第118話:勇者と聖女と剣聖と
久しぶりに再会した勇人との会話は、話題が尽きることもなくずっと続いていた。
下世話な内容が多かったのは、お互い、気を許している証拠だと思っていただきたい。
そんなこんなでいつの間にか時間も経ち、女性陣が大荷物を抱えて戻ってきた。まだ夕食までには結構な時間がある。
「村長ただいまー。あ、ウルガンさん荷物はこっちへお願いしますっ」
「おいおい、またとんでもない量を買い込んできたな……」
ご満悦の表情を見せる夏希。と、その後ろにいるウルガンとウルークは、抱えきれないほどの荷物を持たされていた。
「ウルガンたちも悪いな。荷物持ちなんてさせちゃってさ」
「お言葉ですが村長、廊下にある量を見たら驚きますよ……こんなもんじゃありませんので……」
「マジかよ。一体なにをそんなに買ってきたんだ?」
「そりゃもう色々だよ、い・ろ・い・ろっ」
夏希はともかくとして、立花や葉月の表情がとても柔らかい。ふたりとも、上機嫌な様子で勇人のそばに詰め寄っていた。これ見てあれ見てと、買ってきた服の品評会を始めており、勇人も嬉しそうに話を聞いている。
椿に聞いてわかったんだが、入店禁止の店を回って、ふたりの代わりに購入していたらしい。まあ、自分たちの分もしっかり確保してるあたりは流石だなと思った。
「啓介さん、私も買ってきたんですよ」
「どれどれ。街で売ってる服か、気になるな」
「あっ、これなんてどうです? とっても可愛いと思いません?」
「……」
(いや椿さん、それ服じゃないでしょ……。そういうの見せられるとおっさんは反応に困るわけだが……)
何がとは言わないけれど、ずいぶんと魅惑的なものを買ってきたらしい。肝心なところに穴が空いてるんだが……。椿はそういうのが好みなんだろうか。
品評会もひと段落して、立花や葉月にも勧誘の話を――と思ったら、逆に向こうからお願いされてしまった。
椿と夏希からすべて聞いていたようで、私が勇人を誘っていたことも知っているらしい。話が早いのはありがたいけど、念のため私からも確認をとっておく。
「一応だけど、立花と葉月が村人になる理由を教えてくれ。直接本人の口から聞いておきたいんだ」
「ではまずは私からいいか?」
お互い向かい合って座り、居住まいを正した立花が語りだした。
「私の理由は2つ、いや3つある。一番の理由は勇人と共にいたいからだ。もう聞いてるとは思うが、私たち3人は結婚している。一生勇人と離れるつもりはない」
「ふむ。それで残りの2つは?」
「剣とダンジョンだ」
「うん、それで?」
「だから剣とダンジョンだ。難易度の高いダンジョンで、夏希たちが作ったという伝説の剣を振るいたい」
「伝説の剣? ……それって、コレのことか?」
自分の持っていた魔鉄の剣をテーブルにそっと置いた。
「っ、これがそうなのか夏希! たしかに見事な装飾……ごくりっ。啓介さん、手に持ってもいいだろうか?」
「いいけど、ここで振り回さないでくれよ。ってもう聞いてないし……」
奪い取るように剣を掴んだ立花は、客間の広いスペースでさっそく剣を振るっている。
まあそれはいいとしても……彼女の顔がヤバい。魔剣に取り憑かれたかのような表情をしていた。私は一抹の不安を覚えつつも、今度は葉月に問いかける。
「あそこのヤバい顔のヤツは放っといて……葉月はどう?」
「ヤバい顔って……プフッ。あ、ごめんなさい。私も勇人といたいのは同じ。あとは、理不尽な悪意に晒されない場所で生活したいの」
「なるほど……だが村に行けば、当然ダンジョンにも行ってもらうし、何かのときには人を傷つけることになるが……その覚悟は?」
「それは絶対大丈夫。こっちのダンジョンでも何回か経験してるし……殺そうとしてきた人を殺めたこともあるわ」
「わかった。それならなんの問題もない」
語っているときの表情に変化もないし、実戦を経験してるとなれば大丈夫だろう。いまだ剣に魅入られている立花を呼び戻し、順番に居住の許可を出してから鑑定をおこなっていく。
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勇人 Lv60
村人:忠誠90
職業:勇者
ユニークスキル
全状態異常無効Lv-:あらゆる状態異常を無効にする
勇者の威光Lv-:ユニークスキルの効果が近くにいる仲間にも伝播
勇者の一撃Lv-:全MPを使用して山をも消し去る一撃を放つ<NEW>
スキル
剣術 Lv5<NEW>
盾術 Lv3<NEW>
投射術 Lv2<NEW>
身体強化Lv4<NEW>
光魔法 Lv3<NEW>
治癒魔法Lv3<NEW>
超回復 Lv4<NEW>
直感 Lv5<NEW>
幸運 Lv5<NEW>
解体 Lv2
料理 Lv2
空間収納Lv4<NEW>
限界突破Lv2<NEW>
消費MP減少Lv2<NEW>
取得経験値増加Lv2<NEW>
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立花 Lv51
村人:忠誠79
職業:剣聖
ユニークスキル:聖剣術Lv5<NEW>
斬撃を飛ばす攻撃が可能となる※斬撃数4
聖なる衣を纏い、物理と魔法被害を激減する
あらゆる武器の扱いに長け、威力が上昇する
※レベルにより効果が向上する
スキル
身体強化Lv4<NEW>
縮地 Lv1<NEW>
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葉月 Lv50
村人:忠誠75
職業:聖女
ユニークスキル:聖なる祈りLv5<NEW>
あらゆる傷や部位欠損を瞬時に回復する
あらゆる状態異常、病気を瞬時に回復する
体力と魔力を常時回復する魔法陣を展開可能
※レベルにより効果と範囲、回復速度が向上
スキル:消費MP減少Lv3<NEW>
魔法使用時のMPが30%減少する
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相変わらずおびただしいスキルの数だ。前回よりもさらに増え、スキルレベルも軒並み上昇しているようだ。
三人に共通してるのは、いくつかのスキルレベルが5になっていること。村のみんなのスキルは4で止まっていたが、さらに上がっていくみたいだった。
忠誠度も問題ないし、村に移り住めばもっと高まっていくと思う。とくに、勇人の忠誠が90を超えているってのがうれしい。
◇◇◇
勇人たちも含め、今日は全員、メリー商会に泊めてもらうことになった。
夕食後に倉庫へ行き、結界の中に入ったところでアナウンスが連続で聞こえてきた。これで能力の強化が3回もできる。
もちろん、今すぐ使うつもりはない。『女神の恩恵』の特典にあった<村スキル強化の秘密:10,000pt>を取得するまでは大事にとっておく予定だ。
それと、信仰ポイントについてだが――村人が1人増えると10pt上昇した。三人分確認したので間違いないはずだ。
「明日は午前中に買い出しをして、昼一番で街を出るぞ。勇人たちも荷物を纏めて集合してくれ。なるべく目立たないようにな」
「わかりました。朝一番で準備して戻ってきます」
「ウルガンとウルークも出発まで警戒を頼む。勇人たちに監視がついてる可能性もあるからな。出来ればこっそり出ていきたい」
「「お任せください」」
こうして無事に勇人たちが村人になり、やがて夜も更けていく。
今日は夏希もいるので私は一人部屋だ。
「早くポイントが貯まらないかなぁ」なんてことを思いながら、いつの間にか眠りについていた。




