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辺境の農村で僕は魔法で遊ぶ【書籍版三巻と漫画版全二巻が只今発売中】  作者: よねちょ
第二部 僕は辺境の学校で魔法で遊ぶ 第一章 物語は辺境から辺境へ
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第十二話 祭りと別れと旅路 7


 


 旅程も順調に進み、目的地へもう到着するってなった時にトシュテンさんからおじいちゃんが今まで生活魔法で協力した褒美として、おじいちゃんが自分の馬車に呼んでいると伝えられた。

 おじいちゃんの馬車に近づくと御者をしていた兵士さんが降り、僕の頭を撫でてお礼を言って離れていった。

 トシュテンさんにおじいちゃんの馬車の扉を開けてもらい中に入るよう促される。

 僕は馬車の中に入り、トシュテンさんは御者席に座る。

 中にはおじいちゃんとおばあちゃんが待っていた。えっと、この場合は礼をしないといけないのかな? と、膝をついて頭を下げようとしたらおじいちゃんに止められた。


「ルカ、良いから入って座れ」

「あ、うん。いや、はい」

「敬語もいらん。そのため兵を下がらせた」

「あ、そうなの? でも褒美って」

「……兵達は俺の本来の立場に仕えているからな、旅の終わりに今までの褒美として特別に招いた……ということにしないと面目が立たんのだ。面倒だが、俺までになると平民と話すにはこのくらいしないとだめなんだ」

「ああ、だから僕だけに準備させてたんだね」

「そうだ、無駄に魔力を使わせてしまって悪かったな」

「いや、別に大丈夫だよ」


 別に魔力は余裕だし、野営中でも寝る前には毎日こっそり馬車の中にお風呂創って入るくらいだったしね。あ、ちゃんと馬車が傷まないように馬車の下から支えとして柱を創っていたし、馬車そのものも魔力を通して強化して、魔力とお湯と音が外に漏れないようにもちゃんと遮断もしてたよ。

 最初、お風呂を創って色々してる時にロジェさんがバレると怒られると思ったのか、すごく焦りだしたので父さんが頭にげんこつ落として落ち着かせていた。僕の家族は、村では一応内緒にして入ってたから慣れたものだった。たまに、みゃーこが一番に風呂入ってて微笑ましかった。


 

「呼んだのはこれからお前達、特にお前は入学の際には俺ともう一人が後見人となる。だから他の耳がない今、少し俺と領地のことを教えておこうと思う」

「もう一人?」

「それはまた後でな。すぐに分かる」


 そして、トシュテンさんの御者で馬車が進む中、教えてもらったのは、まず、おじいちゃんの領地は、百二十年前の戦争終結時に戦争で勝ったこちらの王国が、戦争の主戦場ともなった隣国との国境線に作らせたものが今の辺境伯領地で、その時の王子様の仲間であり最も活躍した人物で、子爵家の三男でトップクラスの冒険者でもあったおじいちゃん(・・・・・・)が、隣国への牽制と内部貴族の抑止力として辺境伯として領主になることになったという。

 そう、辺境伯領が出来ておじいちゃんが初めての領主。……つまり、おじいちゃんは見た目通りの年じゃないんだって、魔力か魔法の影響で年を取るのが遅くなっているとか。

 今年で実は百五十歳になるらしい。流石に聞いた時は声を出してびっくりしちゃった。

 そしてついでに教えてくれたんだけど、その時の仲間の一人がおばあちゃんで斥候役だったんだとか。


 その時の名前がカリストで、今の名前は、辺境伯としての地位になった時に、王国の名前エクスジレリアの二文字「エク」を王様から頂いて、クリストフェル = エク= ビューストレイム辺境伯なったとか。

 国の名前を頂くというのは最大の名誉で、これはおじいちゃんだけにしかつかないらしい。跡継ぎになるとその部分は名乗れず、名前と家名だけになるそうだ。


 さぞかし子供はいっぱいいるんだろうなと思っていたら、そんな事はなく三十年前に出来たのが一番最初の子供で、父さんを含めても十人もいないとか。何故かと聞いたらおばあちゃんが補足してくれて、長命になると子孫を残す本能が薄くなるのだとか、それでもおじいちゃんは遅すぎるけどとおばあちゃんにからかわれていた。


 いい加減長くやりすぎたから引退したいらしくて、今年から数年間完全に領地経営を任せ、何事もなければ跡継ぎに譲ると言っていた。

 その間、今年から開設される僕も通うことになる学校の責任者として留まり様子を見るのだとか、……この説明で僕はおじいちゃんの都に学校はあるのだろうと思い込んじゃったんだけど、そうじゃなかったことはすぐに分かることになる。


 聞きたいことはあるかと問われたので、学校のことを聞いた。


 出来た経緯は、今の貴族の教育不足をおじいちゃんが憂いたことらしい、今までは王都にしか貴族の教育機関はなくそこは貴族か、突出した才能をもつ人材が入ることが出来るけど、ここからは遠すぎるとのことだ。

 辺境伯領土に近い王族の影響を受けたくないと考える貴族の領主やその子供が遠すぎるとかの適当な理由をつけて、自領での教育に切り替え教育不足に陥る。そして、本来の貴族の目的も忘れ問題を起こす貴族がいる。

 辺境伯であるおじいちゃんもその被害を受けてしまい、庶子で平民となった父さんと揉め、更には辺境伯領の大事な拠点を襲うという愚かな行為までやってしまった。

 そのため辺境伯領に学校を作り、あの村を襲った男みたいな性格の次期当主を生み出さ無いためという……建前(・・)らしい。

 二年間だけで交渉も建築も全て終わらせて、今年に開校する。行動もだけど建てるのも早すぎるよね。


 入学は貴族、平民問わずに入れる。十二歳から入学が可能で、一応何歳まででも良いけど入学条件は厳しくなるとか。

 学科は魔法科と一般科に別れて、貴族か才能さえあれば平民も入れる魔法科、一般科は、淑女や上級侍女になるための女性しかいない礼儀作法科、騎士や兵士、冒険者になるための戦闘技術科等があるらしい。他にもあるけど僕達には関係ないので取り敢えずは覚えなくてもいいと言われた。

 推薦で入る貴族は入学金と学費もかなり高く寄付も必要だ、推薦でなくともそれなりにいるらしい。平民は入学金は要らず学費も少額、さらには制服も無料で支給してくれると平民はかなり優遇されているらしい。

 ……これは多分、侍女や兵などになる平民をまとめて育て上げれば、最終的な費用は相当安くなるためだと思う。

 

 おじいちゃんの名前で生徒を募集した学校はものすごい人気で、急な募集にも関わらず倍率は相当高かったらしいともう受験は終わったようなことを言っていた。

 僕達は何もしてないんだけど? と聞くと、一応、試験は受けるらしいけど、もう合格してるらしい。これも村の報酬の一部として僕達にくれたものだった。しかも学費とかも無料でだ。

 入るのは僕とレナエルちゃんとアダン君だけみたい、それ以外の子は報酬を加味してもまだ基準に満たないらしい。

 僕達に二年前に渡された本で一生懸命、文字も覚えたもんねアダン君。


 この世界の文字は表音文字と表意文字が両方使われている。分かりやすく言えば表音文字はひらがなやカタカナ、表意文字は漢字だ。

 ここの言語は文字そのものは全然違うけど、文法がとても日本語によく似ている。……つまり、文字の数がべらぼうに多いってことだ。

 大体は表音文字──これは単純に文字と呼ばれる──が使われているんだけど、貴族にもなると表意文字──簡易魔法文字、簡字──を併用して使うことが多くなるとか。

 

 僕が文字を覚えるのはすぐだった。この世界の僕の記憶力は相当高く、スルスルと頭に入っていった。

 文字はすぐ覚えられたのでウルリーカさんが自分の蔵書を出してくれて、そこに載っている簡字を教えてくれた。本の内容は……まあ、置いておく。

 レナエルちゃんはいつの間にかに文字についてはすべて、簡字も結構な数を覚えてた。


 レナエルちゃんは礼儀作法科、アダン君は戦闘技術科に入る。僕は? と聞いたら「ちょっと特殊でな今は言えん」と気まずそうな表情で返された。

 特殊ってなんだ? と思っていたら御者をしているトシュテンさんから声が掛かる。


「旦那様」

「もう着いたか、ルカ取り敢えずはこれだけでいい。トシュテン後は手筈通りにしろ」

「はい、坊ちゃま達の馬車はロジェに御者を任せこちらへ。その他の者は予定通りに移動させています」

「うむ。……ルカよ、俺達は降りてちょっと歩くぞ」


 窓には繊細な金の刺繍で縁取られたカーテンで目隠しされていて、外の様子はわからなかったので、僕はおじいちゃんの都についたのだと思った。だから、降りると高い塀に囲まれた大都会が見えるのだと思った。

 少しの期待に胸を膨らませながら、おじいちゃんと馬車を降り、僕は周りをゆっくりと見渡した。

 そこで僕は驚愕の事実を知る。

 

 木、木、木すなわち森! そして全く整備されていない大地! そこにでっかく立つ校舎! 


 僕は辺境の農村から、辺境の学校に来た! って、ええぇ! おじいちゃんの都で大都会じゃないの!?


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