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帝国の剣  作者: 0343
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あっさりと大会議は終わった

評価、ブックマークありがとうございます! 感謝です!

仕事に復帰したら、忙しくて忙しくて…………早く物語を進めたいのですが、中々に時間が作れず、更新滞り気味で申し訳ありません。

 

 帰還の晩餐から一夜が明け、翌日もシンは朝一番に宮殿へと赴き、先日の面子で敵が取って来るであろう戦略や戦術に対する協議をする。

 その翌日に行われた大会議において、シンが皇帝直下の中央軍の内の二万の兵を指揮し、先陣となることが皇帝によって決定した。

 さらにその場にて三本足の鴉、シンが先の戦に於いて使用した旗である八咫烏が新たに帝国風に作り直された旗を、シンは皇帝より直に手渡されるという栄誉を授かる。

 シンは跪きながら旗を受け取り、先陣を任された栄誉と御旗を賜った栄誉について皇帝に感謝の意を示し、その場にて必勝を誓う。

 続いて、老ハーゼことヴァルター・フォン・ハーゼ前伯爵が、皇帝の傍に控え補佐する事が決まる。

 これは、戦の経験の浅い皇帝に代わり、実質的にハーゼ前伯爵が総指揮するという意味合いを持つ。

 他にも、剣術指南兼魔法騎士団団長であるザンドロック子爵が、新設された魔法騎士団と共に皇帝直下の遊撃部隊として本陣に控える。

 先鋒はシン率いる中央軍、左翼を纏めるのは太后の弟で国の重鎮の一人であり、南部諸侯の取りまとめ役であるエルリック・フォン・レーベンハルト。

 レーベンハルトは、昨年伯爵から侯爵へと位階を進めている。

 右翼は帝国西部の貴族たちが配されているが、本来のまとめ役であったディーツ侯爵家はとある失態により取り潰されている。

 これを纏めるのに、皇帝は新北東領を鎮撫するエミーリエ・ブルング伯爵を当てようとしたが、彼を動かすと北のソシエテ王国に対する備えが疎かとなってしまうために断念。

 代わりに、シンもその人柄を良く知るヴィッセル・フォン・シュトルベルム伯爵と、ウーゴ・プリモティック伯爵に指揮を執らせる。

 そして中軍には、皇帝の義父であるルードシュタット侯爵が指揮を執る。

 後ろ備えはヴァイツゼッカー子爵率いる小貴族が数家、そしてシンと皇帝がこの日の為に、秘密裏に築き上げた要塞こと、ケンブデン城に予備兵力を待機させることが決定する。

 会議自体は、然したる反対意見も無くすらすらと進んでいった。

 ただ、ルードシュタット侯爵が自身が率いる事になった中軍に、自分のシンパである貴族家を集めるために、多少意見したくらいであった。

 皇帝も、ここでルードシュタット侯爵の機嫌を損ねるのは拙かろうと、侯爵の好きなままに人選と陣変えを許す。

 その後の調整も終わり、一月後には予定戦場である帝国南部へと将兵を移動させることが決定し、大会議は終了した。

 その後、シンは皇帝といつもの第二応接室で、大会議の内容について話し合う。


「俺が先陣の栄誉を賜る事に対して、反対意見が出るものだと思っていたんだがなぁ……」


 そう言いながら首を傾げるシンは、どうも今回の大会議の内容が自分の思い描いていたのと違う事に、強い違和感のようなものを感じていた。


「帝国中に武名轟くお主に、噛みついたとしてもそれに勝る実績が無ければ、笑い者になる。ことは戦であれば、家柄や出自ではなく、強さがものを言う。その点に関して、今のお主に適う者はおるまい」


 逆に皇帝は、大会議が左程荒れずに済んだことに安堵していた。


「そんなもんかね? 貴族様ってのは、もっと権威や家柄なんかを重視するものだとばかり思っていたけどな」


 そのシンの言葉に、皇帝はそれはそうなのだが、と前置きをする。


「この負ける事の出来ぬ大戦。しかも兵力はこちらが少なく不利。先陣は確かに名誉ではあるものの、一番激しく敵とぶつかる場所でもある。怖気づいたとまでは言わぬが、気後れするのも無理なき事よ」


 そうかな、と頷きつつもシンは、どこかしら引っ掛かるものを取り除くことが出来ずにいた。

 そんな不安をかき消すように、シンは話題を変えてみる。


「それにしても、思っていたよりも両国とも準備に時間を掛けたりと、悠長なもんだな。もっとこう……一昨年前にルーアルトが攻めて来た時みたいに、こちら側の不意を突いて急進してくるものだと思ってたんだが……」


「それはあの時とは状況が違うとしか言いようが無い。ルーアルトが攻めて来た時は、帝国は反乱の傷跡癒えておらず、さらには東部はまだルーアルトから帝国に帰服したばかりであり、帝国内部にも不逞なネズミ共が巣食っており、帝国内部は混乱の極みと言っても良い状況であった。あの状況で、他国の正確な動向を知るというのは、難しかったのだ」


「ああ、そうだった。だが今回は、わざわざ創生教を使ってまでして、宣戦布告してきてくれたもんな」


「左様。それに向こうは、南方に向けていた兵を北へ動かしつつ、再編成しなければならぬ。さらには長期侵攻のためにラ・ロシュエル北部に、兵糧物資を集める必要もあるため時間も掛かるというもの」


 しまったな、とシンはパチンと指を鳴らそうとして失敗した。

 それを見ていた皇帝と目が合うと、シンは照れ隠しのように、また自分が少数の兵を率いて、北部を荒らせば良かったかもしれないと笑った。


「いやいや、それは如何にお主とて無理であろう。ロベール二世は馬鹿では無い。あの時は南方に目が向いていたからこそ隙が生じたのであり、もう二度と同じ失敗は繰り返さないであろうよ」


「やれやれ、もうこうなっては真正面からぶつかりあう他は無いか…………ところで、ルーアルトとハーベイの二国は、どう動くかな?」


 それについて面白い話がある、と皇帝は笑う。


「総大司教が、力信教徒のみならず、星導教徒にまで改宗を迫ったがために、ルーアルト、ハーベイ共に素直に便乗して我が国を攻めることが出来なくなった。何故なら、ルーアルト王国には星導教の総本山があり、星導教徒が多く、ハーベイ連合は元は商人たちが建国した国であり、商人は導きの神として星導教に帰依している者が多いのだ」


「なるほど、つまりは両国の信徒たちの怒りを買ってしまったということか……こいつは傑作だぜ。これならば、こちら側が派手に負けなければ、両国も大したちょっかいも掛けて来ないかもな」


 楽観は出来ぬと、皇帝は首を振る。


「取り敢えず両国に対しては、キャラハン伯率いる東部の軍で対応するが、両国が本気で攻めてきた場合、東部軍だけでは支えきれまい」


「なまじ大国であり、他国と接する領地が多い故に厳しい状況となってしまっているな……やはり、今回もゴリ押しの短期決戦しかないか……そうなると、損害は覚悟してくれよ」


 そう言いながら俯くシンの目に一瞬、苦悩の影が宿る。

 シンが今回率いる事となった皇帝直下の中央軍は、シンの考案で編成から兵装、さらには訓練方法までも改めた、肝入りの軍である。

 これを戦でズタズタにされてしまうと、この大改革の意義を問われかねない。

 また、皇帝直轄の中央軍の損耗は、皇帝の発言力の低下にも繋がる恐れが大きい。

 だが勝つためには、この中央軍をとことん使い潰さねばならないだろう。


「シン……やはり二万では足りぬか? 余の率いる本陣からさらに兵を……」


 いや、とシンは皇帝の言葉を手で制した。

 シンは自分の将としての能力を高くは評価していない。

 寧ろ、平凡か並み以下であるとさえ考えていた。


「これ以上増やされても動かせる自信は無い。人ひとりの指揮で動かせる兵の限界は、大体一万人程度が関の山。今回はその倍を率いるんだ。中級指揮官を増やすという手もあるが、やはり全体としては動きは鈍くなってしまうだろうしな」


 今回シンは二万の兵を率いるが、皇帝に頼んで副将として、ヨハン、フェリス、アロイスの三人をつけて貰っている。

 さらにその三人にそれぞれ五千人ずつを指揮させることとし、自身も直接指揮するのは五千人としている。

 シンとしては、この五千人ですら手に余るかもしれないと、内心でびくびくと怯えているほどであった。


「取り敢えずは計画通り、このまま行こう。後はその場その場で、臨機応変に対処するしかない」


 シンはその場で身震いする。

 想像しただけで、夜も寝れない程に恐ろしいのだ。

 またしても自分の策に、帝国の命運が掛かっている。

 絶対に失敗は許されないという現実が、シンの全身に重くのしかかって来る。

 果たして自分は戦が始まるまで、この重圧に押しつぶされずに済むだろうかと、シンは不安を胸に抱え一人恐怖した。








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