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97話 ハーレム終了?

 投稿が遅れて申し訳ありません。

 ゴールデン前の仕事が忙しかったうえに、体調もくずしてしまっていました。

 要塞の正面というものは、あえて広大な空間を開けておくのだそうだ。

 ここに大軍が集結しやすいようにしておいて、要塞の最大衝撃力をもつ正面を攻めるようにするとか。さらにこちらから打って出る場合にも有効で、すばやく大軍を展開できる。

 そんな要塞正面の広大な場所に、私とノエルとアーシェラはただ三人魔物のスタンピードを迎え撃つべく立っている。

 要塞の防壁はまだ建設中なので、今そこに攻撃されるわけにはいかないのだ。 


 「乾いた風が吹きすさぶ。まさにいくさ日和ってやつだね。私たちだけしかいないけど」


 「ねぇ話してくれないんですか。どうしてわたし達が、いきなりこんなにすごい力を持ったのか。それにあの夢に出てきたラムスさんはいったい?」


 「そうだね。あのラムス、なんかすごい気になるというか、ボクたちと関係してたような……ゴニョゴニョ」


 二人ともやっぱり気になるか。

 お兄ちゃん、本当に愛されていたんだな。

 まぁ私もこの件でお兄ちゃんの本当の姿を知ったんだけど、たしかにあのバイタリティーは魅力的に見えるのかもしれないな。


 「ごめん、それは話せない。さて、そろそろ音が近い。構えてアーシェラ。最初は君だよ」


 「よ、よしっ。来るならこい!」


 アーシェラは私たちの先頭に立ち、持っていた大盾を構える。


 ドドドドドドドドド……


 地震のような地響きが鳴って程なくして。

 砂塵をあげ魔物の大群が雄叫びをあげながら押し寄せてきた。

 ヤツらが目指すは、後ろの改修中の要塞一直線。

 魔人王から命令されているんだろうね。「何がなんでも、この要塞を壊せ」って。

 その先頭集団は、踏み潰してミンチに変えんとアーシェラに迫ってきた。


 「【聖騎士不破の盾ホーリーウォール】!」


 アーシェラがその言葉を発したと同時、盾が輝き、光はアーシェラを守るように包む。

 魔物どもはかまわずアーシェラに激突する。


 ドッゴオオオン!!!!


 「やった……」


 「すごい……」


 アーシェラの構えた盾の前に、大きなミンチの塊ができていた。

 あちこちに飛散した肉片が散らばっている。

 アーシェラに突撃した魔物どもは、聖騎士固有スキルの【聖騎士不破の盾ホリーウォールに進行を阻まれ、自分たちがミンチになってしまったのだ。

 アーシェラも信じられず茫然としているが、彼女は絶対防壁の盾になった。

 これでいざという時にはアーシェラが強力な防壁の力で守ってくれるので、戦い方の幅が広がる。


 「さて、今度は私たちの番だ。ノエル、たのむ」


 魔物たちはアーシェラを迂回し、なおも要塞を破壊せんと突き進む。

 だけど壁はもう二枚ここにあるんだよ。


 「”無限の水域より流れきたれ蒼の波濤。巻け、ほとばしれ、長大なる水の塔をうちたて津波となれ”」


 ノエルのその呪文に導かれ、巨大な水柱が渦巻きながらそこに出現した。

 水魔法レベル10による水の大質量召喚だ。

 私はそれに向かい、メガデスを構えて駆けだす。


 「ノエル、アーシェラ、自分の技でしっかり自分を守ってなよ。スキル【赤熱灼衝せきねつしゃくしょう】!!」


 これは炎の魔法剣。

 自身の魔力で剣に数百度の熱をもたせ、それをさらに剣技で数倍の熱の塊に変える剣技だ。

 無論、私自身にもノエル、アーシェラにも高レベルの熱耐性衝撃耐性は獲得済み。


 「てえええいっ!!!」


 灼熱の塊となったメガデスを一気に水柱に叩きつける。

 本来ならこれをくらった対象は炎につつまれケシズミになるのだが、今回の対象は水。

 なのでその大質量は一瞬で水蒸気となり水の煙へと変わる。

 と同時に大爆発が起こった。


 ゴオオオオオオオウウウウッ


 水蒸気爆発だ。

 水が気体になることによって、瞬間的に数十倍に膨れ上がった体積が爆発をおこす現象だ。

 水の爆発は周囲の無数の魔物を吹き飛ばし、地鳴りをたてて荒れ狂う。

 一瞬の暴風。

 それがすべてを吹き飛ばし、すべてを終わらせた。




 「ケホッ、おさまったかな?」


 水煙の漂う中ようやく晴れてきた視界には、吹き飛ばされた魔物が動くものなく倒れていた。

 その中で生きて動いているのは二人だけ。

 無論、ノエルとアーシェラだ。


 「しかし爆発中の中心地点の光景なんて見られるもんじゃないねぇ。普通なら何もわからずにあの世いきだろうし」


 「うん……自分がどうして生きているのか不思議だよ。今までも自分がいきなり強くなったと感じることはあったけど、今回はいつの間にか人間離れしてたよ。やっぱりこれもサクヤの仕業?」


 「わたしは……何となくは気づいてましたけどね。魔法というのは、魔力を高めたり術式を学んだり作ったりしてようやく使えるものです。だけど、わたしは何もしてないのに強力な魔法を使えるようになっていましたもの」


 多分、セリア王女様も何かしら気づいているんだろうな。

 短い期間とはいえ、私たちだけで重要な要塞の警護を任せるなんて、普通じゃ考えられないもんね。でも……


 「私はこのことについて何も言う気はないよ。ただ、これで私たちは魔人王と戦うことが出来る。それだけで十分だよね」


 「……そうだね。魔人王を倒せればドルトラル帝国も解放できる。ボクの故郷を救えるかも。でも誰なんだろうな、ラムスさんによく似たあの人は」


 「サクヤさまがそう言うならしかたないですね。でも、この力。夢で見たラムスさんと何か関係あるんでしょうか。何となくそんな気がします」


 スルドイね。さすが最後までお兄ちゃんとともに戦ってきたオリジナルの記憶だ。

 本当のことは話せないけど。

 でも、オリジナルの記憶の中のお兄ちゃんにとまどっている二人はひどくさみしそうで、何か話してあげたくなった。だから……


 「一つだけ教えておくよ。みんなが新たに手にした力は記憶の人と繋がっている」


 「え? それは……」


 「これ以上は聞かないで。でも、そうだな。この力を使ってこの先の戦いを切り抜けていった先に、その人と逢えるかもしれない」


 「そっか。へへっ」


 「がんばりましょうね。きっとこの戦い、勝ちますよ」


 やれやれ、やけるね。オリジナルの彼女らの記憶が入っちゃったからしょうがないけど。

 二人ともお兄ちゃんのことをやけに好いているよ。遠からずハーレムも終わりかな。

 でも、さみしい終わり方になるとしても、魔人王との決着はちゃんとつけないとね。この世界の行く末のためにも。


 ガシッ


 「お? なに、二人とも?」


 ノエルとアーシェラは、私の両脇で腕をからめてきた。


 「でも、サクヤもちゃんと愛してるよ。何度もカラダをかさねた仲だしね」


 「わたしを市場から買って、今まで一緒にいたのはサクヤさまですもの。記憶の人が誰であろうと、サクヤさまが一番なのは変わりません」


 「あはは、よせよ二人とも。恥ずかしいじゃないかよ」


 そうだよね。オリジナルの気持ちがみんなの心に宿ったとしても。

 でもそれで、今まで一緒にいた記憶がなくなるわけじゃない。

 ハーレムはいまだ進行中……だよね?

 

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― 新着の感想 ―
[一言] ある意味複雑な構造になっているな。 7人は、元のラムスの女という記憶だけでなく、サクヤのハーレムの女としての意識も引き続き持っているわけだ。 先の話だが、どう決着をつけるのかな? その前…
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