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いけっ、メーフラ!影分身だ!!

前回の反動で短め


終業式。

今日は一学期最後の日だ。いつものように校長先生のなが〜いお話を突っ立ったまま聞かされながら私たち生徒はこの会が終わることを今か今かと待ち望んでいた。


終業式があるということはそれすなわち明日から学校がないということだ。

まぁ? 部活とかある人は引き続き学校に来続けることになるだろうけど?

私は堅護のお世話とかあるから部活はやっていない。栞ちゃんも家庭がうんたらでやっていない。


つまり心置きなく第1回のイベントを迎えることができるということだね。

やった!


「え〜、みなさんこれから夏休みに入りますが、生活リズムを崩したり、風邪をひいたりしないように気をつけて過ごしてください」


その言葉を最後にして校長先生の10分間における30秒で終わりそうな内容のトークは幕を下ろした。

私たちはその後先生方の諸注意等を一通り聞かされた後教室に集められHRに入った。

昨日のうちに大方の書類は配り終えているので最低限のものだけ配布された。

うちの高校は通知表などは直接家に送りつけられるタイプだからここで受け取ったりはしない。


そしてその中身も大して気になったりはしていない。

なにせいつも体育が5

それ以外が4とちらほら3が並んでいるだけだから。

ちなみに、私は古典が苦手だ。そのため国語はいつも3だった。

この前の期末テストはそれなりにいい点数を出せたから今回はきっと4になっていると信じよう。




「さて、ようやく一学期も終わりましたね」

「そだねー。来週は待ちに待った攻城戦だね〜」

「ふふっ、最近栞ちゃんは堅護と2人で何やらやっているみたいですし、期待していいんですよね?」

「見てからのお楽しみ〜」

「そうですね。聞いたら楽しくありません。ただ一つ宣言しておきます」

「およ?」

「今回の私は優雅なボスを目指して戦いますよ」

「優雅なボスねぇ。………優雅って何? 戦い方?」

「さて、どうでしょう。見てからのお楽しみですね」

「おっと、意趣返しかな?」

「ふふっ、あ、私はこっちですので今日はこれで。また向こうでお会いしましょう」

「うん、1週間後、楽しみにしてるからね!!」



私は栞ちゃんと途中まで一緒に帰りいつものごとく分かれ道で別れた。

そして家に帰る途中でスーパーに寄ってから帰った。

明日から学校はないが家事はやらなきゃいけないからね。

昨日チェックしておいたもので足りない野菜を購入してから私はご飯を作る。

そして夕飯を堅護と食べ終わってからMOHにログインすることにした。



「ふ〜帰ってきましたこちらの世界。昨日までで準備は終わりましたしここからはよりボスっぽく振る舞うための練習ですかね?」

永遠に続くかと思われた裁縫作業も3週間の時を以って終わりを告げた。

最初の方は市販の布を使い練習に練習を重ねる。

ほとんど現実のものと同じ動作であったが、こちらの世界とで何か齟齬があってはいけないと思ったからだ。


そうしてある程度裁縫技能を伸ばしてから本命の素材を使ってあれを作ったというわけだ。

完成品はいまだに誰にもお披露目することなくインベントリに入ったままだ。

イベント当日になったら装備しようと思う。


あ、3週間も裁縫してたから【信念】さんがかなり仕事してくれたよ。

DEXの値が完成品に影響したりするらしいんだけどそこに補正を入れたり裁縫のスキルに入る経験値を増やしたりしてくれた。

今、私の裁縫はLV21です。どこまで上がるか知らないけど裁縫レベルが上がったお陰かその関連のスキルも手に入ったよ。


今度ボス殺法に取り入れてみよう!


「………とりあえずはゴブリンさんにあれの製作依頼をしてから蛇腹剣の練習をしてみましょうか」

私は武器屋に行きいつものゴブリンに武器の製作依頼を出した。

今回は複雑なものとかでもないし明日にはできているらしい。


依頼に行った時蛇腹剣の調子はどうだ?とか聞かれて少しびくってなったのはナイショだ。

私の世界で3週間っていうことはこっちの世界では3ヶ月かかっているってことだからね。

その間全く使っていないとなるとさすがに怒られそうだ。


そんな蛇腹剣の使用感を試すのは人型の相手がいい。

ただ人族プレイヤーに向かって使うのは違う気がする。

ということで私は街の西側に大きく進んだところにある荒野のコボルトで試し斬りすることにした。


インベントリにずっと眠っていた聖銀の蛇腹剣を取り出して両手に1本ずつ装備する。

本来この武器は重心移動の難しさや踏ん張りの必要性とかその他諸々の関係上1本だけで使うものだ。

だけどそれじゃあんまり格好良くなさそうだから私は2つ使う。

操作はかなり難しくなるし振っている時は移動したりできなくなるけど逆に移動しないのはそれっぽい気がしたしいいだろう。


「コボルトさーん。あ、いた」


敵発見。一応アイコンの確認……よし、魔物だ。

私は右の剣を大きく振り回す。

すると剣が鞭のように伸ばされ薙ぎ払うようにコボルトに迫る。

そしてそれはコボルトの体に触れたと思うと次の瞬間、その体をズタズタに引き裂いた。


しかし傷はあまり深くなかったみたいだ。

なんとか生き残っている。そう安堵しているところを私の左手にある剣が捕まえる。

今度は引き裂くのではなくその刃を食い込ませるように巻きつけた。


そして一本釣りの要領で私は足を踏ん張って空中に向けて振り上げた。

コボルトは抵抗できないまま空中に放り出されて……そのまま地面に落ちて落下ダメージで死亡した。


「う〜ん、思ったより地味ですね………」


その戦いをそう評価した私は次なる獲物を見つけては試行錯誤しながら試し切りを繰り返す。

そしてどのくらい経っただろう?


そろそろアイディアが煮詰まってきたかな?というところで私の勘が危険を察知した。

私は左斜め後方に向けて左側の剣を振り切ってこちらに飛来していた矢を弾き飛ばす。

すると間髪容れずに2本目、3本目が飛んでくるのが見えた。

しかもそれは同じ方向から飛んできているようだったが、同じ角度から飛んできているわけではなく私を囲むような形で飛んできていた。


「コボルト………ではないですよね? それにしては射撃が正確ですし次の一射までが早すぎます。集団……というわけでもなさそうですし……ではいったい誰が?」


毎秒飛んでくる矢の数々を両手の剣を振り回して上空で切り落としながら私はこの攻撃の正体を考える。

いや、というか答えはもう出ているんだけどね。


私は一度息を吸い込んでから大声でその人の名前を呼んだ。


「凛さーん、凛さんですよねー?」


こんな矢を連発できてかつ全方向からこちらに落ちてくるように向かってくる矢を操れる人物で私を攻撃してくる人なんてその人しか知らない。


「む、さすがメーフラ様だ。バレていたか」

「あ、やっぱり凛さんでしたか。こちらにきていたのですね?」


私が呼ぶと崖の上から1匹のコボルトが飛び降りてくる。

そのコボルトは私のよく知る喋り方、そして様づけをする呼び方をしていた。

やっぱり、さっきの攻撃は凛さんのものだったみたいだ。



「う、うむ。偶然にもこのゲームが目に止まったのでな。決して追ってきたわけではないぞ?」

「あれ? 自分で見つけたんですね。あぁでもこのゲーム結構有名みたいですし、てっきり栞ちゃんから誘われたのかと思ってました」

「あ、そ、そうだ! それだ! 妹に誘われてな!」

「それにしても、コボルトですか」


この凛という女性プレイヤーは私が以前やっていた『THE・刺客』というオンラインゲームのランキング1位のプレイヤーだ。

『THE・刺客』というのは例の会社が他のTHEシリーズで鍛えた腕を他のプレイヤーと戦って試したり切磋琢磨したりする目的で作られた世界だ。


その世界で彼女と私は幾度となくぶつかり合っている。

まぁ、大概のきっかけが彼女からの超長距離スナイプを受けることから始まるんだけどね。


今のところ戦績は6勝6敗108分だ。

距離を詰められれば勝てて、それができなければ負ける。

そんな感じだが基本的には回避可能な攻撃なので私が追いきれずに時間切れでログアウトすることがほとんどだ。


そしてこの凛という女性、実は栞ちゃんのお姉さんだったりする。

今は可愛らしい二足歩行の犬の見た目をしているが、彼女は実はキリッとした目元とすらっとした体躯のカッコいい女性なのだ。

それが今はこんな………あの鋭い眼光は見る影もないクリクリとしたかわいいまん丸お目目に………


「あぁ違うぞ。本当の姿はこっちだ」


凛さんがそういうと突如犬の体がぼやけ始めて次の瞬間にはそこには真っ黒な影が立っていた。


変身能力?

コボルトに化けていた?


二重の影ドッペルゲンガーというやつだ」

「お〜すごいですね。あ、もしかしたら私の姿とかにもなれたりするのですか?」

「ひゃっ、私が、メーフラ様に……あっ、ごほん。もちろんなれるぞ」


私の質問に凛さんはなぜか一度飛び跳ねてから答えた。

今の彼女は文字通り影が立っているという状態なので表情はわからない。


「あ、でも変身する場合は一度でもそれに触ったことがある必要があるのだ」

「そうですか。………いい機会ですしちょっと興味もあります。みせてくれませんか?」

「えっ、じゃ、じゃあて、てて、手を……手に触れさせてもらいます」

「はい」


黒い影が私の手をそっと撫でる。

微妙に官能的な撫で方をされたような気がするが多分気のせいだろう。

触りにくいと思ったので触られる前に剣はしまっているよ。


凛さんが私の手に触るとその影の輪郭がぼやけていきどんどんと私のアバターそっくり、私そっくりになってしまった。


「おー、すごいですね! これで双子モードとかどうでしょうか?」

「双子!!?」

「あ、ごめんなさいつい」

「だ、大丈夫だぞ。ちょっと驚いただけだ」


本当にそっくりだ。

鏡を見ているみたい……とはちょっと違うな。鏡は左右が違うけどこっちは左右まで合わせられているし。


私はいいものを見せてもらったことにお礼を言った。


「あ、そうだ凛さん。どうせなんでフレンド登録しておきません?」

「う、うむ。私もそうしたいと思っていたところだ!」

「そうですよね。前のゲームでは敵同士でしたが、こちらの世界では同じ陣営で仲間なんですからね」

「私とメーフラ様が……一緒、ずっと、一緒。よ、よし! じゃあ私から申請を送るな!」

「はい。お願いしますね」


私そっくりの凛さんがUIを開いてそれを操作している。

それにしても自分そっくりの人が目の前にいるというのは初めて見たときはちょっと感動したけどずっと当然のごとくそのままでいられるとモヤモヤするね。


でもこっちが頼んで変身してもらったんだし今更やめてとは言えないか。


『リリンベルからフレンド申請が届きました。承諾しますかY/N』


「ん? リリンベル?」

「うむ。今回も前回と同じく凛という名前でいこうとしたのだがこちらのゲームは同じ名前が使えないみたいでな」

「それでリリンベルですか」

「こちらでも変わらずリンって呼んでくれ」

「はい、そうさせていただきますねリンさん」


私は笑みを浮かべながらYを押した。

フレンドリストを確認するとリリンベルの文字が並んでいる。

これで私のフレンドは7人になった。

もう少しで二桁だ。



「そういえばリンさん」

「どうした?」

「同じ陣営のプレイヤーを承諾なしに攻撃すると犯罪者プレイヤーになったりするんですけど、さっきのは大丈夫なんですか?」

「あ、あぁ、そのことなら問題はいらない。なにせもう既に真っ赤っかだからな」

「えっ、り、リンさん!! 何をやったんですか! 今ならまだ間に合います! 衛兵さんに自首してしまいましょう!」

「おおぅ!? 先に言っておくが別に悪いことをしたわけではないぞ。魔族プレイヤーは一度たりとも射っていない。プレイヤーを射ったとしても全部人族なのは確認していた」

「それならどうして真っ赤っかに……?」

「それがよくわからないのだ。レベルが上がったから進化してみたらいきなりこんなのになってな」



おや?レベルが上がって進化して真っ赤?

私は少し疑問に思ってリンさんの頭上のカーソルに視線を合わせてそれを確認してみた。




…………赤黒かった。


あ、リンさん、あなたボスキャラになっていますよ。

でもまぁ、私がボスでリンさんがボスじゃないっていうのは分かる人には若干違和感ありそうだしね。

当然といえば当然?






その後私はリンさんにそのアイコンの説明をわかっている範囲で説明した。



そしてそんなこんなで攻城戦の日が近づいてくる。


Q 別ゲーかつ弟の話書いてるんじゃねえよ。ここ数回の更新はがっかりだよ

Aえー、これでも結構絞って最低限にとどめたんや。というか弟パートないとこの作品が終わっちゃう。


Qあれ?他のTHEシリーズとは違って刺客の中じゃ階級ごとの戦力は10倍差?刺客難易度低い?

A 戦闘力が同じもので多人数戦をやった場合、戦力比はその数の二乗になるという法則があったりなかったりします。

あの世界の人間の装備や身体能力は誤差程度しかないので基礎戦闘力は同じと考えれば10人同時に相手どれるということはそういうことです。


Q 神級が魔族陣営に2人……無理じゃね?

A大丈夫!ネタバレになるから詳しくいえないけど例の動画が人族陣営に戦力を増やしてくれます。


Q溶解液について。その言い方より某神喰いの内臓破壊弾って言った方が説得力が増しますよ。

Aう〜ん………?!?(・_・;?ナニソレシラナイ


Qイベントは人族から始めてから魔族側に行く感じ?

A近い……のかなぁ?次回更新を待て!


Q主人公がいつのまにか弟に・・・

Aメーフラボスなら弟勇者役だから多少はね?


次回はついにイベントに入るぞーおー!

作者の悩み。

堅護の話を書くと地味に叩かれて心が痛いんだけど……これこのままクリスマスの話書いていいのだろうか?

もしかして読者的には凛ねえとの百合話の方が需要あったりするのかな?


ブックマーク、pt評価をよろしくお願いします。





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お姉ちゃんの頑張りが書籍化しました。
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