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弟が作った世界でハーレム人生   作者: 永遠の28さい
◆第五章◆ 禁忌の吸精少女
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16 伯爵の提案

すいません、仕事が忙しくて全然執筆できませんでした。

ブックマーク300人、本当にありがとうございます。


 ベッドに横たわる老人の姿。前世の知識を持つ俺には“鬼”にしか見えない。しかし、その形相に恐怖を植え付けるようなものはなく、むしろ穏やかに見えている。恐らく魔人族の1種族なのだろうが、俺は種族の知識が乏しいため、はっきりとは分からなかった。故に老人から見ると俺は警戒心を持っているように見えたようだ。


 「…別に警戒しなくても良かろう。それとも“鬼人族”を見るのは初めてか?」


 老人の声は少し弱々しく、相手を威嚇するような声ではなかった。

 俺は自分の態度に問題があったと感じ、すぐさま姿勢を正して貴族風の礼をする。


 「失礼致しました。仰る通り“鬼人族”を見るのは初めてで、思わず身構えてしまいました。ご容赦を。」


 俺は礼をした頭を上げるとベッドに近づきもう一度声を掛ける。


 「ここに座っても宜しいですか?」


 俺は、ベッドの横にある椅子を指し丁寧な口調で質問した。


 「うむ…。」


 老人はゆっくりと肯く。俺が椅子に座るとベッドの反対側にいる医師風の男が会釈をした。耳の形から耳長族(エルフ)とわかる。


 「この方は心の臓を患っております。会話はできるだけ手短に。」


 そういうと、席を立ち扉の方へ向かった。扉の前でもう一度俺と老人に向き直り会釈をして扉から出て行く。

 バタンと閉まる音を合図に俺は視線を老人の方に戻した。


 「…初めまして。エルバードと言います。」


 「…アオビと申す。ご覧の通り、歳のせいで体を動かせぬ身じゃ。」


 「ずいぶんお歳を召しているようであられますが…。」


 「フフフ。300を超えておる。…恐らく魔人族の中でも最長であろうよ。」


 「では、いろいろとご存じなのでしょうか。私にその一端をお聞かせ頂ければと思います。」


 「言うか言わぬかは、儂が判断するぞ。」

 老人の口調が少し強くなる。


 「ありがとうございます。それで構いませぬ。」


 「…何が聞きたい?…ああ、そうじゃった、ベレッタの小僧の話じゃったな。」


 小僧…。確かにこのご老体からすれば小僧なのだろう。


 「はい。先日、王都守護騎士団第四師団によって東の森の中で捕えられておりましたが、何者かの手助けで逃亡致しました。…手助けした者、逃亡先にお心当たりがあればと思いまして。」


 老人は俺の瞳の奥をのぞき見るような目をした。皺だらけの鬼の顔の唇の端が吊り上る。


 「あの小僧の足取りを追って何とする?」

 俺は正直に答えた。


 「ベレッタ殿の妹を預かっております。ここ数日のごたごたで兄と妹が別れ別れになってしまいまして。」


 老人は表情を変えずにじっと俺を見た。恐らく何らかのスキルで俺の心の中を覗いているのではないかと思われる。

 やがて老人は瞬きを一つして視線を別の方向にむけた。


 「……ふむ、あの時の赤子がのぅ……。お主は、あの小僧の妹の『呪い』は知っておるのか?」


 「…はい。私は彼女の全てを受け入れ、主となりました。」


 アオビ老は俺を睨み付けた。脅すような視線ではなくその真意を問い正すような視線である。


 「彼女は悪徳奴隷商に捕まり、不正に奴隷へと落とされていました。解放することもできましたが、私が懇意にする商人に判断で他の不正に奴隷に落とされた者も含めて奴隷のままで預かっております。私は彼女と共にベレッタ殿を探すためにも、彼女と奴隷契約を致しました。」


 一気に説明し、俺は息を吐いた。アオビ老は俺の言葉に少し肯いていた。


 「…確かに、この王都では一度奴隷に落ちた者の扱いは厳しい。今しばらくは奴隷のままのほうが良いのかも知れぬ…。」


 老人は顔を少し上げ、遠くを見るように天井を見つめた。


 「儂はな…一族から追われた者を保護し、奴隷にその身をやつさずとも生活できるよういろいろと援助しておる。ベレッタの小僧もそうじゃった。…あ奴には三ノ島で情報収集する仕事を斡旋したんじゃが…それが過ちであったわ…。」


 まるで懺悔をするかのように、アオビ老は話を始めた。


 「後でわかったことじゃが、情報の提供先は“ハウグスポーリ”。ドワーフ王の非公式専属機関じゃ。」


 俺の鼓動は高鳴った。何度も聞いた名。


 「最初から相手が“ハウグスポーリ”だと知っていれば、紹介などしなかったんじゃが、それに気づいた時には、あ奴は三ノ島で活動しておった。」


 …なるほど。ベレットはハウグスポーリの雇われ諜報員だったのか。だが、俺達に初めて会った時にはそのハウグスポーリに追われていた。しかもベレットはハウグスポーリの事は知らなかった…。いや、知らないふりをしていたのかも。


 「アオビ老、彼はハウグスポーリの事を知っていたのでしょうか?」


 アオビ老は首を振った。


 「恐らく知らぬであろう。だから今回の事件でも何も知らずにハウグスポーリに捕えられ……。」


 「では、ベレットを連れて逃げた連中とは?」


 アオビ老は少し考えていたが何かに思い当たったようだ。傍にある小物入れに手を伸ばし、中をごそごそと漁った。そして濃い青色をしたバッジを取り出し、俺に渡した。


 「…これは?」


 「それは、妖精族の中で現王アゼットとは異なる派閥、“エリミエールの野”という組織のバッジじゃ…お主にやろう。あくまで可能性の1つじゃが、ベレッタの小僧は彼らによって救出されたやも知れぬ。それを持って儂の名を出せば、ある程度の対話は可能じゃて。」


 俺は渡されたバッジを見つめた。頭の中では≪情報整理≫が目まぐるしく回転している。そして1つの予測を導き出した。


 「私は一ノ島、二ノ島でいくつかの事件と対峙して来ました。…実は、そのいずれにもあのドワーフ王の影がチラついています。もしかして奴は世界を牛耳ろうとしているのでは…ないでしょうか。」


 アオビ老は目を細めて俺の顔を見た。俺は真剣な表情を見せた。だが、それ以上アオビ老はドワーフ王のことについては何も言わなくなった。

 俺はアオビ老の無言の意味を考えた。それは自分の目で確かめろということなんだろうか。


 「そろそろ医師を呼んでくれぬか。…ああ、わかっておると思うがここでの話は他言せぬようにな。」


 「…心得ております。」


 俺は一礼し、扉の外で待つ医師をを呼び、入れ替わりに外に出た。外ではフォンが心配そうな顔をして待っていた。


 「…ご主人、カミラは…誰かに返すのか?」


 フォンの質問は全く勘違いの質問なんだが、よっぽどの心配をしたのだろう。既に涙目であった。


 「大丈夫だ、フォン。カミラはみんなと一緒に俺の奴隷として居てもらうから。」


 今にも泣きそうなフォンを抱き寄せて返事をすると、フォンの尻尾がピコピコと嬉しそうな反応をした。…やっぱりフォンもカミラのコトは心配なんだな。


 俺は、フォンの頭を撫でて気持ちを落ち着かせ、建物の外で待つサラ達のもとに戻った。






 アオビ老とは、正当な扱いを受けにくい魔人族に対して金を得る術を提供し、生き残る手助けをしている鬼人族の老人。その齢は300を超えており、過去の出来事にも精通しているらしい。

 もっといろいろ聞きたいことがあるのだが、何せ高齢、長時間の対応はしてくなかった。また来よう。

 俺は今日の所はベレットの事だけで納得し、みんなを引きつれて宿に戻った。






 「エルバード様、お帰りなさいませ。」


 宿に戻った俺達をベスタさんが迎えてくれた。まだエフィ、ベラ組が戻って来ていないようなので、≪念話≫で場所を確認した。


 (エフィ、今どこにいる?)


 (…港にいる。)


 何か食べてるんじゃないかという期待を込めていたのだが、以外にも普通の返事だった。


 (そこで何してるんだ?)


 (…エルフの旗を掲げた船がある。)


 エルフ。


 エフィの一族だ。今はドワーフ族の配下と成り下がっている一族だが、元々は誇り高き森の民。エフィは何かしらの感傷に浸っているのだろうか?


 (エル!今、妖精族は例の事件で入出国ができなかったのではないか?)


 エフィの言っていることは正しかった。だが、恐らくその船はラルクルス商が用意した奴隷船。

 今回の事件で捕えた妖精族は他にもケット・シーやクー・シーなど70人近くいる。この者たちは『犯罪奴隷』として強制判決されたため、ラルクルス商を通じてエルフの一族に買い取ってもらうことになっていると聞いた。ドワーフ共は、更に強い≪隷属≫で強制的に奴隷化しており、直接ドワーフ族と外交交渉をする道具として利用されるそうだ。


 (エフィ、その船にはあまり近づくなよ、間違って船に乗せられたらそのまま犯罪奴隷として三ノ島に連れて行かれるからな。)


 (わわわ…わかった。)


 (それと、一旦ベラを連れて戻って来い。)


 (わわわ…わかった。)




 …おちょくられたんじゃないだろうかと思いながらも、≪念話≫を切り、ベスタさんと会話を続ける。


 「ヤグナーン伯爵様が到着されました。私の主様は今ご挨拶に向かわれてます。エルバード様も全員連れて、ヤグナーン伯爵屋敷に来るよう言われておりました。」


 とうとう来たか。意外と速かったな。これでエメルダ嬢との話がまとまり、ナヴィス殿も次の仕事に取り掛かれる。

 これから忙しくなりそうだ。それなら、今のうちに奴隷達にこれ(・・)を渡しておこう。


 俺は彼女たちに渡すプレゼントを準備して待っているとエフィとベラが戻ってきたので、全員に衣服を渡した。


 サラは薄い桃色で染められた生地を使い、動きやすさを重視して袖なしシャツに半パン。肌が露出する部分は膝当て肘当てで補う恰好で、イメージ的には“くノ一”。


 フォンは青色の服に、魔力を込めるときつく締まる胸当て。格闘系のスキルの補助になるよう蛇腹型の手甲、脛当てを着けた格好で“狩人+武闘家”。


 エフィは本人の意向もあって、黄色を主体とした給仕服。長い耳を隠せるように色の合わせた帽子をかぶらせた。当然イメージは“メイド”


 ベラは紫と黒の合せ模様を施した軽鎧。腰の部分は長めのスカートで鎧に合わせた紫と黒の模様にしている。竜化しても邪魔にならないようい背中の部分は羽を出す隙間を用意している。当然イメージは“竜騎士”だ。


 カミラは白を基調としたローブ。極力肌を露出を抑え、カミラ本来の青い肌が見えないようにした服装で“魔術師”。


 これらは≪魔力修復≫のスキルを使って俺が生成したものだ。サラは飛び上がって喜び、フォンは尻尾をブンブン回し、エフィは無い胸を突出して得意げになり、ベラはウルチと交代で自分の姿を見て満足している。

 カミラは泣いていた。


 「主…ウチ、主の奴隷になれて本当に良かった…。」


 俺はカミラのローブを取り、嬉し泣きするカミラの頭からローブをかぶせてやった。カミラは白いローブを何度も確認して自分の服を着た姿を見つめていた。


 奴隷達を見て満足した俺は次にヨーコを見た。ヨーコは羨ましそうにサラ達を見ていた。


 「ヨーコ、俺とヨーコの服はまだ材料が無くて作れてないんだ。」


 自分の分もあったことに笑顔を見せ、ヨーコは聞き返してきた。


 「どんな服を作ろうとしてるの?」


 「赤地に金糸で刺繍をしたものでマントを作りたいんだ。でも金糸が手に入らなくてね。」


 ヨーコは俺の言葉から出来上がりを想像しているのだろう。暫く遠くを見つめるように呆けた顔をしていたが、何やら満足したのか、大きく肯いて嬉しそうな顔を俺に見せた。


 「楽しみにしてる!」


 良かった。気に入ってもらえそうだ。早く金糸を見つけてマントを作ろう。





 俺達は全員の衣服を整えて正装し、そのままベスタさんもつれて、ヤグナーン屋敷へと向かった。


 屋敷の門では、見覚えのある男が立っていた。男は俺を見つけ、騎士風の礼をする。喜びを表現しているのだろうか、頭の上の耳がピコピコと動いていた。


 「お前も来たのか、エル(・・)!」


 「はい、ご主人様の命で。」


 頭を上げ俺にニコリと微笑んで返事をするヒョウ獣人。


 彼の名はエル。エメルダ嬢に従うヒョウ獣人アルの弟だ。兄と同じく長い手足に極限まで引き締って盛り上りを見せる筋肉が奴隷とは思えぬ剽悍さを見せつけている。


 「伯爵様に呼ばれてやってきた。案内を頼んでよいか?」


 「はい、私はその為にここでエルバード様をお待ちしておりました。」


 エルは門を開き俺達を招き入れ、屋敷へと案内した。一際豪奢な扉の前に進み、静かな声で俺の到着を告げた。


 「…入れ。」


 中から聞き覚えのある声がして、エルが扉を開ける。

 壁一面が光沢のある石と木材で作られており、見事な調度品を並べて豪華さを漂わす空間が広がった。

 部屋の中央には大きな丸テーブルとそれを囲むようにソファが配置されており、男性が2人並んで座っていた。後ろにはエルの兄、アルが背筋を伸ばして立っている。更にその奥には数人の給仕服を着た女性が数人立っている。


 「なんだ?大人数になったな?全員奴隷か?一介の傭兵のくせに金のかかることをしているな。」


 男は軽く手を上げ、挨拶の言葉もなく質問をしてきた。


 「お久しぶりです、伯爵閣下。この子達については後程紹介いたします。私としてはこれほど早く王都に到着できた理由をお聞きしたいと思いますが。」


 「フフフ。愛する娘の将来が掛かっておるのだ。多少の無茶をして一刻も早く来るのが当然じゃろう。」



 ヤグナーン伯爵バルグ。



 一ノ島南部の豊かな港町ヤグナーンを領有する大貴族の現当主。

 伯爵位でありながら南部では頭1つ飛び出た存在であり、発言力もあるそうだ。その貴族様が穏やかな笑顔で俺を迎え入れていた。

 その隣にいる息子のライト君はそんな父を見て少々不満そうだった。

 俺はライト君にも貴族風の礼をする。すると伯爵が少し語気を強めて俺に話しかけた。


 「こんな奴に礼儀なぞいらぬぞ、エルバード。…まったく。親にも内緒でこんな大それた計画に加担しおって…。」


 語尾は息子に対する説教になっていた。たぶん俺が来るまでに何度も愚痴られているのだろう。ライト君はうんざり顔をしていた。

 そんなライト君の顔を横目で見て、「まあ良いわ」というと、伯爵は俺に座るよう勧めた。

 俺はフカフカのソファに座り、その隣にヨーコを座らせた。俺の後ろにサラ、フォン、エフィ、ベラ、カミラの順に立ち、一歩後ろにベスタさんが立った。


 「ベスタよ。ナヴィス商は今港に行っておる。間もなく戻るじゃろうから、皆で食事をしようと思う。悪いが奴隷用の食事を用意してくれぬか。」


 ベスタさんは「畏まりました」の声と共に完璧なお辞儀をする。部屋の隅に控えていた給仕服姿の女性が音もなくベスタさんに近づき、「どうぞ」と言ってベスタさんを連れて部屋を出て行った。


 それを見届けてから、伯爵は俺を呼び出した本題に入った。





 現状、南部諸侯で一番の権力者はボンベック侯爵(伯爵とパッコに興じていたボンベック伯爵は族弟らしい)で、南西部一体を牛耳っている。一方ヤグナーン伯爵はヤグナーンからカルタノオまでの東南部の諸侯と結びつきが強い。

 ここで王族と強い結びつきを得て、陞爵することにとって、身分上も同列になる上に後ろ盾もつくので、確実にボンベック侯爵を抑え込めることになるそうだ。伯爵としては娘の婚約は願ったり叶ったりだった。

 更に一ノ島周回船の話についても寄港先の領主、領代との調整役を買って出、中心人物として活動することで存在感の向上を図っている。これを機にラルクルス商との関係、王宮内の宮廷貴族との関係も構築し、王宮内への影響力も高めようとしている。

 これでは先の三公爵と同じ道をたどるのではないかと思いきや、王家や王宮との直接的な連携は息子のライトに任せ、自身は後方支援に回ることでサラヴィス殿下と内約したそうだ。


 う~ん…政治の世界は良くわからない。そんな急展開で自分の地位が一気に向上できるのも、こういう封建社会だからなんだろうと思う。だが、ヤグナーン家はこれで大きく成長する…。


 「エルバードよ、礼を言う。ここまで私に都合よく展開できるのも、お主がきっかけを作ったからと思うておる。…だが本音を言えば、貴公はエメルダを全力で止めるのではと思っていたがの。」


 全てがうまくいってる故の余裕だろうか、俺に絡むような質問をしてきた。ほら、隣の息子が口の端をつり上げたぞ。あいつ、俺のこと嫌いみたいだから、俺が困る様な話に食いついてきやがったよ。


 「私は初めからエメルダ様に貴族令嬢としての使命を願っておりました。予想以上に大物を釣り上げたことには驚きましたが。あの晩餐会のエメルダ様は忘れられません。あの時の輝きこそが本当のエメルダ様です。いずれサラヴィス殿下だけでなく、多くの貴族、下々の者を虜にするでしょう。」


 俺の熱のこもった弁は伯爵にとって意外だったようだ。表紙の抜けた表情で俺を見ていた。が、すぐに人を食ったような笑いを見せる。


 「フン、悔しい時ほど吠えるモノだな。」


 「…なんとでも仰せられませ。」


 「元々貴様にはやるつもりなどなかったからな。」


 「私には養うべき“子供たち”がおります故。」


 「…ほう隣に座らせる子もか?」


 「…彼女は大事な相棒です。」


 ヨーコの顔が強張った。背筋を伸ばし伯爵に失礼が無いように済ましているが、不満げなオーラを出している。


 (ヨーコ…伯爵に変に目を付けられるのも困るだろ。おとなしくしてくれよ。)


 ≪念話≫で説明だけして俺は会話を続けた。


 「彼女とはバジル商のお手伝いをしているときに出会いましてね。ナヴィス殿にお願いして私の直属配下として働いてもらっております。」


 ヨーコは立ちあがり騎士風の礼をする。


 「ヨーコと申します。以後お見知りおきを。」


 伯爵が後ろの五人にも目を向けたので、続けて俺は奴隷達を紹介する。


 「サラです。ナヴィス殿から購入しました。」


 サラはベスタさん仕込みのお辞儀をする。うむ、かなり綺麗だ。


 「フォンです。これもナヴィス殿から購入いたしました。」


 フォンがお辞儀をする。フォンもベスタさん仕込みなのでなかなか綺麗だ。


 「エフィ…はご存じですね。」


 エフィはお辞儀をした。≪給仕嬢の極意≫を持っている彼女はその身長に似合わず優雅な動作だった。


 「…立派になられた…。」


 伯爵は感慨深げに独り言を漏らした。…しっかり聞こえてるよ。


 「べ…ウルチです。バジル商より購入しました。」


 いつの間にかウルチに入れ替わっていた。ウルチがお辞儀をする。ぎこちないな。


 「カミラです。例のレイドフォーン商に捕えられていた奴隷です。」


 カミラは慌ててお辞儀をする。全くなってない。ライトが失笑している。

 一通りの挨拶を聞いて伯爵は顎に手を当て、目を細めて考え込んだ。何か気に障ることがあったのだろうか?


 「ふむ。こうやって見ると、エルバード殿の奴隷たちは一向に奴隷らしく見えんな。これでは王都内では当たりは強かったのではないか?」


 「確かに最初は奴隷らしく見せる工夫をしていたのですが、それよりも奴隷じゃないように見せた方が安全に思えたので…。」


 「うむ、確かに…奴隷管理法には、奴隷らしく振舞う基準も奴隷を見分けるための基準もないからな…。奴隷の衣服や扱い方はその都市の慣習に依存するところが多い…。施設の利用と同じように扱い方を明確にするほうが無用な問題を起さずに済むかもしれんな…。」


 俺は伯爵が何を言っているのかすぐにはわからなかった。


 「儂も、これを機に国政に加わるやもしれぬ。その時に政策に対する“武器”を持っておきたいと思ってな。奴隷法の改正はここ10年近く行われていない。これを武器に議会に発言権を手に入れるのも一興と思うてな。」


 俺は政治の事がわからない


 でも、何やらたくらみはあるようで、少々薄気味悪い笑顔を浮かべていた。

 俺はサラ達にとっていい改善になるのであれば別にかまわないので、軽く受け流した。

 その後も伯爵は王都進出による野望をいくつか俺に説明した。

 息子も別家を立てており、ラスアルダス公爵の寄子貴族としての地位も高い。うまくすれば公爵との連携も取れるとか、ナヴィス殿が広げた王都内まで広げた商圏を使っての傭兵団連合とか、一ノ島東部の大森林開拓団だとか…よくもまあ、いろいろと思いつくものだと表情には出さずに呆れていた。


 「…最後に、これはもう決定事項なんだが、貴公には“クロウの自由騎士”の称号を与える…。」


 「お断りいたします!」


 話の途中で断ってきた俺を見て伯爵が絶句した。当たり前だろう、王族や貴族からの称号を断るとは誰もしないだろう。


 だが、俺には断る理由がある。











 創造神からのペナルティを受けてしまうじゃないか。




主人公はまたもやペナルティの危機。ですが、今回はどうすれば神界に呼ばれるかがわかっているので、断固拒否です。


次話は五章の最終回になります。


いろいろご意見、ご指摘を頂きありがとうございます。

もう少ししたら、指摘の修正を行いたいと思います。

あと奴隷たちの服装のくだりは、別の日に表現を変更するつもりです。

(ちょっと表現の仕方が拙いのですが、今は直せません。申し訳ないです)

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