第二十四話 授業は少なく、おしゃべりは多く、僕は困惑 3
数日が過ぎたけどアリアちゃんは最初に顔を見せたっきり現れず、ほかの人はハイエルフだからと当たり前のようにしていた。
そんな授業は少なく、ほとんど教室でお話してる日が続いた後のある日、登校して教室に入ると二人の人影が見えた、双子だ。いつもは大体僕が一番早くそのあとに双子、あとはバラバラなんだけど、今日は双子の二人が僕より早く登校していた。
別に競ってるわけじゃないけど、ほら平民である僕が一番遅かったりするとなんか気まずいしね。
教室に入ってすぐ挨拶しようとしたんだけど、二人に違和感を感じた。何の違和感だろうと少し考えていると、双子の方から先に挨拶してきた。
「やあ、ルカ君。今日は僕達が早かったねぇ」
「ルカ君、今日は私達が早かったですわ」
「う、うん。おはよう」
いつものように王族なのに僕に気さくに話しかけてくれるファニオさんとファニアさんだし、その態度も喋り方もいつもと変わらないけど……うーん、あぁ魔力構造が逆だ! この二人はなんかほかの人たちと違って魔力構造が一人のものを二人で分けたような感じだった。
ものすごくきれいに左右対称な構造をしているから一瞬わからなかったけど違和感感じたのなるほど入れ替わってたのか。
確かに双子の女性だからこうやって入れ替わったとしても確かにわかりづらい。
でも何で、入れ替わってるんだろう?
「ねぇ、二人共……」
そう口を開いたけれど僕ははっとして慌てて口を閉じた、王族の秘密とか性癖とかだったらどうしよう。
王族の秘密だったらやばいし性癖だったら気まずいし。
男装の姉と女装の妹だ、何かあるに違いないよね……うん、危なかった。
王族の秘密でも性癖でも僕が余計なこととか言ったら、確実に消されるよね。
秘密だけだったらワンチャン助かるかもしれないけど、性癖を暴いたとしたら全力で消されそう。
下手に余計なことを言うより分からない時には上司に相談! いやちがった、おじいちゃんに相談して確認を取らなきゃね。
「どうしたんだい、ルカ君? 何か僕達にあるのではなかったのかい?」
「い、いや。二人共いつ見ても綺麗だなってね」
……僕は何を言ってるんだ。ごまかすにももっと何かあっただろうに。
「ふふ、そうかい。おや顔が赤いよ妹様」
「顔が赤いですわ兄様」
あれ? 思った以上にごまかせたな。褒められ慣れてるだろうに二人共なんか照れてるみたいだった。
今日のおじいちゃんの講座は魔術の初歩の初歩、言葉で魔術を発動するという講座だった。僕達の中で普通に魔術が使えると言えるのは魔族のルル君だけ。
それでもおじいちゃんは知識は何でも身につけるものだと言うことで丁寧に教えてくれた。
授業が終わり、相変わらず僕のすぐ隣に座っているセレナさんに、用事があるのでと断ってからおじいちゃんを追いかけた。
しょぼんとされると悪いことをした気分になるので勘弁してほしい。
「あの!」
「ん? どうしたルカ、今は……」
おじいちゃんは周りを見渡して誰も居ないことを確認した後「普通に話せ」と言ってくれた。
「あ、でも、こんなところじゃ……双子の二人のことなんだけど」
「! そうか、俺の執務室に行こう」
僕はおじいちゃんについていき、大きな扉のある部屋に入っていった。
おじいちゃんは部屋中の窓や扉の鍵を閉めて、忘れている場所がないか厳重にチェックしていた。
そして椅子に腰掛けて僕を見た。
「それであの二人がどうした?」
「あ、でも。おじいちゃんは知っているのかな? 実はあの二人が」
王族だけの秘密で、おじいちゃんが知らなかったらどうしようと一瞬口ごもったけど、おじいちゃんには聞こえたらしく驚いたように目を見開いておじいちゃんは口を開いた。
「そうか、気付いたか」
僕が実はあの二人が今日入れ替わってたけど、おじいちゃん何か知ってる? って聞こうとしたんだけどおじいちゃんに先越された。
やっぱりおじいちゃんも知ってたんだね。深刻そうにしているからやっぱりあの時、聞かなくてよかったみたいだった。
「……あの二人は同性の双子だ。本来なら生まれたその日に殺されていたはずのな」
「それは知って……えっ、殺され?」
でも、おじいちゃんは僕が思っていることとは違うことを話し始めた。
どっちとも女性だというのは最初に近くで見たときに気付いていたけど、出てきたのは遥かに重い話だった。
性癖とか考えていた僕は恥ずかしくなった。




