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辺境の農村で僕は魔法で遊ぶ【書籍版三巻と漫画版全二巻が只今発売中】  作者: よねちょ
第二部 僕は辺境の学校で魔法で遊ぶ 第二部 第二章 ルカの休日
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第十一話 フォレスト・ホープ・ガイドブック 7

「この職人通りも終わったってことは本通りを除けばこれで半分だよね。レナエルちゃん、体()疲れてないよね」


 今言ったように僕もレナエルちゃんも体は疲れていないと思うけど、この通りではいろいろなことが有った。

 

「大丈夫よ。ルカがずっと助けてくれているもの……別の意味では疲れたけどね。エルフはもっと神秘的だと思ったのに」

「うん、それは僕も思ったよ」


 いやでも、ハイエルフのアリアちゃんもハーフエルフのウルリーカさんも自分の興味ある物には目の色が変わるもんね。あれってエルフの特徴だったのか。

 いやいや、決めつけるのもまだ早い、僕はもっと神秘的なエルフもいるはずだと思い込み、とりあえず気を取り直してから今度は南西の道へ入る。


「あ、ここは冒険者用かな? 歩いている人達の服がぜんぜん違う」

「そうみたいね。お店は武器とか防具とか売っているみたい」


 冒険者ばかりのせいかちょっとこの道はガラが悪い。流石に抜き身で持っている人はいないけど、殆どの人が武器を装備している。

 これからクエストにでも出かけるのか完全装備している人もいる。

 通りの奥の方からは喧嘩しているような騒ぎも聞こえるし、それに制服姿の僕達は結構ジロジロと見られてる。特にレナエルちゃんが。


「ここやめとこうか、危なそうだし」

「そうね」


 少し入ったけど危なそうだと、踵を返したその背中に声を掛けられた。

 

「ルカ君? そう、確かルカ君でしたよね」


 その声に振り返ると、目をつぶった巫女服っぽい女性が立っていた。


「あ、サクラさん。昨日はありがとうございました」

「いいえ。本来はこちらが逃したと責められても、おかしくないくらいですから」

「でも、父さんが言ってましたよ。向こうは最低限の礼儀は取った、こちらの獲物になった時点ですべてこちらの責任だって」

「あら、冒険者心得ですね。お父様は昔?」

「昔、冒険者をしていたと聞きました」

「そうなのですね」


  

 それから、サクラさんと昨日の話と少し世間話をしていると「ちょっとルカ」と、手をグイグイと引っ張られた。レナエルちゃんのほっぺがぷっくりと膨らんでる。

 あ、しまった紹介もせずに放ったらかしにしちゃってた。


「ごめんねレナエルちゃん。この人はサクラさん冒険者をしてる人で昨日お世話になった人。こっちはレナエル、僕の幼馴染です」

「あ、えっと、はじめましてレナエルです」

「これはご丁寧に、サクラと申します。これはまた……物凄く可愛い子ですね。ここまで可愛い女の子は私も初めて見ました。素敵な恋人で良かったですねルカ君」

「そんな可愛いって、私なんて普通ですよ。それに恋人って……ね? ルカ」

「あ、えっと、んー」


 この場合どうすればいいんだろ。一応学校の中では付き合ってることにしているんだよね。レナエルちゃんの虫よけとして。

 冒険者ってアダンくんみたいに学生と繋がりがあったりもするから、バレたらまためんどくさいことになりそうだよね。

 あ、よく見るとチラホラと若そうで学生っぽい人もいるな。だったら──


「はい。かわいい恋人なんです」


 とりあえずそういうことにした。


「ちょっとルカ何を言ってるのよ」

「いや周り見てよ。こっち見てる人の中にたぶんうちの学生いるよ? 何人か見たことのある顔がある」

「そ、そうなの? じゃ、じゃあしょうがないわね」


 僕とレナエルちゃんがコソコソと話している姿を、温かい目でサクラさんが見ていた。眼をつぶっているけど。

 その眼をつぶっている理由とかもレナエルちゃんに教えたら、珍しそうにしていた。


「へぇ、眼をつぶっていても見えてるんですね……てっきり神父様みたいな糸目かと思ったわ」

「ええ、そうです。気配を感じているのだろうとか言われますが、ちゃんと皆さんと同じ様に見えているのですよ。例えば、レナエルさんがギリギリうちのパーティに入れそうな髪の色をしているのもちゃんと識別できています」

「へ? 髪の色?」

「ああ、サクラさんのパーティは赤い髪が加入条件なんだって、でもレナエルちゃんピンク色なのにセーフなんだ」

「髪の色でパーティメンバー決めてるの? だったらアダンなら即合格しそうよね」


 これは僕に向って話したんだけど、しまったな。話の流れでアダン君のことが出てきてしまった。


「まあリーダーが見てるのはそれだけじゃないらしいんですが、細かい事はともかくアダン君は即合格でしたよ」

「え?」

「え?」


 二人共不思議そうに首を傾けていたけど、僕知らない、サクラさんが話の流れ作ったんだもんね。

 約束通り僕は黙ってたよ。アダン君が女性ばっかりのパーティーに入ってるなんて。いや、まだ女性ばっかりとはバレていない。

 余計なことを口走らないようにしないと。


「アダン君のことですよね? ルカ君の友達の」

「ええ、そうですけど」

「うちのパーティーで頑張ってくれてますよ」

「冒険者になったとは聞いたけど、パーティーに入ったとは聞いてないわよ。何よ水臭いじゃないあいつ」

「はは、そうだよね、水臭いよね。そういえばサクラさんはどうしてここに?」


 僕は乾いた笑いを出しつつ話を変えて、何とかこの場を流そうとした。


「ここで待ち合わせなんですよ」

「あ、サクラさんもデートですか?」

「そうだったらいいんですけどね」


 よし、なんとか誤魔化せたかな? 後はじゃあ僕らはこの辺でとか適当なことを言ってこの場を去ろう。

 そしてアダン君にサクラさんのことだけバレたから、他の人ことはレナエルちゃんにバレないよう何とか誤魔化してくれと言うんだ。


「じゃあ僕──」

「待たせてしまったか? みんなそこで会ってな偶然だったぞ」

 

 げっ、このよく通る声は聞き覚えがある、しかもすごく最近と言うか昨日。


「お、昨日の少年じゃないか確か名前はロ、ロ、ロ?」


 最初から間違ってますよ。僕の名前二文字なんだから間違えにくいでしょ。

 僕と同じことを思った人がいるらしく、リスの耳と尻尾を持った……リムさんだったね。その人がリーダーさんにツッコミを入れていた。


「リーダー最初から間違ってる。昨日の子はルカ君」

「あ、そうだったな。ロカ少年だ」

「もういい」

 

 聞こえてくるコントみたいな会話に僕は少し笑ってしまった。

 そしてその声の方向に振り返ると、──あ、終わった、アダン君が。

 パーティーメンバー全員集合しちゃってるな。……アダン君も含めて。


「や、やぁ、皆さんも昨日ぶりです……アダン君も」

「うむ、昨日ぶりだなロカ少年」

「ルカです。ルカ」

「すまない、人の名前を覚えるのは苦手でな。ルカルカルカ。よしこれで今日のところは忘れない」



 それでも今日はなんだ。その台詞には他のパーティーメンバーの人達はいつものことだからか平然としていた。

 唯一平然としていないのは、アダン君だった。リーダさんの台詞とは関係ないけど。

 

「レ、レナエルちゃんとルカはなんでここに? ……い、いやそうじゃない。レナエルちゃんちがうんだ。俺だってエドさんみたいな人のパーティーに入りたかった。あ、いや。そんなことはスカーレットのみんなに失礼だ。え? でもレナエルちゃんに硬派じゃないのバレた? いやなんでそもそもここに二人が? あっ幻覚か、そうだよなあんな恋人つなぎみたいな手の繋ぎ方を……へっ? 恋人? いや幻覚?」


 いや、これ平然としていないどころじゃない。完全にパニクってる。


「落ち着けアダン!」


 リーダーさんがアダン君の肩をガッとつかんだ。このままビンタでもして、気付けをするのかと思ったらそのまま顔を近づけて──


「うぉぉ、アンタ何してんのよ」

「リーダーそれはいけない」


 その寸前で魔法使いのマインさんが杖でリーダーさんの顔を押しのけ、リムさんが横からタックルしていた。


「アンタ! イタイケな少年を汚そうとするな!」

「リーダー捕まるよ?」

「い、いや私はだな気付けを」

「だったらビンタでもしたら良かったでしょ!」

「バカを言うな! 仲間を傷つけられるか!」

「アンタのは心にキズがつくんだよ!」


 リーダーさんを止めたあとマインさんとリーダーさんはギャーギャーと言いあっていた。

 アダンくんを見てみると確かに気付けにはなったみたいだった、効き過ぎて呆然としちゃってるけど。

 そしてこの騒ぎを見物していた野次馬達から、ざわめきが聞こえその中から聞こえたのは「さすがは冒険者であること以外捨てた女だ」とか「冒険のみの完璧主義者」だとか、学生っぽい冒険者に「良いか、冒険者として動いている時のアイツは見習え、街にいる時は見て見ぬふりをしろ」と教えていたり、単純に悪口の「バカの中のバカ」だと言う散々な言われようだった。


「えっと、あの、楽しそうなパーティーですね」


 戸惑ったようにレナエルちゃんから、フォローなんだかよくわからない台詞を言われたサクラさんは顔を真っ赤にして俯いていた。

 


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