13 動揺のエルバード
俺の体力を根こそぎ奪い取ったカミラは、一気に回復した。逆に俺が足腰が立たなくなるほどになり、寝込んでしまった。
フォンが珍しく激怒し、ヨーコとサラ以外俺に寄せ付けないように威嚇してしまっていた。
カミラが寝室の扉の前で土下座をしているが、フォンは許すまじ、という表情で寝室の入り口に仁王立ちになり、サラが何を言っても耳を傾けようともしなかった。その表情の恐ろしさに他の子たちは声を掛けられない状況だ。
ここは俺がうまくまとめなきゃいけないのだが、体がいうことを聞かず、声もうまく出せない。
魔力の限界を感じたことが無かった俺だが、体力を極限まで削られるとスキルの発動ができないことを初めて知った。人外の俺の思わぬ弱点。
しかし、ここは一刻も早くこの一触即発の状況を解決しないと。
俺は必死になって≪心身回復≫を発動させようと精神を集中した。
≪心身回復≫の発動と同時にフォンが振り向き俺を凝視した。どうやら俺の状態変化を何かで感じ取ったらしい。慌てて俺に近寄りくんくんと匂いを嗅いだ。
「…く、くすぐったい。」
俺の声に反応してフォンが笑顔を見せる。めったに見せない笑顔。なんか新鮮。
「ご主人…よかった。」
フォンはベッドで横たわった俺に覆いかぶさるようにして抱き付く。
普通ならサラとかが「ズルい!」とか言って誰かがフォンを引きはがしたりするんだが、誰も何も言わず、身動き一つせずにその様子を固唾を飲んで見守っている。
俺はフォンが満足するまで黙って頭を撫でていたが、頃合いを見計らってフォンに声を掛けた。
「フォン、俺はもう大丈夫だから。カミラを許してやってくれ。」
フォンはいつもの表情に戻る。尻尾を下に垂らして自分の気持ちを表現する。
「わかってる。今は…カミラのこと…許せる。」
俺はフォンの頭をもう一度撫でた。
「ありがとう。それから、サラ姉にも謝ること。」
フォンは言われてサラの方を見た。バツが悪そうに視線を俺のほうに戻す。
「俺の奴隷のとりまとめはサラ姉の役目だ。そのサラ姉の言うことまで聞かなかったんだからな。」
「…わかった。」
フォンは俺の云わんとすることを理解し素直に返事した。
奴隷には序列があるのだ。それはこの中でも存在する。ここではサラが1番なのだ。
カミラは全員に謝りみんながそれを許し、フォンがサラに謝りサラがそれを許し、ひとまずこの場は収まった。
しかし、奴隷が増え、互いに主張をすることで衝突が生じ、関係の均衡が崩れる。そういう場面が増えてきた。
いや、奴隷なのに主張することを許していることが問題なのだろうか。…それは俺の主義に反する。やはりうまくバランスを保つようにしたほうが良いのか。
気が付くとサラが俺をじっと見つめていた。普段は天然キャラなのに、ふとしたところで聡い子になる。今も俺の表情を読み取り、危惧していることを理解したのかにっこりと微笑んで小さく肯いた。そして「大丈夫です。」と俺だけに聞こえる声で応えてくれた。。
…うん。ほんとにサラには癒される。
昼過ぎになってようやくナヴィス殿がベスタさんとアルを連れて戻ってきた。連日いろんな会議や晩餐会に参加させられ、疲れきっている様子で、俺の姿を見つけて、
「おお、エルバード殿、たしか疲れを取るスキルがあったでしょう。私にも掛けて欲しいのです。」
と挨拶抜きで話しかける始末だ。
≪心身回復≫
このスキルを使うことで、肉体的な疲労を回復させ、精神的な疲労を大きく軽減させる。疲れを取り精神を安定させるので、使い方も様々な応用ができる。
ナヴィス殿も顔に滲み出ていた疲労が消えて初老と思えない健康的な肌色に変わった。
「ふむ…。実際に体感してみると貴公のスキルは便利すぎますねぇ。」
自身の体の様子を確認しながらにこやかな声で話を続ける。
「しかしスキルに頼り過ぎてはいけませんよ。あとベスタにも掛けてあげてくださいね。」
…頼るなと言った直後に使え、てどういうことだよ。
心の中で文句を言いながらベスタさんに≪心身回復≫を掛ける。彼女も目の下の隈がみるみる消えて血色のいい顔色に戻った。綺麗な姿勢でのお辞儀でお礼を言うベスタさん。…ああ、相変わらずホントに綺麗なお辞儀だ。
一息ついたところでナヴィス殿から王宮の様子とこれからの事について話を聞いた。
今回の王太子殿下の凱旋は宮廷内の議会に席を置く貴族たちから絶大な支持を得られたそうだ。まあ純粋に殿下の功績を称えたわけではなく、自分に飛び火しないように王太子支持派に回ったという感じか。
また、第二王子、第四王子の除籍が決定し王位争いはサラヴィス殿下とカイト殿下の2人だけになったのだが、カイト殿下が自身の降家を申し出たため、王位継承権保有者はサラヴィス殿下1人になったそうだ。
ならばと、国王陛下が退位を宣言され、サラヴィス殿下はサラヴィス陛下へとなることが決まった。
なんかトントン拍子だな。
サラヴィス殿下の即位式は外交的なものもあるため、もうしばらく先になるが、カイト殿下の降家については、すぐに手続きが行われた。カイト殿下は“ラスアルダス”という新しい家名を貰い、ラスアルダス公爵家として叙任され、旧三公爵家の所領の大半を所有することになった。
実質は王家の血を引く大貴族。これは大きな勢力になる。これだけでも諸侯を十分に抑えられることになるな。
さらに、ライト君も今回の活躍で爵位を受けることになった。子爵位を受け、所領も旧三公爵家の一部を拝領する。名も“ライト・ファルグ・ヤグナーン”となるそうだ。
…い、いや彼はヤグナーン伯爵の長子だぞ。いいのか?
「あれ?知らなかったのですか?伯爵の奥方様はもうすぐ出産なのですよ。しかもお生まれになる御子は男子であることがわかっているのですよ。」
ナヴィス殿に驚愕の事実を知らされた。
エメルダという成人した子がありながら子作り、しかも正妻との子を儲けるとは…。
それにしても、サラヴィス陛下にカイト公爵閣下にライト子爵、ヤグナーン伯爵…。高貴な人のお知り合いが増えてしまった。
「これはまだ内々ですが、ヤグナーン伯爵は近々侯爵位を賜ると思いますよ。」
…なんで?伯爵は今回何もしてないじゃん?
「…実は、王太子殿下がエメルダ様に求婚されましてな。」
え?
エメルダ嬢が?
俺は明らかに動揺していた。
恋人同士だったわけではない。
告白されたわけではない。…多分。
ただ一緒に旅をしてただけだ。
でも、彼女は俺に好意を持っていた。
俺は、貴族のお姫様が根無し草のような俺について行くより、もっといい相手がいるはずだと思っていた。…いたはずだ。
なのに、この俺の落ち着かない気持ちは……。みだらに揺れ動く感情は……。
彼女は子を産めない体。そんな女性が妃になろうもんなら、叩かれる。殿下はそれを知っているのか。いや、そんなことはどうでもいい。エメルダ嬢はどう思っているのだ?
「…そんなに気になるなら、直接本人に聞けばいいじゃん…。」
ヨーコが小声で俺に言う。その口調はかなり不満そうだ。
昨日のコトも忘れて別の女のことなんかを…。
そんな心の声が聞こえてくるようだ。
俺はヨーコの手を握った。だが、ヨーコはその手を振り払い部屋の奥に行ってしまった。
「…ふふ、エルバード殿も罪作りな男ですねぇ…。」
誰だって今のやり取りを見ればわかってしまうだろう。ナヴィス殿に同情されてしまうほど俺は動揺していたのだ。
俺の動揺っぷりに少し呆れた表情を見せ、ナヴィス殿は適当に話を切り上げ、自分の部屋へと引き上げていった。ベスタさんにも心配そうな目でお辞儀をされた。
俺はどうしていいのかわからなくなっていた。≪思考並列化≫と≪情報整理≫がいろんな情報を俺に提供してきて更に混乱させる。このスキルが本気で鬱陶しいと感じた。
ちょっと心を落ち着かせよう。
俺は部屋着を脱いで外出用の服に着換え、靴を履いた。
「サラ、ちょっと近くを散歩してくる。フォン、≪気配察知≫で俺の居場所だけは確認しといて。」
それだけ伝えて、部屋を出た。
王都南西には比較的大きな公園があり、いたるところにベンチが設置されている。公園内には大きな遊歩道もあり、道沿いに北へ向かって歩くと港まで行けるそうだ。
俺はベンチに座り、ゆったりと陽の光を浴びた。
≪思考並列化≫と≪情報整理≫を外し、余計なことを考えないようにする。
公園を歩く人々から日本語の会話が聞こえることに違和感を感じる。
そうだった。このスキルを外すといろんな日本的なものに違和感を感じるようになるんだった。でも今はそのほうがいい。
俺はベンチに寝転び、行き交う人の会話を耳に入れてこの世界で感じる違和感で気を紛らわせた。
…うとうとと寝ていたようだ。
太陽の位置からしてお日様12つ分くらいか…。ん?
頭に影ができたので、仰向けの状態で頭の上の方に目をやる。
「…起きた?」
そこには少々不機嫌顔のヨーコが座っていた。いつの間にか寝ている俺のベンチに座っていたようだ。俺と目を合わせたくないのか顔は向こうを向けている。
暫く会話の無い状態が続く。
「…さっきはゴメン。」
俺の方には顔を向けずヨーコは謝った。…謝る態度ではないが、そんなことは言うつもりはない。
「さっき…?」
「ほら、アンタの手を振り払ってどっか行っちゃったじゃない?私…。」
いや、あれは俺が悪いんじゃ…。
「その様子をね、カミラちゃんが見てて、アタシがエルの事を捨てちゃうんだと思ったみたいで…、泣き疲れちゃった。」
はぁとため息をつき、地面から足を浮かせベンチに座ったまま足をぶらぶらさせた。
「主~主~…おでがいじばす!あの方を見捨でないでぐだざい~!…だって。」
ヨーコはカミラの真似をしてクスクス笑った。そして俺の方に笑顔を向けた。
「ハーレムなんだから、て理解してたつもりなんだけど、やっぱりわかってなかったみたい。…なんとも思ってないわけじゃないけど…私は大丈夫だから、エメルダ様のこと…ちゃんと考えて。」
…そうだ。こんなところで呆けて何もせずにいるのは間違ってるんだ。ちゃんとエメルダ嬢と向き合わなければ。そうでなければエメルダ嬢にもみんなにも迷惑を掛けてしまうだろう。
俺は≪気配察知≫を発動させ、エメルダ嬢の居場所を確認した。索敵範囲は10kmを超えるため、王都内にいれば必ず検索できる。
…?港にいる。サラヴィス殿下もおられる。ついでにその周りにはたくさんの赤い点が見える。港で何をやっているんだろう?何かの視察だろうか。ちょうど良い。この遊歩道を北に歩けば港に着く。行ってみよう。
…そういえばカイト殿下は…。
ふとカイト殿下が一緒に居ないことに気づき、何処にいるのか検索した。
そして、俺たちの真後ろに赤い点があることに気づき、慌てて振り返った。
「わぁ!び、びっくりした!…あれ?」
急に前の人が振り返り、カイト殿下もびっくりしたようだ。だが、前にいた人間が俺だってことに気づいてなかったようだ。
「なんで君がこの公園をうろついてるの?」
俺がどこを散歩しようが自由じゃないの。それよりも殿下の恰好…いつもの貴族が着用する高貴な服ではなく、市民が普段着として着用するありふれた格好をしていた。完全に街中に溶け込んでいる。
「で、殿下…一体ここで何を?それにその恰好は?」
言われて自分の服装を見直して苦笑いをする。
「これは気分転換だよ。僕には王宮の中は窮屈でね。こうして市民に成りすまして自由に歩き回ってるんだ。」
ここでヨーコが殿下に挨拶をする。軽く膝を曲げ会釈をする。
「よしてくれ。こんなところでそういう挨拶をされると身分がわかってしまう。」
そう言われて慌ててヨーコの姿勢を正し、謝罪をする。
「申し訳ありません。反射的に…。ヨーコ、殿下は今お忍びだ。普通に接するように。こんなところに高貴な方がいるってバレたら大パニックだよ。」
「あ、そうか…。」
ヨーコも殿下の服装に意味に気づいて頭を下げた。
「ハハハ。バレないように気を使ってくれると助かるよ。」
……。殿下は俺とヨーコの会話に何の疑問もなく話を続けた。
それから3人で遊歩道を北に向かいながら会話を続ける。王太子殿下の即位に向けての段取りについてと、港に王太子殿下がいる理由について聞くことができた。
カイト殿下の発案で国家規模での事業を展開しようとしているそうだ。
一ノ島を中心に六島全てに寄港できる周回コースをつくり、そのコースを回れる大型の船を建設するのだそうだ。
これが実現できれば一ノ島は全ての種族との商業を展開することができる。王太子殿下はその建設中の船を視察に港に来ているそうだ。
「ただこれには莫大な費用が掛かるんでね。ある程度商人たちに資金を供出してもらう必要があるんだ。」
「それって、ナヴィス殿にもお声をかけているということですか?」
「うん。でも資金をどう捻出するか困っていたようだよ。“鎧の算術士”殿は何か良い案はないのかい?」
うまい具合に俺の意見を求めてくるあたり油断のならないお人だ。それに気になることもあるので、少し揺さぶってみるか。
「…どれほどの資金が必要なのかわかりませんが資金を生み出す方法はございます。まあ、ものを売って対価を得るだけなんですが…。」
そう言って俺は≪異空間倉庫≫から干し肉を取り出した。
この世界にはない、豊かな香りを放つ干し肉。俺はその干し肉をカイト殿下に渡した。
「1くち食べてみてください。」
カイト殿下は渡された干し肉をまじまじと観察し、匂いを嗅いで表情を一変させると干し肉にかぶりついた。そしてその味を確認して俺に視線を送る。
「…いわゆる“ビーフジャーキー”ですが味は最高ですよ。」
殿下は俺の言葉を聞いてもう一度干し肉に視線を送る。次々と口に放り込み、むしゃむしゃと食べた。
「…うまい。実にうまい…。」
カイト殿下は指に付いた旨味の残り香を舌で舐めとり味わっていた。
「肉も柔らかく、濃いめの味がしみ込んでおりこのままでも十分食べられるよ。一体どうやって作ったの?」
俺はニヤリと笑い、ヨーコに≪念話≫で話しかけた。
(ヨーコ、≪能力測定≫を殿下に使ってくれ。)
(え?でも…。)
(大丈夫。俺が責任をとる。)
(わ、わかった……あ!み、見れない!うそ!)
≪能力測定≫は測定対象の能力をランクで表現してくれる“強さ”を測るスキル。このスキルの特徴は、
“この世ならざる者”は測定できない。
…かつてヨーコはこの能力で俺が異世界人であることを確認した。そして今、ヨーコはまた一人異世界人を見つけた。
ヨーコの表情を見て、カイト殿下は訝しんだが、その理由も含め俺の考えを全てぶつけてみた。
「殿下。…“ビーフジャーキー”という言葉はどこでお聞きになりましたか?」
「どこって……。」
殿下は黙ってしまった。顔が険しくなっている。
「殿下、パニックの意味はご存じなんですか?」
カイト殿下は更に険しい顔をした。だがその表情がふっと緩む。
「…さすがだね。君と会話をするときは気を付けてたんだけどね。地が出ちゃったかな。」
カイト殿下は大きく息を吐いて緊張を解き、笑い出した。
「そうだよ。僕は日本人だ。創造神様によってこの世界に転移させられた“この世ならざる者”だ。……君たちと同じ、ね。」
やっぱり俺たちのことを解っていたか。まあ、当然か。だが同じ異世界人でも、ヨーコとは異なり、俺と一緒だと思われる。
容姿はこの世界の人間。だがその中身は別の人間が乗り移っている。
「殿下はいつこの世界へ?」
「事実を知ったのであれば、僕を殿下と藪必要はないでしょ。君たちから“殿下”と呼ばれるのはむず痒い。…まあ僕は5年前からこの体に転移している。実は…ヨーコさんの事は2年前から知っているんだ。」
あまりのことにヨーコは声も出せずに驚いている。そうか≪気配察知≫さえあれば異世界人は判定できる。…いや、殿下の反応は他の人間と同じ赤色…。一体どうやって?
「フフ…その顔だと≪気配察知≫のことを考えてるよね。≪鑑定≫を持ってるなら見てもらっていいよ。」
カイト殿下がそう言うということは、スキルによるものということか。確認させて貰おう。
「殿下…じゃないか、ややこしいな。手を出して。」
俺の行動に首を傾げながらもカイトは右手を出した。俺はその手首を掴み、≪メニュー≫を開いた。
【カイト・ラスアルダス】
『アビリティ』
≪軍師の素質≫
≪アマトナスの僕≫
≪アルザラートの祝福≫
『属スキル』
≪気配察知≫
≪能面皮≫
≪偽りの仮面≫
≪計略知識≫
≪鑑定≫
≪光彩≫
『固有スキル』
≪属性変更≫
『呪い』
≪魂の真贋≫
彼はアマトナスの僕で、≪偽りの仮面≫を持っていて…≪属性変更≫という固有スキルがあった。
「へぇ、≪鑑定≫を使わなくても見えるんだ。便利だねぇ。」
カイトの無邪気な質問に俺は素直に答えた。もはや腹の探り合いのような会話は不要だ。
「≪状態管理≫というスキルだ。一言でいえばステータスウィンドウが見える。」
そういうとカイトは目を輝かせた。
「いいなぁ。そのスキルで自分の状態とか相手の状態が見えるんだ。」
「カイトの≪属性変更≫はどんなスキルなんだ?」
「一言でいえば、変身できるんだ。」
何?なんだその羨ましいスキルは!?
「これを使えば、僕は種族を変更することができるんだ。…と言っても変わるのは見た目と魔力の質だけなんだけどね。」
魔力の質…そうか、それで自分の魔力の質をヒト族に変更し、≪気配察知≫で黄色く反応しないようにしているのか。
「それで、俺たちの他に異世界者はいるのか?」
この質問には少し暗い顔をしてカイトは首を振った。
「残念がら、王都にはいません。」
う…期待はしてなかったが、はっきりと言われると悲しいな。
「創造神様には何回お会いした?」
「2回…お会いしたけど。そうなんだ。この間、急に呼び出されて『黒の魂を浄化せよ!』って怒られて。」
この間…。
俺はヨーコと顔を見合わせた。たぶんヨーコも同じことを考えている。
最近カイト殿下に関する噂であだ名みたいなものは……。
「「金勘定のできない阿呆王子!!!」」
俺とヨーコは互いに指を指し合い、声が重なった。そしてクスクス笑い合った。
カイトは何のことかさっぱりわかってないので顔を引きつらせていた。
カイト君。異世界者としてこの世界の理を知ってしまったら、ショックを受けるだろうなぁ…。
カイト殿下は異世界人でした。しかも一度ペナルティを受けております。
人外度は主人公ほどではありませんが、彼は謀略というジャンルにおいては飛びぬけているのでしょう。
真実を知ったらカイト殿下はどうするでしょうか。
次話はエメルダ嬢の話になります。
ご意見、ご感想、誤字報告その他何でも教えてくださいませ。




