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辺境の農村で僕は魔法で遊ぶ【書籍版三巻と漫画版全二巻が只今発売中】  作者: よねちょ
第二部 僕は辺境の学校で魔法で遊ぶ 第二部 第二章 ルカの休日
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第二部 第二章 プロローグ 3

「その格好ってことは、ルカ今日も森に行くのよね」


 改めて食堂に座って、みんなで談笑をしているとレナエルちゃんから僕の格好のことを聞かれた。

 その格好っていうのは制服に着替えている姿だ。

 この服汚れないし頑丈だから作業着としても優秀なんだよね。


「そうだよ。レナエルちゃん達は今日入れて後三日休みだよね」

「そうよ」


 アリアちゃんによる疑似スタンピードの後、僕はすぐに森に行くことになったのでよくは知らなかったけど、スタンピードの次の日は集会があって魔獣を倒した際に落ちた魔石の売却金を分配──各クラス活躍ごとに評価されてそれに準ずる分配率で配ったとか。

 

 その際レナエルちゃん達の従者や侍女クラスにも分配があり、体を張った戦闘系の科から苦情が出たけど、戦闘に参加したこの国の王族で双子のファニオさんファニアさん、隣国のお姫様のセレスさんが報酬の返上を宣言して、場を収めたりしてたらしい。

 その後に僕がいないことに気付いて、心配してくれた三人が森に向かおうとして、それを見かねたポチ君が手伝いがてら、見に来てくれてたりしてたんだけどね。


 そして、その後十日間の休みが発表されたりして、いい感じにアメとムチを使い分けたから、スタンピードに向かわされるなんていう事があっても、誰一人として学校を去る生徒はいなかったという事実は、なんかうまいことおじいちゃんの手のひらの上で転がされている気がして少し怖かった。


 そんなことを思い返していると、レナエルちゃんが口を開いたので現実に戻される。


「なんかルカだけ、仕事してるのに休んでるの気が引けるのよね」

「そう? 僕は別に気にしてないけど」

「私が気になるのよ」

「うーん、レナエルちゃんはそう言うけど、村の時と変わらないよね? たしかに今はみんな休みの中森で開拓してるけどさ、普段は学校通ってるだけだからその時は休みみたいなもんだよ。僕は今回のスタンピードの時後ろから見てただけだしね」

「でも……」

 

 なにせ今まであのクラスの中では、まだおじいちゃんの魔術の授業くらいしか受けてない。それもおじいちゃん忙しいから長くても二時間位だよ。後はおしゃべりしてるか、おじいちゃんがきっかけになるかもしれんので読んでおけという魔術の初歩の初歩のことが書いてあったり、それが出来ても魔術が使えるとすら言えない、誰でも一番最初にやるやつらしい口頭で魔術を発動させる方法が、載ってたりする本を見てるくらいだ。

 なんでも『力ある言葉』をある法則によって口にするだけで、ほんの少しでも才能に目覚めていれば自動的に魔術が発動すると書いてあった。


 生活魔法でも「水よ」とか、「風よ」とか口に出して使うことはあるけれど、それはイメージしやすい用に口から出た言葉なだけで『力ある言葉』とは違うらしい。

 ただ、『力ある言葉』を言うだけで発動する魔術は、簡単というか役に立たないくらいのことしか出来ず、水の魔法で言えば手の中に一滴、一秒水が発生するくらいなレベルみたいだ。それでも魔術に目覚めたという確認と言う意味では非常に優秀だとか。

 ここから難しい魔術になっていくと魔力とかスキルとか構成とか、後はいちばん大切な才能とかが必要になってくるらしい。その使える魔術の段階によって魔術師としてのランクが決まっていくみたいだよ。


 ちなみに僕は呪文唱えても、全く何も反応しなかったけどね! いいもん、生活魔法使って同じこと出来るもん、ほら! 水出した! 消した!


「ルカ、何でいきなり水出したり消したりしてるの?」

「あ、な、なんでもないよレナエルちゃん」

「ほんとに? また余計な変なこと考えてたんじゃないの?」


 はい、そのとおりです。変なことではないけどね。



「まあいいけど……ほら、お屋敷にいるばっかりで、街にも出かけてないでしょ?」

「あ、そういえばそうだね。僕、家にいるの好きだからあまり気にしてなかったや」


 だってお家にはアリーチェがいるからね、帰ってからも休みの日もアリーチェと遊んでるだけで満足だからなぁ。


「だから、ほら……私一人で行くのもなんだし……」

「あ、そうだよね」

 

 レナエルちゃんが街に行きたくても、レナエルちゃんみたいな美人さんが一人でなんて危ないもんね。

 レナエルちゃん守るために強い人が一緒にいないとね。

 じゃあと、僕はレナエルちゃんとの話を、お茶を飲みながら聞いていたロジェさんをちらりとみた後、父さんに顔を向ける。


「父さん」

「なんだ? 気持ちはわかるが、まだお前を休ませる──」

「ロジェさんて休み取れないの?」

「──わけにはって、は?」

「は? 俺ぇ?」

「いや、レナエルちゃん街に行きたいみたいだからさ。親子水入らずで──」


 出かければいいんじゃないかな? ロジェさんなら強いみたいだし。って言おうとしたけど、そこで母さんが大きなため息を付いたので言葉が止まった。


「ルカあなたねぇ。……エド、この子なんとかしないと、いつまでたってもこのままの気がしてきたわ。今日は無理でも後三日の休み以内に何とかならないかしら?」

「あー、今日から森に冒険者が調査に入るが、その結果しだいだなぁ。ソニアわりぃが、俺が何とかしてやれる話じゃないんだよ」

「でも、エド」

「もちろん親父には掛け合ってみる。だが、ここの開拓は念願だったみたいだしな。厳しいと思う」


 父さんと母さんが、話し合いを始めた時に、僕の感覚にアリーチェが起きた事が伝わってきた。

 ちょっと行ってくるか、ちゃんと起きた時に行ってあげなきゃ、反抗(イヤイヤ)期真っ盛りのアリーチェが全開になっちゃうからね。

 まあ、被害を受けるのは主に父さんなんだけど。


 僕は今日二度目の食堂抜け出しをして、同じように二階に向かう。


「アリーチェ起きてる?」と小さく声を掛けて部屋に入ると、今日は目覚めが悪かったみたいで、むーむー言いながら枕に顔をこすり付けていた。

 最近はアリーチェと寝てくれている白猫のみゃーこは僕が部屋に入ってきた時に、足元まで来て体をこすり続けている。今日は甘えん坊だねみゃーこ。でも、ちょっとまっててね、と心の中で謝りつつ、アリーチェの枕元に座る。


「どうしたの? アリーチェまだ眠い」と聞くと「むー」と返ってくる。「まだお眠する?」と聞くと枕に伏せたまま首を振り「むー」と返ってきた。

 僕は「そう」とだけ返して、アリーチェの髪をとかすように頭をなでた後、背中をポンポンと心臓の鼓動に合わせて優しく叩く、もう一眠りくらいするかなとそうしていたけどアリーチェは眠らず、枕から僕の太ももに顔を移し同じように擦り付けて、そのスリスリが体の上の方まで上がっていき最終的には僕の体に両手両足でしがみついた。


「にいたん、あーちぇおきた」

「うん、偉いよアリーチェ」

「うん、えらいあーちぇ」

 

 アリーチェは僕の言ったことをオウム返しする。まだ頭が起きてないんだろう、寝起きの時はこうやって昔の呼び方に変わる時が多い。今のおにいちゃんって呼ばれるのもいいけどたまにはこう呼ばれるのもいいもんだ。

 ダッコちゃん状態のアリーチェを支えつつ、僕はスリスリが止まらないみゃーこを持ち上げ膝の上に置く。物凄く喉がゴロゴロ鳴ってる。アリーチェには負けないとばかりの甘えっぷりだ。


 アリーチェは、もう少し寝ぼけているだろうから、先にみゃーこにご飯を食べさせよう。

 僕は魔力の取り込みを少し強める。そうして魔力を高め、手のひらの上で圧縮し続けるそうするとある臨界を超えた魔力は秩序を持ち始め物質となる。これを魔力結晶と呼んでいる。今回作った大きさはよくある猫のカリカリ程度、それを同時に手のひらいっぱいに作る。

 こうやって出来た物しかみゃーこは食べない。

 みゃーこの前に手のひらを出すと、さっそく待ちきれないとばかりにがっつき始める。うん、いい食べっぷりだ。


 少し経ち、綺麗に食べ終えて「にゃーん」と満足そうなお礼を言うみゃーこを肩に載せ、アリーチェをしっかり抱き直しつつ、僕は一階に降りる。

 食堂に戻ると父さんと母さんの話し合いも終わっており、テーブルに朝食の用意がされていた。


 

 よし、今日もご飯を食べてしっかりがんばるぞ!


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― 新着の感想 ―
[良い点] 妹のイチャイチャ期。 ……いつか終わるのかなぁ。 [気になる点] ……むしろ、妹のお世話してる時にこそ死にそうだという……。 (何か新しい事するたびに脳焼いてるからね!) [一言] また…
[気になる点] スタンピード (英語: stampede ([stæmˈpiːd])
[一言] 親父もじいちゃんも酷い鬼畜だね。 子供一人肉体労働休み無して 倒れて死にそうになったのを見て かわいそうなこしたと後悔したふりする んだろうね
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