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第十話 辺境と教会とその理由

少し足早に去っていくルカくんの後ろ姿を見ながら私は少し戸惑った。


「何だったのでしょうか?魔力に乱れは感じませんでしたが」


 動揺し始めたときにルカくんを精査しても魔力に乱れはなかったので大丈夫なはずですが。


 しかし、あの隠蔽の習得の早さと精度、素晴らしいです。今度から直接触るか隠蔽を緩めてもらわないと魔力を精査出来ないかもしれないですね。

 私も奥に戻りこの教会が祀っている御神木に祈ろうとしていた所。


「ルカくんは帰ったみたいですね」


 そちらの方向から目を真っ赤に腫らしたままシスターウルリーカと私が呼んだ方が出てこられました。彼女は本当はシスターなのではなく──。


「巫女様、少しは謹んでください。ルカくんにバレたらどうするんですか? つい、変なごまかし方をしてしまったではないですか」


 ルカくんは聡い子だ、私がわざと口ごもった言葉も聞き取り、触れてはいけないことだと察してくれてそれ以上話をふってこなかった。

 そのまま連れ立って御神木のところに移動しながら会話を続けた。


「しょうがないじゃないですか。約束を守れなかったことなどあの子のせいではないのに、あんな悲しい顔をされると私はどうしていいのかわからなくなるのです。それに──」

「それに?どうされました。本当にそんな趣味がある、とでも?」

「──すこしだけです。そうではなくてですね、この子がルカくんを守れず悲しんでるみたいなのです」

「聖木様がですか? 」


 聖木様が今まで感情を表したということは聞いたことがありません。私の勉強不足なだけかもしれませんが。

そして、すぐにその答えを巫女様が教えてくれました。


「人族にはわからないとは思います。それほど微細なものなのです。ハーフエルフの巫女の私でさえ聖木と同期していて、さらにルカくんが来たことで感情が強くなりようやく分かったことなのですが、私にその感情も乗ってしまい、いつもより動揺してしまったというわけなのです」


 「私の趣味は関係ありませんよ」と巫女様がごまかすように続けた。

 巫女様はエルフの方々から直々に送られてきた、ハーフエルフです。ここに聖木様になりうる樹木があるとわかり、さらには魔力草を育てるのに最適な場所ということも判明したので、村を作ると辺境伯閣下が決めたとき、閣下がエルフの方々に頼んだと聞いています。


 この村でシスターが実はハーフエルフで巫女だということは一部の人しか知らないことです。ハーフエルフというのは怖がられてしまいますからね。エルフの方々同様温厚で慈悲深く、怖いというのは噂でしかないことなのですが。


「しかし、聖木様が悲しんだということは今回の魔獣はやはり? 」

「そうですね、ルカくんが原因だったと思います。結界の薄い場所とは言え、それを超えるとはルカくんの魔力の質は素晴らしいものがありますね」

「質、なんですか?」

「そうです、多いと言ってもルカくんの魔力量くらい、この子の結界は覆い隠してしまいます。聖木結界は霧のようなもの、すべてを隠し、魔獣にはなにもないものと認識させています。もちろん、魔力草もです」

「……勉強不足でした」


 どこから聞き及んだのか巫女様は私が推測で語ったことを知っているみたいでした。


「ですが魔力の質──純度とも言う方もいらっしゃいますが、ルカくんのそれは高く、例えば覆い隠してる霧の中から眩しく光っている。フォレストウルフからすれば、美味しそうな匂いのしている、──餌?

といえば良いんですかね?」


 これも、私が話し合いのときに失言したことだ。

 巫女様はこうやって私の間違ったところをからかいながら指摘する時がある。

 

「……申し訳ありません」

「ですが、今日はちゃんとルカくんに気を使っていましたね。よろしいことです。それにルカくんがまだ来れなかったときのための準備をしていたことも良いことです。褒めてあげます。あとでエドワードさんと口裏合わせをしておいてくださいね」

「わかりました、が……巫女様、私は子供ではありません」


 確かに巫女様から見れば私などまだまだ若輩者ですが、こうやって

子供みたいな褒め方をされると恥ずかしくなってきます。

 見た目こそ25歳になる私とそう変わりはしませんがハーフエルフというのは一般的な人族の3から4倍位生きると聞きます。


「私から見れば貴方くらいの人族はみんな子供ですよ」

「確かに巫女様と比べれば私など──い、いえ巫女様は若くていらっしゃいます」


 巫女様に睨まれたので慌てて訂正したら、また、からかうような目をされて嫌な予感がする。


「若い、若く見える、年のことを聞く。たしかに女性にとってはタブーのお話です。──そして人族とは違い、私達ハーフエルフやエルフにとっては逆の意味になります。ハーフエルフはそこまでではありませんがエルフに若く見えるというのは侮辱になりますので気をつけてくださいね」

「え?」

「エルフは歳を重ねることに誇りを持っています。自分たちを樹のように例えるエルフにとって、若いというのは年月の経って立派に成長した樹木に、苗木だというようなものです。今みたいに知らなくて言っているのなら許してくれますが、侮辱を込めて言うと次の瞬間死んでますから気をつけてくださいね」

「は、はい。肝に銘じます。──ちなみに」

「ちなみに! ハーフエルフは人によるので触れないことが一番ですね。そこは人族と同じですね」



 巫女様は気にする方なのかと、聞いておいたほうが良いかと思いましたけど。大きな釘を刺されたので口を噤みました。

誤字脱字の報告非常に助かっております。

ありがとうございました。


PVももうすぐ3万達成いたします。

皆さんの時間を分けてくださり、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >エルフに若く見えるというのは侮辱になりますので 天才か。確かに「森を自然を愛し共に生きる」ってスタンダードな設定なのだから、年輪を重ねる雄大な自然への敬愛と憧れ?は在って然るべきなのかも…
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