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TSカリスマライフ! 「女の子大好きな転生少女が送る、百合ハーレムな日常コメディ」  作者: 恒石涼平
第一章 転生少女とカリスマ開花。(小学一年生)
180/195

第7話 入学式は、涙目の神童と共に

元の物語を残したまま、リメイク始めました。

まだ(新)第1話から読めていない方は、174ページからお読みください。

上靴へと履き替えて、体育館へとやって来ました。木張りの床とそり立つような壁にバスケットゴール、そしてボールが引っかかりそうな釣り天井という有り触れた設備ですが、制服と同じような白い装飾が至る所に施されています。

床には白いゴムか何かで出来たまるで新品の敷物が引かれており、思わず足を踏み入れる前に躊躇してしまいそうになりました。いやまあ入るんだけどさ。


「ぬ? 意外と新入生が少ないな。もっと沢山いると思ってたんだけど」


体育館を前から後ろに3等分して前が新入生、真ん中に保護者たち。そして後ろには上級生でしょうか、少し身体の大きな生徒たちが座っています。

しかしごった返している訳ではなく、人口密度はそこまで高くないように見えました。


「千佳ちゃんは物知りだね、ドラマか何かで見たのかな? 今年の新入生は大体80人くらいですが、この学園は12学年あるので毎年クラスは少なめにしてるんですよ」

「ほえー……二桁の年数過ごすって改めて考えるとぶっ飛んでるな。それにしても来るまではエリート校みたいなイメージしてたけど、新入生の子供たちは元気いっぱいですね。泣いてる子もいれば、早くも友達を作って楽しそうに会話してる子もいるし」

「それを言うなら、逆に千佳ちゃんはすごく大人びてる思うけどね。私が小学1年生の時はそこまで冷静な判断を出来なかったよ、初めての小学校に緊張して泣いちゃった覚えがあるよ」


まあ普通はそうだよね。幼稚園と小学生では規模に大きな違いがあるから。それにしても泣きベソな先生の幼少期か……うぅ、見てみたかったなあ。


しかし今更どうしようも出来ないことよりも考えるべきことがある。ここまで素で話してきたから柚梨先生はかなり驚いているようだ。そりゃこんなに達観した小学1年生がいたらビックリするよね、というか引くよね。

さてさて初日から引かれるのは辛いけど、わざと子供らしく振る舞うのは嘘吐いてるみたいで嫌だし。どうする……? と悩んでいたのが伝わったのか、彼女は小さく頬を緩めた。


「あ、でも安心してね。今年は千佳ちゃんみたいに良い子が多いですし、それに神童と呼ばれている女の子も入学するから」

「神童……!? 私みたいな状況の人なのかな、それとも本当の天才かも」


私がこんなに大人びているのは偏に前世の影響だ。ゲーム風に言うと強くてニューゲーム、またはズル(チート)のようなもの。

もしも同じ転生者であれば何か協力し合えるかもしれない。最悪の場合は警戒しなきゃだけど……どっちであろうと仲良くはしたい。だって女の子だし。


「入学式でも千佳ちゃんの隣の席ですから仲良くしてあげてくれると先生嬉しいな。彼女はこれから新入生代表の挨拶があるから、緊張を解してあげてもらえると私も安心出来るし……何より初めての場所に来たら誰でも不安になりますから」

「そりゃいいけど……それを同じ新入生に頼むのはどうなんですか?」

「ふふっ、それもそうだね。でも千佳ちゃんとの会話は大人と話しているみたいで……きっと貴女なら何とかしてくれる、そんな気がしたから」


そこまで言われちゃ私も気合入れないとね。こんな子供らしくない自分を根拠もなく信頼してくれるんだ、柚梨先生の期待に応えて、彼女の想いや直感が本物だって信じさせてあげたいじゃないか。

何より先生可愛いし。若い、手も柔らかいし……もっと交流を深めたいからね!


でもこれは先生から言われたからその子と仲良くしたいと思った訳じゃない。それだけ心配される程に愛されている神童と呼ばれる少女が気になって、私自身が喋ってみたいと考えたから。あと女の子だから。最後のは余計だが、それだけは忘れないようにしよう。


「千佳ちゃんの席はこの列の奥から2番目ね。先生は案内に戻るから、始まるまで座って待っていてください」

「はい、ありがとうございました。柚梨先生!」


可愛らしく手を振りながら入口へと戻っていく彼女を見送って、私は指示された席へと向かう。

隣の席、そして新入生代表の挨拶という2つの部分から、件の少女が一番端に座っていることを読み解きました。賑やかな子供たちの中を通り抜け、その端っこにいたのは。


「ど、どうしよう……こんなにいっぱいいる所で挨拶なんて、無理だよぉ……」


私の想像から遙か斜め上を飛んでいく、怯えるように周りをチラチラと確認する小動物のような少女の姿。目元が隠れそうな程に伸びた前髪の奥から見える、荒波が如く揺れる大きな瞳はうるうると水面のようで。


……神童っていうから漫画とかによくいる貴族っぽい高飛車系お嬢様みたいなの想像してたけど、想像以上におろおろしてるな。神童とはいえ人の子ということだろうか。

不躾な視線を向けていることがバレないように講壇へと目を反らしながら、私は隣のパイプ椅子へと腰掛けた。すると彼女が小さな声で何かを囁いているのが聞こえます。


「あわわ、お腹痛くなってきた。助けてお母さぁん……」


……全然普通の子じゃん。というか見ていて不安になっちゃうくらい母性本能をくすぐる子なんですけど! お持ち帰りしていいですか!? 駄目か。

しかしあまりの緊張でお腹を可愛く押さえている始末なので、何とかしてあげたい。というか可愛い子とは率先して仲良くなりたい。出来るのであれば痛みがなくなるまで彼女のお腹をさすり続けて、感触を――っと妄想している場合じゃない。早速声を掛けてみましょう。


「あの、大丈夫? 具合悪いみたいだけど」

「わひゃあ!?」


おう、いい声だ。どうやら私が隣に着席したことにも気付いていなかったのか、椅子の上で飛び跳ねるように彼女は驚いた。その動きによって前髪がふわりと翻って、丸くした目と共に顔全体が覗き見える。

その白い肌はとても綺麗で――


「――可愛い!」

「んひあ!? な、えっ……だ、誰?」

「っと失礼。思わず心の声が」


鎮まりたまえ私の心よ。緊張に押しつぶされそうな子を怖がらせてどうする。


「ごめんね、いきなり声を掛けちゃって。私は諸弓千佳、千佳って呼んでくれると嬉しいな」

「あ、うん……千佳ちゃん?」


少女は髪の間から見える上目遣いに合わせて、消え入りそうな声で私の名を呼ぶ。ふぉー! 私の天使たちは元気いっぱいで可愛いけど、こういう大人しい子も魅力的だ!


「結婚し――ごほんごほん。よければ貴女の名前も教えてくれるかな?」

「け、けっこん? えっと、私は室崎(むろさき)(あい)……だよ」

「なるほど、愛ちゃんだね!」


いい名前だ。その名の通り愛したくなるような……っと自重自重。入学式という行事に自然とテンションが上がっているのかもしれない。それに可愛い子に出会ったからって(たが)が外れすぎだぞ諸弓千佳!


「それで愛ちゃん、体調は大丈夫? 苦しそうだったけど」

「えっと、緊張しちゃって……その、どうしてか私、新入生代表の挨拶をしなきゃいけなくて、でも人前で何かするのが苦手なの……」


自己紹介を通して緊張がやや和らいだのか、愛ちゃんの声は徐々に大きくなって、言葉数も多くなっていく。思いを伝えてくる彼女に心の中で応援しながら、その姿をジッと見詰めていた。

目隠れの黒髪は癖があるのか所々外側へと跳ねていて、身長は大体私と同じくらいだろうか。姿勢は前屈気味なのも相まって少し暗い雰囲気にも思えるが……


「それでお母さんがやるからには、かまして来なさいなんて言ってさ。私が知らない人の前で話すの苦手だって知ってる癖に、勝手に挨拶することを承諾しちゃったんだよ! 酷いと思わない?」


……見た目に反して結構軽快なトークになってきたね。初めての人には人見知りしちゃうけど、少しでも仲良くなったら大丈夫なタイプということか?


「ふふっ。今喋ってる愛ちゃんなら、スピーチくらい大丈夫そうだよ?」

「えっ……や、やっぱり無理だよ。千佳ちゃんはニコニコしてて、すごく話し掛けやすいから……知らない人がいっぱいいる中でやるのは、し、死んじゃう」


死ぬな。大丈夫、意外と人は丈夫だから。

しかし弱ったな。柚梨先生のお願いも叶えてあげたいけど、彼女の不安も分かる。今会ったばかりの少女が応援の言葉を口にしようとも、そう簡単にいく問題はないだろう。

見た目は子供でも精神年齢高めな頭脳を働かせて、何とか策を練りますが――


『――新入生、並びに保護者の皆様。桜望(さくらもち)学園初等部の入学式へとお越しくださり、ありがとうございます』

「ぴゅい!?」


もはやタイムアップと言っても過言ではありません。開始の前口上を始めた抑揚少なめなアナウンスに混じって、鳥の鳴き声みたいな悲鳴が隣から聞こえました。


「ど、どどど、どうしよう……や、やっぱり私、お腹が……」


転生者だというのに幼い少女一人すら救えないこの体たらく。思わず歯軋りしてしまいそうです。

神童と呼ばれているくらいですし、いざ本番になったら上手くやるのかもしれません。マイクの前に立ったら性格が変わったようにラジオDJばりのマシンガントークを放つかもしれません。


でも最高の状況と共に、最悪の状況も同じく目に浮かんで。もしもこの華々しい始まりの日に皆の前で失敗をして、その恥ずかしさや後悔を引きずることになるかもしれない。下手したらトラウマとなって不登校になってしまうかも。

そう考えると何かしてあげたい、せめてその痛みを一緒に背負ってあげたい。出会ったばかりの少女にそんな想いを抱くのは変でしょうか。


「……いや、変な訳があるか」


私は私だ。自分のやりたいことを突き通してこそ、転生者だとか関係なく、諸弓千佳だと皆に胸を張って言えるんだ。だから私は式が始まる前に愛ちゃんへと顔を近付けて。


「――愛ちゃん、私に任せて!」


まだどうすればいいか考えが纏まっていない。しかし考えながらも、いつものように自信満々な笑みを浮かべてそう宣言した。


さあ入学式、ここからが勝負だ。私は私らしく、見切り発車で人生を楽しんでやるぞ!


……頑張れ、頑張れ私、何か思いつけー!!!!


【ひとこと説明】

諸弓恵もろゆみ めぐみ 現在:5歳

天使。お姉ちゃん大好きな子で、何でも出来る所をとても尊敬している。

幼馴染みの千草花とは親友。

お姉ちゃんとの交流を分け合い、譲り合える程に仲が良い。


リメイク前はやや影が薄かった(当社比)愛ちゃん。

目隠れという新しい設定を加えて、パワーアップしました。


次回、入学式。お楽しみに。

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