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弟が作った世界でハーレム人生   作者: 永遠の28さい
◆第五章◆ 禁忌の吸精少女
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3 人外の秘密



 俺はメニューを開いた。瞬間にスローモーションになる。


 ≪破邪顕正≫のアビリティリストから≪念話≫を選択した。

 ≪破邪顕正≫はホシガミノクソギンチャクからもらったアビリティだが、俺の性格には会わないスキルばっかりだった。

 『正義こそ至上!』みたいなスキルのオンパレードである。例えば≪後光≫とか≪異論封印≫とか正義を振りかざすようなものが多い。世の中正しいだけで通用するわけではないので、こういうのは使い辛い。その中で唯一と言っていいほど使えるのがこの≪念話≫だ。

 エイミーも持っていたが、特に≪遠隔念話≫は使える。まだ、ナヴィス殿に説明してなかったので使うのを控えていたが、今は緊急事態。俺はスキルリストに≪念話≫がセットされたことを確認するとメニューを閉じた。時間の流れが元に戻る。

 俺は白髪の少女と目が合う前に≪念話≫を使って少女に話しかけた。


 (そのままの態勢で黙って聞いてくれ。今話しかけてるのは店に入ってきた二人組の男の方だ。)


 少女の体がビクッと震えるが、直ぐに座り直し顔を下に向ける。


 (俺の声が聞こえているなら、髪をかき揚げてくれ。)


 声に反応し、少女は髪をかき揚げた。


 長く白い髪が艶めかしく輝く。


 彼女は確かサキュバス族だったか。姿は当然だが仕草も淫靡に感じる…。名前は確か……。


 (エルバードだ。覚えているか、山小屋でお前たち兄妹を助けたヒト族の男だ。)


 少女は思わず見上げた。少女の顔が俺にもはっきりと見えた。目の周りが窪みやつれている。精神状態も良くないようだ。


 (顔を上げないでくれ。店員に気づかれる。)


 少女は慌てて下を向く。


 (エル…バード…。)


 (そうだ。俺の事を覚えていたのなら髪をかき揚げてくれ。)


 少女はゆっくりと髪をかき揚げた。


 (何故、そこに居るのか説明できるか。)


 (……わ、わからない。)


 (君の兄、ベレットはどこにいる?)


 (……わ、わからない。)


 何もわからない状況か。そもそもココの奴隷商もどういうとこかわかってないのに、いきなり知り合いが檻の中にいると言うのは想定外だ。


 「いらっしゃいませ、奴隷をお探しですか?」


 考え込んでいると店員に声を掛けられた。見ると、頭ツルツルのガタイのいいおっさんが立っていた。


 …店員という雰囲気がまるでない。どこかのゴロツキがアルバイトをしてる感じだ。


 俺はベラを自分の背中に押しやり、応対する。


 「珍しい奴隷がいると聞いてやってきた。」


 「種族を言って頂ければ連れて来ますが。」


 俺は会話をしながらスキルをふんだんに使う。

 ≪念話≫でベラに感知をするよう指示し、≪気配察知≫で館の隅々まで確認。≪魔力感知≫で魔装具をチェックし、≪真実の言葉≫で会話して店員を信頼させた。


 何人か奴隷を見せてもらい、最後に白髪の少女に目を向ける。


 「この子は?」


 ツルツル頭の店員はにこやかに説明するが、ちょっと気持ち悪い。


 「コイツは最近入手したサキュバス族です。性奴隷にするなら最高ですよ。あ、まだコイツは未通ですのでお高いですよ。」


 未通……。よ、余計な情報は要らないんだが。


 「ふむ、伯爵…おっと、俺の雇い主に確認してみよう。取り置きは出来るのか?」


 店員は目を光らせた。


 「もちろんでございます。」


 「では、2~3日取っといてくれ。あと入手元は全うなのだろうな。」


 「必要ならばご用意いたします。その分お高くなってしまいますが。」


 「そうしてくれ。また来る。」


 そう言って踵を返した。≪念話≫で少女と会話する。


 (これでしばらく売られることはない。その間にどうするか考える。俺を信じて待っていてくれないか。)


 (わ…わかった…。)


 少女のか弱い返事を聞いて俺とベラは店の外に出た。

 俺たちと入れ替わりに甲冑に身を包んだ一団が店の中に入って行った。俺はすれ違いざまに一団の一人に声を掛けた。


 「これはこれは、ご苦労様です。」


 「う、うむ。」


 「このような場所ですので、失礼いたします。」


 丁寧にお辞儀をして俺はその場を去る。声を掛けられた男は反射的に俺と挨拶をしたが、おそらく誰だろうと思ってるだろう。俺の目的は男と会話することだからこれ以上は必要ない。急ぎ足でその場を去った。


 「ベラ、どうだった?」


 「…少なくともあの広間にいた奴隷達からは怨み、憤り、憎しみ、悲観の感情しか読み取れませんでした。それに首からあたい達とは異なる別の魔力の波動を感じました。」


 そうか、ベラは魔力の波動を感じることができるのか。それにしても首から魔力の波動?……思い当たる節があるぞ。


 「ベラ、あそこにいた奴隷たちは、強制的に奴隷にされている可能性があるな。」


 「…そのようなことができるのですか?」

 「うん、≪隷属≫というスキルが有って、そのスキルで強制的に奴隷契約させるんだ。悪い、ウルチに替わってくれ。」


 ベラは目を閉じる。彼女の体が震え、髪の色に紫色が差した。


 「お呼びですか、ご主人様。」


 紫の瞳で俺を見つめ、ウルチが聞いて来た。声色も変わるのだからすごい。


 「うん、あの店に居た少女は見たか?」


 「はい、あれはたしかにカミラさんでした。」


 「やっぱり…。」


 俺は考え込んだ。ウルチが俺の顔を覗き込んできた。…な、なんだよ。


 「ご主人様、まさかとは思いますが……あの子の名前、思い出せなかったのでは、ありませんか?」










 「な、な、何を言ってるんだね、ウルチ君!俺が女の子の名前をわ、忘れるはずがないだろう!」


 ウルチはじーっと俺を見つめてきた。


 「…心の臓の動きが早まっていますよ。僕には微細な音も聞こえますので。」


 へ、へぇ…ウルチは耳がいいんだぁ。…はは。


 「ウルチさん…君の耳の良さを見込んで、さっきすれ違ったあの騎士たちが、店でどういう会話をしているか聞こえるかな。」


 俺は話題を変えて話を続けた。でもウルチは疑心の目を向けていた。





 「…ごめんなさい、忘れてました。」


 俺は負けを認めた。だってもう会うことない子だと思ったんだもん。


 ウルチは耳を傾けた。俺は邪魔にならないようにじっとしている。ウルチはしばらく聞き耳を立てていたが、ふぅとため息をついた。


 「ダメです。ちょっと遠すぎます。もう少し近づけば聞こえると思うのですが…。」


 「じゃあ、俺の≪超隠密行動≫を使って近づこう。」


 俺はそう言って、ウルチを抱き上げ、≪超隠密行動≫を使って店に近づいた。


 「え!?は!?まって!!」


 ウルチは異常に慌てふためいた。俺は気にせずにウルチを抱き上げたまま様子を伺う。両腕でウルチを抱え込んだまま、俺は前かがみになっているので、近くにウルチの顔がある。ウルチは顔を真っ赤にしてチラチラ俺を見ていた。


 「ご、ご主人…様…ち、近い…です!」


 「ん?俺を気にするな。それよりも聞き耳を立てろ。」


 ウルチは必死になって耳をヒクヒク動かして会話を聞こうとしたが、顔は真っ赤のままで全身を硬直させて俺を意識していた。俺にまで彼女の鼓動が聞こえてくる。


 「だ…ダメ…。僕の…心の臓の音が大きすぎて…。」



 ひょっとして、ウルチって男に対する耐性がないのではないか?



 俺は、ウルチの顔を覗き込む。ウルチは「ヒッ!!」と可愛らしく悲鳴を上げ目を閉じた。真っ赤にしてブルブル震えている。


 「ウルチ。」


 俺の言葉にウルチはビクッと体を震わせた。


 「ひゃ、ひゃい…。」


 舌足らずな返事をするウルチ。俺としてはこのまま食べてしまいたい。高ぶる気持ちを抑えてやさしく声を掛けた。


 「俺の事が怖いか?」


 ウルチはブンブン首を振った。


 「じゃあ、ベラに遠慮してる?」


 同じくブンブン首を振る。


 「ウルチ、落ち着いて。お前は俺の奴隷だろ?」


 俺はやさしく額にキスをした。ウルチは俺がキスした額の辺りを見つめていたが、直ぐにブンブンと首を振った。


 「申し訳ありません、ご主人様。僕は舞い上がっていました。耳を澄まします。」


 目が閉じられ、耳がヒクヒクと動いた。


 俺は黙ってウルチを見守った。


 やがて商館から何人もの奴隷を引き連れて騎士たちが出てきた。紐で両手を縛られた状態で数珠つなぎになって歩いている。俺はウルチを見やった。


 「…どうやら、あの騎士様たちは上司の命令で奴隷を調達に来たようです。彼らは第四師団に属しています。それと…ちゃんとした奴隷契約をしていないような…。」


 「ああ、≪隷属≫だよ、首に黒い布が巻きつけられているだろ?あれがその証だ。」


 ウルチは体を震わせた。


 「禍々しい波動を感じると、ベラが言っています。」


 「ウルチ、お前はこのまま宿に戻れ。俺は商館に侵入して顧客一覧を手に入れる。あと第四師団の動向も探る。」


 「はい。……あの。」


 もじもじしながら、ウルチは俺の顔を覗き込んだ。


 「なんだ?」


 「その…も、もう一回……。」




 ウルチの恥じらい混じりのおねだりに、俺は高ぶる気持ちを抑えることはできず、ウルチの可愛い唇を貪ってしまった。





 顔を真っ赤にして呆けてしまったウルチを宿に帰し、俺は第四師団の騎士たちの後を追った。俺の≪気配察知≫は一度会話した相手は識別可能だ。そのため、相手から見えない位置からの追跡ができる。

 俺は、数珠つなぎになった奴隷を引き連れた騎士達が、何の目的で奴隷を購入したのかが気になっていた。


 騎士たちは東の城壁に到着した。そこは王都の東へと伸びる道を大きな城門で塞いでいる場所である。だが騎士たちはその城門へは行かず、城壁沿いに北へと進んで行った。その先には石造りの小屋があり、数名の騎士が見張りをしていた。

 石造りの小屋の一辺は城壁に繋がっている。中には10人くらいの人がいる事が赤い点でわかっている。

 騎士たちは奴隷をその小屋の中へと連れて行った。俺は小屋の屋根に上り、≪気配察知≫で中の様子を伺った。

 しばらくして赤い点が城壁の外へと移動していった。


 「この小屋から外に出られるようになっているのか…。」


 俺は城壁の外に向かった赤い点を追うべく、≪気脈使い≫で空を駆けあがり、城壁を越える。そして城壁の上から≪遠視≫を使って、歩いている一行を監視した。

 奴隷たちは剣と盾を手に持っていた。そして湿地の奥にある森に向かっているようだった。


 「あの森…。赤い点が幾つもあるな。周りにも、中にも…。地下もあるのか?恐らく何かの拠点だな。」


 そして、無理の中心部分には、青…いや紫と言ったほうがいいか、紫色の点もあった。

 「あれは…?」


 「魔獣ダナ…。」


 突然、隣で声がした。見るとそこには氷狼が顔だけ出していた。


 「オソラク、雷獣ヌエ……。」


 氷狼の言葉を聞いて、俺は自分の記憶を辿った。確か、猿の顔、狸の体、虎の足を持つ合成獣だったはず。


 「ソレト、王宮ニモ魔獣ノ気配ヲ感ジルゾ。」


 何!?


 俺は振り返って王宮の方を見る。注意深く見回し、王宮地下に紫の点があるのを見つけた。


 「魔獣ってそんなにポンポン存在しているのか?」


 氷狼はじろりと俺を見た。


 「…前ニモ言ッタガ、俺タチ魔獣は他人ノ魔力ヲ吸ッテ生キテイル。オ前達ガ『魔装具』ト呼ブ道具ニ憑依シ顕現シテオ前達ニ(チカラ)ヲ貸スノモ、魔力ヲ得ルタメジャ。ココニイテモオカシクハナイ。」


 確かに黒竜も氷狼も俺の魔力(神力)を定期的に吸い取ってはいるが、俺だから平然としているだけであって、普通の人は魔力を吸われたらあっという間に死んでしまう。だからこそ魔獣は吸い取る量を調整して宿主を生きながらえさせており、主は魔獣、従は宿主という関係であった。(俺は逆だけど。)


 「さてと…。」


 俺は城壁から立ち上がった。


 「オ、オイ!マサカ、アノ森ニ行キ気ジャ…。」


 氷狼が慌てふためき上半身を顕現させた。


 「何言ってんの?行くわけないじゃない。魔獣相手に俺の≪超隠密行動≫では、すぐ見つかっちまうよ。行先はさっきの奴隷商だよ。さあさあ、さっさと引っ込んで。」


 俺は無理やり氷狼を引込めさせ、城壁からまっすぐ奴隷商に向かった。文字通り空中を跳んで真っ直ぐ向かって行った。そのほうが早いし。


 商館の屋根に降り立った俺は、中に入る場所を探しつつ、≪気配察知≫で様子を伺った。

 この窓の先には誰もいない。

 俺は窓を開け、中に入った。執務室の様であちこちに書類が置いてある。都合がいい。俺は片っ端から書類を見て回った。

 店の人間が来る様子もなく、俺は余裕の表情で書類を確認していく。


 「…あった。奴隷の記録だ。」


 ようやく目的の書類が見つかった。1枚1枚紙をめくって行く。そこには奴隷の名前、種族名、年齢、性別、金額が書いてあった。が、奴隷の経緯の部分、使役範囲、年数が空白になっていた。他の紙も全て、空白になっている。


 「これは……?」


 名前はしっかり書いているが、その他の項目は怪しい。奴隷になった経緯なんかは全部空白だ。


 偽装。


 不正に手に入れた奴隷を偽装して売る。勝った方は知ってての場合もあれば知らずにの場合もあるだろう。この場合、どちらも奴隷法または奴隷販売法で罪になるはずだ。

 俺はこの紙をどうするか迷った。持って帰れば証拠になるが、侵入されたことに気づかれてしまう。ここは何も取らずに泳がせて……そうか、マイブレッドも同じことを言っていたな。よし、ここは何も盗らないでおこう。…カミラには声ぐらいかけて行くか。

 俺は≪遠隔念話≫を発動した。


 (カミラ…カミラ、俺の声が聞こえるか?)


 暫くして、俺の声にか細い反応が帰って来た。


 (エルバード殿?)


 カミラの声は弱々しくなっていた。


 (やはり、お前は不正に奴隷にされているようだ。だが、その証拠を掴むには時間が掛かる。必ずそこからお前を助け出すから、今は俺を信じて待っていてくれ。)


 (う、うん。)


 (それと首に黒い布か何かを巻かれていないか?)


 (あ…ある。)


 (それは≪隷属≫というスキルで巻かれた魔装具になる。強制的に隷属させ、主の不都合はことはしゃべらせないようにしているはずだ。だから、お前が俺に何かを教えようとしてもできないだろう。だから、ただ待っていてくれ。)


 (あ…ああ…わかった。)


 気のない返事だったが、定期的に話しかけてあげれば安心するだろう。今日は、これで引き上げよう。

 俺は窓から商館を抜け出し、≪気脈使い≫で宿へと向かった。





 その日の夜もみんなで情報を交換し合った。

 フォン、ヨーコ組は収穫なし。エメルダ嬢とアルからは連絡なし。

 エフィとサラは東通りの亜人の数を14と報告し、それ以外は特になし。西側と王宮周辺になる北側は第二師団の警備が厳しいため、止めた方がいいというナヴィス殿の忠告もあり、明日は待機とした。そしてナヴィス殿は…。


 「侯爵以上とは面会を拒否されたが、伯爵、子爵とは何人かと会うことができた。じゃが、何故か反応が鈍い。目立つ行動を避けているようじゃ。…これは何か危険を察知しているように思われる。それが何なのか手がかりが得られれば、もう少し調べられるのじゃが。」


 ナヴィス殿は1日でいくつもの貴族屋敷を回ったようで、疲れているようで話も早めに切り上げようとしていた。だが、俺の報告も聞いてもらわなければ。

 俺は第四師団の動きと魔獣の存在、それから奴隷商の不正について報告した。ナヴィス殿はその話を聞いて1つの仮説を立てた。


 「ひょっとして、王子同士で王位継承争いが表面化しつつあるのでは?それに各師団、商人、上流貴族が巻き込まれているのでは?」


 確かに、誰がどの陣営かはまだわからないが、動きがぎこちないし、けん制し合っているし、隠そうとしている。これを“王位継承”という言葉で括れば1つにまとまりそうだ。しかし、その糸は複雑に絡み合っている気がする…。


 「ナヴィス殿、しばらくは自重頂けますでしょうか。俺たちでこの複雑な糸を手繰り寄せて見ます。…そうですね。帰り支度をする素振りなどを出して頂けるとありがたいですが。」


 俺の提案にナヴィス殿は考え込んだ。指で頬をトントンと突きながら黙っていたがしばらくして返事をした。


 「ならば、この宿でベスタとゆっくりしていましょう。エルバード殿、宜しく頼みましたよ。」


 そう言って、欠伸をしながら寝室へと向かった。俺はナヴィス殿の背中に向かって一礼した。






 翌日は、朝食前にエフィとベラとヨーコを連れてとある場所へ向かった。サラとフォンは日の出前に南側城壁へ調査に向かっている。ナヴィス殿はまだ起きてこなかったのでベスタさんに任せて、起きてきた(エフィは無理やり起こした)子らを連れ出したのだ。

 目的地はクロウ神殿。王都北側の王宮に隣接するように巨大な建造物がいくつも並んでいる場所だった。


 俺は正面入り口の前に立ち、≪仰俯角監視≫で全体を見渡した。いくつもの建物が大きな通り沿いに並んでおり、これまで見てきた教会や神殿と比べてはるかに広い。一番奥にここからでも巨大とわかるクロウ様の石像が見える。


 「エル、クロウとは何者じゃ?」


 エフィは初めて見たようで何を奉っているのかよくわからないらしい。


 「ヒト族が崇める神でなヒト族の国神だそうだ。戦の化身とも言われている。」


 「なんじゃ、ヒト族の神か。」


 他種族の国神と聞いてエフィは興味なさそうにした。俺は軽くエフィの頭を撫でる。


 「人は神を区別したがるようだが…神は人を区別はせんぞ。」


 その言葉にエフィは考え込む。ちょうど俺たちに向かって藍色の服を着た女神官が近寄ってきた。


 「おはようございます。礼拝に来られたのですか?」


 にこやかな笑顔で俺とヨーコに話しかけてきた。ヨーコは困ったような表情で俺を見た。そうだね、ここは俺が答えるべきだよね。


 「はい、早朝からお邪魔致します。…えと、エルフと竜人の奴隷が居るのですが、構いませんか?」


 俺はエフィとベラを指して女神官に聞いた。女神官は先ほどと変わらない笑顔で答えた。


 「問題ございません、神は人を選びませんので、遠慮なくお祈りください。」


 俺はエフィを見た。エフィはは気まずそうに眼を逸らした。





 俺たちは神殿には入らず、一番奥の石像の前まで行き、そこにある礼拝場に座った。全員で膝を着き両手を合わせて祈りを捧げる。やはり白い光に覆われ別の空間へと移動した。そして俺の隣にはヨーコもいた。



 “この世ならざる者”は神の宿る場所で礼拝すると神の世界へ行ける。俺だけではない。予想通りだ。


 「え!?え!?何!?」


 ヨーコが俺の横でパニクッて腕にしがみ付いている。これも予想通り。


 俺の前に揺らめきが起こり、赤い甲冑を着た男が現れる。戦の神、クロウ様。そして白い和服を着た女性も一緒に現れる。恐らくこの人が“静御前”だろう。


 「…貴公か。何用だ?」


 クロウ様は俺の顔を覚えていたようで、俺をみて嬉しそうにしていた。


 「…今日はお聞きしたきことがあり、まかりこしました。」


 俺は隣で騒いでいるヨーコを完全に無視してクロウ様にお辞儀をした。

 クロウ様は俺をじっと見つめていた。恐らく俺の心の中を覗いているのであろう。やがてニヤリと笑う。


 「…聞きたいことはわかった。お前達“この世ならざる者”は歴史の表舞台に出ることは許されぬぞ。この地で起きている問題に介入しようとしておるらしいが、そこで貴公の名が知れ渡り名を与えられようものなら、創造神様より神罰を頂くことになろうよ。既に何度も人外の力を植え付けられておろう。」


 …そうか、この力はペナルティだったのか。しかも、創造神(おとうと)に会う度に増していくという仕組み。ペナルティが増えれば増えるほどより厳しくなっていく。そのペナルティの条件は“名”を与えられたとき。

 確かに一度目はサラから、二度目はヤグナーンで“鎧の算術士”と噂されたとき、三度目は獣人の王から称号を得たとき。


 「…ハ…ハハ……。」


 俺の笑いは笑いにならなかった。



 弟に会うには活躍して、二つ名なり称号なりを受ければよい。だが、弟に会えばペナルティとして人外の力を手に入れる…。

 神からアビリティを貰うことは人外度が増すことではない。その力を100%以上発揮できる力を与えられていることが俺の人外度がハンパない原因だったんだ。





 良聖さん……ちゃんと説明してほしい。




主人公は突然白い世界に包まれ、創造神のもとへ呼ばれる理由を知りました。

そして活躍すればするほどチートな存在になっていくこともわかりました。

そして五章のヒロインは未だ檻の中…。


次話は、王宮で情報収集の巻です。

なので、ヒロインはまだ……。


ご意見、ご感想をどんどんください。誤字脱字の文句もどんどんください。

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