99話 サクヤと七人の女達(中編)
「うおおおおッ ロミアさまーッ」
「あいかわらず、お美しいいいーッ あなたのためなら死ねるッ」
「リーレット領領主さまに忠誠をおおおおおッ」
ロミアちゃんの乗っている馬車にはすでに多数の要塞兵がつめかけていた。
さすがに兵隊らしく整列はしているが、野郎どもの本能の叫びがすごい。
私は不機嫌顔のラムスの隣に立って、それを迎える。
そして馬車から降り立つは、女神のごとき可憐なドレスに身をつつんだロミアちゃん。野郎どもの歓声は最高潮に達した。
「やかましいぞ! 領主を黙ってお迎えしろ!!」
ラムスの一喝で静まるその場。やっぱりラムスは頼りになるね。
その中を優雅な淑女の歩みで進むロミアちゃん。
ラムスに定形通りの挨拶をすませると、目を輝かせて私に言葉をかける。
「サクヤさま、要塞防衛のお仕事ご苦労さまでした。さぞお疲れでしょう」
「え、あ、はい。疲れてはいますが(えっちのしすぎだから)まったく問題ありません」
と言った途端、ロミアちゃんの目がギラリ。
「それなら、このロミアにおまかせ。拙いおもてなしだけど、私が英雄サクヤさまを慰撫してさしあげるよ。ささ、お部屋に参りましょう。うふふ」
ヒイイイイッ やる気満々だ!!
その慰撫って、よけい疲れることだからやめて!
「い、いや、領主さまの仕事をしないと。慰問なんだから、総督と要塞のあちこちをまわって、お言葉をかけてあげないと。ねぇ総督?」
だよね、ラムス。さすがの君も、こんな時くらい仕事しないと。
「サクヤ、領主の案内はまかせる。晩餐まで好きな所をまわって、適当に言葉でもかけてやれ」
そう言って、ラムスはさっさと奥に引っ込んでしまった。
ああ、なんというやる気なし総督。
「ふふーん、まずはサクヤさまのお部屋の拝見するよ。会えなかったぶん、ゆっくり語り合いたいね」
とか言ってロミアちゃんは私と腕をからめる。
領主さま、人目を気にして!
ああ、ロミアちゃんの好き好きオーラを拒むことなんて出来そうもないよ。
こうなったら英雄の力、見せてやるぜええええッ!!!
◇ ◇ ◇
夕方頃ようやく終わった。またまた、ほぼ半日えっちの時間だったよ。
「ふぅはぁ。ノエル、領主さまはお疲れで寝ちゃったから、晩餐には迎えを出して。今日の慰問に行けなかったことを詫びていたと伝えておいて」
「は、はい。あの……サクヤさまもお疲れのようですので、しっかり休んでください」
「ありがとう、そうするよ」
ダメだ、死ぬ。さらに出来るようになったね、ロミアちゃん。
こんな時にそんな成長見せてくれなくてもいいのに。
なぜか昨日から、エロゲの強制イベントみたいのが怒涛のようにやってくるよ。
じつはここは本当にエロゲの世界だったりするんじゃないだろうか。
「とにかくもう今は、みんなと会わないようにしよう。謎の力でえっちイベントが発動しちゃうし」
そう決心して休める場所を探してさまよったのだが。
またしてもパーティーメンバーにばったり出会ってしまった。
「アーシェラ!!」
兵隊服を着て汗まみれな彼女は、まるで少年兵みたいだ。
「やぁサクヤ。領主様の案内はもういいのかい」
私の部屋のベッドの中しか案内しなかったよ。なのに、ひどく疲れた。
「うん。領主様は疲れて寝ちゃったからね。アーシェラは何してたの?」
「ボクは練兵場で鍛錬してたよ。あそこは今、広く使えるからね。つい身が入りすぎてヘトヘトだよ」
屈託なく笑うアーシェラに、ちょっとホッとする。この分なら、えっちな方向には進まずにすみそうだ。
でもアーシェラの蒸気した体が色っぽくて……いやいや。こんなことを考えてると、またエロゲルートへ突入する。いい子のまま別れよう。
「それじゃお互い疲れているし、ここらで別れようか」
「うん、あとでね」
と、その時、給仕服を着た艶やかな女性がアーシェラの腕をとった。
「ハーイ、サクヤとアーシェラ」
「ええっシャラーン?」
「うわああああっ、どうして君がここに!?」
「ふふっ。総督様といっしょに来たのよ。でも男どもが囲んじゃって、今まで来れなかったのよね。領主様の来訪で興味はそっちに移っちゃって、やっと抜け出せたわ」
なるほど。野暮ったい給仕服を着ていても、彼女の魅力はまったく衰えないし。。
野郎どもが夢中になるのも無理ないレベルだ。
「相変わらずのモテぶりだね。彼氏でもつくれば少しは自由になるんじゃない?」
「あ、でもラムスはダメだよ。恐い婚約者様がいるからね」
「彼氏ね……今は男と関係持ちたくないんだ。どうしても、あの人への後ろめたさがあってさ」
ああ、お兄ちゃんね。でも、お兄ちゃんはこの世界には来れないし。
そんな貞操とか持ってもしょうがないんだけどな。
「男とはダメだけど、女となら浮気にならないよね。ね、そう思わない?」
ハッ! なにかヤバい流れに!?
「二人とも。疲れてるならアタシがスッキリさせてあげるよ。サクヤのおかげで、女同士のやり方も覚えたからね」
「わあああっ、やっぱりいいいっ」
「えええっ? もしかしてシャラーンとヤるの? 友達同士なのに、カラダの関係まで持っちゃうの?」
「こんな女にモテそうなカラダしといて何言ってるのよ。このこのっ」
「わわっ変なトコさわらないで」
うくくっ、男がダメだからってイケメン女子走るとはあざとい奴め。
このままではアーシェラが変態踊り子の魔の手におちてしまう。
ここは私が体を張って守らねば!
「君なんかにアーシェラを好きにさせるものか!」
「あら、勝負? そういうのも好きよ」
「ええっ!? もしかしてボク、二人に攻められるの? そんなのムリ!!」
そんなわけで、三人で強引にアーシェラの部屋に突撃し。
張り合うまま、二人で可憐なイケメン女子を攻めたてた。
朝になって、アーシェラが悲惨なことになっているのを見て正気にもどったよ。
やっぱりハーレムなんか作ったら、人間ダメになるね。
「はぁ。アーシェラごめん。とにかくこれで六人全員とやったぞ。さすがにもう、これ以上はえっちイベントなんて起こりようがないよね。しばらくは身をつつしんで過ごそう」
そう決心して部屋に戻ったのだが。またまたノエルが急報を告げた。
「サクヤさま、また総督がおよびです。なんでも力になってほしいと」
「なに、またロミアちゃんのこと?」
「いえ。昨日の領主様に続いて、本日もまた要塞にお偉方が来訪しました。その方のことで相談があると」
「……まさか!? それって王族とかじゃないよね?」
「いえ、そうです。セリア王女様がいらっしゃいました」
ターゲット全員が要塞に集まっちゃったよ。
いやしかし、セリア王女様はラムス一筋だし。
また私が相手をする、なんてことはないよね?




