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弟が作った世界でハーレム人生   作者: 永遠の28さい
◆第五章◆ 禁忌の吸精少女
82/126

17 ナカマ

遅くなりました。五章はこれで完結です。



 今、王宮内は忙しさを極めている状態だった。国王陛下の退位宣言式に王太子殿下の即位の儀、エメルダ様との婚礼の儀に旧三公爵の領地問題、妖精族との外交問題に新しい宮廷議会員の選定、王都守護兵団の再編成に周回船事業の立ち上げ。王宮に努める文官たちが朝早くから深夜に渡って慌ただしく走り回っている状況だった。


 何故俺がその状況を知っているかと言うと、俺もその走り回る文官の仲間に入れられているからだ。

 ナヴィス殿の要請(めいれい)で“鎧の算術士”の出動である。各案件の予算枠と想定経費を突き合せ、矛盾や不正が無いかチェックし、問題なければ調達担当の部署に資料を届ける。延々とこれを繰り返している。既に万単位の金貨を支出する計算になるが、書類はまだ山積みの状態になっていた。


 奴隷たちはヨーコに預けた。ナヴィス殿に確認して、一時的に奴隷の主をヨーコにしてもらっている。たぶん俺も暫く帰れないと思うので、前みたいに奴隷達を餓死させないようにだけはしてきた。


 「…“算術士”殿、交代の時間でござる。休憩室に戻られよ。」


 交代要員の文官に呼ばれ、ヤレヤレと言った表情で椅子から立ち上がり、こった肩を揉みほぐしながら部屋を出た。お日様1つ分だけ休憩を取り、また数字とのにらめっこ。精神的にきつく俺はかなりストレスを溜めているようでベッドに体を預けても気持ちが休まることはなかった。


 「エルバード殿、ヤグナーン侯爵(・・)がお呼びです。至急会議室へ来られたし。」

 伝令兵と思われる兵士が、休憩室中に響き渡る大声で俺を呼び出した。…そんな大声出さなくても聴こえるっちゅーに。

 俺は疲れた体を起し、休憩室を出た。伝令兵の案内で会議室に入る。


 「お久しぶりです、エルバード様。」


 聞き覚えのある声がして、疲れて底に沈んでいた意識を呼び起こし、会議室にいる女性(・・)たちを見た。


 「あら、エルバード殿!それほど経っていないのに随分と雰囲気が変わったのではないですか?」


 もう一人の女性も嬉しそうな声をあげる。


 「フェルエル殿…それにライラ殿も。」


 黄道十二宮の支配人フェルエル。カルタノオの奴隷商人ライラ・バジル。可愛すぎる二人の笑顔に俺は溜めてたストレスが一気に霧散した。


 「エルバード様、何でも此度のご活躍で称号を頂くとか。」


 支配人が含みのある笑顔で俺に声を掛けた。その笑顔は立ち位置的に俺にしか見えないもので、明らかに何かを言いたそうな顔である。二人の向かいにはヤグナーン伯爵が座っており、俺にこっちへ来るような手振りをしていた。


 「殿下がお前を評価して称号を渡すと言われておるのだ。いい加減諦めて受け取れ。」


 「称号は功績あるものに出すものです。私は何の功績もございませんので、頂くわけにはまいりません。」


 俺は再び固辞した。


 “この世ならざる者”の俺にとって称号や二つ名を得てしまうと創造神からのペナルティとして、人外な力を手に入れてしまう。既に3回呼び出されている俺は、現時点でかなりの膂力を手に入れている。これ以上は自分の制御ができなくなるかも知れないのではっきり言って怖いのだ。


 それに、この称号は王家から俺に対しての“口止め料”だ。

 これをやるから、貴様エメルダ嬢から手を引けって言ってるようなもんだ。これを俺が受け取ってしまっては、完全にネトラレ感を押し出してしまう。


 「…幾ら殿下やエメルダが何も思わなくてもな、周りにいる者はそうではない。勝手に想像を膨らませ、やがてありもしないことをでっち上げて讒言をするのだ。それを回避するにはお前がおとなしく拝領するしかないぞ。」


 ヤグナーン伯爵に言われ、俺は反論できなかった。ライラ殿も俺に受け取るように勧めてくる。フェルエル殿は何故かニヤニヤ笑っているが。


 「…わかりました。この件に関してヨーコと確認したいことがございますので、明日までにご返事いたします。…それで、私を呼ばれた理由は何でしょうか。」


 支配人とライラ殿が居る時点で俺が呼ばれた理由は称号の件ではない。想像はつくのだが、ちゃんと説明してもらおう。


 「うむ、2点だ。1つは例の干し肉販売事業のことだ。フェルエル殿、ライラ殿にも資金提供してもらうのだからしっかり説明するように。…もう1点は四ノ島のウェイパー殿への使者の件だが、エルバード殿を正使、フェルエル殿を副使とする案がカイト殿…ラスアルダス公爵から出され、承認された。」


 カイト君、後で≪念話≫で-O-HA-NA-SHI-しようか。


 「ですが、我らは無官の身。そのような者が使者としては…」


 「だから、称号を受け取れと言っておる。ついでに言うとフェルエル殿も此度の件で商号を頂くことになっておる。…無官ではないのだよ。」


 …わかった。これ、全部カイト君の差し金だ。自分だけ神界に連れて行かれた腹いせにやったんだ。

 俺は報復することを心に誓い、伯爵の話の続きに耳を傾ける。


 「四ノ島の港町グーパは、半神族全ての種族との外交窓口になっている。その町の領主がウェイパー殿だ。」


 ほうほう。その人に俺と支配人で会いに行くわけだ。…何しに?


 「我々ヒト族の周回船の港への接岸許可と貿易の許可を貰って来るのだ。」


 それは、お役人、もしくは貴族のお仕事でしょう。一介の傭兵やホテルの支配人の仕事ではないでしょう。相手にとっても失礼になるのでは?


 「…だが、今王宮では忙しすぎて使者に出せる人材がいない。」


 じゃ、止めればいいのに。


 俺は四ノ島に行きたいという想いは完全に押し込め、どうやれば断れるかだけを考えていた。だが、まだ≪情報整理≫は答えを導き出して来ない。


 「そこで、王家から直々に称号、商号を頂く二人なら十分にその役目を果たしてくれると考えて、二人に命じて(・・・)いるのだ。」


 支配人は、この回避不可の命令を受けてどういう表情をするのかを見たくてニヤニヤしてたんだ。…ちくせう。








 ヤグナーン伯爵との一方的な説明が終わり、俺は支配人とライラさんの3人で部屋に残された。そのまま二人に詳細を説明しろとのことなので、≪異空間倉庫≫からジャーキーを取り出し、試食してもらいながら説明をした。

 加工用の肉の仕入れについては、ライラさんのほうで廃棄奴隷を集めて牧場経営を行う方針で進める。資金は、ラルクルス商、ザックウォート商、フェルエル(アルタイル商)で出し合い、ヤグナーン領内に牧場を作ることで決まった。早速明日よりライラさんに活動してもらう。


 支配人(フェルエル)には俺と一緒に四ノ島への大使として行くことになっていたので、夜打合せを兼ねての食事会をすることを約束して、この場は解散となった。

 そして会議室を出たところで、待ち構えていた兵士に拉致されてそのまま決済書類の山が待つ部屋へと連れて行かれた。


 俺の目には心配そうに見送るライラさんとニヤニヤしたままお辞儀をする支配人が焼き付いた。





 夕方、お日様7つ分になって、ようやく計算作業から解放され、本日作業分の給金を貰って王宮を出た。

 王宮の門の前では、俺に手を振って迎えるサラと、その隣で小さく縮こまっているカミラが待っていた。俺は軽く手を振りかえして二人の下に向かう。…なんとなくカミラの様子がおかしいのだが。


 「お疲れ様です、ご主人様。」


 そう言って、バーバリィの手綱を俺に渡す。バーバリィはヤグナーンに置いて来ていたのだが、伯爵が気を利かせて連れて来てくれたのだ。

 俺は久しぶりにバーバリィに跨り宿に向かって歩きながらカミラに話しかけた。


 「どうした、カミラ?」


 カミラはずっと肩を落として下を向き、俺と目を合わせることもできずにただバーバリィの後を付いて歩くだけだった。


 「…あの、ご主人様。」


 見かねてサラが声を出した。


 「カミラちゃん、ちょっとはしゃぎ過ぎちゃって…ご主人様から頂いた服を…。」


 そう言ってサラはカミラを俺の右側に移動させて左脇を指さした。見ると脇下からまっすぐ左ひざ辺りまで綺麗に破れており、歩くたびに下着が見えている。カミラはそれを右手で一所懸命抑えながら歩いていた。


 「何をしていたの?」


 こんな破れ方をするようなことっていったい……?


 カミラは俯いたままだったので、代わりにサラが答えた。


 「…森の中で木から木へと飛び移って遊んでいました。それで木の枝が引っかかって…。」


 なるほど。


 「あの、カミラちゃん、この服を頂いてホントに嬉しそうでした。それで、いつも以上にはしゃいじゃってて…。」


 「わかった。」


 俺はそれだけを言って、前へと馬を進めた。サラとカミラが徒歩で俺について行く。

 宿に着いた俺は、バーバリィを厩につなぎ、部屋に戻ってからようやくカミラに声を掛けた。


 「服を脱いで。」


 カミラは俺とは目を合わせず、青ざめた表情で床を見ていたが、言われたように白いローブを脱いだ。

 上から下までひと繋ぎの服なので脱げば下着だけになってしまう。だがカミラはそこから下着も脱ぎだしてしまった。周りにいたヨーコや他の奴隷達が慌てだした。


 「ちょ、ちょ、待って!何で下着まで脱ぐの!?」


 俺は慌ててカミラの動きを止めたが、中途半端に脱いでる下着姿はかなりの破壊力で俺に襲い掛かり、俺は目をそむけた。そむけた先にはヨーコが居て、真っ赤な顔をして怒髪天の視線を向けている。


 「カ、カミラ!俺は破れた服を修繕したいから服を脱いでって言ったのに!何で下着まで!?早く履いて!…ベラ!そっちに着換えの服はないか!」


 俺は我関せずで掃除をしているベラに声を掛けてカミラの着換えを持ってこさせた。カミラは俺が慌ててる理由がわかってないのか、パンティに手を掛けた状態で呆けてる。

 俺は照れを隠すように脱いだローブを拾い上げカミラに背を向けて破れた箇所を確認しようと必死で集中した。そこにエフィがやって来てニヤニヤしながら小声で囁く。


 「照れるご主人様(・・・・)って可愛らしいです。」


 普段は“エル”と言う癖にこういうときはワザと“ご主人様”と呼ぶエフィ。そしてそれに乗っかってヨーコも囁く。


 「あら、どうしてそんなに照れるのかしら?普段から私たちの裸を見てるでしょ?」


 言いながら胸元を強調して見せつけてくる。…エフィ、お前のはただの洗濯板だ。

 だが一度照れてしまうとなかなか平静を装えないものだ。「うるさい黙れ!」と言うが、恐らく顔は赤いのだろう。俺はローブを抱えて寝室に逃げ込んだ。


 暫く心を落ち着けるように深呼吸を繰り返し、ローブを見る。引き裂く様に布が破れており、縫い合わせても跡が残る感じだ。


 「スキルで直そう。」


 俺は余っている同じ布を取り出し、≪魔力修復≫を使って霧に変える。その霧を敗れた布に押し当て修復をする。


 扉が開く音が聞こえ、音を立てないように誰かが近づいてきた。もちろん俺は誰が来たかはわかっている。その子は俺の真後ろまで来て立ち止まり、静かに腰を降ろした。


 「…主……。」


 申し訳なさそうな声で俺に話しかける。


 「…お前は木々の間も跳び回れるんだな。でもこのローブは体に密着しない服だから、激しく動くには適していない。」


 俺の声に返事はない。


 「ひと繋ぎの服だから返って動きにくいかもな。だったら上下のつなぎにするか?」


 ブンブンと首を振る音が聞こえた。…今の形がいいのか。でも動きづらいぞ?


 「そ…その服がいいのです。あ、主に…初めて頂いた…その服が…。」


 俺は手の動きを止めた。


 確かにこの服を渡したときの喜び様は他とは異なっていた。たぶんこれまでプレゼントを貰ったことが無かったのかも知れん。


 「人からモノを貰うのは初めてか?」


 「…うん。」


 「じゃあ、もっと大切にしないと。」


 ガサッと音がして俺の腰のあたりの服を掴まれた。


 「…ごめんな…さい。


 俺の服を持つ手は少し震えてる。


 「別に怒ってないよ。元々みんなも破れてもいいように何着か作っているところだし。着れなくなったら新しいのを渡す予定だったんだ。」


 またブンブン首を振る音が聞こえる。


 「それが…その服が…いいのです。」


 「…わかってるよ。だからこうして直してるんじゃないか。」


 俺は修復を再開し、破れた部分に霧を刷り込んでいく。布は綺麗に復元(・・)され、膝下あたりまであった破れは元通りになった。


 俺はローブを両手で広げ、他に破れたところがないか丁寧に確認する。少し汚れてはいるが破れはないようだった。


 「…さ、これで直ったぞ。」


 俺は振り向こうとしたが、後ろからフワリと手を回されしっかりと首に巻き付いた。

 柔らかく白い肌。しかしこれは俺が≪身代わりの表皮≫で作り上げた偽りの肌の色。透き通った青い肌の腕が俺を柔らかくしっかりと抱きしめる。そして彼女の両足が俺の腰に巻き付き、背中に自分の体を乗せた。


 あ、あれ……?


 首に巻き付く腕には衣服が見えない。腰に巻き付く両足は素足…。加えて背中にのしかかる2つのポッチ。この感覚は以前にも味わっている…。


 「カ、カミラさん?どうして服を着てないのですかな?」


 カミラは何も言わずギューと抱き付いた。く、苦しいですよ。


 「カ、カミラ?」


 俺は両手両足でぐいぐい締め付けるカミラを引き離そうとした。


 「主~…。ウチ、ずっと主の奴隷になる。」


 俺の動きが止まる。


 俺がずっと悩んでいること。カミラだけではなく、全員に対して。



 彼女たちをずっと俺の奴隷とするのか。



 一生奴隷のままでいることが彼女達の幸せなのか。



 奴隷解放すれば幸せになれるのか。



 「…カミラがそうしたいのなら、ずっとここにいるといい。…でも、奴隷から解放されたいと思ったのなら…その時はちゃんと俺に言ってくれよ。俺は…」


 「わかってる!」


 カミラはまたギューと抱き付いた。背中の弾力が更に強く押し付けられる。加えて俺の鼓動が早くなり、体温の上昇をはっきりと感じ取った。





 …カミラのスキルが発動しているんだろうなぁ。





 俺はリビングにいる子達に助けを求めた。


 「ヨーコ!サラ!ちょっと来てくれ!」


 俺の声に反応し、ヨーコとサラがやってきた。そして俺の様子を見て動じる様子もなく、


 「…アタシ、お散歩行って来る。」


 「あ!ヨーコ様、お供します。どうせなら全員で。」


 と言って、出て行ってしまった。






 …どういうこと?


 黙認されたってこと?





 ≪念話≫で真意を確かめようとしたが、逆に怒られそうな気がして止めた。


 「主~…。」


 背中でカミラが甘い声を出してくる。体が火照り思考が覚束ない。



 「…ココに…ベッド……あるよ。」



 この一言で俺の理性の糸は切れてしまった。














 ライラさんと支配人が訪れるまでの時間。



 俺はカミラの持つ≪八百万(やおろず)の性技≫の能力を全身で味わった。












 「ご主人様、フェルエル様とライラ様がお越しになりました。」



 サラの声で俺は目が覚めた。


 見回すと既にカミラはおらず、サラを見ると少し頬を赤らめている。…ああ、俺、ハダカだった。

 サラから着換えを受け取り、身だしなみを整え、リビングに向かう。リビングにあるテーブルには既に支配人とライラさんが座っていた。


 「…また一人増えてますね。」


 ライラさんは少し頬を膨らませて言ってきた。俺はカミラを見つけて彼女を見る。何故か満足げな顔。その表情を支配人が見てニタリと笑う。…完全に気づかれたわ。だってフォンが俺の匂いを嗅いでるし。




 支配人とライラさんを交えての夕食会が始まった。既にベスタさんは伯爵の家の方に移動しており、今この席にいるのは全員俺の仲間。…全員ナカマではないけど。


 支配人がしきりにカミラの話題に向けようとするが、俺が必死でそれを阻止して違う話題に変え、そのやり取りを見ているヨーコとサラが頬を赤らめているのを見て、とうとうライラさんが気づいてしまった。

 ケダモノを見るような目で俺から少し距離を取る様な仕草をした。ベラがそれを見つけて小声で何かを言うと、ライラさんは顔を真っ赤にして俯いてしまっていた。


 ベラ、お前何を言ったんだ?


 お酒も入り、みんなの陽気も上がったところで、ライラさんが全員を前に真面目な話をし出した。


 「さて、皆さんはこれから四ノ島へ行くことになっているのですが、四ノ島を統べる半神族について、どれくらいご存知ですか?」


 ライラさんの顔はお酒で少し上気しているが、呂律もしっかりしている。大事な話のようなので、俺は黙っていた。


 「はい、彼の島は奴隷に対しての感情が最も惨いとグランマスターから聞いた事があります。」


 サラが手を上げて答える。こちらはかなりご機嫌のようだ。


 「エルバード殿、サラちゃんの言う通りです。あの島では生活の糧として奴隷になることはありません。困窮者は部族内で助け合いしっかりと面倒見るほど結束力は硬いです。…逆に部族の掟や犯罪を犯した者には徹底した処罰を与えます。それがあの島にいる奴隷です。」


 ライラさんの言葉に辺りがシーンとする。サラは驚きの表情のまま固まり、フォンは尻尾が垂れ下がり、エフィは変顔状態で顔色を悪くし、ベラは…我関せずか、カミラも俯いていた。


 「つまり、サラちゃんたちは四ノ島では“犯罪者”と見られるのです。」


 ライラさんは全員を見回してからもう一度俺を見た。


 「…どうしますか?彼女たちを連れて行きますか?彼女たちが危険な目に会う可能性もあります。」


 俺は考え込んだ。やはり奴隷の扱いは地域によっても国によってもお異なる。どんなに笑顔を振りまいても所詮は奴隷と蔑まれる時もある。奴隷達にとっては心に大きく傷を付けられる場合もあるのだろう。そんな可能性を無視して俺は彼女たちとずっと一緒に世界を回ることができるだろうか。


 彼女たちはまだ若い。多感な少女たちだ。無理をして彼女たちの未来を奪うのは俺の本位ではない。

 ここはライラさんに預け…。


 「ウチは…ついて行きます。」


 その声に全員が目を向けた。



 カミラが目を潤ませながらも真剣な表情で俺を見ていた。


 「ウチはずっと主の奴隷になると申し上げました。こんなことで主と離れ離れになっていては…主のお側に居続けることはできません。」


 その言葉にサラは得心がいったようで、にっこりと微笑んだ。


 「私もご主人様について行きます。…思えば、ご主人様といる事が当たり前になっておりました。…奴隷は主の指示に従うことが基本です。ですが、私たちのご主人様は普通の主ではありません。目移りが多くて、美人にだらしなくて、常識持ってなくて…。」


 おいおい。ひどくないか、サラ?


 「私の尻尾…好きみたい……だし。」


 フォンは俺に尻尾を振り振りしながら付け加える。…いや確かに好きだが、それ以上に好きなのはその大玉だよ?…言わないけど。


 「お前だけ妾のスキルに抵抗できる変態だし!」


 腕を組んで偉そうに言うエフィ。確かにお前の≪3拍子のそろった姫≫による強制拒否権は俺には効かない。…が変態は余計だ。


 「神獣様を前にして動じぬその心の臓の強さ…呆れるほどです。」


 いやいやベラさん、あん時のことまだ引きずってんの?


 俺の五人の奴隷は口々に悪口に近い内容を言って嬉々とした表情になる。


 「何より、その“人外のチカラ”を持っているのに放っておいていいはずがありません。」


 サラは俺の前にやってきた。そして静かに正座をし、手をついて頭を下げる。


 「…御主人様。どうか我ら五人も同行することをお許しください。」


 フォンもエフィもベラもカミラもサラの後ろに控え、同じように頭を下げた。




 …ここまでされて連れて行かないわけにはいかないでしょう。というか、俺もこいつらと離れ離れというのは嫌だし。


 「…わかった。みんなで行こう。」


 サラ達は飛び上がって喜んだ。ヨーコが俺の隣に来て何か言いたげに肘でつついて来た。支配人は完全に恍惚のニヤニヤ顔。ライラさんはヤレヤレという表情で。


 「エルバード殿、しっかり彼女達を守ってくださいね。ヨーコさんも。」


 ライラさんの念押しに俺とヨーコは深く頭を下げてその決意を示した。



 「カミラ!」


 俺はカミラを呼ぶ。


 酔っているのか覚束ない足取りで俺の側に来る。そのままの勢いで抱き付こうとするが、それを躱して座らせる。


 「お前の兄、ベレット殿の行方はまだわからない。だが、生きていることはわかっている。この先新たな情報を得て捜索できるかもしれん。だが今は俺の指示に従ってもらうからな。」


 カミラは大きく肯き。


 「主の指示に従います。」


 と返事した。


 「カミラよ。かつてのお前はともかく、今はこうして仲間がいて、主がいて…もう一人ではないのだ。そのことを忘れるなよ。」


 カミラは俺の言葉に感涙し、俺の上げた服を愛おしそうに両手で撫でていた。その仕草は俺にその愛情を十分すぎるほどに伝えてきた。


 ヨーコが隣で少し呆れた表情で俺を見ているが気にしない。


 フォンがカミラに向かって「ナカマ」と言っているが気にしない。


 俺はカミラの顔を引き寄せ、口づけをした。その瞬間にヨーコに往復ビンタをくらい、その場で説教されたのはしょうがない。




第五章:完


五章は一番事前プロットが少なく、書き上げるのに時間を要してしまいました。

こんなに苦労するなら前もってストーリーをしっかりプロットしておけばと反省します。

次話からは六章ですので、新しいヒロインが登場します。当然のごとく半神族の女の子です。

あと、このあとプロローグから誤字脱字修正、指摘修正をかけていきます。ストーリーに全くの影響はありません。


ご意見ご感想をいろいろと頂きありがとうございます。

これからもがんばって最終章まで書き上げます。

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