第14話 先生の手伝いと宗教勧誘
リメイク前より九重先生が保護者側ではなく千佳ちゃん寄りになります。
お昼休み後の授業は気合を入れて過ごし、冷静になってから湖月ちゃんに土下座を敢行して。緩んだ空気と共に放課後の時間がやって来る。
「おーし、学校が終わった後はっと……」
愛ちゃんとの約束は明日だし、今日は早く家に帰って天使たちと遊ぼうかな。二人を思い浮かべるだけで早く家に向かいたくなるようなワクワク感が溢れ出します。
幸せな笑顔を浮かべていると、何やら私へ近付いてくる影が。
「すいません、千佳ちゃん。少々お話しが——ってはうぁ!?」
「急に来てどうしたんですか先生!?」
声を掛けられたので振り返ると、九重先生は何故か口を抑えてダメージを受けたような仕草をしています。いや本当に何があったの。
「い、いえ……千佳ちゃんの蕩けた笑みが、可愛すぎて……あやうく鼻血が」
「先生、最初は出来る女性感あったけど、もう既に小学校の教師としてはアレな雰囲気バリバリだね」
どうしようお母さん。担任がまあまあ不審者っぽいです。
いや待て、思えば私だってかなりぶっ飛んでるからな。人のことは言えません。
そのことを突っ込まれる前に本題へと移ることにしましょう。
「それで九重先生、何かお話があるようでしたが?」
「あっ、そうでした。実は千佳ちゃんにお手伝いをお願いしたくて」
「いいですよ。先生って大変ですもんね、私に手伝えることなら喜んで!」
「……千佳ちゃんは博識ですね」
教師の事情を知ったるかの如く頷く私に、先生は呆れたように頬を掻いてから、それでも手伝いを受け入れたことに微笑んでくれました。大人っぽい雰囲気の中に、子供のような無邪気さが込められたその表情は思わず見惚れてしまう程で。
うぅ、今度はこっちが鼻血出しちゃいそうだよぉ!
「それでお手伝いの内容なんですが、職員室でお話ししてもよろしいですか? 実際に見てもらった方が早いと思いますので」
「はい! 何でも任せてくださいっ」
もっと先生を幸せにして、その可憐な笑顔を魅せて欲しいからね。どんなお手伝いもしちゃうぜー!
ということで私はクラスメイトたちに別れを告げ、先生の後ろに続いて職員室へと向かうのでした。
楽しげな生徒たちとすれ違いながら、先生は一人ひとりに挨拶をしていく。さようなら、気を付けて帰るのよ、宿題忘れないようにね。そんな一言一言に優しさが溢れていて、その対象ではない私も心が暖かくなってきます。
「先生は皆からも人気みたいだね。ほら、あの子たちなんて昇降口と反対側なのにわざわざ挨拶しに来ちゃってるよ」
「ふふっ、そう思ってくれてるなら嬉しい限りです。皆が楽しそうにしてくれているだけで、教師になれて良かったと思えますから」
「私も分かるなあ、その気持ち。クラスで皆が笑顔なだけで幸せだし、何より妹たちが楽しんでくれてる姿を見るのが好きなので」
「恵ちゃんと花ちゃんでしたか、確かにあのお二人が笑っている姿はとても……」
やべえ、こいつ入学式に見た天使たちの姿を思い出して恍惚とした表情を浮かべてやがる!
「……先生」
「はっ……! ち、千佳ちゃん?」
私はゆらりゆらりと身体を傾け、顔を俯きながら近付いていきます。
その動きに気圧されたのか、それとも生徒の妹たちを想像して危険な笑顔を浮かべていた罪悪感か、後ずさろうとする先生にぐいと近付いて。
「分かる! 分かりみが深い!!!!」
「わ、分かりみ……?」
九重先生はロリコンと呼ばれてもおかしくない程に超子供好きなんだろうなとは薄々感じていました。
でも、その気持ちは私も同じくらい、いや負けないくらいに持っていて。
「メグちゃんも花ちゃんも、私がぎゅーってしたらふにゃあーってなって、もうそれがきゅんきゅんでお姉ちゃんもうとろとろになっちゃいそうなんです!」
「先生は千佳ちゃんの言っていることが分かりません!?」
むっ、少しテンションを上げすぎてしまったか。
しかし彼女も私と同じくらいのポテンシャルは持っているはず。まだ天使たちの素晴らしさを一厘も知らないから、戸惑っても仕方ない。
「ならば先生、お手伝いの間にお教えしましょう!」
「な、何をですか?」
「天使が……いかに素晴らしいかをっ」
「宗教勧誘!?」
ある意味宗教と言っても過言ではありません。リビングには天使たちの写真を両手の指では数えきれない程に置いてあるのですから。
……いやまあ、その全部に私も映ってるんだけど。
「これを聞けば先生も妹が欲しくなること間違いなし。さあさあ行きましょう、この深く険しくも慈愛に満ちた妹道を! 僭越ながら私、千佳がその背中を押してあげます!!」
先生の手を胸に抱き締めるように取り、引っ張るようにして職員室へと駆け出します。
「だ、誰か助けてー!? って、千佳ちゃん力強すぎませんか!?」
「鍛えてますので!」
「あなた本当に小学1年生なの!?」
遂にそのツッコミを入れられてしまいましたが、私は止まることを知りません。もうこの両目には、愛らしい妹たちの妄想だけしか映っていないのですから!
さあ先生、あなたも同志にしてあげますよっ。
「わ、私は結構ですー!?」
この後、先生は高校からの親友へとこう語ったという。
——変態って上には上がいるんだね、と。
【ひとこと説明】
千草咲 現在:30歳
花ちゃんママで、作品の保護者枠。
男勝りな雰囲気を持っており、昔取った杵柄で腕っぷしが強い。
実は高校1年生の時代に学校をサボりすぎて留年しているので、
千佳の母親である美佳は1個下。
仲間(変態)が増えました。
今後は千佳ちゃんの同志としても活躍します。
九重先生のSという目覚めは、また徐々に進行していく予定。




