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裏の顔がヤバいイケメン君が狙う美少女を助けてから、気づけば彼のハーレムごとブチ壊して美少女全員オトしていました  作者: 本町かまくら


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第82話 九条vs須藤④


 地面を蹴る。

 

 あっという間に間合いに入ると、そこでようやく須藤が俺に視線を戻した。

 

「ッ⁉⁉⁉」


 しかし、須藤が目を向けた先に俺はもう――いない。

 そのことに気が付き、須藤が俺を見つけるその前に。

 地面を蹴った勢いのまま拳銃ごと須藤の右手を蹴り飛ばし、すぐさま二撃目を入れた。


「グハッ!!!」


 須藤と拳銃が吹き飛ぶ。

 



「一ノ瀬ッ!!!」

「良介っ!!!」




 解放される一ノ瀬を抱きとめる。

 拳銃は須藤とは程遠い場所にある。

 それに後ろには警察だっている。


 今のうちに……!



「良介くん!」

「九条くん!」

「九条!」



 花野井たちの声が聞こえてくる。

 警察に止められながらも三人は屋上の扉から顔を出し、手を挙げていた。


「一ノ瀬! 今のうちに!」


「うん……!」


 一ノ瀬が俺から離れ、三人の下に飛び込む。

 これで一ノ瀬を安全な場所に避難できた。 

 しかもアイツの拳銃はすぐに手に取れる距離にない!


「今だ! いけェッ!!!」

「確保、確保ォォォォ!!!」


 須藤に向けて駆け出す警察。

 これで――




「近づくなァッ!!!!」




 須藤の声で、立ち止まる警察。

 空気が一変した。




「アハハハハハハ……アハハハハハハハハハハハ!!!!」



 

 須藤がケラケラと笑う。

 

「りょうちゃん! 油断しないで!」


 瞳さんの声が頭上から聞こえてくる。

 そうだ。

 まだ終わってない。

 アイツが何もできなくなるまで。

 警察に捕まって、刑務所にぶち込まれるまで気を抜くな!


 それにこいつの余裕な表情。

 どう見たって今のこいつは劣勢だ。

 周りを警察が囲んでいて、上にはヘリコプター。

 そしてアイツは何の武器も持たず……。


「はっ! まさか……!」


 須藤がのそりと立ち上がり、胸ポケットから鈍い光を放つ拳銃を取り出す。


「二丁目か……!」


「アハハハッ! 俺はよォ、お前と勝負していく中でたっぷり、この身をもって学んだんだァ……。世の中想定通りに行かねェことだらけだってことをよォ。だからァ――想定外を想定しておくんだよォッ!!!!!」


 須藤の拳銃が俺に向けられる。

 これまでの須藤だったら、さっきので終わっていた。

 だが……須藤の言う通り学習したってことか。


「ヒヒッ! お前も逃げておくんだったなァ……九条ォ。俺は拳銃を持ってる。それでお前は何を持ってんだァ? アァ?」


 須藤が空を見上げながらケラケラと笑う。


「可哀そうだなァ!!! せっかく雫を救出できて、これからってときによォ!!!」



「良介っ!!!!」



 屋上のドアの方から声が聞こえてくる。


「ダメだよ一ノ瀬さん!」


「今出ても何もできてないって!」


「落ち着いて!!!」


「でも良介が……良介が……!!!」


 花野井たちに必死に引き留められる一ノ瀬。

 その目には涙がいっぱいになって溢れていた。

 俺を本気で心配してくれている。

 一ノ瀬が、俺を……。


「アハハハハハハッ!!! やっぱりいいなァ、お前は。俺の持ってたもんを全部奪って、気持ちいい思いばっかしてよォ。俺なんてお前が出てきてからいい思いの一つもしてねェ。そしてこれだ。結果が今だ。……ハッ! 最悪のバッドエンドだよ」


 そう言いながら、須藤がスライドを引く。


「俺様はここで終わり。お前のせいで人生終了だ。……なのに、俺のすべてを奪ったお前がこれから楽しい生活を送ると思うと許せなくて許せなくて……健やかにあっちに行けねぇんだ。わかってくれるよなァ、九条ォ?」


 拳銃が俺をとらえる。


「おいサツ共ォッ!!! ちょっとでもそこから動いてみろ。俺が死ぬよりも先に必ずこの引き金を引くッ!! 上にいる奴らもだァ!!! 少しでもおかしな動きがあればこいつを撃つッ!! いいなァッ!!!!!」


「「「「ッ!!!!!!」」」」


 固まる警察。

 瞳さんや荒瀧さんも下手に動けない。

 たとえ須藤が両方の動きを同時に補足できないにしても、俺が撃たれるリスクを冒せない。

 

「良介! 良介っ!!! 良介……!!!!!」


 一ノ瀬の悲痛な叫びが聞こえてくる。

 

「ハッ! 残念だったなァ。ここで俺とお前は――終わりだ」


 終わり、か。

 思わず力が抜ける。


「当たらないとでも思ってたら大間違いだぜェ? 俺は父さんに連れられてアメリカで射撃訓練済みだァ!!! まさかこんなところで役に立つとは思ってなかったが、お前を撃つには十分な距離だぜェ……ヒヒッ!」


 明確に頭の中に浮かぶ死のイメージ。

 このまま銃弾を受けて、当たりどころが悪ければ俺は死ぬ。

 周りは下手に動けない。

 どうにかできるとすれば――俺一人だけだ。


「…………ふぅ」


 深呼吸をし、精神を研ぎ澄ます。

 俺は死にたくない。

 でも周りは動けないし、須藤の銃は俺を向いている。


 ……なら、できることは一つしかない。

 


「覚悟は決まったか、九条ォ」


「……あぁ」

 


 一度目を閉じ、そして開く。

 すべての意識を須藤の持つ拳銃に集中する。

 俺ならできる。いや、できなきゃいけない。

 ここで俺が死ぬわけにはいかないから。

 俺が生きることが、誰も死なないことがただ一つの勝利条件。


 これは俺が始めた勝負だ。

 最後は俺が決める。

 必ず――決める!!!





「あばよォ、九条ォ」





 引き金が今——引かれる。

 

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