第46話 魔力がないことは関係ありません!
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最終回の前話となります…!⸜(*ˊᵕˋ*)⸝
サブタイトルを変更しました。
それから、ジークハルトが頷いたのとほぼ同じタイミングで、会場内にラッパの音が鳴り響いた。
ソフィアは、前もってそれが「国王からの褒章授与のタイミング」であるとジークハルトから伝えられていたので、背筋を伸ばして国王と王妃が座する玉座の方へと視線を向けた。
「ソフィア・グラッセ公爵夫人、玉座の前へ」
「はい」
ソフィアは、早鐘のように打ち付ける鼓動をどうにかしようと思い巡らせながら、ジークハルトと頷き合った後、ゆっくりと一歩一歩確実に歩みを進めた。
そして、国王らと適度な距離を置いて跪き、決して許可が出るまで頭を上げないように神経を集中させる。
「面をあげよ」
「はい」
ソフィアは、ゆっくりと息を吐きながら身体を起こすと、そこには白髪と白い髭を蓄えた初老の国王と、美しいブロンドが印象的な王妃が座していた。
「こたび、そなたは我が国にとって重要な功績を残してくれた。よってそなたを表彰する」
ソフィアの功績は、彼女が「魔法式の誤りに気がつき国民の安全を守った」というものである。
というのも、どうも「属性変換」が起こった人が魔法式の誤りのある魔法道具を使用すると体調不良を起こしてしまい、そのまま寝込む人もいたらしい。
だが、ソフィアが訂正した魔法式がそれらの問題をほとんど解決することができたので、今回の褒章授与に繋がったとのことである。
「身に余る光栄でございますが、謹んでお受けいたします」
ソフィアが受け答えると、国王が立ち上がりソフィアに褒章のメダルをかけた瞬間、会場内に割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
ソフィアは、身体が緊張で痺れていくのを感じながら、国王からの指示を待った。
というのも、彼の許可がなければ自席に戻ることは許されないからだ。
そして、国王が右手を挙げて頭を上げてもよい許可を出すと、ソフィアはゆっくりと身体を起こしていく──と、不意に予想もしていなかった人物が目前に現れた。
「陛下! 娘はグラッセ公爵に騙されているのです!」
それは、父親のエリオン男爵であった。
彼は、何かの書類を大衆に見せつけるように掲げている。
(おとう……さま?)
「騙されているとは、どういうことだ」
「はい、陛下。グラッセ公爵は授爵ができないことを理由に、我が愛娘と一年間の契約結婚を結んだのです。契約が終了すれば我が家に返さず領地の農村に追放するとまで言っておりました!」
大衆の前で、何ということを言うのだろうか。
そう思うのだが、身体が恐怖から全く動かない。
(なぜ、お父様はこのようなことを……。そうです、旦那様は大丈夫でしょうか!)
咄嗟にジークハルトの方に視線を移すと、彼は動じた様子はなく真っ直ぐにエリオン男爵の方に視線を向けていた。
「確かに、私はエリオン男爵の御息女を娶るにあたって契約を交わし支度金も男爵に支払っている。だが、それは至極当然の段取りであり不審な点はない。何よりも妻を農村に追放することなど絶対にない」
そう言ってジークハルトは、ソフィアの側まで近づくと、彼女を守るように立った。
「私はソフィアを愛している。彼女と契約的な結婚をするなど断固としてあり得ない!」
普段、ジークハルトのこのような激情な一面は見たことがなかったので、ソフィアは身体中に電撃が走ったような衝撃を受けた。
「旦那様……」
何よりも愛していると、その言葉が心の底から嬉しかった。
以前にも伝えてもらったが、再び深く心に染み渡る。このような場面でなければ、この場で膝を突いて感動の涙を流していただろう。
「何をほざく! それに証拠ならここにあるのだ!」
「その証拠とやらを見せてもらってもよいか」
そう言って、これまで静観していた国王が玉座から立ち上がり男爵から書類を強制的に受け取ると、一通り目を通したのち自身の懐にしまった。
「特に問題のない婚姻に関する書類であった。これは後ほどグラッセ公爵に渡しておこう」
「なっ、陛下!」
エリオン男爵は憔悴し、今度はソフィアを睨みつけた。
「大体、魔力なしのお前がどうしてその場所にいるのだ! その場所は、リナにこそ相応しいというのに!」
ソフィアは、自分の中で何かがプツンと切れるのを感じた。
「……魔力がないことは関係ありません! 大事なのは、今自分が何ができるのかを考えて、それを行動に移すことだと思います」
ソフィアは息を小さく吐くと、ジークハルトの方に一歩踏み出した。
「それに、わたくしも深く旦那様を愛しております」
瞬間、ジークハルトは振り返り愛おしそうに目を細めた。
「ソフィア」
ソフィアは深く頷いて、満面の笑みを溢した。
「……なんてことだ」
エリオン男爵が膝を突くと、国王が手を挙げて側近に指示を出した。
「エリオン男爵には、後ほどこの騒ぎにあたっての責任をとってもらう」
そして、男爵は国王の手引きによる警備を担当している騎士に連れられて退室して行った。
「グラッセ公爵夫妻。大切なのはあくまでも今である。これからも夫婦円満にな」
国王の言葉が、ソフィアの心に染み渡るように感じた。
「もったいないお言葉にございます」
「ありがとうございます、陛下」
そうして、二人は会場を後にした。
◇◇
それから、ソフィアとジークハルトは王宮のバルコニーへと移動していた。
というのも、あのあとすぐに馬車に向かうのには、二人の気持ちの整理がつかなかったのである。
二人は手すり際に立ち、王宮の美しい中庭を見下ろした。
夜風が肌を気持ちよく撫でて、先ほどまでの喧騒がまるで夢のように感じられる。
ジークハルトは、自身のテールコートをソフィアに羽織らせて、そっと肩を抱き寄せた。
「俺は、君と契約結婚をした事実を君の落ち度になることを恐れてどうしても公にはしたくなかった。だが、それは俺の身勝手な理由だな」
加えて、エリオン男爵に関しては王宮内に根回しをして常に警戒していたが、彼は最後の手に出たようだとも付け加えられた。
ソフィアは目を見開く。
「そんなことはありません! 旦那様はわたくしを守ってくださったのです。わたくしはそんな旦那様を心からお慕いしておりますし、愛しております」
「ソフィア……」
ジークハルトは力強くソフィアを抱き締め、そしてその後二人は口付けを交わしあった。
それは、美しい夜空に優しく溶けていくようだった。
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