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辺境の農村で僕は魔法で遊ぶ【書籍版三巻と漫画版全二巻が只今発売中】  作者: よねちょ
第二部 僕は辺境の学校で魔法で遊ぶ 第一章 物語は辺境から辺境へ
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第五話 これまでと今とこれから 5

 レナエルちゃんをお風呂に残して僕はリビングに戻ると……危なかった。

 アリーチェがもう起きてる気配がする、まだベッドでゴロゴロとしているんだろうけどもうこちらに来るだろう。

 父さんも母さんもいないから、起きて来ていたら寂しい思いをさせるところだった。

 そろそろ起こさないといけない時間だったけど、一人で起きれるなんて偉いぞ。さすがはアリーチェだ。


 僕はアリーチェがいる両親の部屋へ、軽くノックをして入っていった。

 多分僕が近づいたの分かったんだろう、アリーチェは布団に潜り込んで寝たふりをしている。

 これは僕とアリーチェのいつものじゃれ合いでバレバレな寝たふりをするアリーチェに、僕がどうやったら起きれるのかな? と聞いて、頭を出したら撫でて、両腕を出してきたら抱っこしての合図だ。

 

 

 リビングにアリーチェを抱っこしながら戻る。お風呂場から水音がするのでまだレナエルちゃんは入っているのだろう。まあアリーチェとじゃれ合ってたのも少しだからそんなに時間立ってないしね。


「おかあさんとおとうさん。おふろ?」

「父さんと母さんはロジェさんのところだよ。レナエルちゃんがもう一回お風呂に入ってるんだ。ちょっと汚れちゃったからね、後ついでにみゃーこも入ってる」

「みゃーこはいつもおふろながいの」

「そうだねー。毎日は入らないから入る時は長く入りたいのかな?」


 みゃーこのお風呂は気まぐれで入ったり入らなかったりする。だいたい一、二週間に一度位で入るのかな? いや二日置きだったりしたりもするから本当に気まぐれかな?


「レナエルちゃんが上がるまでちょっと時間掛かるからその間、丸いのするか四角いのする?」

「まるいの!」


 アリーチェを膝の上に乗せて、アリーチェが言った丸いのの準備のため魔法を使う。

 丸いのとは色が何種類かある丸いぷよっとしたものが上から降ってきて同じ色を三つ以上合わせて消すやつで、四角いやつは形が何種類かあるやつを並べて積んで横が揃えば消えるやつだ。

 それを僕が魔法で創ったパク……もとい、インスパイヤしたゲームだ。


 コントローラーも良いのが作れるようになった。前作ってたのは四角と丸を組み合わせたものだったけど、いまでは長時間使っても疲れにくい人間工学に基づいた形をしているやつだ。サイズもアリーチェの手に合わせて小さく創ってある。

 ぷよ……おっと、丸いのを動かしたり回したりするのはボタンと連動できたんだけど、色揃えて消えるのとその時に流れる効果音は流石に自動では出来なくて僕がやっている。後、細かい場所の調整もね、ボタン押しても実はただ回ったり動いたりするだけだからやっぱり少しずれるんだよね。

 もうちょっとプログラム的なものが出来ないかな? とは思っているんだけど今のところ取っ掛かりはないなぁ。


 今はこんな風な知育的なものがメインで、お話系は少なくなってきている。でもそうだな、おじいちゃんの所に行くとき馬車移動で何日も掛かるみたいだから、その時は竜探究ゲームの一作目をやらせてみようかな? あれは台詞も少ないし……うん、全部思い出せる。僕がやったのは超の方で出たリメイク版だったな。二作目も一緒になってるやつ。


 僕が考え事をしている最中もアリーチェが僕の膝の上で夢中になってゲームしていた。

 元のゲームにいる真ん中で踊っている額に宝石のある動物の代わりに、僕の棒人間を踊らせているけど前に全力で踊らせていたらアリーチェから「じゃまなの!」と言われてへこんだのでそれ以来簡単な踊りだ。

 これくらいなら見なくても出来るようになった、僕が創ったものだ。どんな形なのか、どの属性なのか、どこにあるのかなんて感覚でわかる。僕の魔力と僕は繋がっているからね。


 しばらくしてレナエルちゃんの「上がったわよ」という声と、アリーチェの三回目のゲームオーバーを迎えて「むー」という声が重なった。三回ゲームオーバーになったら終わる約束だ。これはどんなわがまま言おうが特別なことがない限りそこで終わりだ。


 元のゲーム同様時間が経つと落ちるスピードを早めていっている。ゲームオーバーになったものの、今日もまた新記録をアリーチェが達成していたので、すごいすごいと褒めてあげる。

 アリーチェは嬉しそうに「えへー」と笑っていた。


「……上がったわよ!」

「うわっ、大きな声を出さなくても分かってるよ。お湯を浴びるだけしてくるからちょっとアリーチェと遊んでてくれるかな」

「ありーちぇもおにいちゃんといく!」

「すぐに戻ってくるから、一緒にお風呂はいるのはお祭りから帰ってからにしようね」

「……あい」

「ごめんね、レナエルちゃんよろしく」

「いいわよ。ほら、アリーチェ。お姉ちゃんとお話しましょう」

「うん、おにいちゃんいってらっしゃい」


 お風呂にいくだけなのにアリーチェが手を降って見送ってくれたので、僕も「いってきます」と手を振り返した。

 スパッと服を脱いでお風呂場にいくとまだみゃーこはぷかぷかと浮かんでお風呂に入っている。

 

「お前は本当に長風呂好きだね」という僕のつぶやきにも答えはなかった。

 僕も気にせずせっかくお湯があるからかけ湯だけじゃなくて頭まで浸かってから、泥とかホコリとか落とした後にすぐに出ようとしたけど、みゃーこに一言だけ声を掛ける。


「みゃーこ、今お風呂上がるならそこで毛を乾かしてあげるよ」


 ふと思いついたことをいうとみゃーこは短く鳴き湯船から飛び出した。そのまま僕の体を駆け上ろうとしたので、今回は手のひらですくい上げた。裸だと流石に痛いからね。

 そのまま脱衣所まで連れて行って、ドライヤー(風魔法)と手ぐしでみゃーこの全身を乾かしながら毛を解かす。気持ちいいのか喉がゴロゴロと鳴っているのを聞いて嬉しくなった。

 

「ほら乾いたよ」とそう言うと脱衣所から飛び出しどっかに走っていった。こんな風にみゃーこがどっか行ったときはいくら探しても見つからないんだ。不思議だよね。


 みゃーこを乾かした後に脱衣所から出て、アリーチェの寝癖を直していたら父さん達がロジェさんを連れて戻ってきた。

ロジェさんは入ってくるなり「ようレナエル、ちゃんとルカと仲良くしてたか?」と、なぜかニヤニヤとしながらレナエルちゃんの肩にポンッと手を置いて話しかけると、レナエルちゃんは無言でロジェさんのスネをけっとばしていた。


 それはもう腰の入った見事なサッカーボールキックだった。


「いってぇ! レナエルお前思いっきり、やりすぎだろう」

「ふん、父さんが悪いのよ」


 蹴られた脛をこすりながらロジェさんは僕をチラリと見た後、ぷりぷりと怒るレナエルちゃんと小声で話し始めた。


「なんだよ。せっかくエドさんたちが二人っきりにしてくれたのに活かせなかったのかよ。祭りの前の浮かれた気持ちならあのルカだってな?」

「……あのルカのまんまだったわ」

「あー、そうか……」


 小声で聞こえなかったけどなんかロジェさんが僕を残念なものを見るような目で見てくる。その目も気になったけど膝に座るアリーチェが寝癖直しの手が止まっていたのに気付き、じっと見つめてきた。


「ごめんごめん、手が止まってたね。アリーチェの髪の毛はいつもサラサラだねー」

「さらさらー」


 アリーチェの髪の手触りを楽しみつつ寝癖のひどいところは、人差し指と中指が触れる側面に火の生活魔法で熱だけを発生させてヘアアイロン的な物で素早く直す。

 炎は怖いけど熱だけだし指の一部だけ熱くなってるから、アリーチェに対しての安全面も考慮できてる。これ不思議と僕も全く熱くないんだよね。


「よし、綺麗になった!」

「ありがと、おにいちゃん」


 僕の膝の上で向きを変えてから、むぎゅうとアリーチェが抱きついてきた。ふふふ、これで終わりじゃないんだなこれが、抱きついているアリーチェのつむじを見ながら背中を撫でる。その時に少しアリーチェの魔力を動かし髪へと促す。

 そうすることで普段はあまり魔力が通らない髪の毛先にまで魔力が覆い、髪の毛を良好な状態に保ってくれる。

 アリーチェの髪の毛のサラサラは僕が守っていると言っても過言ではないね!


「はあ、ほんと妹バカね」


 レナエルちゃんの褒め言葉(・・・・)で顔をあげると、みんなして呆れた目で僕を見ていた。


「どうしたのみんな? あ、もう時間かな?」

「時間は時間なんだがなぁ」

「母さん、あなたの将来がちょっと心配になったわ……」


 母さんの心配そうな顔を見ながらハッとした。さっきからカーンカーンと長い間隔で鐘がなっている、おじいちゃんの馬車が見えたんだろう。警鐘と違って穏やかだから耳をすませるまで気付かなかった。

 確かに言われるまで気付かなかったけど、将来が心配なんて大げさすぎない?

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― 新着の感想 ―
[一言] ははは、そりゃーもちろん、水バンクルちゃんを作ったらゲームに集中出来ないからね? いやまあ、既にドット絵(多分もう立体)作れるんだろうけど。
[一言] カーバンクルちゃんが棒人間に( ;∀;)
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