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辺境の農村で僕は魔法で遊ぶ【書籍版三巻と漫画版全二巻が只今発売中】  作者: よねちょ
第二部 僕は辺境の学校で魔法で遊ぶ 第二部 第二章 ルカの休日
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第十八話 フォレスト・ホープ・ガイドブック 14

 宿場通りの門から道を戻り、更に人が集まっていたお店の前を通り過ぎて噴水広場に出ると、鐘の音が四回響き渡った。


「あ、四の鐘鳴ったね」

「そっかまだそんな時間なのね、もう帰る時間かと思ってた」

「色々あったしね」

「本当にそうだったわ」

「家だとこんな人に一杯あったり色々有ったりとかしないもんね。のんびりとした時間もいいけど偶にはこういうのも必要なのかな」

「そうよ、もっと外に出ないと! ……って、私が言えることじゃないけどね、私もほとんど家から出てないし」


 まあ、レナエルちゃんは仕方ないけどね、レナエルちゃんみたいな子がホイホイとこういう所に来たらすぐにトラブルに巻き込まれそう。

 そんなことはここでもだけどこの街に来てからずっとジロジロとレナエルちゃんを見る男達の眼を見ればわかる、その眼に本人は気づいているのかいないのかは分からないけど、全く気にしていないってのは確かだ、入学式の時にアダン君が言ってたようにレナエルちゃんはもう少し自覚したほうがいいと思う。


 だから、レナエルちゃんが自分で選んで、レナエルちゃんを守ってくれる人が現れるまで僕がしっかりと守ってあげなきゃね。

 そう心に誓いながら最後の西の道へと入っていった。

 

「おー、ここは向かい側の自由市があったとこより凄いね」


 あっちはまだお店って感じだったけど、ここは例えるならフリーマーケットみたいだった。建物の前の地面で商売しているみたいだった。地面にマットを敷いてお手製のアクセサリーを売っていたり、宝石の原石っぽいものを売っていたり、マットなんて引かずに直接地べたに置いてあるよく分からないものも並べて売っている。その中にはぶっちゃけゴミかな? ってのもある。

 

「ここも向かい側と同じで、色々ありすぎてよく分かんないね」

「どうする? ここもちゃんと見るのは次にする?」

「そうだね。じゃあ適当に見ながら端まで行って戻ろうか」

「うん、分かったわ」

 

 同じ様にブラブラと歩き回って分かったことはどれもこれも怪しい売り込みだ。

 ダンジョンで取れた武器とか、才能が分かる魔道具とか、着けると魔獣も喜んで従う服従の首輪とか、死人も蘇る神秘の秘薬とか、明らかにここに売っていて良いものじゃないくらいの物を、声を高らかにして説明しながら呼びかけている。


 まあ、よく聞いているとダンジョンで取れた武器は、ただの武器をダンジョンで拾っただけとか、首輪は丹精込めて作ったから大げさに言ってるだけとか、死人も蘇ると言うのは比喩で精力剤だったりするみたいだけど。あ、才能が分かる魔道具は普通に嘘でぼったくりだった。


 首輪は革で出来ていて鈴がついている可愛らしいのがあったので、みゃーこにもお土産無いとねと思ったから購入した。首輪を嫌がったら着けないけどね。

 ここはそんな適当で大げさな売り文句を楽しむものであり、そのための嘘はエンターテイメントとしてついてもいいらしい。

 でももし、騙すためだけの商品を暴利で売っていたら才能が分かる魔道具を売ってい()人みたいになる。

 ボコボコにされて連れ出された人なんて僕は知らないよ。ほら、レナエルちゃんもいつまでも見てないの、え? 回復魔法の練習台にしたい? いやいや、怪我した人はいないし。うん、関わり合いになるのはやめておこうよ。


 名残惜しそうにするレナエルちゃんを引っ張ってそこから離れた。 

 端っこまで行くとここは門がなく塀があり、行き止まりになっていてここ露天市通りの道の終わりで冒険者通りか宿場通りに行けば、その先に通じる門があると書いてあった。塀の向こうにある冒険者の安宿からは直接この通りに入れなくしているみたいだった。

 

 全部見終わった僕達は噴水広場まで戻る。

 そこにあったベンチに二人並んで座る。噴水広場はまだまだ人通りが多く大道芸の人も何人かは入れ替わってはいたけどまだ芸をしていた。


 僕達は手紙を書いた後に余った紙をアダン君から貰っていた。

 筆記用具は持っていなかった指の先から色を変えた水の生活魔法を出しペン代わりにして、この中央街の簡単な地図を描きながら今日あった出会いと出来事をレナエルちゃんと話す。


 正門から入ってのここ噴水広場を含む本通り、そこから見える辺境伯(おじいちゃん)の城、食品通りのカリスト様饅頭と魔力草焼き、自由市通りの色々なものが入り混じったお店、職人通りのポーション屋とその他色々な専門的な店とエルフの本屋さん、冒険者通りで再会したスカーレットの人達と武具屋での金属の知識、宿場通りでのスイーツ、今さっきまでいた露天市通りの煩雑さ、そして何よりも冒険者ギルドでのレナエルちゃんの回復魔法のことを思い出しながら話す。


「まさか今日いきなり回復魔法使えるようになるとは思わなかったわ」

「そうだよね。あのさ、回復魔法使うってどんな感じなの?」

「そうね、魔力を纏って使いたいって思えば、胸の生命の神様──いえ、神様じゃないのよね。生命魔法の場所がじわっと熱くなる感じがした後、回復魔法が使える感じになって使うと念じれば使えるわ。ルカも使える身体強化と感覚としては同じよ」

「身体強化と? どういうこと?」

「え? 身体強化も力の魔法の場所が熱くなる感じがして使おうと思ったら使えるでしょ? 魔力を纏うのが身体強化の一歩手前と思っていたけど、魔法そのものを使う一歩手前だったのね」


 僕はレナエルちゃんの言っている事がいまいち理解できなかった。なんか僕の認識とちょっとずれてる気がする。

 魔法の場所が熱くなると言う感覚は分かるけど、僕はそもそもずっとそうしている。じわっと熱くなる感じというのは魔力を七つのチャクラに集中させ開いた時と同じ、そして外の魔力を取り入れながら魔力を励起させて魔力を覆わせている。でも、そこから身体強化なんて使ってはいなかった。


 身体強化は励起させた魔力を、自分の魔力構造に自分でコントロールして流し込んでから使っていた。その状態を身体強化魔法って言ってたし言われてたからそうだと思ったけど、もしかして本来は使いたいと思ったら使えるもんなの? それが魔法なら僕、実は身体強化の魔法すら使えてなかったんじゃ……。

 いや、でも今は何もしなくても身体強化かかってるしなぁ、でもこれも使おうと思ったら使えるってこととは違うよね。うーんわかんないな。今の僕の状況も含めて謎が深まっただけだった。

 

 頑張れば誰でも使える身体魔法も実はそれっぽいことをしていただけで実は使えて無かったし、昨日やった魔術も、実は魔術っぽいことをしていただけなのかな?

 いや、結局同じことできれば一緒だし、魔力の操作──後、生活魔法ね──には少し自信があるんだから、身体強化と同じ様に魔力を操作して、あの衝撃を出す魔術の構成を直接作れば実は使えたりして、とか適当なことを考えているといきなり肩をガッと掴まれた。

 

「ちょっとルカ! またぼーとしちゃって!」

「うわっ! ってレナエルちゃんか」


 完全に思考の世界に入り込んじゃっていたので肩をいきなり掴まれたからびっくりして声が出てしまい、おまけに考えていたこと通りに魔力を動かしてしまった。

 その瞬間『バチン!』と空間の爆ぜる音が広場に響いた。


 その音にレナエルちゃんが「きゃっ」と僕に抱きついてきて、広場にいる人達は「なんだなんだ」と振り向いた、ジャグリングをしている大道芸の人は音で取り落としたりしていたけど、動かない大道芸をしている人は目線すら微動だにしなかった。すごいプロ根性だ、後でお金を入れとこう。音だけで何も無かったので振り返った人達も首を傾げながら元に戻っていった。


「何? いきなり近くで音がしたけど」

「……ごめん」

「ルカがやったの⁉ もう! 変ないたずらしたら駄目でしょ!」

「そんなつもりじゃなかったんだけど……いや、ごめんなさい」


 暴発しちゃってレナエルちゃんに怒られたけど、出来ちゃったよ魔術っぽいの。それからもう一度レナエルちゃんに謝りながら、今度はバレないように手の中に弱めた衝撃魔術を発動させてみた。うん、成功する。これ生活魔法で同じことするのと比べると殆ど魔力使わないね。生活魔法と違い一瞬のためも集中する必要もなく思考だけで発動できる。


 なんだろう、動作が軽いといえば良いのかな? 最適化されてるというかデータ量が少ないと言うか、そんな感じ。これならどれだけ同時に使っても脳も熱くならなそうだ。


 兎に角、僕は魔術(っぽいなにか)を覚えた! と頭の中でファンファーレを鳴らした。──っていけないいけない、また妄想癖が出そうになってレナエルちゃんにじっと見られてた。

 

 それからもこの街であったことを話しながら僕はこの中央街の簡単な地図を描き終えた。


 見せてと言われたのでレナエルちゃんに僕の描いた地図を渡す。下手くそな絵だからまじまじと見られると少し恥ずかしいな。

 

「それでルカはこれどうするの、お部屋に飾る?」

「明日アリーチェと遊ぶ時に使おうかなって、その後は特に考えてないかな、部屋には飾らないとは思うけどね」

「じゃあ、ルカが何も考えてないならアリーチェと遊んだ後に私にくれない?」

「良いけど、見ての通り下手くそな地図だよ?」

「下手なんかじゃないわよ。それでくれるの? くれないの?」

「そんなに念を押さなくても欲しいならあげるよ」

「絶対よ。約束したからね。明日やっぱりアリーチェにあげるとかは、なしよ」

「う、うん。分かった」


 レナエルちゃんの剣幕に僕は少し押されながら、地図を渡すことを約束する。

 レナエルちゃんは本当に嬉しそうに「宝物にするわ。二人の思い出ね」と僕に向かってニッコリと笑った。


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