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裏の顔がヤバいイケメン君が狙う美少女を助けてから、気づけば彼のハーレムごとブチ壊して美少女全員オトしていました  作者: 本町かまくら


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第85話 ファーストキス


 朝がやってきた。


「行ってきます」


「ふはぁ、いってら~」


 母さんの眠そうな声に背中を押され、家を出る。

 俺と母さんと瞳さんは、今でも家が燃えた後に引っ越してきた場所で暮らしていた。


「まだ時間あるな」


 スマホで時間を確認してから、通学路とは別の道に入る。

 そしてやってきたのは……。



「あ、りょうちゃん! おはよぉ~」



 瞳さんが手を振ってくる。


「やっぱり。家にいないと思ったらここにいたんだ」


「まぁね~。やっぱり完成が待ちきれないからさ~? 新生、スナックこずえ!」


「そうだね」


 見上げるのはあの日、須藤に燃やされたビル。

 しかし、今は工事中で再建途中だった。


 実はあの事件の後、常連さんたちの融資により再建が決まった。

 というのも、俺と瞳さん、そして母さんが募ったわけではなく。

 荒瀧さんを中心に自主的に呼びかけ、あっという間に集まったらしい。

 それを須藤家掃討作戦と同時進行で進めていたらしく……本当にあの人たちの底力が知れない。


「ここでまた、一緒に暮らせるんだねぇ……ふふっ♡ じゃあこの際に、私とりょうちゃんの愛の結晶を……」



「――ちょっと、何してるのかしら?」



 後ろから声が聞こえてくる。

 その声は冬を控えた朝の空気に負けないくらい冷えていて……。


「あ、雫ちゃん! おはよぉ~」


「おはようございます瞳さん。で、“私の”良介に何近づいてるんですか? 離れてください」


「えぇー? 確かに雫ちゃんはりょうちゃんの彼女かもしれなけどぉ~、私とりょうちゃんはほぼ家族みたいなものだしぃ?」


「だとしても、良介と愛の結晶を作れるのは“私だけ”ですから」


「えぇ~? 私との方がいい愛の結晶が作れると思わない?」


「違うわよね、良介?」


 二人から迫られる。


「えっと……とりあえず、愛の結晶とか恥ずかしいからやめてくれ」


 朝からする話では全くない。


「ってか良介、そろそろ行かないと学校遅刻するわよ」


「ほんとだ。じゃあ瞳さん、また」


「は~い! いってらっしゃい、りょうちゃん!」


 瞳さんに見送られ、学校に向かって歩き始める。

 すると瞳さんが「あ!」と声をあげた。


「言い忘れてたけど! 傘持った~? もしかしたら雨降るかもしれないって!」


「折り畳み傘あるから大丈夫だよ」


「ふふっ、さすがりょうちゃん。それだけ! 二人とも、気を付けて~!」


 今度こそ一ノ瀬と歩き始める。


「そういえば、なんで俺が昔の家の前にいるってわかったんだ?」


「……まぁ、なんとなくよ」


「…………」


 よくわからないが、聞かないでおこう。





    ♦ ♦ ♦





 ※壇上瞳視点



 りょうちゃんの背中が遠くなっていく。


 そっか、もう彼女出来る年になったんだ。

 りょうちゃんに遂に隣にいてほしい、守りたい女の子が見つかったんだね。



「いってらっしゃい、りょうちゃん」



 そして――ありがとう。


「よし、頑張るかぁ~!」


 私は空に向かってグッと伸びをした。





     ♦ ♦ ♦





 学校の前の桜並木を歩く。


「……あのさ、一ノ瀬」


「なによ」


「その……なんで手、繋いでるんだ?」


「なんでって、恋人だからよ」


「恋人は登校するときも手を繋ぐのか?」


「私はそう思ってるわ」


「そ、そうか」


 そこまで言われてしまえば、何も言い返せないけど。

 さっきからかなりの視線を集めていて、正直居心地が悪かった。

 しかし、一ノ瀬がそれがいいというなら従うまでだ。

 それに一ノ瀬と手を繋いで、嬉しくないわけがないし。


「でもやっぱり、手を繋ぐっていいものね。なんかこう……ドキドキしちゃうわ」


「俺もだ」


「ほんとに? あんまり表情が変わってない気がするのだけど」


「っ!」


 一ノ瀬がグイっと顔を近づけてくる。

 俺が顔を寄せれば、すぐにくっついてしまうような距離。


「…………」


 一ノ瀬がじっと俺を見てくる。


「……い、一ノ瀬?」


「……そういえば私たち、まだキスしてないのよね」


「え?」


「頬に軽くキスはしたのだけど、口と口の本物のキスはまだ……」


 一ノ瀬が物欲しげに俺の目を見つめる。

 今の文脈で察せないほど俺も鈍感ではなかった。


「一ノ瀬、ここは人の目もあるし、学校の前だから……」


「…………」


 ダメだ。 

 一ノ瀬は完全にする気だ。

 

「えっと……」


 どうすればいいのか迷い、視線をあたふたさせてしまう。

 こういう経験が全くないので、どうしたらいいのか……。

 そんなことを考えていると、



「ん」



 一ノ瀬が目を閉じ、口を俺に向かって突き出してくる。

 これって今ここでキスしろってことだよな、やっぱり。

 でもさすがに……いや、でも彼女が求めているなら……!








「なにしようとしてるのかな?」








「っ!」


 後ろからおぞましいオーラを感じ、振り向く。

 するとそこには、花野井と瀬那、葉月が立っていた。


「ここ、思いっきり通学路だから」


「不純異性交遊はよくないと思うな~」


「だ、ダメだよ! そういうのは結婚してからじゃないと……!!!」


「彩花、それは違う」


「え⁉」


「高校生ならもうバンバンだよ~」


「弥生、それも違うから」


「え~!」


「……全く、いいところだったのに」


「あはは……」


 一ノ瀬がぷいっとそっぽを向き、拗ねたように唇を尖らせる。


「とにかく九条! 場所を考えること! というかするな! 以上!」


「するなじゃないわよ! バンバンにするし」


「バンバンにしちゃダメだよ~!」


「え、えっちだよ!!!」


「うるさいわね乳牛」


「だから私は乳牛じゃないよっ!!!」


 揉めていると……。



 ――キーンコーンカーンコーン。



 予鈴が鳴り響く。


「マズい、朝のホームルームが始まっちゃう!」


「急ぐよ、弥生!」


「うん~! 二人も行くよ~!」


「お、おう」


 慌てて俺も学校に向かって歩き出す。




「――良介」




 すると服の袖をグイっと引っ張られ。

 振り返ったその瞬間。













 ――ちゅっ。









 




 重なる唇と唇。

 柔らかいふにっとした感触が伝わる。


「っ⁉⁉⁉⁉⁉」


 一ノ瀬が小悪魔のようににひっと笑う。

 そして俺の腕に抱き着くと、言うのだった。








「ファーストキスも、私のものね。ふふっ♡」








 ……まったく。

 一ノ瀬は困った奴だ。

 

 

 だけど、可愛い。

 やっぱり一ノ瀬は可愛くて、愛おしい。

 三人の後を追って、俺と一ノ瀬も歩き出す。


 肩を並べ、これからも歩いていく。





 おしまい。





最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

これにて裏ヤバ、完結です!!!


ありがとうございました!

最後まで書くことができたのも、読んでくださる皆様の応援あってのことです!

皆様の応援がなければ間違いなく筆を折っていたと思います!

本当に、ありがとうございました!!!


これからも本町かまくら、皆様の日常に少しでも楽しさをお届けできるような小説を書いてまいりますので、よろしければ作者フォロー、Xのフォローをして引き続き応援していただけますと幸いです!


では、またどこかでお会いしましょう!


                      1月3日 本町かまくら

 

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― 新着の感想 ―
初コメです。完結おめでとうございます。とても一つ一つの回が読みやすくとても楽しめました。よく見てみるとわかり伏線みたいなものやいろいろな隠し要素が見れたので飽きませんでした。改めて完結お疲れ様です。新…
初めての感想失礼します まずは完結お疲れ様です。 ざまぁ系の小説が大好物の僕はとても楽しく読ませてもらいました。 個人的には少し須藤の末路が気になりますが(ただの高校生の戯言です。気にしないでください…
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