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42話 帰らない冒険者たち

 遅れて申し訳ありません。

 新展開の話が、なかなか思いつかなかったんです。

 さて、私達がふたたび【奈落の道】の第一層へ引き返し、冒険者ギルド内で装備を身に着け、いざ出発しようとした時だ。

 さっきホノウと話をしていた職員が話しかけてきた。 


 「待ってください、【栄光の剣王】のみなさん。少しお話が」


 「どうしたんです? 私達がダンジョンに入るのに何か問題が?」


 「いえ、そうではありません。あなた方は四層から戻ってこないパーティーの方々を探しに行かれるんですよね?」


 「ええ、そうです。それが何か?」


 「じつはあの後、そのあたりに潜ったパーティーが予定を過ぎても戻ってこないと三件ばかし相談を受けました」


 「なんだとう!? バカ者め。何かあったに決まっておろうが! 判断が遅いわ、きさまぁぁぁッ」


 ホノウ。何で君が君が答えるんだよ。君は【栄光の剣王】メンバーじゃないだろう。


 「は、はぁ。まだ捜索隊を出すまでにはいきませんが、よろしければついでに探してくれませんか?」


 「フフフ……まぁ、そう頼られては仕方ない。よかろう! そいつら全員を見つけ出し……」


 「ホノウ! 勝手にパーティーの返事をするなああ!」


 このダンジョン探索はユクハちゃんを探し出すことが最優先のはず。

 この人、依頼人のクセにそのことを忘れてるんじゃない?

 だいたい、その手の頼まれごとを冒険者稼業が請け負ったら、アッという間にタダ働きの連続だ。


 「悪いけど冒険者は依頼人が優先。ついでのタダ働きはしない」


 「そうでしょうね。では、連れて戻ってこれたなら、報奨金をお支払いします。また何かしら役に立つ情報をいただけたら、情報料をお支払いしましょう。それでいかが?」


 「わかった。あくまでついでだけど、気にかけておくよ。それで帰ってこないパーティーってのは、ランクはどのくらい? このダンジョンに慣れているの?」


 「ランクは青銅級ブロンズが二つと黒鉄級アイアンランクが一つ。どれも、このダンジョンに慣れているベテランが誰かしらいるパーティーなので、揃って遭難するとは考えられません」


 「ランク中級のパーティーが揃って戻らない……となると、どこかで大物が出ている可能性があるね。場所は、そのレベルの冒険者が足を踏み入れる場所かな」


 「でしょうね。偶然にも黄金級ゴールドランクのみなさまがダンジョンに入られるのは、じつに幸運でしたよ。では、これが三つのパーティーの特徴です。よろしくお願いいたします」


 三つのパーティーの名前と特徴、それにダンジョンに入った時間を書いた紙を受け取ると、私達はダンジョン第二層へと入った。

 ダンジョンは誰が造ったのか石造りで、じめっとした湿気がただよっている。

 それに多少の冷気もあり、ホノウの忠告通り多少の厚着をしてきて良かった。

 それにしても気になるのは、ギルド受付けが言っていた帰らない冒険者たちのことだ。

 アーシェラも気になるのか、ポツリと言った。


 「なんか大変なことになっているみたいだな。これは単に帰るのが遅れているんじゃない。迷宮で何かあったんだろうな。ホノウ、君の勘も大したものだ」


 「フハハ、これが師弟の絆というもの! ユクハの危機はこの師匠の俺にはすべてお見通しよ!」


 その大事な弟子を、私は君からNTRしようと狙っているんだよ。

 すまんね。


 「その大荷物を抱えながらちゃんと歩いている姿は、まさにプロって感じですね。重くないんですか?」


 ホノウはダンジョン探索のプロらしく、巨大な荷物を背負いながらもしっかりとした足取りでついて来る。


 「本来、第四層までならここまでの装備はいらんのだがな。だが何があったのか分からん以上、二重遭難をさけるためにテントなども用意してきた。何があろうとも、この荷物があれば大丈夫だ。お前ら、そのつもりで俺も荷物もしっかり守れよ」


 「はは……がんばります」


 ノエルは複雑な表情だ。

 じつはこんな大荷物を持ってこなくても、必要なものはノエルの転移ゲートを使って地上に戻ってとってくればいいのだ。

 人のいいノエルは、ちょっと罪悪感にさいなまれている。

 しかし【転移ゲート】なんてレア能力をうかつに言う訳にはいかない。


 「ノエル、プロの意気込みは大切にしよう」


 「はい、そうします」


 と、スキル【気配察知】が発動した。

 先の方からモンスターが近づいている。


 「みんな、敵がくるよ。数は五匹の狼だ。構えて」


 「すごい、敵がくることはボクでも何となくわかったけど、数や正体までわかるなんて」


 本当にスキルってチートだよね。

 やがて五匹の狼は姿を現し、囲むように私達にせまってくる。


 「右手の三匹はまかされた。アーシェラとノエルは左手の二匹に対処して」


 「ええっ一人で三匹も? 大丈夫なの?」


 「五匹とも相手にすることだって出来るよ。でも二人には実戦を積ませようと思ってさ」


 「さすがサクヤ様……アーシェラさん、私が牽制に風を出します。合わせて向かってください」


 「おおっ、いくよノエル!」


 私は問題なく三匹の狼を倒し、アーシェラとノエルもきっちり二匹とも倒した。

 二人とも実力に問題はないようだね。

 さて倒した狼だが、それは死骸にならずに、その姿を消して小さな石に変わった。


 「なんだこりゃ。狼はどこ行った」


 「知らんのか。ダンジョン内で死んだモンスターは、この魔石になるのだ。もっと深層に出る奴はレアな武具やら魔導書になるのもいるそうだがな」


 「じゃあ、倒しても素材とかとれないんだ。この石、売れるの?」


 「魔力炉の燃料として買い取ってくれる所がある。この大きさなら、だいたい一個15パルーって所かな」


 「子供の小遣いじゃん。あの大きさの狼だったら、毛皮とか牙とか素材をとれたら、二百にはなっていたのに」


 「だからダンジョンへ潜るのは、モンスター狩りの腕を上げるためか、レアアイテムを探すためか、ダンジョンに挑戦することそのものが目的か」


 ダンジョンで稼ぐには、それなりに腕がないとダメってことか。

 ま、私の目的はダンジョンではなく、そこで働くユクハちゃん。

 彼女を見事助け出して感謝する彼女をオトし、さらにそれに感激したモミジちゃんもオトすのが目的だ。


 そこから二回ほどモンスターの襲撃があったが、難なく倒して第三層への入り口に到着。

 巨大な螺旋階段が下まで続いていた。


 「思ったより早くここまで到達できたな。だが言うまでもなく三層のモンスターは、ここよりさらに強いぞ」


 「強いって虎ゴーンくらい?」


 「いや、そのレベルは第五層からだ。そうか、お前達は黄金級ゴールドランク。このレベルのモンスターなら問題ないのか。しかし問題の第四層には大きな地底湖がある。当然、水中のモンスターなんかも出るから気をつけろ」


 「ああ。油断はしないよ。それより気になるのは、この下からくる冷気だよ。下の階層って、こんなに寒いものなの?」


 三層からは妙に肌寒い冷気が立ち上ってくるのだ。

 身に着けている装備ではちょっと防寒が不安になるほどだ。


 「いや、温度はさほど変わらないはずだぞ。おかしいな。たしかにこれは異常だ」


 そうだよね。原作でもダンジョン探索にそんな描写はなかった。

 第三層からの異常冷気に、妙に私は戦慄した。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] ホノウ君、なんとなくラムスに似てないか? >原作でもダンジョン探索にそんな描写はなかった。 原作との違いがある……用心用心。
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