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残念ですが、生贄になりたくないので逃げますね?  作者: gacchi(がっち)


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29.追いかける

私とルークが王宮を出たのは、

竜王様とラディが飛び出してから三時間後のことだった。


私がルークの背中に乗せてもらって飛んでも、

レンデラ国には三日ほどかかる。

その間は野宿することになるため、その準備が必要だった。


竜王様の執務室のテラスは私の部屋のテラスよりも広い。

何かあれば竜王様が飛び立てるように広くなっているそうだが、

よほどのことでもなければテラスから飛び立つようなことはないらしい。


今回は、そのよほどのことが起きてしまった。


竜化したルークを見るのは二度目だ。

昼過ぎたばかりの強い日差しが黒い鱗を光らせる。

きらりと黒以外の色が混ざっていて、宝石のように魅了される。


「背に乗れるか?」


「大丈夫。乗ったら結界を張るわ。

 全力で飛んでくれてかまわないから」


「わかった。だけど、二時間ごとに休憩を入れるから。

 あまり魔術を使いすぎるなってエリナに言われてただろう」


「あーそうだった。わかったわ」


一度結界を張れば、維持するのにはそれほど魔力は必要としない。

だから大丈夫だと言いたかったけれど、

ここで無茶をしたとエリナに報告されて怒られるのも嫌だ。


仕方ない、ゆっくり追いかけよう。


結界を張ると、それを確認したハンスに見送られる。


「お気をつけて……もし、クライブ様が暴れているようであれば、

 遠くから見るだけにしておいてください。

 ひとしきり暴れれば落ち着くと思いますので……」


「わかったわ。行ってきます」


ルークの翼が動いて、ぶわっと一気に空まで上がる。

ラディよりも一回り身体が小さいけれど、

その分飛びやすいのか速く感じる。


ルークは宣言通り、二時間おきに休憩を入れた。

三度目の休憩の場所で野宿すると言われ、

小枝を拾ってきて火をつける。


「ねぇ、竜王様たちはどのくらいで着くと思う?」


「おそらく、あの二人は休憩を入れずに飛ぶと思う。

 明日の昼過ぎには着くんじゃないかな」


「私たちが着くまで、それから二日」


「全部壊されて終わってるかもしれないな」


あの王宮も王族も貴族も。

竜王様に壊されて、無くなって。


「それを見届けたら気が済みそうか?」


「どうだろう」


「わからないのか。自分で壊したかったか?」


「そうじゃないの。私自身の復讐というよりも……」


説明が難しくて、胸元からネックレスを取り出す。


「それ……宝石じゃないな?」


「竜石よ」


「なっ……」


ルークが驚きで目を見開いて固まる。


「クレア、出てきて」


「はーい。って、ここ外?え?誰っ?」


「な……なんだ、これ」


呼び出された所に私以外の者がいることに驚いたクレアと、

竜石から浮かび上がっている小さなクレアを見て驚くルーク。


「もうね、会わせたほうが話が早いと思って。

 クレア、この人がルークよ」


「ああ、この人がリディの番かもしれない竜人なのね!」


「ルーク、クレアよ。クレアがアーロンの娘なの」


「……どういうことなんだ?」


それからクレアが自分で説明をする。

アーロンの娘で、竜石に入ってしまったこと、

私と協力してレンデラ国を逃げようとしていたこと。

すべての話を聞き終えたルークは、クレアに問いかける。


「クレアはどうしたい?」


「私はあの国の王族と高位貴族はいなくなればいいと思う。

 きっと、リディがいなくなったら違う生贄をつくろうとするわ」


「また生贄を?」


「あの腐った国が、一度覚えた楽しみを止めるわけはないのよ。

 だから、もう二度と生贄なんてつくれないように、

 あいつらがいなくなればいいと思う」


「……そうね。あれから三か月。

 もし、新しい生贄がいるとすれば、全部消してしまいたい」


私自身は生贄にならなかった。

それでも、周りの者たちが隠していた歪んだ願望を知ってしまっている。

私が生贄になった後、どんなことをされる予定だったのか、

どれだけ屈辱な目にあわされるはずだったのか、聞いてしまった。


新しい生贄をつくるなんて、許せるわけがない。


「わかった。俺もレンデラ国に着いたら、王族と貴族を消すのを手伝うよ」


「ルークも?」


「許せるわけないだろう。

 そいつら、リディを生贄にしようとしていたんだ」


「そうよね。ルークにとってリディは大事な番なのでしょう?

 ルークも復讐していい立場だと思うわ。一緒に叩きのめしましょう」


「ああ。まぁ、到着した時には瓦礫しか残ってないかもしれないがな」


「その時はそれで納得するわ。

 レンデラ国が無くなれば、もう恨む対象もいないもの」


できるかぎり早く到着するように、次の日は朝早くから飛ぶことにする。

休憩時間は変えないけれど、急ぐ理由は三人ともある。


早く起きるためにも早く休むことにして、クレアは竜石の中へと戻る。

私は竜化したルークに抱きかかえられるようにされて目を閉じた。


竜化したラディに寄りかかって眠ったことはあったから、

鱗の感触や温かさが落ち着くのはわかっていたけれど、

ラディとルークはなんだか違う気がした。


身体を丸くして私をぐるりと囲むようにするルーク。

その中で包み込まれて、守られているようだ。


これから無くなる国を見にいくのに、

何一つ恐れや不安を感じない。


ここにいれば、ルークの隣にいれば、

何が起きても大丈夫な気がしていた。




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