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弟が作った世界でハーレム人生   作者: 永遠の28さい
◆第四章◆ 無情の竜人少女
60/126

12 デレヨーコ


 俺の横にヨーコがいる。




 …別に賢者タイムに入っているわけじゃない。今も、紐でぐるぐる巻きにされた状態だ。でもヨーコはずっと俺の横にいる。


 「なあ、聞いていいか?」


 勇気を出して声をかけた。


 「何を聞きたいの?」


 「前世のこと」


 ヨーコからの返事はなかなかない。やっぱまずかったか。

 ヨーコが顔をこっちに向けた。やや頬を赤くして微笑んでいる。


 「知りたい?」


 「う、うん…。」


 しどろもどろな返事。だめだ、俺こういうグイグイ来るタイプは苦手だ。咄嗟に反応できない。というか、なんでこんなに急にぐいぐい来るようになったのかもわかんないし。

 「エルのことを教えてくれたら、教えてアゲル。」


 下から覗き込むような目。可愛いもんだからドキドキしてしまう。…まあ、いつかは言わなきゃならんかっただろうし。ちゃんと説明しようか。


 「まぁ、最初に謝らなきゃならんことがあるんだが。」


 ヨーコはきょとんとする。


 「ヨーコはこっちに転移するとき、最初に創造神に会ってスキルを授かったって言ってただろう?…実は俺は違うんだ。」


 ヨーコはよくわからない顔のまま。


 「≪状態管理≫ってスキルは知ってるか?」


 ヨーコは首を振る。たぶん、このスキルは俺だけのスキルなんだろう。


 「こういうものだ。」


 そう言って俺は自分の額をヨーコの額にくっつけて、≪視界共有の眼≫を発動させる。そしてメニューを開いた。


 「あ…。ステータスウィンドウ?」


 「まあ、近いな。このメニューで俺はスキルを付け替えられる。俺のスキルストックはまだこんなにある。」


 アビリティに連なるスキルリストを見せると「え!?え!?」と繰り返していた。


 俺は『アビリティ』について説明して、ようやく最初に戻る。


 「俺は≪全知全能≫≪神算鬼謀≫≪ヘゼラサートの加護≫の3つのアビリティをもってこの世界に来た。しばらくしてから、アマトナスに呼ばれて≪アマトナスの僕≫を受けている。君とは順番が違うんだ。」


 超至近距離でヨーコは俺の目を見つめた。

 「そのスキルはアタシの能力も見れる?」

 俺の心臓はバクバクしてた。たぶんヨーコにも聞こえてるはずだ。可愛い、可愛すぎるぞ。理性が飛んでしまいそうだ。



【ヨーコ】

 『アビリティ』

  ≪アマトナスの僕≫

  ≪剣闘士≫

  ≪破邪顕正≫

 『属スキル』

  ≪硬化≫

  ≪瞬身≫

  ≪空間転移≫

  ≪破魔≫

  ≪一刀両断の刃≫

  ≪迷彩≫

 『固有スキル』

  ≪能力測定≫

 『呪い』

  ≪魂の真贋≫



 俺はヨーコのメニューを開いた。それを≪視界共有の眼≫を通じて見せる。


 ヨーコはじっとそれを見ていた。


 「…でもどうしてアンタは複数のスキルを同時に仕えるのよ?普通は魔力が乱れてできないものよ。」


 「…初めて知りました。俺は普通に3つ4つ使ってます。」


 ヨーコはクスって笑う。


 「アンタの魔力っていったいどんだけあるのよ?」


 「…俺、魔力ゼロなんだって。」


 「はい?」


 「そこらへんが他の転移者と違うんだが、この体もわかるとおり、ホントの俺のカラダじゃない。誰かのカラダなんだ。」


 ヨーコは一旦俺から離れる。縛られた俺を見てる。


 「できれば、外してほしんだけど。」


 「ダメ!」


 「なんで?」


 ヨーコは俺の質問に答えず、また俺の横に来て額を合わせる。


 「魔力は感じるんだけど。」


 「実は神力なんだ。」


 「じん…!」


 「魔力が無くてもスキルを扱えるよう、前世の神様と創造神様は俺に神力を与えたそうだ。そしてその神力を魔力に変換してスキルを発動させているそうだ。」


 ヨーコは目を点にしていた。


 「アンタってホントに人外だったのね。」


 「引いた?」


 「うん。」


 「えと、『呪い』の事なんだけど…。」


 俺は話題を変える。聞きたいことはまだまだあるんだ。


 「≪ブレス≫て呪いなの?」


 『呪い』と聞いてヨーコは俺の『呪い』にツッコミを入れてきた。


 「最初につっこむトコそこ?」


 ヨーコはまたクスクス笑う。そして唇を軽く重ねる。


 「…好き。」


 「…俺には他に女の子がいるんだよ。」


 「…好き。」


 「…まだ増えるかも。」


 「…好き。」


 なんでこんなに彼女は盛り上がっちゃったんだろう?

 言われてうれしいんだけど、理由は教えて欲しい。


 「俺のどこが?」


 「アタシと違ってこの呪いに屈してないトコ。」


 「俺も心が折れそうになるときあるよ。」


 「だから、ハーレム作ってるんでしょ。いいよ、アタシも入ってあげる。」


 また、唇を奪われる。そして微笑まれる。恥ずかしくてしょうがない。


 「…あのさ、いつ言おうかと思ってたんだけど…。」


 「なに?」


 気まずそうにしている俺を不思議そうにヨーコは見た。気づいてなかったのか。


 「君の後ろに、サラとフォンがいるんだ。」


 ヨーコは俺の言葉に驚き、振り返る。無言でベッドに寝転んだヨーコを見下ろす2人がそこにいたのだ。

 とんでもないところを見られた恥ずかしさとこれから何をされるかわからない恐怖でヨーコは顔が引きつっていた。


 サラとフォンはヨーコの手足をベッドに押さえつけ、身動きできないようにして俺に話しかける。


 「ご主人様!こんな子、さっさとやっちゃって(・・・・・・)下さい!」


 「ご主人、同感です。」


 サラとフォンは二人がかりでヨーコを抑えこみ、口も塞いでいた。ヨーコはフゴー!フゴー!と何かを叫んでいる。


 「だから、どうやって?」


 俺は冷静に言葉を返した。

 2人の動きが止まる。ヨーコのフゴー!も止まり、押さえつけられていた体を起こす。


 「アッハハハハハハ!」


 ヨーコは大笑いした。


 「サラちゃん、フォンちゃん、ごめんね。どうしても2人きりになりたかったの。もう満足したわ。貴方達のご主人様をお返しします。」


 ヨーコはぺこりとお辞儀をします。サラとフォンはどうしていいのかとお互い目を合わせていた。ヨーコは頭を下げたまま。俺はどう声を掛けていいのかわからない。しばらくシーンとした空気が流れる。

 サラとフォンの2人はお互いにうんと肯いて立ち上がり扉へと向かっていく。


 「ヨーコ様、お騒がせしました。私たちは寝ますので。お休みなさいませ、ご主人様。」


 2人は頭を下げる。


 「…サラちゃん、アタシは仲間として認めて貰えたと思っていい?」


 サラはニコッと微笑んだ。


 「当然です。ご主人様を好きなヒトに悪い人はいません!」


 横でフォンも肯く。なんだよ、その方程式は?でもヨーコは嬉しそうだ。まあ、今までずっと一人だったんだもんな。しょうがないか。


 2人はもう一度お辞儀をして寝室を出て行く。俺とヨーコは目を合わせる。


 「…この紐解いて…」


 「絶対ダメ!」


 「…。」






 ヨーコは俺のベッドで並んで寝転ぶ。そして幸せそうな顔で俺に微笑む。いつしかそのまま寝息を立てていた。俺は、縛られたまま可愛い子を目の前にお預け状態で一晩を過ごすことになった。






 なんでチューまではOKで、その後はダメなんだよぉおおおお!






 翌朝、ようやくぐるぐる巻きから解き放たれ、風呂に入り礼服を着て身だしなみを整える。

 寝不足で多少つらいがこれくらいなら≪心身回復≫で対処。

 そしてライラ殿に伴われて領主館へ。



 「…その、昨日はすみませんでした。」


 俺は素直に謝る。


 「わざとじゃないですし。もういいですよ。…忘れて下さい。」


 「いや、それは無理…」


 ライラ殿は振り返った。俺は体をビクッとさせた。


 「変態さん、て呼ばれますよ。」


 ライラ殿の口調は普通だが、艶めかしく聞こえる。俺だけかもしれないけど。



 俺たちは、領主館に到着し、衛兵の獣人に要件を伝えると、別室に案内されここで待つように言われる。それから、ずいぶんと待たされた。ライラ殿は慣れているのか平然としてじっと待っている。俺は落ち着きなく立ったり座ったり壁に掛けられた絵を見たり。

 ようやく扉が開き、衛兵獣人が俺たちを呼んだ。そのまま衛兵獣人に囲まれて領主館の中を歩いていく。豪華な扉の前に案内され、扉の前に立つように言われた。


 「ライラ殿、エルバード殿をご案内いたします。」


 衛兵が声を張り上げ、扉が開けられる。


 ≪光彩≫で明るく照らされた部屋で壁には国旗と思われる大きな旗が貼られている。その前に豪華な椅子に座った犬獣人がいた。


 「…入られよ。」


 犬獣人の声でライラ殿が前に進む。俺はその半歩後ろを進み、部屋に入った。後ろで扉の閉まる音がする。

 部屋の四隅には槍を手にした衛兵獣人、豪華な服を着た犬獣人の隣にしわくちゃの顔をした犬獣人。


 部屋の中央でライラ殿が止まり、片膝をついて一礼する。俺も合わせて一礼した。


 「…貴公がライラ殿の護衛、エルバード殿か。」


 「はい。」


 「余がゼルデン公爵バルハイだ。」


 俺は更に頭を下げる。くっそ、公爵だよ。貴族には関わりたくないのに…。


 「近う。」


 俺はライラ殿の半歩前に進み、そこで膝をつく。顔は下を向けたまま。


 「此度の活躍、公爵としても感謝しておる。陛下におかれては十分な褒美を出すよう言われておる。」


 「誠に光栄の極み。」


 「余って金貨千枚と、“ゼルデン開拓の勇者”の号を与える。」


 俺は更に頭を下げる。


 「ありがたき幸せ。」


 「面を上げよ。」


 俺は少しだけ顔を上に上げる。横にいるしわくちゃ犬獣人は見えた。


 「…ヒト族でありながら獣人の地にて号まで受けるとは。世も末…」


 しわくちゃ犬獣人が文句に近い言葉を吐くが、途中でゼルデン公爵が制した。


 「控えよ、バルム老。陛下のご決定に異を唱えるのか。」


 そう言うとバルム老と言われた犬獣人は黙り込んだ。



 ≪魂の真贋≫が勝手に発動した。



 しわくちゃ犬獣人の胸に黒い玉が浮かび上がった。


 なんでこのタイミング…?というか公爵の側近みたいな人を手にかけるのはかなり問題だよ。ちょっとあとでヨーコにも相談しよう。


 「陛下の覚えめでたき者などそうそういない。余も貴公の顔と名は覚えたぞ。」


 「は。」




 公爵との謁見は以上。


 部屋を辞し、衛兵に連れられ別の部屋へ。そこで金貨千枚の入った袋を渡され、お仕事完了。

 号というのは、特に活躍の目覚ましい兵士に叙勲の代りに与えられる称号の事で、国家体制の中では正式な勲章ではない。だが記録としては残るので名誉なことらしい。


 俺的には不名誉だけどね。




 宿に戻ってきたら、ヨーコがワンワン泣いていた。よくわからないが、サラとフォンにしがみ付いている。

 そして俺を見つけると俺にもしがみ付いて来た。


 「ねぇ!お願い!昨日のことは忘れて!アタシ、酔っぱらってたんだと思う!だから!」


 泣き叫ぶヨーコを横目にサラに視線を移す。


 「どうやら昨日のことは酔っぱらってて覚えてないと言われるのですが…。」


 そりゃ嘘だ。そんなやつが泣いて「忘れて」なんて言うかよ。覚えていて恥ずかしいから「忘れて」と言ってんでしょ。


 「あ~ん!お願い、サラちゃん!フォンちゃん!ええええエル!忘れて!」


 俺たち3人は口を揃えて答えた。



 「「「いや、無理」」」



 だいたい、俺のことをエルって言ってる時点で覚えてるんでしょ。

 まあ、フォローしようか。


 「ヨーコ、お仕事手伝ってくれたら忘れて差し上げますよ。」


 「ホント!やるやる!何!」


 調子いい…。


 「夜にならないとできないんだけどね。」


 ヨーコの顔に警戒感が現れた。







 夕食は昨日と同じく部屋に持ってきてもらってみんなで食べた。でもヨーコが食事を持ってきたウサミミメイドには会わせてくれなかったのでふてくされていた。


 「それで、仕事ってなに?」


 ソファに寝転んでいた俺にヨーコは話しかける。サラ達はテーブル上の食器を片づけていて、多分会話は聞いていない。


 「…黒い魂を見つけたんだ。」


 ヨーコは顔を強張らせた。


 「けど、ちょっと厄介なトコにいる人でね。」


 「…どこなのよ。なんとなく察しはつくけど。」


 「…ゼルデン公爵バルハイの側近バルム老。」


 ヨーコはしばらく考え込んでいた。


 「…また、嫌われ者のようね。」


 「また?」


 「うん、あたしが見た黒い魂の奴って、ほとんどが周りから嫌われてた人だったの。だから殺された後も、自業自得的に扱われていて…。」


 うーん…。当てはまる様な当てはまらないような。

 やはり、一定のルールはあるのだろうが、もうちょっと情報がほしいな。


 「さて、行きますか。」


 俺はヨーコの手を引っ張り部屋から連れ出す。けれどヨーコの方は乗り気ではない。


 「なあ、できればこれから黒い魂に関することは二人でやっていかないか?その方がお互いの心の負担も軽減できるだろうし。支えてあげたいし、支えてもらいたいし。」


 ヨーコは顔を赤らめる。昨日の事もあるから、こういう言い方をされると恥ずかしいのだろうか。


 「うん…わかった。」


 最初だから、あまり無理させず、俺がやるか。


 俺はヨーコを抱え上げた。


 「な!ちょ、ちょっと!」


 慌てるヨーコを無視して≪気脈使い≫で宙を蹴る。地面がどんどん離れていく様子を見て、ヨーコは慌てて俺にしがみ付く。その必死度合いはハンパない。見ていて楽しい。


 「ヨーコ、もうちょっとおとなしくしてくれよ。でないと落っことしちゃう。」


 「そんなこと言ったって!無理に決まってるでしょ!何なのよこのスキルは!」


 ヨーコは足をバタつかせ、俺の髪の毛を引っ張った。


 「アンタ、ホントに人外すぎるんだよ!一体何者なの!?」


 「ゼルデン公爵からは“ゼルデン開拓の勇者”の号を頂いた傭兵だ。」



 俺がそう答えた瞬間、目の前が真っ白になり、視界を奪われた。



 気づくと、真っ白い世界に立っていた。




 ヨーコと2人で。




ヨーコは大胆でしたが、キス以上はさせてくれませんでした。

なぜでしょうかねぇ。


“この世ならざる者”の2人はそろって白い世界に来てしまいました。

このあとどうなるのでしょうか。


次話は、アマトナス様との会話+αです。


ご意見、ご感想を頂ければ、幸いです。

あと、外伝の要望もよろしくお願いいたします。

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