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残念ですが、生贄になりたくないので逃げますね?  作者: gacchi(がっち)


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59.前触れ

エリナが王宮に来なくなって半年。

あと二か月もすれば生まれるという時期になって、

朝、目が覚めた時に身体の異常を感じた。


熱っぽい。そしてなんだか身体がだるい。

これは……竜化する前の状態だ。


クレアが竜化する前、こんな感じだった。

発熱してから竜化するまで、三日くらいだったはず。


竜王様から数年後だろうと言われてから四年半。

ついにこの時が来てしまった。

ぐずぐずしていられないと思い、すぐにルークを起こす。

隣で寝ていたルークは、私の体調が悪いと気がついて真っ青になる。


「熱!?どうしよう。

 エリナがいないのに誰に診てもらえばいいんだ」


「大丈夫……これって、竜化する前の熱だと思う。

 クレアがそうだったから」


「……竜化」


状況を理解したのか、ルークの顔が険しくなる。


「お願いがあるの。

 竜化する前に、巣に連れて行って欲しいの」


「巣に?」


「竜化する前にちゃんと二人で話がしたい」


「……わかった。クライブ様に説明して休む許可を取ってくる」


竜化したら、ルークが番か番じゃないのかわかる。

そして、番じゃなかったとしたら。

ルークを受け入れるかどうか、私が決めなくちゃいけない。



結婚してから、ずっと穏やかだけど幸せな夫婦生活だった。

身体をつなげることはなくても、抱きしめられてくちづけするだけでも、

十分に幸せだったけれど。


番じゃなかったら、どちらかを選ばなくてはいけない。

ルークを選ぶのか、本当の番を待つのか。

ずっと考えていた。ルークはもう覚悟を決めている。

選ぶのは私だって。



少しして、ルークが部屋に戻ってきた。


「クライブ様とハンスの許可は取った。

 後のことはラディとクレアに任せた。

 用意ができたなら、行こうか」


「うん」


だるいけれど動けないほどではない。

テラスに出て、竜化したルークの背に乗る。

建物がなくなって隙間だらけになった王都を見ながら、巣へと向かう。


山の中に降りて、湖の近くまで歩く。

あの時は未完成だった建物が完成していた。

中に入ると、人が快適に暮らせるようになっている。

たまに入れ替えしているのか、食料も用意されていた。


「そろそろかもしれないと思って、

 いつここに来ても大丈夫なようにしていたんだ」


「そうなんだ、ありがとう」


大丈夫なようにしていたのは、食料だけじゃなく、

心の準備もかもしれない。


私が断ったとしてもルークは笑うのだろう。

リディがそう決めたのならいいよって。

自分の幸せも欲しいけれど、誰かから奪うような人ではない。


それでも命を懸けてでも私が欲しいと思ってくれたこと、うれしかった。


二人だけの夕食を作り、静かに食べる。

もっといろんなことを話すのかと思ったけれど、

夫婦になってから話し尽くすほど話していた。


残るのは、番のことだけ。


いつものように二人でベッドに横になったけれど、眠れる気がしない。

ルークも同じようで、起きているのがわかる。

抱きしめられたまま、二人とも動けない。


覚悟を決めて、ルークを呼ぶ。


「眠れないのか?」


「うん」


「不安……なのか?」


多分、ルークが考えている不安とは違う。

この覚悟を受け入れてもらえるかどうか、

ルークは嫌がるかもしれない。


「話をしてもいい?」


「ああ」


「私が竜化して、ルークが番じゃないってわかったとしたら」


抱きしめていた腕がきゅうっと強くなる。

聞きたくないけど、聞かなきゃいけない、ルークの身体がそう言ってる。


「それでもルークの鱗を私に渡したいって気持ち、変わっていない?」


「変わってない。俺はリディの番になりたい。

 偽物でもいい。少しの間でもいい。リディの番になりたいんだ」


気持ちが変わったとは思っていないけれど、

それを確認しなければ話がすすまない。


「それって、ルークは覚悟を決めたってことよね?」


「そうだよ」


「じゃあ、私が何を選んでも、その覚悟を受け入れてくれる?」


「……受け入れるよ。

 俺の気持ちは伝えた。選ぶのはリディだ。

 その選択に従う」


「うん」


よかった。その一言が欲しかった。


「もし番じゃなかったら、ルークの鱗をちょうだい。

 ルークを私の番にするわ」


「……リディ」


ルークの泣きそうな声が聞こえる。

うれしさのあまり、抱きしめる力が強くなる。


でも、待って。続きがあるの。


「そして、私の鱗をルークに渡すわ。

 私の本当の番になってほしいの」


「………は?」


ずっと考えていた。

番じゃなくても、ルークにそばにいてほしい。

だけど、偽物の番にしたくなかった。死んでほしくないから。


「私が鱗をルークに渡せば、私の本当の番がわからなくなる。

 そうしたら、ルークは殺されない。

 ルークが私の本当の番になるの」


「ちょっと待って!そんなことしたら!」


「番だったとしても、そうするつもりよ。

 私はルーク以外の番を持つ気がないの。

 ルークが死んだら、私も一緒に連れて行って?」


「…だ、だめだ。そんなことしたらリディが」


「私は、生贄だったアリーのようにはなりたくないの」


「っ!?」


番だとか、子どもを守るとか、

そういうこと以前の問題なのかもしれない。


忘れられるわけがない。

生贄アリーとして育てられた自分を。


好きでもない男の子どもを産まされて処刑された、

私の母である生贄アリーのことも。



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