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56話 ゼイアード急襲【アーシェラ視点】

 モンスターの群れをサクヤがなぎ倒したあとにいたのは依頼の三人の賢者。そしてなんとザルバドネグザル元帥が生きていて、そこに現れた!

 『どうしてあのお方がここに?』と思う間もなく、ボクらの方へも襲撃する一団が現れた!

 それを率いるは、懐かしの狼の耳と尻尾を持ったかつての師匠であり先輩。

 狼獣人ゼイアード先輩が十数匹の狼型モンスターと共に現れて、ボク達に襲い掛かってきた!


 「きゃあああっ!」


 竜巻を操っていたノエルは真っ先に狙われ、たちまちにゼイアード先輩の剣に倒れた!


 「くそっ、ヤツは帝国の獣人兵か? なんでこんなとこにいやがる!?」

 「ゼイアード先輩ですか!? どうして?」


 ボクはラムスといっしょに応戦したが、着ぶくれしたラムスはまともに剣を振れずに、たちまち倒されてしまった。


 「なんだ、【栄光の剣王】もサクヤがいなきゃこんなものか。こりゃ俺一人でも十分だったな。お前らはサクヤへ警戒してろ」


 と、連れていたモンスターを警戒にあたらせ、残ったボクに向かってきた!


 「くっ」


 ガキィィンッ


 ゼイアード先輩の剣は見えないほど速く鋭いが、彼に剣を習っていた時に剣筋を覚えていたので、多少は凌ぐことができる。


 「どうしてゼイアード先輩がここに? 帝国へ戻ったんじゃないんですか?」


 「ハッ、あの敗戦の不始末で戻れるかよ! おめぇこそ、あのサクヤとツレたぁどういうことだ? そっちは帝国を裏切ったのか?」


 「祖国への愛国心はありますけどね。でも他国を侵略しすぎる帝国のやり方には疑問があったっす。だから家には帰らないことにしました!」


 「だとしても、よりによって帝国遠征団の壊滅を引き起こしたあのサクヤのツレになった理由は? どんな立派な理由があるか聞かせろよ、オラ」


 「しょ、しょれはぁ~(汗)」


 『捕まったあとエッチな拷問を受けすぎて、離れられない体になっちゃったっす!』

 ……どか言えないよねぇ。ダメな女騎士の末路そのものだ。

 

 「ま、元同僚の情けだ。この件はこれ以上聞かないでおいてやる」


 ニヤリと嗤って理由をを察してしまったゼイアード先輩。


 「だが、その代わりおとなしく捕まりな! ちょいとサクヤに用があるんでな!」


 「そ、そんなのお断りっす!」


 ああ、でもやっぱり強い!

 今はどうにか受けているけど、このままじゃすぐに限界が来る!


 ガキィィンッ


 ひときわ鋭い一撃をどうにか弾いた。

 けど腕の力がしびれて、これ以上は受けきれない!

 それを見てニヤリと嗤う先輩。

 ハッ! まさかこれは計算?

 あえて強撃を弾かされて、腕の力を削がされた?

 センパイは当然のようにトドメの一撃を……


 ギィィィィンッ


 「……あ、あれ?」


 「なにっ!?」


 なぜかトドメに放ったゼイアード先輩の剣が見えた?

 しかも、自分でも信じられないくらいに洗練された動きでそれを凌いだ?

 しびれて力がまるで入らないこの腕で?


 「くっ、まぐれか? なら、これならどうだ?」


 キィンッ キィンッ ガキィィンッ シュバッ シャキィィンンッ


 「あ、あれ? 先輩、遅くしました? なんか剣が全部見えますよ」


 「バカな!? 逆だ。速くしてんだぞ! さっきは殺さねぇよう手加減してたが、今は本気だ!」


 「ええっ!? ゼイアード先輩の本気の剣を、ボクが捌いてるの!? なんで?」


 「知るか! ハッ、まさかこれが、サクヤの謎のスキルアップの力か? アーシェラ、おめぇサクヤに何された?」


 「ななななななナニって、その……本来は女同士じゃとかじゃなく、恋人同士でやる事と言いますか……その、騎士とかには戻れないような事をいろいろと……」


 「チッ、サクヤの悪趣味の噂が本当だと知れただけか。しかし謎の一端は見せてもらったぜ。元元帥げんすい様は何かつかんだか? お前ら、退くぞ」


 ゼイアード先輩はボクから大きく飛び下がると、配下のモンスターを連れて風のように撤退した。

 作戦が失敗したなら執着せずにすぐさま撤退。

 相変わらずさすがの判断力。帝国は惜しい兵隊長を失ったね。


 「ふうっ、助かった。ハッそうだ! ノエル、ラムス、無事?」


 倒れているノエルとラムスの傷を調べたが、斬られたような跡は見られなかった。


 「良かった。ゼイアード先輩、斬らずに昏倒させただけみたいだ。なるほど、人質にするなら理想的な状態だ。さすが見事な手際だね」


 こちらの方はゼイアード先輩が退いて終わったけど、さて、サクヤの方は大丈夫だろうか?

 あっちはあのザルバドネグザル元帥閣下が、まさかの単独でサクヤと対峙していた。

 元帥閣下はたしかに規格外にすごい魔法師で召喚術士でもあり、今世最高最強の術士ではある。

 でも前衛もなしに、S級モンスターすら単独で倒した最強剣士のサクヤに、一人で戦えるものだろうか?


 「最強剣士と最高魔法師一対一タイマン対決か。いったいどんな戦いがくり広げられているんだろう」


 その世紀の戦いを刮目して見んと、二人のいる場所に目をやると……


 「あ、あれ?」


 だけど、二人の姿はどこにも見当たらなかった。

 辺りには無数のモンスターの死骸が散らばっていて、賢者らしき三人の男達が倒れているのは見える。

 でも、ついさっきまでそこにいたサクヤとザルバドネグザル元帥だけが、どこを見回しても見当たらない。

 元帥は状況不利とみて撤退したとも考えられるけど、サクヤまでいないのは?


 「サクヤぁ! どうしたんだよお! いったい、どこにいったんだよお!」


 ヒュオォォォォッ


 声を響かせ叫んでみても、それに応える者は誰もいなかった。

 ただ強い風の音だけが、終わった戦場に空しく響くだけだった。



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― 新着の感想 ―
[一言] >着ぶくれしたラムスはまともに剣を振れず あっちゃあ……。いいとこなし。 >元同僚の情けだ。 案外いいとこあるな。 >さすがの判断力 優秀ですね。 >最強剣士と最高魔法師一対一対決 こ…
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