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弟が作った世界でハーレム人生   作者: 永遠の28さい
◆第四章◆ 無情の竜人少女
63/126

15 神気を持つ種族

※多少いやらしい表現があります。ご注意ください。



 ここは、【人馬宮】の大食堂の一角。


 左から順番に、俺、ヨーコ、サラ、フォン、エフィ、ベラの順に座ってる。



 …正確には、正座をさせられている。



 俺は昨日、ウルチを精神世界から救った後、満足してそのまま寝てしまった。

 十二宮の支配人に待つよう指示していたにも関わらず。

 支配人はいつ俺が出てきてもいいように出発の支度を整え、ロビーで待っていたのだが、朝になっても来なかったので怒り心頭だった。そこへぞろぞろと朝食を食べに降りてきた俺たちを見つけ、笑顔で挨拶した後、そのまま食堂の一角まで連れて来られてこの状態。

 俺とヨーコはともかく、他の4人はとばっちりだ。特にエフィがお冠で後でお菓子をあげないと収まらないかもしれない。



 「…それで、これからどうされますか?」


 ベラの件は一旦片が付いたので、慌てて一ノ島に戻る必要はないのだが、支配人と約束した手前、無理にでも出発する必要がありそうだった。そこでライラ殿に打診をする。


 「ライラ殿。できればすぐにでも出発させて頂きたいのですが、ご都合はいかがでしょうか?」


 ライラは少々呆れ顔で俺にいい返事をしてくれた。


 「しょうがないですね。私を差し置いて勝手にいろいろとフェルエル殿と約束されるとは…。お日様1つ分頂ければ出発できるようにしますよ。」


 そう言って準備を整えるためにエメルダ嬢を連れて戻って行った。


 俺はそれを見届けてから、支配人のほうに向きなおる。


 ラッキーだ。名前がわかった。


 「支配人殿、ヤグナーンまで行かれるとか…。ではお詫びに俺の家で朝食をご一緒しませんか?」


 唐突の質問に、支配人殿は質問の意図が理解できずに目を点にしている。

 俺は、支配人の荷物を受け取り≪異空間倉庫≫に詰め込んだ。その後自室まで支配人を引き連れ、俺も荷物をまとめる。サラ達は特に荷物は無いので、直ぐに準備完了。ヨーコも着換えだけをまとめて俺に預けるだけなので問題なし。後はエメルダ嬢とライラ殿だけだった。

 この時点でも支配人はどういうことかまだ理解できていない。おそらく、≪空間転移陣≫の事は忘れているものと思われる。


 ほどなくして、ライラ殿とエメルダ嬢が部屋を訪れた。これで全員そろった。


 「ライラ殿、馬や馬車は後で俺が運びます。まずはヤグナーンにある私の家に向かいましょう。朝食をごちそうします。」


 そう言って転移陣を起動する。


 あ!と言って支配人は驚いたあと、喜びの表情に変わった。


 「そうですか、私もそれに乗れるのですね。」


 一方ライラ殿は全く分からない表情をしている。初めて見る赤く輝く幾何学模様に少々腰が引けていた。


 俺はサラとフォンを抱え込んで、「えい!」とスキルを発動させ、一気に自宅まで移動した。

 2人を下ろすと指示を与える。


 「サラ、ミンチの用意。フォン、野菜を洗って準備していて。」


 サラはその説明でピンと来たようだ。


 「ハンバーグですね!わかりました!」


 元気な返事を横目に俺はまた「えい!」とスキルを発動させる。

 【人馬宮】に戻ると、説明しようのない顔で驚いている2人、いや3人がいた。


 そうか、ヨーコも初見だったか…。同じ初見のベラは、こういうのでは驚かないんだな。


 エフィとベラ。エメルダ嬢とヨーコと順番に連れて行き、次は支配人とライラ殿の番になった。


 「さあ、次はお二人の番です。恥ずかしいかもしれませんがこちらへ。」


 そう言って俺は二人に手を伸ばした。

 恥ずかしげに恐る恐る俺に抱き付くライラ殿。堂々と俺の足の上に乗ってそのまま体重を預けてくる支配人。

 これは二人の性格の差だろうか、支配人は大胆というか俺の足の上に乗る必要はないのだが…。



 ……あれ?この気…。



 俺は転移した。


 3人はヤグナーンの自宅に移動した。ライラ殿も支配人殿も周りの景色を確認し出した。見るとヨーコもベラも周りを確認している。

 いやそれよりも……。


 俺は支配人に近寄り小声で話しかけた。


 「フェルエル殿。」


 さりげなく名前も呼ぶ。


 支配人は振り向いて俺を見て俺のただならぬ表情に不敵な笑みを浮かべた。


 「何故、貴方から…“神気”を感じるのでしょうか?」


 支配人の表情が一瞬変わった。また元の不敵な笑みに表情は戻している。


 「…。やはり気づかれたか。まあ、貴公ほどであればいつかは気づくと思ってはいたが…。わりと早かったかな。」


 いつもと違う口調。


 「私は生まれつき神気を持つ種族じゃからな。」


 それだけ言って、また周りの景色を確認し始めた。


 「ここは、ヤグナーン北区の商業区画…でございますね?」


 もういつもの口調に戻っていた。



 この人は一体…?



 …これからは、支配人殿との接し方は考えなければならないか。





 俺たちは朝食の用意を始めた。

 サラが用意したミンチ(牛100%)に数種類のスパイス(カルタノオ産)、パン粉(自家製)を加え、粘りが出るまで混ぜ合わせ、薄めのハンバーグを作る。

 焼いている間に、柔らかパンを横に切って、表面を軽く焼く。

 パンに新鮮な野菜を敷き、その上にハンバーグ、その上からトマト(ゼルデン産)をペーストしてハンバーグの肉汁とを混ぜ合わせスパイスを少々加えたオリジナルソースを作り、たっぷりとハンバーグにかけてパンで蓋をする。

 その俺の手際のよさに、全員が目を輝かせていた。

 味もなかなか良かったらしく、支配人殿はソースの程よい酸味を気に入り、レシピを教えて欲しいと言ってメモを取っていた。

 食後は当然デザート。ゼルデンで購入したハルボゼを切って出した。

 新鮮さは失われておらず、甘みも十分にあったが、あまり冷えてはいなかったので俺的にはマイナス点だったが、他の子たちは大満足のようだった。


 この世界には物を冷やす技術がない。氷を作る魔法はないらしく、氷は島のあちこちに点在する洞穴のかなり下層で精製したものを一部の貴族や高級宿泊施設、王宮で使用されているくらいの貴重なものだそうだ。



 氷を作る技術をなんとかすれば、大儲けできるかも。



 食後、俺たちは二手に分かれた。

 と言っても俺、支配人殿とそれ以外に二手なんだが。


 支配人が、ハーランド島に私を運べと駄々を捏ね、ライラ殿はせっかく来たのだから1日ヤグナーンを満喫するとはしゃぎ、結局ライラ殿はヨーコとエメルダに任せ、俺は聞き分けの悪くなった支配人殿をハーランド島に連れて行くことになった。


 俺であれば半日で往復できるんだけど。





 …で、今は俺は海の上を支配人殿と跳んでいる。

 正確には、俺は跳んでいるんだが、支配人は飛んでいる。




 支配人の背には身長よりも長く大きく真っ白い翼が生えていた。


 メイド服姿に大きな翼…。


 なんだろ、この厨二心をくすぐる絵柄は…?俺がときめいている。



 「エルバード殿、これで私がヒト族ではないことが理解できたであろう。」


 空中で空を飛びながらいつもとは違う口調で俺に話しかける。たぶん、これが本来の支配人なのだろうと思う。


 「フェルエル殿、貴女がヒト族ではないことはわかりましたが…あの島へ行くのに俺は別に必要なかったのではないでしょうか。」


 「なに、貴公があの島に行く用事を作って差し上げただけじゃよ。≪空間転移陣≫を作って行くのであろう?」


 確かに、【金牛宮】【宝瓶宮】に転移陣を作りたかったのは事実だ。だが、それで恩恵を受けるのは俺だけであって、支配人殿には特に何もないはず。


 「フェルエル殿、何故貴女は俺にそこまで便宜を図って頂けるのですか。」


 支配人殿は、フフッと笑って答えてはくれなかった。



 島の海岸近くになった。支配人殿は自分の翼を折りたたみ始めた。


 「エルバード殿、ここから先は翼では目立つので、貴公に運んでもらう。うまく受け取れよ。」


 そう言うと、完全に翼を背に仕舞い込んだ支配人はそれっと言う掛け声と共に、俺の懐に飛び込んできた。


 「ちょっ!おわ!」


 俺は危うく支配人殿を落としかけたが、なんとか受け止めた。




 …今まで、一歩引いた位置から俺たちを見ていた人だったから気が付かなかったが、フェルエル殿はかなりの美人だ。

 しかし謎も多く、この若さで10もの宿を各地に展開して、財産を築き上げているし、ヒト族じゃないし、神気を感じるし、メイド服が似合うし。


 「何か考え事か?」


 俺の懐でいい感じで抱き付いているフェルエル殿が俺に声を掛けてきた。相変わらず不敵な笑みををニッと俺に見せている。


 「はい、貴女は何者なんだろう?と考えておりました。」


 フェルエル殿は、クククッと笑う。


 「正直だのぅ。まあ、いずれわかる。私からすればエルバード殿のほうが何者なんだろう?と思うぞ。」


 そりゃそうだ。俺もクククッと笑い返した。人外度でいけば俺の方がはるかに上だし。

 フェルエル殿を抱きかかえ、海沿いにある【宝瓶宮】の屋上へ。華麗な着地のあと、フェルエル殿を降ろした。彼女は軽く服を整えた後、俺を連れて建物の中に入って行った。

 1階のフロントまで降りると懐かしの顔を見かけた。


 「あ、お帰りなさいませ支配人…あー!エルバード様!」


 静かなフロントで割と大きな声を出し、それがこだまのように響き渡る。フェルエル殿がキッと彼女を睨み、一瞬にして小さくなった。相変わらずのドジッ子ぶりだ。


 「やあ、ククル。その様子だと元気だったようだな。」


 支配人に睨まれた後なので、情けなさそうな顔で笑顔を見せた。


 「お耳汚しでございました。此の者には後で指導いたします。」


 スッと間に支配人が入り、俺に頭を下げた。その様子を見てククルも慌てて頭を下げる。


 「構いません、むしろ俺はこの子を気に入っていますので。」


 俺は支配人にそう答え、あまり厳しい指導はしないようにお願いした。支配人は少し不満げな表情を見せながらも了承し、ククルは俺に全身全霊のお辞儀をする。


 「…エルバード殿、かわいい女の子にはお甘いですよ。」


 俺にだけ聞こえる声で支配人殿は、小言を言ってきたが、俺は気にすることなく支配人と奥の執務室に入り、≪空間転移陣≫の設置を行った。

 その後フェルエル殿とベルドの街に移動して【金牛宮】にも同様に≪空間転移陣≫を作成する。

 これで、今行ったことのある十二宮には全て転移陣を設置できた。


 「フェルエル殿、お礼を言います。これで移動がずいぶん楽になります。」


 俺は素直に礼を言って、預かっていた荷物を返却した。フェルエル殿は荷物を一つ一つ確認し、フロントにいた受付嬢に片付けるよう指示を出す。パタパタと手際よく荷物を奥へ運び入れているが、その動線は俺を避けるようになっていた。

 俺はその様子を見て、ため息をついてから、フェルエル殿を見る。


 「…仕方ないじゃろ。普通これだけの荷物を長時間運ぶには、かなりの魔力を消費するぞ。それを平然とした表情で運搬していれば、誰でも恐れるわ。」


 俺の視線を鼻で笑ってはいるが、支配人も最初は驚いていたのに。


 「…俺のコトは口外しないよう指導はしておいてくださいね。」


 それだけは念を押すと、なんとなくやりきれない気持ちを抑えつつ、支配人殿と別れた。別れ際に支配人殿からは、「またよろしく」と言われている。

 こりゃ早く、新しい事業の提案を了承してもらわんと、どんどん俺がこき使われることになるな…。




 俺は領代館の入り口に来た。入り口にいた衛兵に名前と要件を伝え、領代への面会を求めた。もちろん用件はデタラメだが。

 暫くして、入館の許可が出たため、俺は中に入る、記憶のある通路を通り、記憶のある扉の前に案内する。


 「エルバード殿をお連れしました。」


 随伴の兵士が声を張り上げ、中からの返事を待つ。

 カチャリと音がして扉が開き、見覚えのある女性が招き入れた。


 「エルバード様、どうぞ。」


 俺は一礼し、中に入る。扉が閉まり、


 「お久しぶりです。」


 と笑顔で挨拶された。


 「お久しぶりです、マリンさん。」


 はい、と嬉しそうに返事し、俺を部屋の奥へ案内する。いつもは領代の机の前に配置されたテーブルに案内されるのだが、今日はその隣の休憩室のほうに案内された。マリンさんが休憩室の扉を開けて俺を案内し、扉を閉めて鍵をかける。




 …え?




 「久しぶりだな、エルバード殿。」


 声を掛けられて振り向く。休憩室には柔らかそうなソファが置かれており、それに深く座っている女性がいた。


 「…お久しぶりです、ヘリヤ様。」


 俺は太陽神式の礼をする。


 「…ヤグナーンに往ってから、それほど経っていないと思うが…ずいぶんと様変わりした気がするの。」


 「本人は何も変わってないと思っているのですが…成長したと捉えてもよろしいのですか?」


 懐かしげな眼差しのヘリヤ様は俺を見てずっと微笑んでる。俺も久しぶりにお会いできたのでつい嬉しくて気を許していた。

 何気にヘリヤ様はソファから立ち上がり、俺の周りをまわって見回していく。


 「…そうよのぅ。いろいろと増えているらしいからのぉ。奴隷とか、姫様とか、奴隷とか。」


 と言いながら、ヘリヤ様は俺の正面に回り、やや下から見上げるようにまとわりつくような視線を向けた。



 …この人は何でこんなに俺にエロさを見せつけてくるのだろう?



 それに、なんかいろいろ情報を持ってるみたいだ。…でも今の言い方だと、ヨーコの事は知らないみたいだ。


 「しょ、紹介したほうがいいですか?」


 ヘリヤ様は俺のしどろもどろな返事に目を細めて笑みを浮かべる。


 「…無粋じゃのぉ。今ここに私とお前(・・・)しかおらぬのに、他の娘の話をするのか?」


 ヤバい!言葉を誤った!


 「い、いや、マリンさんが…」


 「空気と思え!」


 ヘリヤ様の顔が一気に近づく。どうして?酔ってないのに何でこんなに積極的なの?


 俺はもうパニック状態だった。マリンさんに助けを求める視線を送ったが、マリンさんは笑顔で扉の前に立って俺の脱出をさりげなく阻止している。


 俺はもう一度ヘリヤ様に目を向けた。顔が目の前にある。彼女の腕は俺の背中に回されている…。

 彼女は寂しげな表情を見せた。


 「…こんなにも、寂しいと思うとは思わなんだ…。」


 …もう無理だ。ここで逃げ出したら、一生恨まれるだろうし、なにより男が廃る。覚悟しよう。


 意を決し、俺から唇を吸い寄せた。


 重ね合い、吸い寄せ合い、絡ませ合った。


 濃密な静寂の時間。そこに居るは男と女と空気。流れに身を任せるがままであった。







 ようやくヘリヤ様が背中に回した腕を放し、俺から一歩下がった。


 「…すまぬ。我慢しきれんかった。」


 小さな声でつぶやき、十分堪能したせいか、満足げな表情で俺から離れ、ソファに座り直す。

 俺はチラッとマリンさんを見たが、真っ赤な顔で下を向いて見て見ぬふりの状態だった。

 ヘリヤ様に視線を戻すと何事もなかったかのような顔で、


 「エルバード殿、ここに座るが良い。」


 とソファを勧められた。




 ここは、何事もなかったかのように振舞うのが正解なのか?





 俺はソファに座る。


 「…別に要件はありませんよ。ただ…お会いしたかっただけなんですから。」


 そう言うと、嬉しそうに笑った。


 「構わんよ。気持ちだけで十分じゃ。」





 気持ちだけ?たった今、貪り食ったじゃないの?





 「ナヴィス殿のお話では、マグナールとエイミーが村に駐留しているとか。」


 「ああ、先日挨拶に来たな。『結婚しました』って報告しにな。…殴ってやったよ。」


 …そりゃ殴られるわ。何で独身のヘリヤ様に報告するんだ?




 「この後、ナヴィス殿の護衛で、しばらく王都に行きます。」


 ヘリヤ様の動きが一瞬止まったが、直ぐに普通の動作になる。テーブルに置かれた紅茶を口に含む。


 「…また来てくれるのかえ?」


 「…当然、伺いますよ。」


 「だったら、何も言うことはない。私はそれで十分だ。」


 紅茶を一気に飲み干し、立ち上がってゆっくり歩いて俺の隣に座り直した。


 何も言わずに服を脱いでいく。そして俺の服を脱がしていく。マリンさんがまた空気になる。


 「…さっき、それで十分って言ったじゃないですか。」


 「…すまぬ。やはり嘘はつけぬ。」



 結局、俺たちは空気を前にして、肌を重ね合った。










 俺は領代館をあとにした。もうマリンさんは俺のどこを見ていいのかわからない状態で俺が領代館を出て行くまで視線が泳いでいた。無理もないよ。あれだけの情事を見せられれば誰だって…。

 ヘリヤ様、完全に俺に夢中になっちゃってたよな。いいのかなぁ…まずい気がする……ここ、公共の施設だし………すごくいけないことをした気がする…………。



 ヤグナーンへ戻ろう。



 俺は、何とか気持ちを落ちつけて≪空間転移陣≫を起動する。

 えい、と力を込め、一気にヤグナーンの自宅に移動した。


 日も落ちかけ、そろそろ夕食の時間だが、自宅にはフォンしかいなかった。フォンは床に座って尻尾の毛づくろいをしていた。


 「ただいま、あれ?フォンだけ?他のみんなは?」


 フォンは俺を見つけ、立ち上がる。


 「お帰りなさいませ、ご主人。ライラ様、ヨーコ様は…サラ姉、エフィ、ベラを連れて…買い物に。…エメルダ様は一旦…ご自分の屋敷へ。」


 「フォンは行かなかったのか?」


 「私は…狼族だから…遠慮した。」


 フォンは頭のモフモフ耳をぱしぱし叩いて答えた。確かに彼女がいては目立つのは事実だ。

 俺は何気なくフォンの頭を撫でた。フォンは尻尾をブンブン振って応え、体を俺に預けようした。


 「…?」


 フォンの体が途中で止まり、俺を見上げる。


 「どうした?」


 「……ヘリヤ様の匂いがする。」





 さ、さすが狼獣人。余計な匂いに気づきおったか。俺は平静を装い。フォンを抱き寄せて向こうでの話をする。


 「せっかくベルドの街へ行ったのに、ヘリヤ様やマリンさんに会わずに帰れないさ。」


 間違ったことは言ってない。納得してくれフォン。


 「ご主人…ずるい。私も。」


 俺の願いと裏腹にフォンはヘリヤ様の匂いがする理由を理解し、自分も自分もと…。






 フォン、待ってくれ。今はまずい。


 いつ、誰が、帰ってくるかわからん状況でコトをいたすのは!


 そ、それよりも俺も散々いたして来たので、体力的にちょっと…。


 ああ!服を脱がないで!揺れる大玉は俺を獣に変える!


ヘリヤ様は主人公に夢中のようです。会うたびにあんな調子になると、マリンさんも大変でしょうねぇ。


次話は、王都に向けての準備のお話です。もうちょっとだけ続きます。


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