第五章 第二話 レイストの剣
「本当にオリハルコンですねぇ・・・」
ラムンセンの城下町の一角・・・
鍛冶師レイシアの工房。
ここでレイストたちは、レイストの剣を打ってもらうことになった。
鍛冶師レイシアは、小柄なホビットハーフの女性である。
「しかし殿下・・・」
レイシアは、レイザールを見た。
「当の依頼人の勇者様やご一行がここにおられるのはともかく・・・彼女のアリシア様までおられるのは、いかがなものかと・・・」
レイザールの傍らには、身分の高そうなホビットハーフの少女が、ぴったりとくっついている。
「い・・・いや・・・この前、無断で出掛けたので、寂しがってくっついてきたんだ・・・」
「ま・・・いいですけどね・・・」
レイシアは、レイストから鉱石を受け取ると炉に入れ、石炭をくべ、火炎弾を叩き込む。
「手、見せて。」
「へっ?」
「だからあ・・・手ですよ。」
レイシアは、しげしげとレイストの両手を見る。
「ふむ・・・こんなところか・・・」
言うが早いか、赤くなったオリハルコンを金具で取り出し、金床の上に置く。
「そして・・・ハンマーは・・・」
工房内を見回し、銀色に輝く何やらいわくつきに見えるハンマーを手に取る。
「コレ・・・ご先祖様が、初代王に依頼を受けた時に使った仕事道具ね。ちなみに、全オリハルコン製。」
さらりと、とんでもないことを言う。
「さあ!勇者様!この剣はこれより、あなた様とその魂の物となります。私が打っている間、全魔法力を注ぎ込んで下さい。それと、殿下と方々は邪魔です。明日の朝、勇者様と剣をお受け取りにあがって下さい!」
まるで、物扱い・・・
「仕方がない。レイシアは、こうなると殺されても動かん。父上に言っておくので、みな城に来るといい。」
レイザールに促され、セリナたちは工房を出る。
「ちょっと待って!僕は・・・?」
「余所見すんな!」
この時、アリシアは、どさくさにまぎれて城のレイザールの部屋に泊まり、既成事実を作ってしまうが、それは別の話・・・
次の日の朝・・・
一行が目にしたのは、輝く剣と、干物と化したレイストであった。




