第18話 ババ抜きと安らかな終幕
そんなこんなで事案発生を回避した私は、再び子供たちだけでテーブルを囲みます。
今日のメインイベントは愛ちゃんと遊ぶことですからね、変態のことは忘れて楽しもう!
「で、何して遊ぼうか?」
「えっと……め、恵ちゃんと花ちゃんのしたいことで、いいよ?」
優しい彼女からパスが回ってきた妹たちは、お互いに顔を見合わせてあーだこーだと相談。
そして結論が出たのかお互いにこくりと頷いた後、おもちゃやゲームの置いてある所へ走っていって。
「トランプ!」
「しよ〜!」
メグちゃんから花ちゃんへと言葉を繋げ合い、天に掲げるかの如くカードケースを持ったまま勢いよく戻ってきました。
花ちゃんが勢い余って私のお腹へと飛び込んでくるのはご愛嬌。ぐふぁ……。
私たちの言えにはテレビゲームもあるけど、どうやら今日はアナログをやりたい日らしい。
「い、いいね。愛ちゃんは何か知ってる遊びある?」
「えっと……それより大丈夫?」
「ふふっ、これくらい朝飯前よ。何だったらお昼ご飯出ちゃうレベルだけど心配しないで」
花ちゃんは力加減を知らないからなあ、それがまた可愛い所でもあるんだけど。
抱きついたまま天使をどっせーいと高い高いするように持ち上げる。
そんな元気アピールを見て愛ちゃんはくすりと微笑んだ。
「じゃあ、ババ抜きとかどうかな? わたし、実は結構強いの」
「ほほう。ならお手並み拝見といきましょうか!」
愛ちゃんが自己主張してくるとは、かなり自信がおありなようだ。
こいつは手強い戦いになりそうですね!
私も負けじと気合を入れ、勝負が幕は上がり……そして。
「——わ〜い! 花、いちぬけ〜!」
「あ、お姉ちゃん、私もこれで勝ちだよー!」
いや待て、強すぎないか天使たちよ。
今の流れ的には私と愛ちゃんの壮絶な闘いが始まる感じじゃなかったかい?
もう残ってるカード3枚だけなんですが。
「ち、千佳ちゃん、負けないからね」
「愛ちゃん……」
あんだけ自信満々に宣言していたのに、当の本人は先ほどから一番右の手札をチラチラと見てまくっています。
誰が見てもそこにジョーカーがあることは明白ですが、さてここは遠慮なく勝つべきか。
「むむむ……悩みどころだ」
愛ちゃんに花を持たせたい、でも手を抜かれて勝っても嬉しくないだろうし……と悩んでいると、ちょいちょいと袖を引っ張られました。
横を見てみるとそこには、四つん這いになって私の耳元に口を寄せるメグちゃんの姿が。
「お姉ちゃん、勝負は真剣にだよっ」
私の耳元でこしょこしょとメグちゃんがそう囁きます。
流石は妹、お姉ちゃんの考えていることなんてお見通しなのでしょう。
確かにこんな所で忖度しても彼女の為にならないよね……よし、ならば私がやることはたった一つ。
「ああっ!?」
愛ちゃんの悲鳴もむなしく私は上がりを決めました。
うるうるとこちらを見つめてくる視線に胸が痛むけど、ここは我慢だ諸弓千佳!
「ま、負けちゃった……」
ここはどう元気付けるべきか、とりあえず愛ちゃんが弱い訳じゃないと伝えて自信を取り戻して欲しい。
「いやー愛ちゃんも強かったよ。でも最強の私には勝てまいよ!」
「いや、お姉ちゃん3位だったよ」
「ねぇね、どっこいどっこい〜!」
はい、すいません。雑魚なのに調子乗りました。
しかし妹たちの援護射撃が私の心を撃ち抜いていく様が面白かったのか、愛ちゃんは吹き出すように笑顔に戻って。
「お母さんとお父さんになら負けなかったけど、千佳ちゃんたちはすごく強いね。全然敵わなかったよ……」
「ふっふー! いつもお姉ちゃんと花ちゃんとやってるからねっ」
「えへへ〜、どやっ」
天使たちのドヤ顔いただきました。
それに愛ちゃんも少し元気になってくれて良かったです。
「いやー、本当に強いんだよこの子たち。やるたびにいっぱい吸収してて、今では家族の誰も勝てないくらいでさ」
実はメグちゃんと花ちゃんがすっごくゲーム得意だってことは、お姉ちゃんずっと体感してるんだよね。
アナログだろうがデジタルだろうが、ほぼ毎日容赦なくボコられてるからねえ!
「くっ、今日くらいはお姉ちゃんとしての面目を保ちたかった……このままじゃ終われない。こうなったら愛ちゃん、一緒に協力して二人に勝つよ!」
「ば、ババ抜きに協力なんてあるの? ってその前に、イカサマは駄目だよー!?」
駄目か。
愛ちゃんに振られちゃったよーとメグちゃんに抱きつくと、よしよしと言いながら頭を撫でてくれます。
「ずる〜い、花もねぇねする〜!」
負けじとは花ちゃんも私にくっついて、同じように撫でられて……ああ幸せじゃ。
幸せになる分、どんどんお姉ちゃんとしての尊厳が失われている気もするけど。
「わ、わたしも、うぅ……」
愛ちゃんの声が薄っすらと聞こえます。
ああ〜何を言ったか聞き返したいけど、なでなでのせいで頭が上手く働かないんじゃ〜。
「愛お姉ちゃんも一緒にしよー!」
「ねぇねのみぎそくと〜ぶをどうぞ!」
難しい言葉知ってるねえ……花ちゃんはお姉ちゃんの自慢の妹だよぉ。
そうして私が蕩けていると、また一つ小さな手が髪へと触れました。
「い、いい子いい子……」
愛ちゃんの柔らかい指がぎこちなくも優しく髪をすいていきます。
ああ、これが天国かと言わんばかりの感触に思わず私は——
「——我が生涯に一片の悔いなし」
そう告げて、眠りにつくのでした。
「……おい、何か恍惚とした表情で遺言みたいなの言ったけど大丈夫かあれ」
「うふふ、千佳ったら皆に愛されてるのね♪ お母さんも混ざりたいわ」
「はぁはぁ……千佳さん、寝顔も素晴らしいです。写真撮っても構いませんか?」
千佳が眠り、それを見て他の子どもたちも眠って。
母親たちの撮影会は、幸せすに眠る我が子たちを起こさぬよう静かに執り行われるのでした。
【ひとこと説明】
室崎愛 現在:6歳
自己主張は控えめな女の子。
そのせいで千佳には「姉願望」があると勘違いされている。
撫でてる内に眠ったのを間近で見て胸キュン、
だがその感情がどういうものかはまだ気付いていない。
次回は2つ連続投稿します。
「キャラ紹介」と「次の話」という感じですので、
よろしくお願いします!




