは料理人だよ」

「ならソロでのレベル上げはあんまりお勧めできないよね……ってことは俺たちでパワーレベリングをする感じかな?」

「パワーレベリング?」

「強い人にくっついていってレベルだけを手っ取り早く上げること」

「うーん、弱いままじゃ役に立てないだろうし、できることならそれでお願いしたい、かな?」

「わかった、フセンさんもそれでいいですか?」

「ん、いいよー」


そういうことになったので私は今日はガト君にくっついて経験値を得るだけのお仕事をすることになった。

2人のレベルは60を超えていて、2人が倒そうとしているお姉さん――――こっちではメーフラというらしい―――もおそらくそのくらいはあるだろう。

そんな中、レベル1の私がいても何の役に立たない。堅護君の役に立つには、そして意識してもらうには強くなる必要があるのだ。

だから今日は介護プレイという恥を忍んででも強くなる必要があった。

ガト君に教えてもらったのだが最近では新規プレイヤーに一定時間経験値二倍のアイテムなどが所持品に入れられているということがあってそれなりのレベルになるにはそんなに時間がかからないといわれた。


私は2人につれられるままフィールドを歩き回った。

このゲームはパーティを組んでいればパーティメンバーに均等にドロップアイテムと経験値が振り分けられる仕組みになっているので、私は本当についていっているだけでレベルが上がる。

私は後ろをついて歩くときに2人をよく観察した。


基本的に堅護君が攻撃を受け止めてあの女が後ろから攻撃する、といった感じだった。

そんな戦い方なのになぜかあの女は敵を倒したら得意げになっている。絶対に攻撃を全部その身に受けている堅護君のほうがつらくて大変なはずなのに、なんで後ろで魔法を撃っただけの人が偉そうなの!? …と言いたかったが、現状の私はそれ以上に害悪なついていくだけの存在なので口には出せなかった。


さすがにずっと後ろを守られながら歩いているのは気が引けたので、せめてこれだけでもという風に私は回復魔法を堅護君にかけ続けた。

私のレベルでは大した効果はないけど、何もやらないよりは気がまぎれた。

そんな私を気遣ってか彼は「なんか、回復ビットをくっつけている気分だ」って冗談を言って場を和ませてくれた。


そして今日かなりの時間プレイして私のレベルがたった一日で39まで上がった。

個人的にはもっとずっと堅護君と一緒に遊んでいたかったけど、午後7時の少し前くらいになると堅護君が夕食の時間だから今日はここまでにしようと言ったので別れることにした。


「今日はありがとうガト君、私、ちゃんと役に立てるように頑張るね」

回復薬ヒーラーがいれば姉ちゃんとの戦いでも有利に立ち回れるかもしれないから、期待してるよ。じゃあ今日はこのくらいで」

「はい!」


堅護君はログアウトして私の前から姿を消す。ついでに、あの女もログアウトして姿を消す。堅護君はすぐ戻ってきてほしいと思うが、女のほうは永久に消えていてほしいと思ってしまって少々物騒な思考を誤魔化すように私は堅護君のお姉ちゃんの情報を集めることにした。


堅護君がもうログアウトしてしまったため私は今日はこれ以上ゲームをプレイするつもりはなかったが、彼の姉について何か重要な情報を一つでも得られればこれからの様々なことに有利になれると思っていろいろな情報サイトを漁った。

すると驚くべきことに、まずはお試し感覚でと「メーフラ」とワード検索をしてみたのだが、たったそれだけでかなりの情報が得られた。

場所によってはご丁寧に映像付きだったりしてとっても見やすかった。


だが、そこに映し出された情報はおおよそ一人の人間の成したものとは思えなかった。


曰く、ゲーム開始直後に彼女がいたエリア内にいたプレイヤーを全滅させた

曰く、原初のボスプレイヤーである

曰く、生半可な実力じゃ触れることすらできない

曰く、たった一人で万の軍隊をせん滅した

曰く、素手でドラゴンを倒せる

曰く、誰も持っていないアイテムを大量に所持している

曰く、子熊を頭にのっけて戦うほど実力に差がある

曰く、レイドボスですら一人で倒せる

曰く、ゲームが始まってから一度も死んだことがない

曰く、弟がいるらしい

曰く、彼氏がいるらしい

曰く、同性愛者の気質もあるらしい………

曰く、彼女は実はAIでプレイヤーを監視しているらしい


等、明らかに誇張されているだろうと思われるものや、若干プライベートを侵食しているものまでさまざまな情報が出てきた。

堅護君のお姉ちゃんはこの世界では人気者らしくて専用の掲示板が存在するほどだった。

私はそこにあった「メーフラを短時間で知りたい人向けの動画」というものを見つけたのでそれを再生してみる。



そこには――――――――なぜかえらくローアングルからとられた堅護君のお姉ちゃん、メーフラの姿。

それが大群相手に一歩も引かずに切り続けるメーフラの姿だった。

伸び縮みする不思議な剣を使い舞うように間合いに入った敵を切り刻んでいき、最後には武器が壊れたという理由で素手で戦い続ける狂人の姿があった。


「えっ、これがあの優しそうなお姉さん? 本当はすんごい怖いとか? いや、そんな感じじゃない、けどこの強さはどこから?」


メーフラを討伐しようという声は掲示板などで定期的に上がっている。しかしそれはすべて失敗に終わっているようであった。

それもすべて瞬殺である。

実際に戦ってみた人の書き込みによるとメーフラはただ純粋なプレイヤースキルでほかのプレイヤーとの差をつけている上にキャラスペックも異常に高いからもう手が付けられないレベルになっているとのことだ。

しかし、私が先ほど見た人の群れを捌くメーフラの動画の時点ではキャラスペックはまだ常識の範疇だったらしい。

つまり


「私たちは何と戦おうとしているの? 堅護君、このままじゃ絶対に勝てないよね? じゃあ勝てるようになるにはどうすれば………」

私は情報を整理しながらあの化け物とも呼ばれている女性をどうすれば倒せるかを必死に考える。

具体的なプランや方針だけでも示すことができれば彼もきっと助かるだろう。私は何とかメーフラの隙を探す。

だが、ネット上にある情報をいくら整理してもこれといったヴィジョンは浮かんでこない。



しかし、あれを相手にするのに無策で突っ込むのは無謀だとわかっている。


そうやって悩み、悩み、悩みぬいた末―――――――――――――――



















「あの、メーフラさんですよね? 少し聞きたいことがあるのですが……」

本人に直接倒し方を聞けばいいやという結論に達して情報サイトを駆使してメーフラを発見、接触した。


人形族のサブキャラ、『陽2号』として

嘘みたいだろ? 前回更新から10日も空いてるんだぜ?



Q,そうかそうか、栞さんはそんな人だったんだな

A,この米主は栞さんに宝物でも壊されたんだろうか? 


Q,ストーカーがゲームにも来るのか……面倒なことにならなきゃいいけど

A,ゲームに来ないならそもそもこんなキャラ出てこない説


Q、アスタリスクさん応援してます!

A、………頑張る


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