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弟が作った世界でハーレム人生   作者: 永遠の28さい
◆第二章◆ 失声の銀狼少女
30/126

11 声は取り戻せる

本日2話目です

2015/04/02 誤:“海狼族” 正:“海銀狼族”

 俺は今図書館に来ていた。



 マグナールは失神中である。



 俺はナヴィス殿から聞いた薬について、知識を手に入れようと思い、失神した男をほったらかしにして図書館に来ていた。



 “エルバード殿。マグナール殿の腕は万能薬を使うことで再生できたことにしましょう。ですが、私も万能薬の効能を詳細には知りません。なのでこの街にある図書館でしっかり調べて来てください。”


 ≪傷治療≫を受けて、しばらく痛みに耐えていたマグナールだったが、気を失ってしまったので、少々がっかりしてしまった。奴が気を失っている間も腕の再生は継続し、今はほとんど再生が完了していた。

 エイミーを呼んでマグナールの看病を任せ、俺はナヴィス殿の下を訪れて事の詳細を説明した。そこでナヴィス殿から助言を貰い、図書館での調べものをしていたというわけだ。

 エイミーには何度も何度も俺にお礼を言われたな。なんかくすぐったかったな。


そんなことを思い出しながら、図書館で『万能薬』について調べていく。


 【万能薬】

  別名エリクサー。あらゆる病、傷を治す効果を持つ魔法薬。命神の祝福を受けた聖水と神獣に生える苔を元に製作されると言われるが、その製法は失われている。服用するとその病、傷の程度に応じた激痛を受けるため、その痛みに耐えかね死んでしまうこともあったという。


 俺のスキルと全く同じ効果だ。俺の場合は≪傷治療≫と≪病治療≫の2つに分かれていて、病の方は使えないんだが。

ん?フォンのスキルにも病気チックなやつがあったな。たしか≪失声症≫…。

 俺は病気に関する本を探し、フォンの病気についても調べた。




図書館を出た俺は【宝瓶宮】に戻り、マグナールを訪ねた。そろそろ意識を取り戻しているだろう。そう思い、軽くノックをして部屋の扉を開けた。


 マグナールの宿泊している部屋は、一般客用でそれほど大きくもないため、扉を開けて正面にベッドが見える。


 俺はもう二度と見られないと思う光景を見てしまった。


 ベッドに縛り付けられたままのマグナールにエイミーが添い寝をしていた。エイミーは眠ってしまったようでマグナールの胸元に頭を置いてスヤスヤと眠っており、マグナールが困り果てた顔をしていた。

 俺は中に入り込んでその様子をじっくりと眺める。大声を出したくてもすぐ側で眠っているエイミーに気を使って口パクで俺に「出て行け」と示唆する。俺は慌てふためくマグナールをゆっくりと眺めながらソファに座った。


 「き…貴様!」


 歯ぎしりをするマグナールに、


 「ほれほれ、エイミーちゃんが起きちゃうよ」


 といやらしい笑みを浮かべて言葉を返してあげた。




 楽しいけど、マグナールが全快したら、俺ボコボコにされるんだろうな。




 エイミーが転寝から目を覚まし、気まずそうにするマグナールとニヤニヤする俺を見たが、動揺することもなく、いつも通りの無表情で俺に挨拶をした。

 俺としては慌てふためいて欲しかったが、これも彼女らしいかと思い、攻撃先をマグナール一本にして楽しむことにした。どうせボコボコにされるのは決定しているんだ!どうせならとことんいじってやる!



 ひとしきりマグナールをいじって満足した後で、俺は図書館で得た知識を説明した。ナヴィス殿の入れ知恵で、海賊討伐時に手に入れた薬をダメ元でマグナールに飲ませたら実は『万能薬』だったという体で周りには説明することになったことと、その万能薬の効果について説明した。マグナールもエイミーも俺の話に何度も肯き頭に叩き込んで行った。


 その後、俺は一旦自室に戻った。マグナールがフォンを紹介してくれと言いだしたので、連れてくるためだ。

 俺はサラに留守番を指示し、フォンと二人でマグナールの部屋をもう一度訪れた。


 部屋の扉をノックし、中から開けられるのを待つ。ガチャリと音がして扉が開き、マグナールが顔を出した。


 「よく来たな、エルバード。さあ入れ。」


 マグナールは俺とフォンを中に引き入れる。部屋にはマグナールしかいなかった。エイミーは外出中のようだ。俺はソファに座り一息ついてから彼女を紹介した。


 「この子がフォン。この街に来てから俺の奴隷にした子だ。見ての通り獣人だ。」


 フォンは挨拶をしながらフードを取る。綺麗な青銀の髪と犬耳が姿を現す。マグナールは感嘆の声を上げた。

 マグナールも海銀狼族を見るのは初めてだったらしい。必要以上にフォンをじろじろ見て何かと肯いている。なんか値踏みしているようで嫌な感じだ。


 「エルバード、この嬢ちゃんを俺にくれ。」


 …俺はマグナールの言った意味が全く分からなった。


 「何言ってんだ、マグナール?」


 「嬢ちゃん、“海銀狼族”だろ?」


 フォンは恐る恐る肯く。その様子を見てマグナールが何ともいえない薄笑いを浮かべる。


 「エルバード、この子を俺にくれ!」


 何かに取り憑かれるように同じ言葉を繰り返す。


 「いったいどうしたんだ?マグナール!」


 「くれるのか、くれないのか?」


 「あげるわけないだろ?フォンは俺の大切な奴隷だ!」


 次の瞬間、マグナールの鉄拳がさく裂し、俺の視野は真っ暗になった。




 いててて…。




 どうやら気絶してしまったようだ。ん?手足が動かない!なんだこれ!?鎖で縛られてる!

 なんとかして脱出しようともがいていると部屋の奥からマグナールが出てきた。


 「なんだ、もう起きたのか?」


 その顔はいつものマグナールではなかった。狂気に満ちた顔である。


 あ!フォン!!


 すぐ側には壁に打ち付けられた鎖にぐるぐるに巻かれたフォンがもがいていた。


 「ん……!」


 フォンは必至に何かを言おうとしているが言葉は出ない。そこへマグナールが間に入っていやらしい笑みを浮かべた。


 「貴様には悪いが、こいつは俺が貰っていく!」


 「何を言ってる、マグナール!」


 「世の中金に勝る価値のものはねぇ!今回の討伐で大金を手に入れられなかったんだ。こいつを本土で売って大金を手に入れる!」


 「貴様!気が狂ったか!」


 マグナールは俺の頬を殴りつける。俺は殴られた勢いで手足を縛られたままの体で床を滑って行く。


 「…全ては金の為だ。」


 鎖で縛られたフォンは必死にもがき抜け出そうとするが、引き千切れるシロモノではなく、ガチャガチャと音をたてるだけだった。それでも必死で何かを訴えようとする。


 「ガチャガチャうるせいぞ、小娘!」


 マグナールが手斧をフォンのすぐ側に叩きつけた。フォンは一瞬怖気づくが直ぐに気を取り直して、マグナールを睨み付けた。


 「ちょうどいいや。この嬢ちゃんの目の前でこいつを殺す!そうすれば嬢ちゃんもあきらめがつくだろ?」


 フォンの顔色が変わる。マグナールがフォンのすぐ横に突き刺さった手斧を引き抜き、俺の方へと歩き出した。俺は鎖に縛られ身動きすら取れない。ガチャガチャと音を鳴らしながら体をくねらせて逃れようとした。

 だが、マグナールが鎖の端を足で踏みこれ以上遠くへ行かないようにする。


 「だ…!…だ…!」


 フォンが必至で何かを言おうとしている。マグナールは薄笑いを浮かべ手斧を振り上げた。





 「ダメ-------ッ!!!!!!!」





 悲鳴に近い叫び声が部屋中にこだました。


 …確かにフォンの声だった。


 「ダメッ!!ダメッ!!」


 必死で訴えるフォンの声がまた続く。


 俺はその声をしっかりと聴いてから、無言で起き上がって手足に巻きついた鎖を外す。マグナールは手斧を床に置き、俺に手を差し伸べる。マグナールの手を握り、そのまま立ち上がり、服に付いた埃を振り払う。マグナールは肩をグルグル回して凝りをほぐす。


 「ダメッ…ダメッ…」


 フォンは目の前の光景が理解できず、焦点の合わない目のまま、同じ言葉を繰り返していた。


 「ててて…本気で殴ることはないだろ?」


 「何言ってんだ?本気でやらんと嬢ちゃんに疑われちまうじゃねぇか?」


 いつも通りの他愛もない会話。さっきまで殺気に満ちたやり取りをしていた雰囲気は一切ない。控えめに拳を突き合せて作戦成功を祝った後、フォンの側に歩み寄った。


 「…すまねぇな、嬢ちゃん。これもエルバードに頼まれてな。」


 頭を掻きながらフォンに頭を下げる。フォンはまだ何が何だかわからず、


 「え!?…ダメッ?ダメッ?」


 もう無意味語を連発している。



 俺は、フォンの首に手を回し抱き寄せた。


 「怖い思いをさせてごめんな、フォン。こうでもしないとフォンが必死にならないと思ったから。」


 俺はやさしく頭を撫でる。その間にマグナールがフォンに巻きついた鎖を外してくれた。


 「ご、ごしゅじん…さま?」


 「なんだい、フォン?」


 フォンは自分の声を不思議に感じていた。戸惑った表情で俺にしがみ付いている。


 「フォン。君の声は取り戻せるんだよ。過去に体験したことによる精神的な干渉によって声が出せなくなっているだけなんだ。今のように必死になれば声が出る。」


 フォンは涙ぐむ。


 「大丈夫。ゆっくり練習していこう。」


 俺はやさしくフォンを撫でてやった。もうフォンは鼻をぐしゅぐしゅ言わせてる。ちょっと前のサラのようだ。


 「マグナール、すまない、ありがとう。」


 俺は改めて礼を言った。


 「これで、≪傷治療≫の件の借りは返したからな。」


 「何言ってる!?全然足りないから!」


 俺の反論にマグナールは肩を叩いて答えた。


 「ご…しゅじん…さ…ま。」


 フォンがゆっくりとだが俺を呼んだ。いいねぇ、フォンの声がちゃんと聴けるなんて。なんだい?

 フォンは俺の首に両手を回した。グイッと背伸びをして俺の顔を引き寄せ、唇を重ねた。




 本来ならば、甘い甘い雰囲気なのだが、俺は目を泳がせた。目の前にはフォンの顔があって視界が狭いのだが、確かにそこにいた。


 マグナールはとびっきりのしたり顔で俺を見てニヤけていた。




 マ、マグナールよ。これでおあいこだからな?


フォンが声を出す。

これを二章のキモにしていました。

でも、なんか中身が薄い気がする・・・


次話は二章のラストになるはずです。もしかしたら2つに分けるかも

ご意見、ご感想を頂ければ幸いです


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