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弟が作った世界でハーレム人生   作者: 永遠の28さい
◆第五章◆ 禁忌の吸精少女
67/126

2 王都を渦巻く陰謀

6/25 すいません、サブタイトル忘れてました

あと、髪の色間違えてました

誤 青い肌に青い髪

正 青い肌に白い髪


 俺たちが王都に来て2日目の夕方。


 俺はナヴィス殿に合流した。


 ナヴィス殿には生活用具を扱っている店での出来事を報告した。

 ナヴィス殿は、視線を少し下にして呟いた。


 「マイブレッド殿か……。」


 知り合いではあるが、それほど親しいという訳でもなさそうだ。会うことにそれほど積極性は感じられない。


 「断ってきましょうか?」


 俺はナヴィス殿の表情を読み取り、返事をしたが、ナヴィス殿は首を振った。


 「向こうが会いたがっているのです。前も言いましたように、ここは私にとっては敵地です。多少の無茶でもしておいた方が何かの布石にもなるでしょう。」


 そう言って、会う決意をした。


 「ついて行きましょうか?」


 心配だったのでついて行った方がよさそうだと思っていたのだが、


 「何を言ってるのです、エルバード殿とヨーコ殿が居ないと困りますよ!」


 と怒られてしまった。俺たちの護衛ありきでの“無茶”なのかよ…。



 王都に居を構える商人は、皆王族や、上流貴族との専属契約を結んでいる。俗にいう『○○家御用達』の品を揃えてお納めしているという内容だ。

 王都内でもっとも有名な商家は【ラルクルス商】で、国王陛下、王妃殿下、王太子殿下をはじめとして有力貴族との契約もいくつかあり、王家にも影響を与えうる力を持っているらしい。そりゃそうだ王家のトップ3を抱え込んでるんだ。ある程度の融通は簡単なはずだ。

 フォールーン商も第二王子との専属契約を結んでいるそうである程度王家にも顔が効く力はあるらしい。それほどの商家をナヴィス殿との会話を望んでいるとなると…。


 俺は事前に調べておく必要がありそうだと思い、適当な理由を付けてナヴィス殿と一旦別れることにした。

 ヨーコにはうまいこと言っておだてて、ナヴィス殿と奴隷たちの護衛を任せる。


 夕方からの行動なので、行先は主に酒場。俺は完全に別人に成りすまし、酒場で飲みあう客から、様々な情報を引き出した。そのためには自らも酒を飲み、飲み過ぎては≪心身回復≫で体調を直し、別の店に出向いてまた飲んで…。朝方まで繰り返していろんな情報を聞き出した。無茶苦茶なやり方だが、俺は情報さえ引き出せばよかったのだ。後は≪思考並列化≫と≪情報整理≫が正しい答えを導き出してくれる。

 一晩中飲み屋をハシゴして、早朝にナヴィス殿のもとに帰って来た。

 既に長期滞在用の宿を取っており、俺はみんなの気配を頼りに宿に辿り着いた。


 そういや、王都には十二宮の宿はないんだ…。


 朦朧とした感覚があり、もはや≪心身回復≫では抜けなくなった酒臭い息を吐いてサラが迎える部屋に入る。ヨーコが心配そうに見てるのでわざとらしくふらついて抱き付き、そのままベッドに押し倒した。


 「や!…ちょ…ちょっと!…だ…ダメ!」


 俺の下敷きになり慌てふためくヨーコを全身で感じつつ、意識を回復させる。ベラが俺の着換えを用意し、サラとフォンが俺の服を脱がせていく。


 「え!?なに!?ここで着換えるの?」


 エメルダ嬢が次々と脱がされていく俺を見てキャーキャー言って顔を覆う。…見たくないなら部屋から出て行けばいいのに…。


 「や!!待って!ちょっと!エル!!どいて!あ…!何か当たってる!何コレ!?や!」


 俺の下敷きになっているヨーコは大パニックである。全裸になった俺にのしかかられ、下腹部に何かが当たるのを感じてワーワー言っている。


 ナニだよ。“朝おっきい君”とか“本気でおっきい君”とかに変身するする奴だ。




 …まあ、ヨーコをいじめるのはこのくらいにしておこう。お蔭で精神的にも回復した。俺はベラから着換えを受け取り服を着ながらエフィを呼ぶ。


 「何人くらいいた?」


 エフィは何故か顔を真っ赤にして俺の所にやってきた。そうか、エフィも俺のハダカを見て赤くなっているのか。


 「じゅ…十人までは…数えた。」


 10人か…。もっといると思ったが…。なんか言い方が変だぞ。


 「もっといたのか?」


 エフィは俺と目を合わせようとはせずに肯く。明らかに何か隠してる。


 「どうした?」


 俺の問いかけに、やや間をおいて両手を差し出した。既に涙目になっていた。


 「ゆ…指が…足りなかった…。」




 …この世界の算数知識とこいつの頭の悪さを完全に忘れてた。


 10以上数えられない。


 数え方を知らない。


 これは俺の方が悪い。エフィを叱ってはいけない。笑ってもいけない。


 俺は怒りも笑いも堪え、エフィの頭を撫でる。


 「…悪かった。今度勉強しよう。“鎧の算術士”がちゃんと教えるわ…。」


 “鎧の算術士”とは俺の二つ名だが、この場合効果があるかどうかはわからなかった。ただ、エフィは怒られると思って顔を真っ赤にして涙目になっていたのだから、余計なことは言わなかった。



 エフィは常に俺の期待を斜め上に裏切ってくれる。



 これもエフィらしさなので、何も責めはしない。エフィは涙をぽろぽろこぼして抱き付いた。俺の服に涙やら鼻水やらを擦り付ける。着替えたばっかりなのに。




 もう一度着換え直して、俺は一息ついた。身を削って得た情報を確認する。



 今、王都では、反乱の噂が上がっている。第二王子と第四王子が結託し、王太子である第一王子の廃嫡と国王陛下の暗殺。

 だがこの噂は信ぴょう性が低い。

 第一に第二王子と第四王子は仲が悪い。仮に結託したとしても、王太子の廃嫡はわかるが、国王の暗殺までは必要性が感じられない。

 しかし現実は、既に城外で第四師団が襲われたり、城内でボヤ騒ぎ、城壁の一部破壊など国家反逆とも取れる行為が発生している。いずれも犯人が捕まっていない為、誰が何のために行っているのか目的が不明だが、人々はこの事件と反乱の噂を結び付けてさらなる噂を広めているようで、王宮もこの噂を信じて、現在二人の王子は軟禁されている状態と言われている。まあ、庶民には王宮の中で何が行われているがわからない為、どこまで真実かは不明だが、第二王子と専属契約しているフォールーン商がナヴィス殿に接触しようとしているところを考えると、噂だけでは済んでいないと想像できる。


 次に最近見知らぬ住人が増えている件。これはエフィが教えてくれた妖精族が王都内にたくさんいるという話に通じる。

 要はある日突然、お隣さんが別人に変わっているという類のお話なのだが、その話が王都の南部に集中しているというのが気になる。これはエフィを連れまわして調べる必要があるな。

 こちらの件はまだ目的が不明。また住人達は亜人であることに気づいていない為、どんな種族が入り込んでいるかも不明。これは継続調査が必要だ。また、妖精族の王との関係性も未知数の為要注意が必要だ。


 次は新進気鋭の商人の話。王都の北通りに居を構える商人が最近人気らしい。なんでも魔人族、妖精族の奴隷をよく販売しているらしく上流貴族からの人気も高いそうだ。

 最近第四王子と専属契約をしたらしいがその直後に例の噂で第四王子が軟禁されたとかで今はやや下火になっているらしいが。

 俺はここで王都に来る前に出会った魔人族の事を思い出す。彼らはドワーフに追われていた。もしかしてといろいろ探ったがドワーフと商人との繋がりらしき噂はまだ見つかっていない。


 最後に第三王子の件。噂ではかなりの浪費家らしく、様々な商人から高価な品物をを買い漁ってはすぐに売り払ってしまっているらしい。人々は高く買って安く売る第三王子は金勘定のできない阿呆王子と呼んでいるらしい。かなりの愚鈍な男らしく、国王からも既に見放されているとか……。



 一通りの整理を行って、それを全部ナヴィス殿に報告した。エメルダ嬢からも第三王子の件と反乱の件は弟から聞いたらしく、信ぴょう性はともかく、噂が噂を呼び込んでいる状態にまでなっていることは確かなようだった。

 おそらくこのままいけば、国王陛下がなんらかの処断を下すのでは、とナヴィス殿は見解する。


 「…フォールーン商に会ってみますか…。」


 ナヴィス殿は気の重い独り言を言った。





 翌日。


 朝食後、俺とヨーコはナヴィス殿のお供として例の店を訪れた。

 昨日応対した店員がさも待っていたかのようにナヴィス殿に挨拶をして、奥へと招き入れた。

 昨日と同じ部屋に通され、ナヴィス殿がソファに座る。俺とヨーコはその両脇に立った。

 暫くして奥の扉から人が現れた。


 「お久しぶりです、ナヴィス殿。」


 多少ワザとらしい感を感じる口調で男が挨拶する。


 「お久しぶりです、マイブレッド殿。」


 ナヴィス殿は立ち上がり右手を差し出す。マイブレッド殿と呼ばれた男はその右手を両手で握りもう一度挨拶をした。


 長身で痩せこけているが、眼光は鋭く、俺の印象は商人と言うより『魔法使い』と説明されたほうが納得できる風貌だった。


 「…いつ王都に?」


 マイブレッドはナヴィス殿にソファを勧めながら、話を切り出した。


 「昨日の朝に到着しました。厳密にはその前日に着いたのですがね。何せ城門前での厳重な監視のせいで…。いつからやってるのですか?」


 ナヴィス殿は答えと同時に質問を返す。…これは見ものだ。大物商人同士の舌戦が見れるかも。


 「10日くらい前でしょうか。第三師団の連中が駆り出されていましてね。私の甥が第三に所属しているのですが、超過労働だと嘆いてましたよ。まあ、原因は例の噂らしいですが……ご存知ですか?」


 「例の…?いえ、まだまともに情報収集もできておりませんで…。」


 「フューエル殿下とベイダール殿下が反乱を起こそうとしていると…。」


 「なんと!」


 …ナヴィス殿もなかなか役者だ。その話は俺から聞いているはずなのに、大げさに食いついた素振りで体を前のめりにして話を聞こうと見せている。


 「大きな声では…!南部にはまだ伝わっておらぬようですな。ナヴィス殿もお気を付け下され。」


 「いやいや、マイブレッド殿は確かフューエル殿下と専属契約をされていたのでは?殿下とお話しする機会があるでしょう。それは真実なのですか?」


 ナヴィス殿の問いに魔法使いみたいな格好の商人は首を振った。


 「殿下との面会ができない状態なのです。ある日突然、面会が断られ、どうしたものかと思っているうちに例の噂で城の内外が慌ただしくなり…。」


 …ほう。噂の前に面会禁止か。少なくとも王宮外へは、面会禁止になった後に広まったというわけか。


 「…私も第一師団の連中に何度も尋問を受けましたよ。」


 マイブレッドはため息をつき、肩をすぼめる。うんざりした様子からすると、嫌な思いでもしたのだろうか。


 「マイブレッド殿、この状況で城下でいくつか取引をしたいと思っているのですが、気を付けることはありますか?」


 マイブレッドは首を横に振った。


 「悪いことは言いません。今は時期が非常に悪い。まあ王都に居を構えて商圏拡大をしようとしても、既に隙間はありませんがね。」


 王都ではヤグナーンの商人が入り込む余地はないか。いや、敢えてそう言ってけん制しているな。


 「エルバード殿、せっかくの干し肉…ダメにしてしまうかも知れませんねぇ……。」


 げっ!何故そのこで俺の名前を出すかな!?ほら、マイブレッドのおっさんがこっち見たじゃない?


 「ほほう、王都で干し肉を売ろうとしていたのですか。旅には欠かせないモノではありますが、実力のある傭兵や旅人達は自分で作ってしまいますからね。相当の付加価値がないと売れませんよ。」


 「食べてみます?」


 あ?ナヴィス殿!俺の渾身のスペシャルジャーキーをこいつに食わせるの?何でよ!?


 ナヴィス殿からの目くばせで、無表情を装って≪異空間倉庫≫から派手に干し肉を取り出してマイブレッドに渡した。

 マイブレッドは匂いを嗅ぎ、少し千切って口の中に放り込んで表情を変える。ナヴィス殿が一瞬だけ口元をつり上げた。


 「こ、これが保存食なのですか?どうやってこの味を?い、いやそれよりもこの柔らかさ…。どこで手に入れたのです?」


 商人は、俺とナヴィス殿の顔を交互に見た。俺はチラッとナヴィス殿のほうを見た。


 「…さあ。どこですか?」


 ナヴィス殿は俺に聞き返した。全く今日のナヴィス殿は非常に意地が悪い。マイブレッドどころかヨーコの視線まで俺に向いてるじゃないの…。


 「…申し訳ありませんが、言えません。」


 「…だそうです。」


 ナヴィス殿が俺の言葉に追随する。マイブレッド殿は全く納得していない。


 「独占の商品という訳ですか。たかが保存食と思っていましたが、これほど強烈な印象を残す味だと、需要も大きくなるでしょう。どうです、ウチの商会で販売しませんか?」


 どうしても手に入れたいらしい。だけど俺では判断できない。視線をナヴィス殿に向ける。ナヴィス殿はワザとらしく考え込んでいる。


 「うーん…。ですが、今は余計な争いごとには巻き込まれたくないのですがねぇ…。」


 うん、これは既に値段をつり上げる仕草に入っている。売る気だ。その代わりに何かを得ようとしている。


 「いやぁ、この肉、実はカイト殿下にお売りする伝手がありましてね…。」


 カイト殿下。第三王子の浪費殿下。そんな伝手は俺は知らない。


 「バ、バカな!カイト殿下が関係者以外から……!」


 魔法使い風商人が何かを言いかけて口をつぐんだ。俺は見逃さない。当然ナヴィス殿も見逃さない。だがナヴィス殿の口撃は別角度からであった。


 「カイト殿下は気に入って頂けますでしょうかねぇ。それとも今はこのままお会いせずに王都を出た方がいいでしょうか。」


 マイブレッドは明らかに顔色を変えていた。理由はわからないが、ナヴィス殿が第三王子に接触することに対して驚愕を示している。第三王子はいろんな商人から高額で商品を買い漁っていると聞く。商人からすればいい金ヅルだろうが、そこにナヴィス殿が加わることの懸念だろうか。


 ナヴィス殿の口撃はなおも続く。


 「エルバード殿、例の新進気鋭の商人の所にも行ってもらえますか。商会がどのようなものを売り出しているのか見て来て下さい。」


 マイブレッドは会話の内容が別のモノに変わったからか、やや表情が和らいだ。だがナヴィス殿の言うことに注意を払っている状態は変わらない。


 ならば…。


 「わかりました。あの商会では珍しい奴隷が売られていると聞きました。入手元でも確認して来ましょうか?」


 「いやいや!そんな独断で動かないでくれ!あ奴らはまだ泳がせて…いる…!」


 マイブレッドはまた口を滑らせたようだ。どうもカイト殿下の名を聞いてから完全に浮き足立っている。そしてナヴィス殿の手も読めた。いろんな角度からいろんな話題を振って反応を確認しているんだ。


 これはチャンスだ。一気に畳み掛ける!


 それから、俺とナヴィス殿であらゆる話題について話しかけ、魔法使い風商人の反応を確認した。マイブレッドは憔悴しきっていた。一度見せた隙は徹底して叩く。商人の口撃は恐ろしい。


 ナヴィス殿はお土産に俺の作った干し肉をひと箱分贈呈して機嫌よく店を出た。俺とヨーコもそれに従う。


 「…ねぇ、あの商人途中から支離滅裂になっちゃってたけど…どうしたの?」


 ヨーコが不思議そうに俺に聞いて来た。


 「誰でも隠し事をしてる場合、それに近しい内容に話が及べば、動転するものなんだ。あの男の場合は、カイト殿下に関する何かを隠している。ナヴィス殿がいきなりそれに触れるような会話をしたんで、完全にパニクッたみたいだ。」


 「へぇぇ。ナヴィス殿ってすごいわね。」

 「なんの、エルバード殿も私の意図を見ぬいて会話に入ってきましたよね。あれはなかなかでしたよ。」


 ナヴィス殿はなかなかご機嫌の様子で俺を褒める。なんか俺は嬉しくないのだが。


 「でも、例の商会へは行ってもらいたいのですが…。」


 俺は姿勢を改める。


 「わかりました。何を見てくればよろしいですか?」


 ナヴィス殿も姿勢を正した。


 「…奴隷たちの“目”を見て来て下さい。」


 ナヴィス殿は真剣な表情である。俺ならば奴隷の目を見れば奴隷の状態を見極められるという判断か。


 「わかりました。ヨーコ、付いて来てくれ」


 「オッケー!」


 「お、おおけぇ?どこの言葉ですか?」


 ばか!この世界で横文字的な言葉はほとんど通用しないんだぞ!


 「気にしないでください。ヨーコ語です。解読不可ですから。」


 適当なフォローで話をうやむやにして、俺はナヴィス殿の背中を押しながらさっさと宿に戻った。


 夕方、食事を終えた俺たちはそれぞれ得た情報を報告し合う。


 「まずは私から。弟と会ってきた。部下を第三師団に徴兵され、高い給金を払って傭兵を雇っているそうだ。傭兵と言っても戦闘経験のない新兵らしい。聞けばどこの貴族でも領地から連れて来た部下を取り上げられているそうよ。」


 常識的にはおかしい。自分の庭に相手の番犬を放つようなモンだ。第三師団という外部警備を専門に行う軍団とはいえ、危険な行為だと思う。

 いや、優秀な人材を取り上げ、且つ味方として再教育するというのが目的なのかも知れん。

 いずれにしても、王都内に住む貴族どもは牙を抜かれた状態になっているということか。


 「次は私。王都城壁周辺を…見て来た。荒れ果てて…人が住める状態じゃない…。そして…巧妙に抜け穴が…隠されてた。」


 フォンがナヴィス殿の依頼で調べてた件か。城壁に穴があるというのか。これはその穴を使っている人物を探した方がいいってことか。


 「フォン、誰が使っているか調べられるか?ヨーコ、手伝ってくれ。」


 「へ?さっき奴隷商の話をナヴィス殿から…」


 「悪い。こっちは別の子を連れてく。フォンの手伝いに回ってくれ。」


 「……。」


 あ。見るからに機嫌が悪くなってしまった。後でフォローしないと。


 「ふむ。ヨーコ殿。私からもお願いするよ。」


 ナヴィス殿からフォローを頂き、承知してくれたが、頬は膨らんでいた。


 「次は私かな。エルバード殿、ヨーコ殿とフォールーン商の所に行ってきました。どうも複数の人間が別々に水面下で暗躍しているようで、情報自体が混濁しています。もう少し詳しく調査が必要ですが、少なくとも王宮内で何かが起こっています。それにいくつかの貴族、商家が関わっていると思われます。私は明日以降いくつかの貴族にご挨拶に向かいますので、もう少し情報を収集します。干し肉の件は様子見します。種はまきましたので、何らかの反応は出てくるでしょう。」


 “干し肉”という言葉にエフィが一瞬反応した。そうだ、お前がつまみ食いしてたやつだ。


 「エフィ、お前の方はどうだ?」


 エフィはやましいところがあったので干し肉の話の後に振られてビクッとなった。


 「あ、あ、か、数えたぞ。10人が6つと8人だ。種族はケット・シー、クー・シー、コボルト、ドワーフ、ネレイスもいた。」


 よし、昨日教えた10以上を数える方法をマスターしてるじゃないか。俺はエフィの頭を撫でる。


 「次は、東通りを頼む。」


 「へ?あ…わかった。頑張る。」


 エフィは褒めれば伸びる子だ。


 「サラ、エフィと一緒に東通りに行ってくれ。」


 「あ、はい。」


 「ベラ、君は俺と奴隷商のところへいってもらうから。」


 ぼーっとして話を聞いていないと思っていたが顔をこちらに向けてベラは返事をした。


 「あたいですか?それともウルチですか?」


 「ベラ、で頼む。君のスキルで表されていない感知能力が必要だ。」


 「わかりました。」


 ベラは静かに礼をする。ベラの感知能力はスキルに表されていない。だが二ノ島でも発揮されたように≪気配察知≫だけでは見えない感知能力は調査には有効なはず。


 「エメルダ嬢はアルとしばらくヤグナーン邸に滞在してくれ。アル、エメルダ嬢を頼んだぞ。」


 ヒョウ獣人のアルは恭しく礼をした。









 次の日、俺たちは宿を出てそれぞれの担当役割に就いた。

 俺とベラは例の奴隷商の店に向かう。店は北通りにあり宿からは一番遠かった。ベラの首輪に縄をつけ、引っ張る様な恰好で通りを歩く。途中≪気配察知≫で状況を見つつ街を北上する。


 やがて目的の商館が見えてきた。


 商館の門をくぐり、俺とベラは中に入って行く。


 そして、そこで思いがけない人物に出会った。


 背中に生えた蝙蝠の羽。青い肌に白い髪。兄と共にドワーフに追われていた少女が全裸で檻の中にいた。




五章のヒロイン登場です。

彼女は檻に入れられていました。


エルバードはどうするのでしょうか。

まあ、ヒロインなので助けるのですが。


ご意見、ご感想を頂ければ幸いです。

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