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エロゲ世界でハーレム無双? ふざけんなあっ!  作者: 空也真朋
第七章 クード・ガジェル山賊団
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107話 決戦! ゴーメッツ対決の時

 ウトバルト砦前。

 そこにはロミアちゃんのご領主馬車はじめ従士騎馬隊及び解放された領民のみなさんが、領都アンブロシアへ向けての出発準備をすでに完了し待機していた。

 そこに帰還した伝令役二人が紋章官レムサスさんへ報告をする。


 「先ぶれのお役目、果たしましたっす。ゴーメッツ男爵は領門にてお待ちするそうっす」

 「しばらく領門を見張ってましたが、逃げ出す様子はありません。本当にご領主様の出迎えをするようです」


 クライブさんとリッツ君の報告を聞いたレムサスさんは、何かを悟ったように「フム」とうなずく。


 「逃走は無しですか。やはりゴーメッツ男爵はまだあきらめてませんね」


 ゴーメッツ男爵に渡した白鳳金貨は、ヤツが派遣した暗殺集団が壊滅したことを知らせるため。レムサスさんはそれで逃げてくれることを期待した。私もそうだ。けど、それは無しとなった。


 「やむを得ません。リーレットを蝕む最後の害悪と決着の時です。ですがロミア様、ラムス様。本当にすべて任せてよろしいのですか? ゴーメッツ男爵はかなり圧の強い人物でありますが」


 私とレムサスさんに反して、馬車内のロミアちゃんと馬上のラムスはやる気まんまん。


 「やるよ。今まで領主として情けない姿ばっかりだったからね。私だって戦うんだってこと、領都の民や引き連れた人達に見せないと。『馬車に引きこもってみんなに任せる』なんて出来ないよ」


 「ガハハッ、見せ場はロミアだけに譲らんぞ。このオレ様にもある事を忘れるな。なぁサクヤよ」


 「う、うん。ねぇラムス。本当に――」


 「ハッ」として言葉を飲み込む。

 ――私は何を言いかけた?

 これはリーレットの統治権を賭けた政争。そこにラムスが参戦するというなら、私には何も言えない。言うべきじゃない。


 「どうしたサクヤ。ゴーメッツごとき小物に妙に浮かない顔ではないか。サクッと片づけて今度こそオレ様が英雄になってやる。見ているがいい」


 「――うん、見ているよ。ラムスの英雄になる姿を」


 そう言うのが精いっぱい。

 私に出来るのは、ただ二人を見守って、必要とあらば剣をふるう。

 それだけだ。それだけ――


 「進発なさい。先はアンブロシア領門前。みな油断無きように」


 ロミアちゃんの言葉で、私達領主一行は発進した。



 ◇◇◇◇◇◇


 領門前に到着。ゴーメッツは言葉通り多くの部下を閲兵の形で領門付近に並べ、自身はその中央に支配者然として佇んでいた。

 ロミアちゃんは馬車を降り、大胆にもゴーメッツに向かい優雅な足取りで歩む。慌てて護衛がロミアちゃんの側へ付いてゆく。

 対するゴーメッツも歩み出し、ロミアちゃんの前に立ちはだかるように立つ。


 美少女と強面な男。並ぶ両者には存在感や威圧感に大きな隔たりがあるはずなのに、不思議とロミアちゃんは格負けしていない。

 役者スキルだ。本気になってゴーメッツに対抗する気持ちがスキルを発動させて、その存在感を大きく見せているんだ。


 「ただいま戻りました、ゴーメッツ公。私不在の代行、ご苦労でした」


 「賊に囚われながらも、ご壮健そうで何より。ですが、これでこのリーレットの問題が浮き彫りになりましたな」


 「ゴーメッツ公には何か意見があるようですね。かまいません。忌憚なく存念を申しなさい」


 「この群衆の中で申すのもはばかられるが、領主閣下の仰せ。申しましょう。ロミア様、あなたは私と結婚すべきだ」


 ドッギャアアアン

 突然のプロポーズ!!? 何考えてんだ、この男!

 リーレットの問題を話すんじゃなかったの?


 「突然のお申込みですね。しかし、私には答えを保留している殿方が数多くおります。貴公までお待たせするのは忍びありませんわ。なので、残念ですが断らせていただきます」


 「そのような浮ついた話ではない。そなたは家や民に対し、責任を取らねばならぬ負い目がある。たった一人の冒険者に領地の安全保障を任せきりにしたため、それが消えた瞬間、昨今領地の荒廃を招いた。いかがか?」


 何言っちゃってんの? 領地を荒廃させた山賊団をけしかけたのは、お前自身だろうが!


 「私の不徳は承知です。ですがそれがどうして、そなたとの縁談に結び付くのです?」


 「なぜなら、私がこのリーレットの救い主だからだ!」


 コイツ……! ここまで厚顔無恥だと斬りたくなってくる。


 「強大なモンスターの跳梁。盗賊団の凶悪化。もはやリーレットは生ぬるい政策で治められる安閑な地ではない! 強固な指導力による強兵策をもって領内をまとめ上げ、領民すべてがこれに当たらねばならん。それはロミア様や古い因習を守るだけの家臣団にはとうてい出来ぬこと」

 

 この野郎、本当に調子に乗ってるな。本物の悪党ってのは正論も吐けるもんなんだな。


 「私なら出来る。強力な指導によってこの地を守ることが! ロミア様、あなたには強き伴侶が必要だ。せめて領地と民を思うならば私と娶り、そなたの全権限と山賊団より押収した財を私に引き渡せ」


 はらわたが煮えくり返るような演説にも静かに聞いていたロミアちゃん。

 それが終わると、魅力的な笑みをたたえて自らの答えを語り出す。


 「『強き伴侶が必要』それだけは同意しましょう。たしかに女の身では、強い防衛兵団を編成するのは厳しくあり難しくもあります」


 「で、ありましょう。では、この私の手をお取りください。さっそく婚礼の儀をご相談しましょう」


 「ですが残念です、ゴーメッツ男爵。強き殿方ならば、あなたより前にすでに見つけてしまっているのです。ラムス様、これへ」


 「ドカドカッ」と足音もうるさく、派手なマントを翻したラムス登場。圧の強いゴーメッツの眼差しにもまるで臆することなく、ロミアちゃんの隣でふんぞり返る。


 「ガハハッ、ようやく出番か。ゴーメッツ、キサマの言う強き伴侶はここに居る。山賊団ごときに大量に兵を集めねばままならん臆病者が強き伴侶とは笑止。山賊団なら貴様がグズっている間に、冒険者のオレ様達がサクッと解決してやったわ」


 本当にラムスは煽りが上手いね。ゴーメッツは青筋たてて鬼面の形相。

 しかし、すぐさま冷笑を浮かべてやり返す。


 「ほほう、そのオルバーン家の問題児が領主殿の見る強き伴侶ですかな。たしかに血統だけは一流ですがな。サクヤ殿とのご趣味が高じて男を見る目を養ってこられなかったようですな」


 この野郎……!


 「血統は大事ですよ。縁戚関係の相手は後ろ盾になっていただけますもの」


 「聞けば以前は国軍の総督など務めたものの、内部の人間と折り合わずに職務を放棄して逃げ出したというではありませんか。その者に地位や財がありますか? 領内をまとめ上げる才は? その者がいったい何をもってこのリーレットを守ると言うのです」


 「フフン、オレさまの才を見たいと言うか。ならば見せてやろう。おい者共、見せてやれ!!」


 ラムスの合図とともに、三台の積載馬車にかけられた覆いがいっせいに取り払われる。その下には金銀財宝や高価な調度品があふれんばかり。そのあまりに圧倒的な量に誰もが目を見張る。


 「見よ! 山賊団のアジトからオレ様が見つけ出したお宝だ。これがあればリーレットの立て直しなど雑作もない!」


 「ギリリッ」とゴーメッツは歯ぎしり。

 計画通りなら、それは自分がいただく物だとでも思っているのか。

 得意気にふんぞり返るラムス。ロミアちゃんはその手を優雅にとって高らかに宣言する。


 「私、ロミア・リーレットはリーレット家を受け継ぐ者として、ここに宣言いたします。婚約者ラムス様とともに、このリーレットを強き領に変えることを。二度と故郷の地を踏み荒らされない国造りに励むことを!」


 うわあああっ

 爆発したような大歓声が民衆から上がった。

 ご領主様万歳、婿殿万歳、

 リーレット領に栄光あれ――


 大歓声をバックに「ガハハッ」とゴーメッツをあざ笑い見下すラムスは、すごい人気だ。正に本物の英雄だね。

 けれど私は、まぶしすぎる二人に、妙にさびしくなって目をそらした。

 まるで二倍の失恋をした気分だ。


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― 新着の感想 ―
[一言] そういえば、もともとは、「ロミア:ラムスの婚約者」、でしたね。立ち消えになっていましたけど。 この2人をみて、二倍の失恋をした気分のサクヤか。 この恋心、この先どうなる。
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