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48話 迷子の2人と当主様


 ―――灼熱の大地―――


 「ここどこですかぁ〜〜っ!?」


 草木も燃え上がりそう否、燃え上がっている大地でユズが絶叫する。傍らにはその熱気にあてられたシズが猛烈に汗をかいている。


 2人がヒノクニを出て(ゲーム内時間で)半日、2人は見事に遭難していた。その原因はもちろん準備不足―――と言うより、後先考えずにその場のノリで地図やアイテムを揃えなかったせいである。


 2人はヒノクニを出た時点で気が付いたが戻ることも面倒に思いそのまま旅立つことにしたのだった。その結果が遭難(コレ)である。


 「ユズちゃん……何が冷たいものない……?」


 気怠げな声で催促するもユズ自身も少し堪えてきたため返事を返せなかった。


 この灼熱の大地はその地にいる者全てに『熱帯』の気候効果と『生命持続減少』のデバフが掛かる。そのため、この地では耐暑効果を与える装備やポーション等が必須なのである。


 見た目炎系統のシズの炎印シリーズは見た目だけであって耐暑性があるわけではない。


 「詰みましたか……いや、そういえば……」


 諦めかけたユズだが何かを思い出したようにウィンドウをスライドし、とある項目で手を止めて顔が明るくなった。


 「おいで『ユキナ』!」


 手元に小さな魔法陣を描き何かを喚ぶ。すると途端に周囲の気温が下がり始め一柱の精霊が降臨した。


 「なにか起きたっ!?」


 先程の熱気が嘘のように収まり直ぐ周囲の異変に気が付いたシズが跳ね起きる。が、その存在を見て一先ず警戒段階にまで落ち着いた。


 「すいませんシズさん、驚かせてしまって。この子私の精霊の『ユキナ』です」


 その一言で完全に警戒を解き、楽な姿勢を取る。たが、一瞬でシズを戦闘態勢にまで持っていかせたその精霊はとても侮ってはいけないとシズの現実で培った経験が告げていた。


 その間当の精霊はユズに飛び付くように抱き着き頭を撫でられ、嬉しそうに目を細めていたが。


 「これなら暑いことなく進めますよね」


 そう言って自慢げに笑うユズ。だがシズは『そんな上位の精霊を冷房代わりにしないでぇ!!』と突っ込みたいところであった。


 『マスター……私を便利な冷気の魔道具か何かだと勘違いしていませんか?』


 その瞬間精霊―――ユキナ―――が少し呆れたような声でシズと全く同じ考えをユズに告げた。『この精霊喋ることができるんだな、これで実質三人旅になったなぁ』などと少し現実逃避に駆け込んだシズはぼんやりと考える。


 「え?そのための精霊でしょ?強くて話せてしかも冷房機能付きの三拍子、まさに優良物件!」


 『はぁ……取り敢えずここを抜けるんですよね?お連れの方まで迷惑を掛ける訳にはいけませんしラスタドールに向かうのでしょう?真逆に進んでいることくらい気付いてください』


 「はいはいわ分かりましたよ〜っと」


 ジト目で睨まれ更に方向が間違っていたと告げられ思わず「うへぇ……」といった表情を浮かべるユズと受け流すことにしたシズをユキナが先導し歩き(いや、浮遊し)出す。


 これには2人はユキナに付いていくしかない、何故ならこの涼しい空間はユキナ中心に展開されているためユキナと離れればまた灼熱地獄に逆戻りだ、そんなことにはなりたくない2人は大人しく歩きだした。


           ※


 一方魔界。初作品に興奮して一心に作業にのめり込んでしまったサナは数多の失敗と成功を繰り返しかなりの領域に至った。新しく作るごとに次のアイデアが浮かび時間を忘れること5時間。


 一向に止まなかった鎚や鋏、金槌の音が止みサナが顔をあげると魔界の太陽が丁度焼けた餅の様な形を取っていた。


 また新しい生産スキルも身に着けより良いアイテム、武具の生産が可能になったことをサナは1人喜んでいる。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 名前 サナ 女 Lv20→40/100


 職業:奇妙な商売人

 副業:常闇の生産者


 SP1 2000→0 


 ※バグ発生とアップデート、メンテナンスの影響の為再度ステータスポイントを振り直してください。


 SP2 0→200


 生命 1200(+200)/1200(+200)


 MP 1100(+100)/1100(+100)


 STR 20→270(+20)


 VIT 20→270(+20)


 DEX 60→810(+60)


 INT 140→190(+140)


 LUK 120→620(+120)


 AGI 120→220(+120)


          ()は装備や称号で増加中の値

 


 スキル


 天龍眼Lv1→3、生命錬成Lv1、

 薬物錬成Lv1、幸運Lv4→10、逃走Lv6、

 総合料理術Lv1、総合裁縫術Lv1→10、

 総合鍛冶術Lv8→10、特殊道具作成Lv1→7、

 副装備作成Lv1→7、倉庫Lv1→6、

 地図作成、通話、鑑定記録、武器破壊(ウェポンブレイク)

 深淵食(ダークネス・イーター)、免疫、超改造


 〈NEW〉


 彫金Lv5


 貴金属を彫刻しアクセサリーを作成するスキル。


 細工Lv5


 緻密な作業を行ったり、簡単な魔術を刻印するスキル。呪文や術式は別で覚えなければ使用できない。


 目利き(天龍眼)


 武具や衣類への目利きが良くなり、武具衣類に対しての鑑定精度が向上するスキル。天龍眼に統合済み。


 リメイクLv7


 元の武具、衣類をベースに作り直すスキル。


 改良Lv8、


 武具や衣類に追加効果や補強をし改良するスキル。


 強運Lv1


 幸運スキルが進化したスキル。効果が幸運スキルより上がっている。


 上級鍛冶術Lv1


 より高度な鍛冶を行うスキル。作り出された武具はより多くの追加効果の付与、強度や耐久値の向上を可能にする。


 上級裁縫術Lv1


 より高度な裁縫を行うスキル。作り出された衣類はより多くの追加効果の付与、強度や耐久値の向上を可能にする。


 リサイクルLv6 


 失敗作の武具を素材に還元するスキル。還元率はスキルレベル×5%


 鍛冶精度向上Lv3


 武具制作時に発動し作成した武具の品質が向上する。


 裁縫精度上昇Lv2


 衣類制作時に発動し作成した衣類の品質が向上する。


 命名Lv6


 他者や物に対して使用でき、繋がりや存在を確立させるためのスキル。


 不眠不休Lv6


 不眠不休で活動するためのスキル。戦闘スキルのクールタイム短縮や発動時間の延長の効果も発生する。

 


 装備


 頭:深淵のゴーグル


 体:深淵のマント


 腕:深淵の手袋【捕縛】


 足:深淵のブーツ


 杖:深淵の魔導書【魔術の記録(グリモワール)


 副装備:なし


 称号


 魔女、脱兎、料理人、錬金術師、ドラゴンイーター、


 〈NEW〉


 鍛冶師


 鍛冶師として一人前の証。鍛冶精度と品質向上に補正。


 裁縫師


 裁縫師として一人前の証。裁縫精度と品質向上に補正。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「かなりレベルが上がってるっ!なんで戦闘よりもらえるのかな」


 レベルのかなりのスピードで上がり現在トップのファントムに追いつきそうなレベルである。生産職の少ない今現在では名は知られてはいないが現状トップの生産者だろう。依頼がないだけで腕は確かなのだ。


 「スキルポイントも溜まってるからスキルを取るかレベルを上げるかしないとね〜この装備もまだ慣れないから姿を変えるスキルとかないかな?」


 溜まりに溜まったスキルポイントを見てスキル獲得のウィンドウを開いたサナはスキルを漁っていくが、目を引くようなスキルはない。諦めてスキルレベルを上げるために使うことにした様だ。


 「う〜ん、あ、リメイクとか改良上げればこの装備(深淵シリーズ)の見た目も変えることが出来るかもっ!」


 早速スキルレベルを上げるサナ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 SP2 200→0


 リメイクLv7→10


 改良Lv8→10


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 《スキル【リメイク】がレベル10になりました。スキル【装備改造】が派生しました。

 スキル【改良】がレベル10になりました。スキル【品質強化】が派生しました。

 スキル【リメイク】と【改良】が【超改造】に統合されました。スキル【能力最適化】に進化。進化によりクールタイムがリセットされました。》


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 装備改造:装備の性能を改造するスキル。本人の了承を得た場合、帰属性装備(オリジナル装備)の性能まで改変出来る。改造は外見にまで及ぶ。


 品質強化:装備の潜在能力を最大まで引き出すスキル。稀にスキルが生じる。スキルが生じる現象を覚醒という。


 能力最適化:使用者のイメージに沿ってステータス、スキル、基礎値を再構成するスキル。クールタイムは1年。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 スキルポイントは空になったが後悔はしていないサナ。むしろ大喜びでスキルを眺めている。


 もしこの場に他のプレイヤーが居たらサナの育てようとしていた【改良】と【リメイク】を見て憐れむのもが大半だろう。


 数少ない生産者達だがこの2つのスキルを育てようとするものはまずいない。何故ならこのスキルは思いの外コストが掛かり効果も今ひとつなため新たに作り直す方が一般的なのだ。サナの様に帰属性装備をどうにかしたいがために育てるものはいないのだ。


 だが、ここが運営の嫌らしい所でこういった微妙なスキルや雑魚スキルが後に大成する様に設計されているのだ。それもかなりマイナースキルに比重が多い。


 そんなこと知ったこっちゃないサナは早速自身の深淵シリーズの改造に入った。


 「見た目は少し鍛冶師っぽいところも入れて、ゴーグルは首に掛けるようにしようかな。スカートはなくそう、邪魔だし見られたら嫌だし。包帯は外して―――」


 暫く考えてから装備を改造した。


 今まで厨ニチックな見た目で鍛冶作業をしていた怪しい魔術師から一転漆黒を基調とした鍛冶師の作業着との錬金術師の中間のようでありながら少しオシャレな見た目の元気っ子という印象に早変わり!


 ただ、深淵の手袋だけは変化せず原型を留めていただが、指出しのデザイン性のお陰か鍛冶師と錬金術師中間のような見た目にきれいに収まっていた。


 「これからどんな装備が作れるか楽しみになってきたなあ」


 まだまだ奥が深いと一人納得して満足したサナはその場からたちさって行った。


           ※


 無事灼熱地獄を抜け出したシズとユズはとにかく全速力でラスタドールを目指して走っていた。時たまプレイヤーとすれ違ったがその哀れなプレイヤーは2人に気を取られすぎて狼型のモンスターの餌食になってしまったが。


 走り続けて1時間。地図的に言えばそろそろラスタドールが近くなってくる所まで全速力で駆けてきたからか2人に新たなスキル【超持久】を獲得していた。効果はその名から推して知るべし。


 「ふう……もうそろそろかなユズちゃん?」


 元より体力のあるシズは軽く息が上がる程度でユズに問いかける。


 だが、そんなシズとは対象的に息も絶え絶えの様子のユズ。当然だろう、遥か離れていた地から僅か1時間でここまで走りきったのだから。むしろ平然としているシズが可笑しい。


 因みに限界を超えて行動をした場合、生命力(HP)を消費して活動するため今のユズの残りの生命力は二割程だ。どれだけ距離があったか察して頂けるだろう。


 「はぁ……はぁ……そう……ですね、もうそろそろっ……ついても、おかしくはっ……ないですね」


 ようやく息が整ってきたユズが返答する。もう走りたくない、と呟くユズを尻目にシズは周囲を見渡していると頭上に大きな影を下ろす存在がいた。


 「グオォオォォォオオォンッ!!」


 その咆哮を上げたモンスターの正体は初心者の平原の未だ討伐されていないボス、レッサードラゴン【推定Lv50】である。このモンスターは比較的姿を表すことは無いが、初心者の平原に慣れきったプレイヤーにことごとく現実を突きつけていくモンスターである。


 今の2人のレベルより高く圧倒的な広範囲攻撃に葬られたプレイヤーも少なくはない。ここは初心者の平原では無いのだが、丁度近くにこのレッサードラゴンの巣がありそのテリトリーに侵入しているかつ、近くにレッサードラゴンがいた場合このように襲いかかってくるようになっている。


 シズとユズはすぐに戦闘態勢を取り様子を伺う。そんな二人に構うことなくレッサードラゴンはその巨躯を活かして尻尾で薙ぎ払う。


 しかし慎重に様子を見ていた二人は軽く躱しユズを後衛にシズがレッサードラゴンに向かっていく。


 「【炎舞】、本城流守護剣技【流連斬】」


 「付与(エンチャント):【聖なる障壁(ホーリーシールド)】」


 ユズに防御力向上の魔術いや法術を付与されたシズはレッサードラゴンに流れるような動きで燃え盛る剣技を叩き込むが、硬い鱗に阻まれて大きなダメージにならない。レベル差も相まってか大した痛痒を感じないようだ。


 「うわー硬い、これ、倒せるのかな?」


 帰属性装備(オリジナル装備)であるため壊れることは無いが破損はするため武器の耐久性を考慮してシズが呟く。


 その呟きを聞いてユズがシズの前に出て一振りの片手で持てるほどのハンマーを取り出すユズ。


 「じゃあ次は私がやってみますね」


 明らかに前衛に向いていない装備スキル構成のユズには無茶だとシズは考え止めようとするが改める。彼女(ユズ)は無駄なことはしないと思い直し彼女の補助に回る。


 「おいで『ダイチ』、【精霊武装】―――地砕巨鎚!」


 その間にユズは【大地の精霊】を召喚し、その存在をハンマーに封じ込める。すると片手に収まるほどだったハンマーが見るからに巨大化し人の身の程の丈のある巨鎚に姿を変えた。


 「はあぁぁぁああ!【グラビティ・スタンプ】!」


 そしてその巨鎚を振りかざし精霊の力を解き放つ。


 その効果は名前の通り大地の精霊らしく重力を操作し、相手の動きを止め、そこに更に巨大化した地砕巨鎚で叩き潰す一種の戦技スキルだ。


 「グオォォォオオォッ!!」


 レッサードラゴンは自身を押しつぶそうとする重力に抗うのに精一杯で身動きが取れなくなる。その瞬間を見逃さずユズが飛び上がり更に巨大化した地砕巨鎚を叩きつける。


 ドゴォォオォォオオンッ!!と凄まじい音を立てて広範囲に土埃が舞う。そのあまりの量に思わず目を閉じたシズが土埃が収まり目を開けると生命力を半分以上奪われたレッサードラゴンが地に伏せていた。


 「す、凄い……こんな威力が出るなんて」


 思わずといった様子で声を漏らすシズ。だが彼女に疲れ切った声で「あとは任せました〜」とユズが告げてくる。


 恐らくかなり消費が大きなスキルなのだろう。こんな威力のスキルがホイホイと繰り出しされたらたまったもんじゃない。


 あとは任せてとユズに告げて如月と葉月(月光の直刀にシズが名付けた)を構えた。


 「あとはサクッと終わらせてサナと合流しないとね」


 呟き如月と葉月に炎を纏わせレッサードラゴンに向けて駆け出したと同時にシズのすぐ隣を何かが通り過ぎたような気配を覚えた。


 次の瞬間レッサードラゴンが苦痛の声を上げた。


 シズが急いでレッサードラゴンを見るとその首元に深い赫色をした巨大な狼がその喉笛に牙を立てているところだった。

結城 蓮です。

今回少し長くなったかも。

もうそろそろリアル編行きます。


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また次回合いましょう。

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