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弟が作った世界でハーレム人生   作者: 永遠の28さい
◆第三章◆ 孤独の耳長少女
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2 ヤグナーンの伯爵

本日2話目です


 ベッドで寝ていたはずの俺は、気が付くと全く見たことのない場所に寝転んでいた。


 …ここは?


 辺りを見回しても、俺の家は見当たらず、サラもフォンもいない。


 起き上がって状況を確認する。

 地面は、柔らかな蔓が幾重にも絡み合い隙間なく敷き詰められている。その蔓は全てある一点に向かって伸びていた。蔓の向かう先には巨大な樹がそびえ立っている。




 …巨大な樹か…。




 俺は、心当たりはあった。




 ファンタジー好きならだれもが知っているその樹は北欧神話では9つの世界を支えていると言われている。


 俺は蔓に沿って歩き、巨大な樹に向かった。途中で俺が今歩いているところは空中だということに気付いた。蔦と蔦の間の僅かな隙間から青い空が見えている。


 樹の幹は俺の感覚で10メートルくらいの太さがあるだろうか。どっしりとした雰囲気でまっすぐに上へと伸びている。



 樹の下には6枚の翼が見えた。






 …ドクン!




 見覚えのある翼。




 俺は走り出した。




 6枚の翼を持った男がいた。男は木の幹にもたれて日の光を浴びている。



 「良聖!」


 思わず、前世の名で呼ぶ。男は声に気づきこちらを見た。俺は走り寄って、もう一度男の顔を見る。確かに弟の顔だ。



 「…にいちゃん、ようこそ。」


 6枚羽の男は、笑顔で俺に声を掛けた。


 「り、良聖…。」


 「ここは、【世界樹(ユグドラシル)】の中腹にある【神々の休む枝】と呼ばれたところだよ。」


 「やっぱりこれがユグドラシル…。」


 俺は上を見上げた。幾重にも重なった木の枝が空を覆い、ところどころにある隙間から光が注がれている。


 (創造神様、そのものが“この世ならざる者”ですか。)


 頭に声が響き渡る。美しい少女の声だ。


 「そうだよ。前世では僕の兄だったんだ。」


 良聖は木の幹をペチペチ叩きながら答える。


 (では、私の力を分け与えるべき者となりますか?)


 「そうだね。既に農業の神と竜の神が力を授けている。君の力はよろしく頼むよ。」


 (畏まりました、創造神様。)




 ちょ、ちょっと待て!勝手に話を進めるなよ!良聖待て!竜王の時も勝手に力を授けられて迷惑したんだ。今回は多少なりとも説明を…うわっぷ!!


 勝手に進んで行く話を止めようとしたが遅かった。上から長い枝が降りてきて、何やら粉を俺に振りかけた。

 樹の幹にもたれ掛った弟は楽しそうにそれを見ている。


 (エルバード様。今与えたもう力は、八大精霊の力を全てこなす力『森羅万象』です。)


 ……なんだって?



 「あ、あの『森羅万象』とは?」


 恐る恐る樹に向かって話しかけてみる。


 (…ですが、その力を過信してはいけません。此の力は六柱神より少しずつとはいえ、司る力を拝領し、膨大な魔力で…)




 ……出た。身勝手な神5号だ。



 1号:前世の神

 2号:そこにいる良聖

 3号:6本腕

 4号:竜王

 5号:樹


 身勝手率100%。


 俺の質問は受付すらしてくれない。それどころか楽しそうな声で俺が聞いてるかどうか関係なく、聞かせ続けてる。まるでお経だ。俺は弟を見た。だが弟は目を逸らした。遠くの空を見つめてる。もういいよ。自分で何とかするから。



 「ユグドラシル様。」


 うまく会話の合間を見つけ、問いかける。


 (?なんでしょう。)


 「この力は(しもべ)としての使命を果たすために使ってもよろしいのでしょうか?」


 俺の質問にユグドラシルの声は力強く回答する。


 (大いに結構です。バハムートの力より有効なはずです。野蛮なあ奴の力なんかより私が生み出した洗練された力をお使いください!)


 なおも説明はお経のように続くが、聞きたいことは聞けた。要は、神同士の『第1回誰の力が一番強いかコンテスト!ドンドン!パフパフ!』みたいなものに俺は巻き込まれてるってことだ。弟を見ると、やや呆れた表情で苦笑いをしている。

 なんで俺を使ってやるんだ。


 「貴公が、神々のいる場所に顕現できる条件を満たしてしまったからだよ。」


 ふいに良聖(アマトナス)が言葉を発した。俺は弟を見る。


 「顕現の条件が何なのかは教えられないけどね。少なくとも貴公は他の我が僕より強大な力を得ているのだ。」


 弟は一段と厳しい顔つきになる。


 (…この為、四大精霊を従えた神の力は自らの力を弱め、天候などの自然災害の影響が出ないようしました。しかしそれによって信仰が失われ…)


 ユグドラシルは、延々と誰も聞いていない説明を続けている。


 「アマトナス様、俺は…単に神の僕としてだけじゃなく、俺個人として…この世界を楽しみますので。」


 その言葉を聞いたアマトナス(おとうと)は笑顔になった。


 「さすがにいちゃん。」


 俺の視界が薄れていく。笑顔のままの創造神(おとうと)としゃべり続けているユグドラシルは真っ白い光に包まれ、やがて俺の視界は真っ白に染まり、意識を失った。





 目が覚めた。


 昨日の余韻に浸って暫くベッドの上にいた。


 最初にあった時はほとんど神だった。しかし昨日はほとんど弟だった。

 久しぶりに兄弟の会話ができたと思っている。また行きたい。


 視線を感じて横を見た。


 サラとフォンがしっかり着替えて待っていた。


 「おはようございます!ご主人様。」


 「おはよ…ございます、ご主人…。」


 俺は今幸せだ。こんな可愛い二人に起こされるなんて。

 俺は起き上がって、二人にキスをした。


 思いがけない行動だったのか二人は固まる。サラは顔が真っ赤だ。フォンは尻尾がピンと伸びてしまってる。

 さあ、今日も元気に仕事をしますか。




 商館に到着した俺を待っていたのは思いがけない人物だった。

 いつものように出勤の挨拶を何人かに行って数字だらけの部屋に向かったのだが、途中でベスタさんに呼び止められ、応接室に案内された。

 応接室にはナヴィス殿とそのお客様らしき人物がいた。


 ナヴィス殿の向かいに座っているのが一人。3人ががその後ろに立っているのでこの3人は護衛もしくは奴隷だろう。座っている人はかなりいい服を着ていることから貴族であることは間違いない。後ろに控えているのは筋肉隆々の男が二人。二人とも肌が黄色と黒の斑の産毛に覆われている。獣人だ。トラ?ヒョウ?の獣人だと思う。そして更にその後ろにメイド服の女性。三人とも首輪をしている。

 俺は、座った男に対し、太陽神式の挨拶をした。


 「彼が噂の?」


 男がナヴィス殿に話しかける。


 「はい。彼がその“鎧の算術士”になります。」


 …へ?何そのあだ名?


 「エルバード殿、君の計算能力は結構噂になっていてね。その算術士に似つかわしくない恰好からそう呼ばれているのですよ。」


 へー。知らなかった。というか俺、朝から晩まであの部屋に篭りっきりだもんな。皮鎧を着た格好で。そりゃ、変だわな。


 「ラヴィス殿、それは初耳でした。正直複雑ですね。」


 微妙な苦笑いを見せ、反応を伺う。


 「ハッハッハッ!正直な反応だな。ペンより剣での名を求めるか?」


 ソファに座った男が笑いながら話しかけてくる。俺は男の方を向かってもう一度挨拶した。今度はマグナールに教えてもらった傭兵式の挨拶である。剣の柄に手を掛け、もう一方の手を心臓の辺りに当て少しだけ頭を下げる。これは剣の腕と度胸で生きるという意味らしい。


 「初めまして、エルバードと申します。私設傭兵団に所属しております。」


 「うむ。バルグ・ヤグナーンだ。よろしく。」



 …こりゃまた、とんでもない相手だ。



 ヤグナーンの当主は初代からずっとこの街の領主を務めており、代を重ねるごとにその規模を大きくし、貴族としての地位を高めていっている。

 現在の当主は11代目で、名前はバルグ。爵位名はヤグナーン伯爵。俺から見れば雲の上のような人のはずなんだが。


 「伯爵様、私は彼とその奴隷を連れて行きます。今日はご挨拶と言うことで、彼をここに呼びました。」


 にこやかに話すナヴィス。品定めをするかのようにじろじろと見るバルグ。


 「…ふむ。よかろう。では彼の随伴を許可する。下がってよいぞ。」


 なんか認められたようだ。再度礼をして退出しようとする。だが、ナヴィス殿に呼び止められた。


 「待ちなさい。君の用事はこれだけではないのですよ。…伯爵様。海賊に奪われた品物は?」


 まじ?この人も海賊の宝返還希望者なの?うわぁあ…あまり能力見せたくないなぁ。


 「【ヴァルムントの鎧】だが?」


 名前を聞いて、ナヴィス殿は俺を見る。はいはい、出しますよ。


 右肩に現れたファスナーを開いて、ごつごつした大きな鎧を取りだす。

 できるだけ、ナヴィス殿以外の人の顔を見ようとしたが、一番遠くにいたメイドさんの顔が視界に入った。



 見事なドン引き顔。



 「ナヴィス殿がこの男を選んだ理由がわかったわ。確かにこの能力は役に立つ。」


 バルグは手を叩いて喜んでいる。俺にはなんのことかさっぱりわからないが嫌な感じしかしない。


 「では、彼を連れて明日予定通りにヴァルムントへ行きましょう。」


 ナヴィスはそう締め括り、俺の退出を促した。ベスタさんに連れられ部屋を後にする。部屋を出た後、ベスタさんに聞いてみた。


 「ヴァルムントって?」


 「はい、カルタノオの街から更に北へ1日の位置にある“商人の街”と呼ばれる街です。10日後に大きな市が開かれます。」


 あーわかった。


 「と言うことは俺は荷物持ちか?」


 ベスタさんはくすっと笑顔を見せた。別に嫌味は笑顔ではない。大人の雰囲気を十分に発揮した笑顔だ。


 「そうなります。」


 「ベスタさんも行くの?」


 「いえ、私は今回は留守番です。」


 「では、俺もサラとフォンを置いていくので、面倒を頼みたいのだが。」


 「わかりました。ご主人様に確認いたします。」


 そう言って深くお辞儀をした。





 家に戻り、二人を連れて教会へ向かった。この街には星神カルドウォートを奉る教会がある。興味があったので行ってみたかったのだ。

 門では薄い紫のローブを纏った神官と思われる女性が立っていたが、俺たちを見つけて声を掛けてきた。


 「教会に御用ですか?」


 「ああ、お祈りをしに。でも星神式を知らないのだが。」


 女性はにこりと微笑んで、


 「お教えいたします。どうぞ。」


 そう言って門を開けてくれた。3人は門をくぐって、教会の中に入った。

 大きな神像が目の前に現れる。これが、星を司る神【カルドウォート】か…。


 神像を前にして、お祈りの仕方を教えてもらう。星神式は両手を首の前でつぼみを作る形に手を合わせるそうだ。

 銀貨を支払い、3人でお祈りをする。





 やはり、俺は白い場所へ連れて行かれた。たぶんこの場合は創造神以外と会うはずだ。


 「ヌシか。変わった『この世ならざる者』とは?」


 目の前には神像と同じ姿の男が胡坐を掻いて座っていた。

 …今までの神とは全く次元の違う迫力を感じる。ただそこにいるだけなのに、汗がしたたり落ちている。全身が緊張をする。


 「なんだ?余の神力に負けておるではないか?」


 何気ない会話だが、一言一言に圧力がかかっている。これが神力なのだろうか。


 「…はい、己の無力さを痛感いたします。」


 「そう簡単に余と対等になられても困るがのぅ。で、ヌシの力はおかしいのう。」


 …多分、魔力を感じないという話?


 「何故、この世ならざる者が神力を持っておるのじゃ?」


 な?今まで誰もそこを突っ込んでこなかったぞ!?確か高い神力を持っているって言われたな。普通の人は持ってないというのも聞いていたな。

 ≪思考並列化≫≪情報整理≫の活躍で、導き出した答えは…。



 あんときのキス



 だった。


 「おそらく、前世の神より賜ったものかと…。」


 「何を?」


 神がにじり寄る。


 「そ、それがわからないのです。」


 星神は今にも光線が飛び出そうな目で俺を睨み付ける。恐らく俺の中の何かを見ているのだろう。わかっていても恐怖で引きつってしまう。


 「…ヌシの魂の中に、余の力をもってしても視ることのできぬ部分が2つある。そんなものがヌシの中にあること自体口惜しいのだが、そのうち1つは創造神様の神気。もう1つは見知らぬ神気。恐らく前世の神とやらであろう。」


 トーンの低い声で、俺の魂を覗きながら話すのはいいんだが、除くのにわざわざ俺の顔に近づける必要はあるのでしょうか。絶対脅しでやってると思うのですが。


 「しばらくヌシを観察させてもらう。」


 ふっと俺から離れ、胡坐を掻き直し腕を組んで考え込んだ。辺りがまた白くなっていく。

 ありゃ?もう終わり?今回は何もなし?







 教会に戻ってきた。


 俺はある確信を持って、メニューを開く。



 『呪い』

  ≪刹那の治癒≫

  ≪魂の真贋≫

  ≪ブレス≫

  ≪星神の監視≫




 …やっぱり。なんかを貰った気はしたんだよ。こんな呪い、誰にも見せられない。



 なんだよこれ。もう身勝手な神6号決定!



今回の創造神様は、前世の人間に近い状態です。

そして、ユグドラシルの勝手に話には複線があります。

…言っておかないと誰も気づいてくれないので。(哀)


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