41話 そこでこのSAKUYAは考える
さて。ダンジョンへ潜る準備は、ほとんどホノウの私物でまかなった。
だが持ち物の中には足りない物も出てくる。
「うーむ、魔石ランプが使えなくなっているな。といっても買い替える金はないし……よし、モミジにでも借りるか。奴のランプはかなりの高級品だが、友達を助けるためだと言えば貸すだろう」
『モミジ』だって!?
そうか。ホノウは、ユクハちゃん繋がりで彼女とも知り合いなんだ!
彼女もターゲットのうちの一人。
ちょうどいいので、ここで顔見知りになっておこう。
「ホノウ、そのモミジって子は錬金術師なんだよね?」
「ああ、よく知っているな。奴のじいさんは有名だが、その娘のアイツのことまで知っているとはな」
「私も行くよ。錬金術師様には、ちょっと頼みたいことがあってさ」
そんなわけでホノウについて行き、モミジちゃんの家へ来た。
何でも【錬金の賢者】と呼ばれる王都でも屈指の錬金術師のおじいちゃんと住んでいるのだそうで、大きな研究ラボのような家であった。
ホノウが彼女を呼び出すと、すぐに彼女は出てきた。
オレンジの髪を三つ編みにした、小さな子供のようなような体格の彼女。
原作で見た通りのモミジ・ルルペイアだ。
「おいモミジ、お前の魔力ランプを貸せ。ユクハの奴がダンジョンから戻らなくてな。これから探しに行くのだが、俺のランプが使えんのだ」
「えっ大変。でも、ホノウくんだけで潜るのは危険だよ。誰か腕のたつ冒険者とか付いているの?」
「うむ、そこの彼女のパーティーだ。なんと黄金級だぞ」
「黄金級? …なんか普通の女の子みたいだけど。本当に大丈夫なの?」
「俺もまだ実力は見てはいないが、黄金級だぞ。多分、大丈夫……に違いない! 俺の勘がそう言っている!」
「それって何の保証にもなってないよね? ちょっと腕を見せてもらおっかな。ねぇお姉さん。やけに大きな剣を背負っているけど、それって振れるの? 筋肉量に全然見合っていないように見えますけど?」
「ちゃんと使えるよ。見てみなよ」
背中のメガデスを引き抜くと高速で振る。
【二段斬り】【三段斬り】【雷鳥剣】などのスキルで空を切って見せる。
「おおうっ凄い剣戟! これが黄金級の実力か!」
「すごい……この風圧じゃ相当の負荷がかかっているはずなのに、体がふらついていない。いったいどうなっているの? あの剣の材質は……あれ?」
ひとしきり演舞をし終え、剣を背中の戻そうとした。
「待ってお姉さん! その剣、もっとよく見せてください!」
いきなりモミジちゃんは飛び出してきて、メガデスに顔を近づけた。
「危ないなぁ。不用意に大型武器に近づくもんじゃないよ」
私の忠告など無視して、メガデスを食い入るように見つめる。
「複数の魔法術式をかけた合金素材、魔力遮断構造、超多重結界機能……間違いない。行方不明になったおじいちゃんのメガデス!?」
あ、そう言えばモミジちゃんはこのメガデスを作った錬金の賢者の孫だっけ。
ヤバイな。とにかくごまかそう。
「違うよ。偶然この剣の名前はメガデスだけど、これはリーレット領のハジマーリ大森林にあったものだよ」
「ええっ!? そんなバカな! この魔法合金素材はたしかにおじいちゃんが作ったものだよ! これ、おじいちゃんい見せたいんで、ついて来てください! あ、でも、あまりに魔法合金の重量がかさみすぎて、そんな風に振り回せるはずがない……やっぱり別物?」
「そうそ。とにかく私達はユクハちゃんを探しに行くから、あなたのおじいさんの所へは行けないの。魔力ランプを貸して待っててくれない?」
「でも、だからってお姉さんをそのまま行かせるわけにはいかないよ。ユクハちゃんの救出、ウチもついて行く!」
「ええっ!?」
なんというチャンス!
次のターゲットが、策を考える前についてきた!
だが、そこでこのSAKUYAは考える。
ユクハちゃんとこのモミジちゃん。
果たしてダンジョン内での同時攻略は可能か?
『ノエルとアーシェラ、それにホノウのいる中で、みんなに知られることなくユクハちゃんとモミジちゃんで三Pをする!』
そんな不可能すぎるミッションを可能にするスキルは……
…………なんなの、その異常なシュチュエーションは。
なんで私はこんなド変態なことに挑戦しようとして、スキルを調べてるんだ?
たとえ出来ても、、そんなハイレベルスケコマシなスキルなんて覚えるべきじゃない。
欲張らず安全策をとって、一人ずつにしよう。
幸い、モミジちゃんを攻略するためのアイテムは持ってきてある。
「ちょっと待って。錬金の賢者の孫の君には、別に頼みたいことがあるのよ。クエストには行かず、頼まれてくれないかな?」
「はぁ? お断りです。何を頼もうとしてるか知りませんが、メガデスを前に他に何をするつもりはありません」
かまわず懐から、前にザルバドネグザルが落とした石を取り出す。
「これを調べてほしいんだ。おそろしく硬いんで、何か特別なものかと思って」
「魔石? ………いや、普通のものじゃない。これは、いくつもの魔石を混合させてより強力な効果を出させるような……」
思った通り、この石をモミジちゃんの目の前に出した途端、モミジちゃんの目は吸い寄せられるようにこの石に釘付けになった。
原作のモミジちゃんも錬金術師の性なのか、特殊な鉱物なんかにひどく興味を惹かれる性分だったのだ。
「…………これはどこで?」
「帝国元帥のザルバドネグザルが持っていたものだよ。アイツは【聖者の石】って呼んでいたけど」
「ええっ!? どうして帝国元帥が持っていたものを持っているんです!? お姉さん、何者です!?」
「だから黄金級の冒険者だって。あとでそれを手に入れたお話とかもしてあげるからさ。頼むよ」
「…………分かりました。ですが約束してください。クエストが終わったら、あたしと一緒にそのメガデスをおじいちゃんに見せに行くって」
「わかったよ。それじゃ頼んだよ」
「あの当代最高の魔法師とも言われるザルバドネグザル元帥の秘宝の石! これは調べ甲斐がありそうです! おじいちゃんから道具も借りなくちゃ!」
モミジちゃんは、もの凄くウキウキしながら自分の部屋へ飛び込んでいった。
とりあえず初対面はこんな所でいいかな。
ユクハちゃんをオトしたら、また来るからね
「お待たせ、ホノウ。それじゃ行こうか」
「……おい、魔石ランプはどうした。急がなきゃならんのに、何のためにここに来たと思っている?」
「…………あ。待ってえモミジちゃん! 魔石ランプを貸してえ!!」
結局またまたモミジちゃんを呼び出して、魔石ランプを借りました。
さぁ、ダンジョンへ行こう!




