表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/57

疑問の解消と疑問の発生

2014/09/08 投稿

 ずっと考えていたことがあった。魔法は生まれつき素質がある者、生まれてから素質を手に入れた者、そして素質を受け継いだ者にのみ、発動可能な現象だ。今のところ例外に出会ったことはない。ならば、俺に魔法を教えた人物は何者なのか。

 俺はおそらく彼女から素質を受け継いだと思われる。

 以前に愛崎から聞いた情報を元にすると、俺は一部の系統に偏らない特殊な傾向の素質を持っている。受け継いだ者は、限りなく本来の素質の持ち主に近いものを継承することを考えると。アリス・キテラもしくはアリス・カイテラーはまるで、複数人の素質を一気に受け継いだとも思える。あくまで予測の範囲ではある。しかし証拠とは言えないまでも、そう思わせたる明確な理由がある。

「そう、思うしかない」

 内容を覚えているわけではないが、照らし合わせるために俺の本。アリスが魔導書と呼んだそれを、部室にあったものと比べてみる。

「前に見たときにもちょっと思ったが、こっちの方が記述が多いんだな」

 部室にある方は所々に抜けているところがあるが、俺の方は照らし合わせて書かれていない場所はない、だが。たった一箇所だけ俺の本にない場所があった。

「魔法の効力は、次にこの本を開いた者に自らの魔力を移す」

 俺たちが素質と呼ぶものと魔力と呼ばれるものが、同一であるのかはわからないが、そうである可能性は高いだろう。

 ここにある魔法は本を開いた者に干渉して魔力。つまり素質を継承すると同時に呪いを与えることができる。自らの魔法の力の全てと引き換えに、対価に釣り合うだけの契約を強制的に飲ませる。一定の条件に見合った者を、その者が最も信じるであろう状況で、如何なる理由であろうとも本を開かせるように誘導する。そんな一面も持ち合わせる強力な魔法だ。

「まさか祐希(ゆうき)って、それに引っかかったの?」

 誰もいなかった部室にいつの間にか湧いて出た愛崎。よほど熱中してしまっていたのだろう。振り返ると愛崎を含めた全員が定位置に揃っていた。

「そうみたいだな。おまけに何を契約させられたのか不明って、そんな最悪の状態だ」

 そう軽く絶望していると、中町さんが袖を引いてきた。

「それ普通。でも。誰の継承者?」

「たぶんアリス・カイテラーって人だ」

「「え」」

 風里さんと中町さんが呆気にとられた様子で固まる。俺も自分で何度か調べたが、そんなに驚くことなのか。

「アリス・カイテラーは、中世後期のアイルランドで魔女と呼ばれた人物です。魔法に興味を示していたことは伝えられていますが、彼女にあったのは大きな富と権力と民衆の支持だけです。魔女裁判から逃れ、イングランドに渡った後も、魔法について多くの知識を増やし続けていたそうですが、彼女自身が魔法を使ったという話はありません」

「つまりそれは。アリス・カイテラーには魔法使いの素質がなかったってことか?」

 自分でもボケた顔をしてしまっていることがわかるほどに、謎の迷宮に陥っていた。

「それはわかりません。どうしたわけかアリス・カイテラーの持っていた魔法の知識は、どこにも正式な記録として残っていません。ただ彼女の変わりに当時の司祭に処刑された使用人の遺品の中に、彼女の作成した魔導書の写しがありました。その本棚に並んでいる本の一つです」

 そして話を聞いて、早くも迷宮から脱出できた気がする。

「俺の持ってるこれ、もしかして原本なのか?」

「おそらくそうです。ページを破った後がありませんか?」

 ペラペラとページをめくり、途中にそれを見つける。

「……あった」

「魔導書そのものに魔法が影響するので、同じ魔法の書かれたページは抜きかったんだと思います」

 つまり不都合だったのでそのページを破った。それ故に写しにあるページの一つだけが、原本の方に欠けている。しかし疑問は解けないままだ。

 どうして俺はターゲットに選ばれたんだ?

次もお楽しみください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ