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弟が作った世界でハーレム人生   作者: 永遠の28さい
◆第四章◆ 無情の竜人少女
59/126

11 精霊との契約

何度も言います。この物語はファンタジーです。



 翌朝、げっそりしたライラ殿が宿に帰って来た。

 どうやら俺が盗賊団のアジトから見つけた財宝の仕分けをやらされていたらしい。

 俺を見て恨めしい目をする。


 俺のせいじゃないし。


 ライラ殿から仕分け後の討伐者のモノにできる財宝を受け取った。


 これで俺の≪異空間倉庫≫に入っているものは、


 武器・防具類:42

 服類:33

 宝石:21

 金貨:3149

 銀貨:1330

 食糧:6名約1ヶ月分

 その他:76


 となった。


 装備品や宝石類は、ナヴィス殿の伝手で元の持ち主に順次返還していたので、だいぶん数が減っている。貨幣も出費続きでずいぶん減っていたが今回ので幾分補填ができた。


 中でも名前しか表示されない武具。4本持っている。ここへ来てようやく俺は気づいた。



 …これは“プレイアデスの7姉妹”だ。


 あんまりメジャーではないからすぐにわからなかった。

 マイア、エーレクトラー、ターユゲテー、アルキュオネー、ケライノー、ステロペー、メロペーの7人姉妹。その名を冠した武具だ。つまり全部で7本あることを示している。


 アルキュオネーの長槍

 ステロペーの楽弓

 メロペーの戦斧

 エーレクトラーの鋼槌


 俺は長槍を、フォンは楽弓を使っているが、かなり性能もいい。


 長槍は、伸縮自在の機能があるし、楽弓は矢要らず。恐らく戦斧にも鋼槌にもなにかしらの機能があると思われる。


 これは絶対に伝説の武具だ。


 俺はそう解釈して、残りも探すことを決意する。


 俺が武具を並べてニヤニヤしている時、ヨーコと目があった。

 ヨーコはにんまぁと笑って、


 「変態。」


 とだけ言って目を逸らした。



 あれ以来、俺は完全に嫌われていた。誤解は何とか解けたがあんな場所にベラを連れて行って失禁させるなんて変態以外何者ででもないと、一喝されてしまった。

 ライラ殿にもベラの事をちゃんと説明したのだが、


 「確かにそれはエルバード殿が悪いですよ。」


 と擁護してくれなかった。



 結局変態扱いのまま、開拓地を出発する。帰りは馬車2台になり、多少移動速度が上がっていたので、夕方にはゼルデンの街に到着しそうだった。


 道中、やることもないので、これまでのいろいろな問題を整理する。



 氷狼(フェンリル)については、俺の支配下になることを了承した。それにより≪魔力修復≫を使って俺が破壊した腕輪を修復する。材料は氷狼達の爪だった。結局氷狼は大小合わせて10匹いた。1つの腕輪に1匹ずつ宿っているらしい。10個の腕輪の付いた腕当ては、円形の盾を追加する形で防御機能を強化して修復した。

 氷狼達は文字通り凍り付いていた。それを見て黒竜は笑っていたが、お前もだろうと突っ込むと何事もなかったかのように黒剣の中に消えていった。


 盗賊どもに一律掛かっていた≪氷狼の制約≫という呪いは、迂闊に腕輪のことをしゃべらせないようにする呪いらしい。氷狼達は盗賊どもからは呪いを解除している。


 そして氷狼達を支配下に置くことで『固有スキル』に≪氷の武術≫というスキルが付いた。



 次はエメルダ嬢の事だ。あの件で今は多少さけられているが、彼女は確実に俺に好意を持っている。だって俺の唇に…。

 でもどうしようか。彼女はヤグナーン伯爵の者として立派になってもらわなければならない。ならないのに素性のわからない傭兵と恋に落ちたなんて騒がれたら…。

 伯爵様に申し訳が立たない。彼女には俺のコトは単なる成長の糧として素通りしてもらわなければ。


 …でも、可愛いんだよなぁ。


 ああ!俺がこんな優柔不断だからいけないんだ!彼女には手は出さない!…多分。


 よし、次行こう次!



 開拓地の件。俺に助けられた奴隷たちはライラ殿の話ではかなり従順になっていたそうだ。連れて来た30人もだ。

 多分、俺の人外モードを見てなんだろうと思うが。余計な噂が立たないことを祈る。ヨーコに言わせると「フラグが立った」なのだろうか。

 結局、あの地で使役した奴隷たちは開拓村完成後に解放され住民として住むことが許されているらしい。住居といくらかの補助金も出るそうだ。だが、元奴隷たちが住む村と印象づけられる恐れがあるため、このことはトップシークレットになっている。やはり獣人の国でも奴隷に対する偏見的なものはあるようだ。


 そして、国王陛下の件。忙しいお方なのか既にゼルデンに戻ってしまっており、あれ以来ご尊顔を拝することはなかったのだが、俺としては余計な人と知り合ったと思っている。フォンがあの場にいなくて本当に良かった。

 後はゼルデンの領主館で褒美をもらうだけだが、もう余計なことに巻き込まれないよう、ゼルデンに戻っても宿屋からは一歩もでないようにしよう。うん、そうしよう。



 そしてベラ。


 彼女は今は普通にみんなと接している。流石に長い間外の世界を経験していないことから知識不足、常識不足のところはあるが、なんとかやっていけそうだ。そのかわり俺は変態扱いを受けているのが悲しいが…。


 俺はもう一度手のひらを見た。昨日、この手のひらにスライムのようない光る物体が吸い込まれていった。

 【人馬獣】はそれを【ウンディーネ】と呼んだが…。あまりにも想像と違い過ぎて、それが精霊だとは実感が持てない。誰かに話をして聞いてみるか…。


 俺はバーバリィの上から馬車に向かって声を掛けた。


 「ヨーコ!」


 暫く経ってから馬車の小窓が開く。


 「…何よ。」


 完全に汚らしいモノを見る目だ。非常につらい。


 「ちょっと見て欲しいモノがあるんだ。ヨーコの意見を聞きたい。」


 ヨーコは俺の顔をじっと見た。何故か顔を赤らめてる。


 「…いやらしいモノじゃないでしょうね?」


 何を想像したんだ?


 「真面目な話だ。」


 ヨーコはしばらく考えて、パタンと小窓を閉じた。その後後ろの扉が開く。


 俺はバーバーリィを側につけて馬車に飛び乗る。ヨーコは俺から距離を置いて座った。サラもフォンもエフィも俺を見た。

 俺はまずエメルダに声を掛ける。


 「エメルダにも後で見せるから、今は御者に専念してくれ。」


 こういう時は最初に見れない人に声を掛けた方が返って安心感を持たせることができる…でもなんで気を使わなきゃいけないんだ…。


 俺はみんなが見える位置に座る。


 「見て欲しいのはこれだ。昨夜、【人馬獣】から譲り受けたものなんだが…。」


 そう言って俺は右の手のひらを上にした。そして出てこいと念じる。

 うねうねとした青く光る物体が手のひらから湧き出てきた。


 「うわ…なにこれ?…気持ち悪い。」


 ヨーコは嫌そうな顔をして少し離れる。


 「【人馬獣】はこれを【ウンディーネ】だと言ったんだ。」


 全員が俺の顔を見る。その目はうそでしょ!と言っている。


 「いや、みんなのその目はわかる。俺も信じられない。だが、精霊について誰か知らないか。なんでもいいんだが。」


 「そんなもの嫌がらせにしか思えないわよ!」


 俺はヨーコを見やる。


 「…【人馬獣】が?俺に?何のために?」


 「それは…。」


 ヨーコも答えることはできない。勢いで言われても困るんだよ。俺は確実な情報が欲しい。


 「エフィ、エルフ族の言い伝えのようなもので精霊に関して何か知らないか?」


 エフィは首を振った。


 エフィは古典とか歴史とか伝統とかには興味ないもんな。期待しても無駄か。


 「サラは?」


 「えと…歴史上、精霊と契約した人物は何人かいますが、その中でも魔道士バンディーヌは精霊の力を使って魔獣も従えていたとも…。」


 「サラ!それだ!」


 俺はきょとんとするサラをほったらかして青い腕当てを取り出す。腕輪の1つから深い青色の氷狼が顔を出した。

瞬間的に、ヨーコとフォンが身構える。俺はそれを制す。


 「人外ノ者ヨ、何カ用カ?」


 頭だけ顕現した状態で好意的とは言い難い口調で話しかける。その氷狼に右手のウネウネを見せる。


 「オ、【ウンディーネ】デハナイカ。久シブリニ見タナ。シカモ、ダレトモ契約シテイナイ処女。ドウヤッテコイツヲ?」


 なんだか嬉しそうにしゃべっていた気がするが、それには触れずに


 「神獣より貰った。みんな精霊を見るのが初めてなもんで…。」


 俺の言葉に首だけ氷狼が見上げて俺を見る。


 「神獣カラ…?…貴様、一体何者ナノダ?」


 それはちょっとここでは言えない。


 「お前を満足させることのできる主だと思ってくれていいんだが。」


 氷狼は目を細めた。俺をじっと見て何やら見定めているようだ。


 「…言イ方ガ気ニ入ッタ。貴様トイルト楽シソウダ。何ヲ知リタイ?」


 氷狼は腕輪から前足まで顕現した。ちょこんと出た前足が下に足れる。



 …なにこれ、ちょっと可愛い。



 「精霊と契約ってできるのかな?」


 「適正ト相性ガアレバデキルゾ。精霊ハコノヨウニ不定形ダガ、姿ヲアタエルコトデ契約ガ成立スル。貴様モコノ精霊ニ向カッテナッテホシイ形ヲ思イ浮カベテ見ルガ良イ。」


 なってほしい形…。



 決まっているじゃないか!


 ボンッキュッボンッでちょー可愛くてキワドイ水着で水のような羽衣を羽織ってて足には水かきがあって背中には飛ぶための羽根があって…



 スライムが慌ただしく動き始めた。


 (あなた様が見せてくれた姿…気に入りましてございます。)


 頭の中に声が響く。思わず周りを見渡すが誰もいない。そうしてる間もスライムがぐにぐにと波打つように激しく揺れる。


 そして、ポン!という音と共にちいさな人形のような青い肌をした女の子が飛び出した。全員が俺の手のひらから飛び出した女の子を見ようと集まった。


 「お、おいエメルダ!なんでお前までいるんだよ!」


 なんと御者をお願いしていたエメルダまで見に来てる。エメルダはバツ悪そうに前を指さす。見るとエメルダの代りにベラが御者の位置に座っていた。


 「きゃー何これ!?ちょー可愛い!!」


 エメルダを注意しようとしたが、ヨーコが小さな女の子を見て騒ぎ出した。

 だが、女の子はよヨーコを無視して俺の方を向く。


 「初めまして、エルバード様。【ウンディーネ】のパミルと言います。素敵な姿をありがとうございます。パミルは貴方様と契約いたします。」


 ぺこりとお辞儀をした。サラとヨーコとエメルダがキャーキャー言ってる。パミルと名乗った女の子はうるさそうに見ながら俺の手のひらに乗った。


 あれ?手のひらにまだ蠢くスライムがいる…。


 「エルバード様、【ウンディーネ】はもう一人います。どうかこの子にも新しい姿をお与えください。」


 また、ぺこりとお辞儀をする。


 キャーキャー騒ぐ外野。俺はまず外野を黙らせた。

 手刀を脳天に叩き込んでいく。


 「ちょっと黙ってくれ。この子の声も聞こえないし。」


 特にヨーコは不満そうな顔をしたが3人とも黙り込んだ。

 俺は手の平でウニウニしているスライムを眺めた。そしてひらめく。


 「パミル、このエルフの子に契約させることもできる?」


 パミルはエフィを見た。エフィはパミルと目が合い、あたふたする。パミルは小首を傾げながらエフィを見つめる。


 「うーん…。エフィ様も≪水魔法≫の適正がありますので、相性さえあえば可能ですが。」


 「エフィ、やってみるか?」


 エフィは状況が理解できていないらしい。視線が俺とパミルを行ったり来たりしていた。


 「エフィ、落ち着こうか。」


 俺は片腕でエフィを持ち上げ、俺の前に座らせる。ちょうど俺を座椅子のようにしてエフィは座った。ヨーコがいやらしい目つきをするが、今は無視する。


 「エフィ。精霊と契約してみないか?」


 エフィの目の前にウネウネと動くスライムを持っていく。エフィはごくりと喉を鳴らした。うねうねとその隣のパミルを交互に見て肯く。


 「妾も…やってみる。」


 パミルは嬉しそうにした。


 「エフィ様は他人より大きな魔力をお持ちです。魔力を主食とする我ら精霊にとっては嬉しいことです。」


 エフィは俺を見る。俺はうんうんと肯く。エフィは目を閉じた。


 スライムが慌ただしく動き始めた。ぐにぐにと波打つように激しく揺れる。ポン!という音と共にちいさな人形のような青い肌をした女の子?が飛び出した。


 俺が生み出した姿とは大きく異なり、女の子というより大人の女性の雰囲気。例えるなら聖マリア像を連想するような姿。


 「初めまして、エフィ様。【ウンディーネ】のミスラと申します。かような素敵な姿を頂き誠にありがとうございます。ミスラは貴女様と契約いたします。」


 ミスラと名乗った精霊はエフィに向かってお辞儀をした。


 「へへ…。母様(ははさま)…。」


 エフィは目に涙を浮かべて笑った。俺はエフィの頭を撫でてやった。嬉しそうにエフィは俺にもたれかかった。


 「あっ!」


 サラが声を上げる。でも嬉しそうなエフィを見て口をつぐむ。見るとフォンも震える拳を必死に抑えていた。


 俺に甘えるようなしぐさを見せるエフィなんて2人は見たことないだろう。嬉しそうに精霊を見つめる彼女を見て嫉妬心や怒りを覚えたのだろうが、必死に抑えていた。俺の下で共存するための暗黙のルールみたいなものなんだろうな。こういう時は俺が気を使ってやらなければ。


 「エフィ、よくやった。だがいつまで俺にもたれかかってんだ?」


 言われて初めてエフィは気づく。顔を真っ赤にして、


 「ちょ、ちょうどいい背もたれだった、だけだからね!」


 といって、俺から離れた。ヨーコが腹を抱え口元を抑えて笑いを堪えていた。俺と同じ日本人からすれば、ここまで教科書通りのツンデレを見せられては、我慢もできないだろう。俺は慣れたけど。


 「フェンリル、助かったよ。礼を言わせてくれ。」


 俺は置いてけぼりにされていた氷狼に頭を下げた。意外そうな顔をしていたが、フンと鼻息を1つして、俺から視線を外した。


 「…マアイイ。」


 意味深な言い方をして、すうと消えていく。


 こうして俺とエフィは精霊と契約をした。だが、これがどれほどの大きな意味を持っているかを知らなかった。




 セルデンに到着し、ひとまず【人馬宮】に戻る。俺は先頭をきって宿に入って行きウサミミメイドに挨拶する。笑顔で「お帰りなさいませ!」と返事をもらい、とびっきりの笑顔でウサミミメイドと宿泊の手続きを…イテテテェ!


 斜め後ろから俺の耳をおもいっきり引っ張るヨーコ。

 痛い!ちょっと、なんで怒ってんの!


 前と同じ部屋を取り、前と同じ部屋割りで一旦休憩する。ヨーコが俺と一緒になるのを嫌がるかと思っていたが、何も言わなかった。それはそれで怖いのだが。俺はそれよりも夕食についてヨーコに提案した。


 「夕食は部屋に持ってきてもらわないか?正直これ以上、この街でも目立ちたくない。外に出るとえらい目に会いそうなんだ。」


 ヨーコは顎に手を当てた。


 「…それもそうね。ライラ殿にも一緒に食べてもらう?」


 「ライラ殿にも都合があるだろうから、聞いてみようか。」


 そう言って、俺は隣の部屋に向かい、扉を開けた。


 「ライラ殿、今日の夕食…なん…です…が…」



 やってしまった。ノックすべきだった。気を抜いていた。



 ライラ殿は一糸まとわぬ姿で、タオルで体を拭いていた。

 こういう時ってお互いに硬直するんだよね。そして女性側の悲鳴で硬直が溶けて男の方があたふたして…。


 でも俺の場合は違ったよ。ライラ殿を見て固まっている俺の後ろにいたヨーコが蹴り。側面から多分エメルダ嬢だと思うが蹴り。後はもう覚えてない。足の数からしてもう一人いたと思うけど多分エフィだろう。


 俺は簀巻きにされ紐でぐるぐる巻きにされた。


 「頼む!俺が彼女らにご飯を渡さないと食べられないから!」


 “奴隷は、主以外の者から衣食住の提供を受けてはならない”


 俺はこの法を盾になんとか夕食だけはあり付こうとヨーコにお願いした。

 夕食を運んで来たウサミミメイドにも会わせて貰えず、食事を奴隷たちに渡した後、ヨーコによって寝室に連れていかれ、またぐるぐる巻きにされた。



 ぐすん…。





 夜…。


 俺はふて寝をしていた。


 ノックの音が聞こえ誰かが寝室に入ってきた。


 ヨーコだった。彼女は風呂に入ってきたのだろう、頭にタオルを巻いていた。服装は膝下までの赤みがかったワンピースである。


 「…楽しそうだったな。」


 俺はヨーコをチラッと見ただけで布団に顔を押し付けふてくされた。


 「楽しそう、じゃなくて楽しかったわ。」


 嫌味な奴だ。俺は返事もせずじっとしていた。


 「ライラ殿は怒ってたか?」


 「…最初わね。でも大丈夫よ。」


 「……そうか。」


 俺はヨーコに背を向けた。


 「…ライラさんの裸、綺麗だった?」


 「…。」


 「欲情したの?」


 ブホッ!ごほっごほっ!


 「そ、そんなはずないだろ!確かに綺麗だけど、そういうのとかじゃなくて…」


 「ふ~ん?」


 しばらく沈黙が続く。


 俺の横に何かを置いた。いい匂いがする。俺は匂いに釣られて顔を上げた。

 パン、肉、スープ、葡萄酒、野菜と果物が乗ったトレイが置いてあった。お腹がぐうと鳴る。


 「アンタの分もちゃんと頼んでたんだから。」


 俺はヨーコを見た。


 「…どうやって食べろと?」


 紐で縛られて両手両足が使えない俺をヨーコが見る。何か思いついたような顔をして、くすっと笑った。


 「フフ、食べさせてあげる。」


 そう言って、パンを適度な大きさに千切り、俺の口元に近づける。


 「はい、あーん。…いらないの?」


 可愛らしく首を傾けて俺に問いかける。


 俺は口を開けた。その中にヨーコはパンを放り込む。スプーンでスープを掬って俺に飲ませる。肉を細かく切って俺に食べさせる。葡萄酒の入ったコップを持って俺の口に含ませる。

 甲斐甲斐しく俺の食事を手伝った。


 「フフ…こうしてると恋人同士みたいね。エル、って呼んでいい?」


 ヨーコは楽しそうに笑う。


 …ワザとだ。絶対ワザとやって俺を恥ずかしがらせているんだ。


 「どうしたのエル?お顔が真っ赤よ。葡萄酒を飲み過ぎたのかしら?」


 今までに聞いた事のないような口調で話しかけてくる。俺は答えない。いや、答えられない。


 食事を全部食べさせられ、口元をフキンできれいにされ、俺の横に並んで寝転ぶ。ヨーコの顔が目の前…。



 「うふ!この後…どうしたい?」



 屈辱的だ。この状況から逃れなければいけないのだが、全く思考が働かない。目の前にいる風呂上りのいい香りのする女の子に完全に意識が持っていかれて何もできない。


 ヨーコは俺の簀巻きを転がして仰向けにした。そしてその上に跨って抱き付いた。そして顔を俺の耳元まで近づけ、


 「ねぇ、この紐…解いてあげようか?」



 これで俺の思考は完全に停止した。



 「へへっ!アタシもその気になれば、アンタぐらい簡単に落とせるんだから。」


 そう言っていつもの口調で笑みを浮かべた。


 やっぱり、ワザとだった。でも、俺は完全に彼女にハートをわしづかみされていた。


 「べ、別にライラ殿に対抗しなくてもヨーコは十分可愛いよ。」


 「ふ~ん?」


 ヨーコはもう一度俺に跨りゆっくりと体を預けていく。ちょ、ちょっと!


 「…アタシもアンタのハーレムの一員なんだよ。わかってる?」



 …はい?



 な、なに言ってんですか?ちょ、ちょっと!それ以上顔を近づけたら、唇が!あの!うぷっ!




 ヨーコはホントに俺にキスをした。




 俺のコト、嫌いじゃなかったの?


 もう…わかんない。

作者は悩んでます。

恋愛タグ付けたほうがいいのかと。


ヨーコは基本的にさみしがり屋なので、フォンとは違った大胆さをもっているようです。


次話はヨーコとの楽しい?時間、後編です。


ご意見、ご感想を頂ければ、幸いです。

あと、ご希望の外伝があれば、ご連絡ください。

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