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弟が作った世界でハーレム人生   作者: 永遠の28さい
◆第三章◆ 孤独の耳長少女
42/126

10 前夜祭

すいません、投稿遅れました



 ヴァルムントの市が始まる。



 今日はその前夜祭ということで、盛大な祭りが開かれている。州令館を中心に色とりどりの≪光彩≫で明るく照らし出されており、ここからでも、にぎやかさが伝わってくる。祭り独特の音楽や人々が騒ぐ声がここまで聞こえてくる。



 俺はそんな楽しげな夜に【双魚宮】の部屋に引きこもっている。

 窓からにぎやかな外の明かりをぼーっと眺めている。


 原因はこいつらだ。


 エフィ。何かにつけてみんなにつっかかっては返り討ちに遭っている。正直おとなしくしてほしい。


 フォン。今一番の問題児だ。≪エルフへの多情多恨≫のせいで、直ぐにエフィに襲い掛かってしまう。その間は意識が朦朧としている為、自分で制御が効かず、下手をすればエフィを傷つけることもある。


 サラ。いやこいつは今回珍しく何もない。むしろ俺のかわりに必死に暴走狼娘(フォン)を身を挺して止めてくれている。


 ベスタさん。この人も意外と厄介だ。俺の奴隷じゃないから、いろんな制約事項に引っかかってしまい、一人にはできない、俺と二人きりにもなれないし、ほっとくこともできない。


 そしてエメルダ嬢。今は父親であるヤグナーン伯爵に同行して前夜祭に出席しているので、ここにはいないが、ヴァルムントに滞在中は俺の同居人なのだ。それでもって結構悩みを抱えている。



 でも一番の問題は、俺か…。

 いま俺は“人外のチカラ”をうまくコントロールできていない。ちょっと感情が高ぶると相手が怯えるほどの化け物のような力が出てしまう。最近わかったが、スキルを使わなくても、腕の力や足の力だけで簡単に命を奪えるほどにまでなっていた。

 ここまでくると、もう人とのコミュニケーション自体が危険だと思ってしまう。


 どうしたものか…。



 「あーあ…。妾もあそこに行ってみたいなぁ…。」


 気が付くと、俺の隣でエフィが俺と同じようにため息をついて外を眺めていた。


 「今は危険なんだ。我慢してくれ。」


 「…わかってるわよ。愚痴くらいは言ってもいいじゃない。」


 エフィがエウレーン公爵の妹だということは絶対に秘密にしなければならない。あんな人の多い場所にのこのこと出て行ったらエフィの顔を知っている人間に遭えば即アウトになってしまう。本人もわかっているので行くことはないだろう。

 だが、このままでは病んでしまいそうだ。


 「…そうだ。お前のスキルのこと聞いていいか?」


 「嫌じゃ!」


 スキルの話になるとエフィは「嫌じゃ」の一辺倒だ。その度に俺はエフィの両頬をつまみ上げる。


 「聞いていいか?」


 「……どうぞ。」


 エフィは頬を摘まれたまま答える。


 「エフィは魔法が使えるのか?」


 「……使えないわ。」


 「スキルを持ってるのに?」


 「うるさいわね。スキル持ってても修練しないと練度が上がらないのよ!」


 「エフィは修練をやらなかったわけだね。」


 エフィは答えない。目が泳いでるから正解だろう。


 「樹魔法って何?」


 「水魔法と土魔法を組み合わせてできる特殊な魔法よ。適性がないとできないものよ。妾は適性があるのじゃ!」


 得意になっているが修練しなきゃ意味はない。しかし、魔法を組み合わせるって…。




 血○限界かよ!




 「≪長命≫は?」


 「し、知らないの!エルフとドワーフには必ず備わる固有スキルで長期に渡って若い肉体を維持できるのよ。」


 ほう、それはすばらしいな。でも種族固有のスキルなのか。





 では……。




 「≪3拍子の~≫…」


 「嫌じゃ!」


 即答。おもいっきりつねられることも恐れず即答するということは相当嫌なんだな。めっちゃ睨んでるし。


 「…エフィ、魔法の修練やろうか。」


 俺は話題を変えて魔法の修練について話をふる。


 「でも、修練には魔法を使える者から教わらねばならんから…。」


 「俺、使えるよ。」


 「へ?」


 エフィはびっくりした表情になる。だがそれ以上に突っ込みを入れてくる奴がいた。


 「なんですって~!」


 どこで話を聞いていたのかサラが俺の背中に飛びついて来た。


 「ご主人様!いつ取得されたのですか!何故サラに見せて頂けないのですか!サラは見てみたいです!ご主人様!」


 俺の背中で大声で喚いて暴れるサラ。…めんどくさい。


 「わかったわかった!見せてやるから降りろ!ていうか、フォンをほったらかしにするなよ!またエフィに襲い掛かるぞ!」


 「大丈夫です!」


 と言ってサラは部屋の奥を指さす。


 俺とエフィはサラの指さすほうを見た。




 フォンは全身を紐でぐるぐる巻きにされた状態で天井から吊るされていた。

 フォンは吊るされながらも全身を動かしている血走った目でうーうー唸りながらエフィを睨み付けている。

 だがそんなフォンの顔よりも、動くたびに上下左右に大きく揺れる2つの大玉に俺は釘付けになる。




 サラよ。何故フォンの大玉をあからさまに強調するような紐の巻き付け方をするのだ?





 どうにかフォンを落ち着かせて、俺たちは宿の裏手にある山に入る。もう夜なので、そんなに奥にはいかずに、適当なところで≪光彩≫を使って明かりをつけ、全員をいったん座らせた。


 「まずは≪火魔法≫だ。これは火を操る魔法だな。」


 そう言って俺は指先から小さな炎を出した。おおっと感嘆の声が小さく上がる。俺はその炎に対し、火の大きさの強弱、熱さの強弱、火の形の変形を見せた。


 「俺もこれくらいしかまだできん。次は≪水魔法≫だな。」


 俺は同じ指先から今度は水を出した。そしてそれを流れ出る量を増やしたり、勢いを強めたりする。


 「これが練度1の修練だそうだ。エフィはまず指先から水を作り出すところからやってみようか。」


 俺はエフィに指先への魔力の込め方を教える。まあ俺の場合は魔力じゃなくて神力なんだけどな。

 続けて、土魔法、風魔法と順番に見せていった。エフィは真剣な表情で俺が見せる魔法を見ている。



 その横で、サラとフォンが一所懸命に指先に魔力を込めていた。




 おふたりさん、あなたたちはスキル持ってないでしょ。





 夜、エメルダ嬢は伯爵の下に泊まることになったことをヒョウ獣人から連絡をうけ、俺たちは全員でこのまま【双魚宮】で寝ることした。

 俺以外は奴隷用の寝室で寝るのだが、フォンは呪いが発動してもいいように簀巻き状態にすることになった。少々悲しげではあったがフォンが了承したので、張り切ってサラが簀巻きにしている。ベスタさんは苦笑いだった。


 今日は、エフィが俺の寝室に来た。ベッドの脇に立って居心地が悪そうにしている。


 「どうしたエフィ?」


 「…わ、妾は…ここに居ても…いいのだろうか?」


 俺は質問の意図がわからなった。


 「どうしてだ?」


 エフィはチラッと寝室の向こうにいる3人が寝ている部屋を見た。


 「……だって、あいつはあんな恰好で寝ることになって…。」


 フォンのことか。


 「見てて辛いのか?」


 コクンと肯く。


 「お前が居ようが関係ない。あいつが克服しなければならない呪いなんだ。あいつにとっては自分の為でもあるんだよ。」


 エフィは理解した。いや、理解はしているが、それでも辛いのだろう。「うん」と返事はしたものの表情は変わっていなかった。



 「…ここで、ね、寝たい…のだが…。」


 エフィは耳を真っ赤にしながらも俺に言って来た。


 「…どうぞ。」


 俺は上布団を開けて導きいれる。エフィは少し怯えながらもベッドに上がり、俺の横に寝転ぶ。上から布団を掛け、エフィの背中を押して引き寄せる。


 エフィは俺の背中に手を回した。顔が俺の胸に引っ付くほど抱きしめる。


 「うぇ…、うぇっ…、ふぇぇぇんん!」


 強がっていても女の子だ。ホントは辛かったんだ。泣きたかったんだ。そして甘えたかったんだ。どうしても我慢しきれなくなってここへ来たんだ。今夜くらいはこうしといてやろう。


 俺は泣きじゃくるエフィの背中をずっとやさしく撫でていた。




 エフィは泣き疲れて寝ている。涙と鼻水と涎で顔がべとべとだ。俺はタオルを取り出し、顔を拭いてやる。エフィは気持ち良さそうにむにゅむにゅ言っている。



 俺はベッドから起き上がった。


 窓から外を見る。


 音を出さないように窓を開け、そのまま外に出る。


 ≪気脈使い≫で空を駆け山の中腹に降り立つ。






 そこには一人の少女がいた。


 正確には俺の≪気配察知≫が黄色い点を捉え、俺はそこに来たのだ。



 「また会いましたね。」


 少女は俺がここへ来ることがわかっていたかのように言う。


 「同じ職業(・・・・)なんでね。」


 俺は無警戒を装って返事を返す。だが少女の方はかなり俺の事を警戒している。


 「はっきり言うとね、アンタが私と同じ使命を受けているとは思えないのよ。」


 「そんなことはないさ。俺も黒い玉を見つけては始末してるぜ。」


 「それだけの為にそんなデタラメな力は不要だわ!それにアンタ≪鑑定≫では見えないスキルを使ってるわね。どういうこと?」


 いろいろ調べられてるな。勝手に≪鑑定≫もされてるってことか。


 「…俺もこっちに来て日が浅い。わからないことも多くてな。できればいろいろと情報提供頂きたいのだが。」


 「…しばらくアンタの様子を見させて貰ってもいいかしら?」


 「かまわないが…あんまりプライベートな部分まで見られると恥ずかしいんだがな。ほら、俺、奴隷を何人か抱えてるし。」


 すると少女は顔を真っ赤にした。何を想像したのだろうか?


 「フン!変態ヤローだな…。」


 「何を想像したのか知らんが、勝手な想像はよろしくないな。…まあ、いいけど。名前だけ、教えてくれないか?」


 「…ヨーコよ」


 「日本人か?」


 「…そうよ。アンタも日本人みたいだけど、なんで名前が“エルバード”になってるの?その容姿は日本人じゃないんだけどどうして?」


 そうか。この世界への呼ばれ方が違うのか。恐らく彼女は前世の姿のままこちらに来ているのだろう。俺は、記憶だけがこちらに来ているって言った方が正解か。


 「名前はこっちに来たから名付けてもらった。容姿については俺もよくわからん。気がついたらこの姿だった。今言えるのはこれくらいかな。」


 俺の返答に満足するはずもなく、ヨーコという名の少女は苛立ちを見せた。


 「…まあいいわ。勝手に調べさせてもらうから。」


 そう言うと前と同じように一瞬にしてその場から姿を消した。


 俺と同じ“この世ならざる者”で日本人のヨーコか。

 そのうち、どうやってこっちに来たか聞いてみるといいか。何かわかるかもしれん。


 俺は彼女にまた会えることを期待して一先ずその場から去った。






 『雨の湖』。


 カルタノオの街の北側からヴァルムントの南まで南北に大きく広がる湖で、『雨』によってできたと言われている。ここには神獣が住んでいると聞いていた。

 俺は≪気脈使い≫で湖の中央まで行き、そこから下を見る。このあたりは『雨』は降っておらず水面は穏やかに波打っているだけだが、真夜中なので何も見えない。だが何かがいることは感じる。


 やがて水面が盛り上がってきた。盛り上がりは2つになり、大きな水しぶきの音がたったかと思うと、盛り上がった水の中心から巨大な鱗だらけの頭が現れた。それが二つ。

 首はぐんぐんと高く昇って行き、俺が浮かんでいる位置を越えてようやく止まる。頭の下は長く伸びた胴が二本あるが、下の方で一本になっている。



 双頭の蛇。



 これが【双魚獣】か。魚じゃないのね。


 俺は現れた【双魚獣】に一礼する。


 (礼儀は不要。)


 腹に響く声がこだまする。


 (我に何用?)


 「こちらに神獣がおわすことを聞きました故、まかり越しました。」


 俺は深々と頭を下げる。


 (その神気…。創造神の僕か。わざわざ挨拶に来る意味とは?)


 「顔を覚えて頂きたくて。無いに越したことはないのですが、私が道を踏み外したときには…」


 (我らの役目を理解しているとは驚いたな。他の神獣にもこうやって合っているのか?)


 双頭の蛇は俺の言葉を遮り質問をする。


 「【金牛獣】様、【宝瓶獣】様にはお会い致しました。」


 片方の頭が口を大きく開けて笑った。


 (こやつ、あの【金牛】に対面して生きておるとは!面白い僕が出てきたもんだな。)


 するともう1つの頭がそれを制する。


 (お前は黙っておれ。よかろう!貴様の顔は覚えた。貴様に何かあれば我が食い殺してやろう。)



 …こ、怖ぇ!



 冗談言うような相手じゃない。目も本気だ。道を誤ったら真っ先に飛んできそう…。


 「お、お願いいたします。ところで…。」


 お辞儀をしながら俺は別の話題を持ち出す。


 「【双児獣】と【天秤獣】の居場所はご存じでしょうか?」


 【双魚獣】は互いに顔を見合わせてから、答える。


 (…我は知らぬ。【白羊獣】に聞くがよい。あ奴が我ら神獣のナワバリを決めたからな。)


 片方の頭は自分の頭を湖に沈めていく。もう片方の頭は舌をチロチロ出して俺を睨んでいた。


 (我は貴様と戦いたいなぁ…!)


 沈みかけていたもう片方が注意する。


 (我ら神獣には“制約”あるのだ。無理を望むなよ。)


 (…むかつく“制約”だ…。)


 結局俺の方は会話の意味も分からないまま頭は2つとも沈んでいった。




 「…うん、身勝手神7号8号だ…。」




 この世の神様とか、神獣とか、魔獣とかなんでああなんだ?親の顔が見てみたいよ。



 やがて湖は波の音も小さくなり、辺りは静かになった。あっけなかったがファーストコンタクトとしてはOKかな?



 俺はホッと一息つく。



 ≪異空間倉庫≫が反応した。


 サラの小剣が転移している!俺は、全身に力を込め宿へと急いだ。サラの小剣が転移したということは、サラもしくはサラの近辺に何かがあった証拠!

 俺は全力で空気の壁を蹴って宿に戻る。






 宿では大変な?事になっていた。




 簀巻きにされたフォンが芋虫のように体をくねらせて床で這っており、グルグル巻きにした紐の端をサラが持って寝室の扉部分に両足をひっかけて引っ張っていた。両足をおっぴろげているため、下着が丸見えである。その反対側には、ベッドの上で白目をむいて気絶するエフィが居た。


 俺は、うねうねと目を光らせて蠢くフォンを担ぎ上げて、サラを助ける。


 「あ…ありがとう…ございます、ご主人様…。」


 肩で息をしながらお礼を言って来るが、汗でビッショリになっていた。相当必死だったみたい。


 「サラ、よくやった。でベスタさんは?」


 「む、向こうのお部屋で…き、気を失っちゃいました。」





 まあ、真夜中にこんな格好して目を光らせてウーウー唸りながらやって来られたら誰だってビビるわな。


 俺は、肩に担いだフォンを見る。何とか正気を取り戻したようだが、自分のしでかしたことにショックを受け、落ち込んでいた。


 「…ご主人……。」


 フォンは申し訳なさそうに俺を見た。


 「頑張って克服しよう。」


 俺はフォンを励ます。決して怒ってはいけないと思っている。


 「…でも、エフィが…。」


 フォンはエフィに対しても申し訳ないと思ったのか、エフィをちらりと見た。


 エフィはこの世の終わりでも見たかのような形相で白目のままで意識を失っていた。とても女の子が見せていい表情ではなかった。





 今この場にカメラがあれば、ぜひ撮っておきたいんだがなぁ…。






主人公の周りでワイワイガヤガヤするキャラが増えてきました。

このため、すぐに話が脇道にそれてしまいます。

しかし、もうすぐ三章の本題が来ます。


次話はエフィが狙われます。

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