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エロゲ世界でハーレム無双? ふざけんなあっ!  作者: 空也真朋
第一章 エロゲ世界クエスト
33/265

33話 アーシェラにさよなら

 その翌々日には出発の準備も整い、王都行きの馬車は用意された。

 領主として王都へ上るロミアちゃんは幾人かの家臣を従えているが、それに付き従って護衛の私達【栄光の剣王】もついて行く。


 だけど私には王都へ行く前にしなければならない事があった。

 帝国軍から捕まえているアーシェラちゃんのことだ。

 出発前に少しだけ時間をもらい、彼女を城門の外の森の入り口へ連れてきた。

 荷物を括り付けた馬を引きながら。


 「まったく戦時物資ってのは凄いねぇ。馬の値段が普段の五倍もしたよ。それでも売ってくれただけマシになったらしいけど」


 街の危機は去っても人々の不安は消えず戦時物資の値段も下がらないままだ。

 街の防衛力が著しく下がっていることは事情通の者なら知っているし、魔界蜘蛛もいつ戻ってくるかわからないからだ。


 高いのは馬だけじゃなく、日持ちのする食料や寝袋も高かった。

 馬に加えてそんなものまで買ったんだから、蓄えはスッカラカンだ。

 もう私の財産は、背中のメガデスとノエルだけになっちゃったよ。


 「こんな所へ連れてきてどうするつもりだ? あきたから、いよいよボクを殺すのか」


 「そんなことしないよ。いつも言ってるでしょ。私、あなたのことが好きだって」


 「ああ、ボクの体で楽しみながらな。まったく、女のオマエに自分が女だってことを思い知らされるなんて思いもしなかったよ」


 「無茶してごめんね。でもベッドの上ではあんなに可愛いんだから、そろそろ仲良くしてくれてもいいのに」


 「その時のボクでボクをはかるな! 見習いといえど、ボクはドルトラル帝国軍聖騎士! 国を守る聖なる騎士! サクヤ、お前の敵だ!」


 本当に私にちっとも懐かない誇り高い子だな。

 けど、そんな彼女も大好きだ。

 できるなら、何の因縁もない世界で友達になりたかったな。


 あとノエルやロミアちゃんとも、お肉の関係なんかナシで友達としてやり直したい。

 日本に帰ることを諦めた今、心からそう思う。

 

 「ねぇアーシェラ。自分の家に帰りたい?」


 「ああ、帰りたいね。帰ってお父様や師匠に、未熟だった自分を徹底的に鍛え直してもらいたい」


 私もだよ。

 私も家に帰って、少しは真面目に勉強とかしてみたい。

 私がこんなことを思うなんて、女の子とのふしだらや血なまぐさい生活の反動かね。


 「そしてサクヤ、いつかお前を倒す騎士となる! 悔しいけどお前は強い。でも、あの敗北の日は心に刻まれてしまった。だから、いつまでもお前を追う! たとえ今ここで果てようとも、最期までそれだけは誓い続ける!」


 私にそんな目標になる価値なんてないんだよ。

 インチキとメガデスでイキっているだけのチート剣士なんだから。

 でも彼女の気高い目を見ると、そんなつまらないことは言えなかった。


 「いい目標だね。立派な騎士になったアーシェラと、また会う日を楽しみにしているよ。ほら」


 引いていた馬の手綱をアーシェラに渡した。


 「荷物には三日分の食料と水それに寝袋なんかをまとめておいたよ。それとこの子で何とかうちまでがんばって」


 「…………なに?」


 「この子、うちに帰ってからも大事にしてあげてね。よくなついているい子だから」


 昨日買ったばかりなのに、少しばかり愛着がわいたこの子の首筋を撫でる。


 「まさかボクを逃がそうってのか!? 馬まで渡して!」


 「うん、そう。道中はいろいろ危険だろうけど、なんとか無事に帰ってね」


 「どうして……どうして敵であるボクにそこまでするんだよ! ボクは、お前を倒すつもりなんだぞ!」


 「家に帰りたいって言ったでしょ。私もなんだ」


 でも、そのためにアーシェラを傷つけるのは、やっぱり違うよね。

 ロミアちゃんの『嫌い』で気づかされたよ。


 「……? 意味がわからないぞ」


 「こんな思いをするのは、私だけでいいってことだよ。アーシェラ、元気でね」


 「サクヤ……」


 ……あ、つい顔を近づけてしまった。

 さんざんやった経験で、アーシェラの可愛い顔にキスしそうになっちゃった。

 「ぎゅうっ」て目を瞑るアーシェラが可愛いけど。

 もう女の子ハンターは廃業だし、この悪癖は直さないとね。


 「…………サクヤ?」


 「ごめん。もう、しないよ。お互いやることもあるんだし、ここらで別れよう」


 アーシェラの顔が悲しく寂しそうに見えたのは錯覚かな。

 でも私は彼女から背を向けて歩き出す。

 アーシェラのことはこれでいい。


 私が王都へ行く理由はなくなっちゃったけど。

 それでも、ロミアちゃんが領主としての役目を果たすために行くのなら。

 私もついて行って、全力で守らないとね。



 「……え?」


 スキル【気配察知】が発動した。

 何か恐ろしいものが、街の城門あたりに迫ってきているのを感じた。


 「マズイ! あそこにはみんなが待っている! ロミアちゃん、ノエル、ラムス!」


 私は全速力で駆けだす。

 だがやがてそこから、大勢の人々の悲鳴が聞こえはじめた。




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― 新着の感想 ―
[一言] 今回は、だいぶシリアスですねぇ。
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