第十章 第三話 闇の大邪神官
「おや・・・勇者様に裏切り者か・・・まあいいさ。」
そこにいたのは、大神官グラストだった。
「・・・・・・・・・!・・・・・・・・!」
グラストは訳のわからない呪文を唱え始めた。
「こ・・・これは・・・禁忌の暗黒魔法・・・!」
ティナが叫んだ。
「そう・・・さすがの歴代のヴェイストにさえ使えぬ『闇に堕ちた者』にしか使えぬな!」
「しかもこれは・・・」
「そう・・・自分の有利な空間を形成する術よ!」
まずい!
ティナは、直感的に不利を悟った。
「最終的にウォルストが勝とうと、勇者が勝とうとどうでもいい。ただ、俺の目的は・・・」
かっと目を見開き、一括する。
「勇者エミアをファルストにぶつけることだ!うまくすれば、エミアは、切り札を使えなくなる!」
「くっ!」
ヘイゼルは、歯噛みしていた。
まさか、こんなに早く感づかれるとは・・・
「いくぞ!暗黒時空障壁!」
グラストが術を発動させる!
「こ・・・これは・・・『解呪』でも解除できない!やはり『禁呪』!」
「そうとも!いるだろう?剣士の中にも辻斬りの性癖を持つ奴が・・・格闘家にも通り魔が・・・俺もまた、世間の突き刺すような視線の逃げ場を探し、聖職者の道へ進んだが、満たされることはなかった。己を捨てて修行してもみたが、今度は『世間一般の常識』に縛られ、相手の非礼のみに罰を当てる者のなんと多いことか!そのことに減滅し暗黒魔法の修行を始めたのだよ!しかし、ヴェイストが使える術だけでは面白くない!故に俺は、『人間』の理を越えた暗黒魔法・・・ヴェイスト・ディナよ。おまえのそれが『神霊暗黒魔法』ならば、俺の術は、『邪悪暗黒魔法』といったところだ!それを修めた!」
「エミア!」
ディナが珍しく語気を強めた。
「これは、生半可じゃ解けない!先へいって!」
「わ・・・わかったわ!」
エミアは、先へ進んだ。




