29話
寝ようとは思った。でも寝れなかった。
紗耶香さんが会社に行ってからなんでか知らないけど寝れない。
胸がモヤモヤする。............気持ち悪い。吐き気がする。
なんか、こう、おかしい。心をグチャグチャにかき混ぜられてるような、手で握りしめられてるような感じ。
ベッドの上で寝返りをうっても、胸を押さえても全然変わらない。
なんで?どうして?
...................そうだ。思い出した。あの時以来だ。
お母さんが、沙那ねぇが死んだ時。そして酔った紗耶香さんが舞さんに連れられて初めて家に来た時以来だ。
あぁ、この感情ってあれか。心の奥底に押し込んで、もはや自己暗示のレベルでそんなことはないって思ってた感情か。
独りにしないでってやつか。
私はこの人生大切な人を失い続けた。お母さんに沙那ねぇ。
2人とも奪われた。私の中から永久になくなった。どれだけ手を伸ばしてもつかめない。どれだけ声を上げても引き留めることができない。
そして初めて舞さんに会った時紗耶香さんを私から奪わないでって思いでいっぱいだった。もうこれ以上私から奪わないでって思った。
あぁ、私ってなんでこんなに弱いんだろう。
大切な存在だと分かった人から順番に、確実に奪われていく。大好きな人が1人ずついなくなっていく。
私に幸せを見せるだけ見せて、もっとって思ったらその後奪っていく。そして私に絶望という感情を植え付けて去って行く。
守ろうとしても守らせてくれない。私の知らなうちに取られていく。きれいに何も残さずすべてをね。
取らないで、独りにしないでって何度思ってても意味がない。
...................そっか。私がいるせいだからなのか。私が近くにいるからこんなことになるのか。
私が大切だと思うからみんないなくなるのか。だったら答えは1つしかない。
紗耶香さんにも栞里さんにも、美咲に未空もそう思わなければいいのか。他人でいられたら全員無事でいられるのか。
離れるのは嫌だ。もっと仲良くしたい。もっと話したい、ずっと一緒にいたい。将来どこにいても切れることのない縁を持ちたい。
でも私が近くにいたらそんなことすらできない。みんな死んじゃう。みんな奪われちゃう。2度と会うことも話すこともできなくなっちゃう。
そんなの嫌だ!絶対に嫌だ!!
たとえ他人になったとしても1日1回でも誰か1人の声を少しでも聞ければいい。遠くから後ろ姿を見れるだけで十分。
それだけでいいからもう私から取らないで!奪わないで!!そして独りにしないで!!!
みんながいてくれたらそれでいい!私が近くにいなくてもいいから!ちゃんといるんだってことが分かればいいから!!
だからもう許して!私が我慢して解決するなら我慢するから!!もう大切な人だって、大好きだなんて思わないからそれでいいでしょ!!
だから!.......だから...........だか、ら........だ、か、ら.........。
..............................もう許してよ。
陽凪をこんなにする予定じゃなかったのになんでこうなった........?普通の看病ルートだったはずなのに気が付いたらこうなってた.......。




