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エロゲ世界でハーレム無双? ふざけんなあっ!  作者: 空也真朋
第一章 エロゲ世界クエスト
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18話 荒野の決闘

 ノエルは私の声に応え、風魔法を繰り出す。


 「春に乱れる風塵よ! 【メギリュロンの偏西風】!」


 私達はあらかじめここらの砂をかき集め、砂山を作っておいた。

 「ゴウッ」と強風が吹きつけ、その砂山に直撃。

 ものすごい砂埃が舞った。


 濛々もうもうたる砂ぼこりが連中を襲い、さしものトラゴーンも、うなりながら足ぶみをする。

 と同時、私は駆けだして、正面のトラゴーンを無視。

 行儀よく臨戦態勢をしている後ろ二頭に斬りかかる。


 「グオオオオオオンッ」

 「ガオオオオンッ」


 瞬く間に二頭を斬り下ろすと、「私はここだあっ!」と叫ぶ。

 砂埃で目や鼻をやられても、トラゴーン達はその声に反応して反転。

 私に向かって駆けだす。


 だが、動きにキレがない。

 タイミングも完全にズレている。


 「ま、待てお前たち! いったん止まりなさい!」


 魔物使いはこのまま向かわせたら不味いと静止をかける。

 されどそれは悪手。

 私はそんな命令に従う理由なんてないからね。


 「ギュオオオオオッ」

 「ガオオオオオオンッ」

 「グオオワオオオオオッ」


 動きの止まったトラゴーン三頭、いただきました!


 「お、おのれ! 私がいながら、むざむざ五人もの子供達を! 空上班、サクヤをりなさい‼ 絶対逃がすなあああっ!!!」


 三羽のフレスベルクは三方に飛び広がり、一糸乱れぬタイミングで私に向かって急降下してくる。

 完璧に統率された動きだ。


 「ノエル! 合図をしたら吹き上げる風をちょうだい!」


 「はいっ、いつでも!」


 『統率された動き』というのは、逆に読みやすい。

 もっとも読んでも、空のフレスベルクに有効な攻撃をが出来る者は少ない。

 なのでその辺は考えないで調教したのだろうが、この私には甘い。


 「今!」


 「風は天高く巻いて昇れ、【メギュリオンの小旋風】!」


 私の足元からつむじ風が巻き起こる。


 「【竜肢飛び】!」


 そのつむじ風に乗り、竜肢飛びでさらに高く上昇。

 フレスベルクのさらに上に出た。


 私はこれまでモンスター退治をメガデスの破壊力にまかせて力押しでやってきた。

 しかし他の冒険者に聞くところによると、モンスター退治はあらかじめそのモンスターの攻撃方法や弱点を調べ上げ、作戦をたてて挑むのだそうな。


 なので私もこの間苦戦したフレスベルクを調べてみると、あの鳥は攻撃も防御も完全に前方にしか出来ないことが分かった。

 つまり背後をとれば、一方的な私のターン!


 「【百歩飛剣】!」


 「ギャアアアッ」「ギャギャアアッ」「ケッケエエエエッ」


 無防備にさらしているフ三羽のレスベルクの背中に、剣の衝撃をそれぞれ飛ばす。

 前のように風魔法で弱められたりしなかったので、あっけないほど簡単に屠ることが出来た。


 スタッ。


 ノエルの起こした風に乗り華麗に着地。

 少し遅れてフレスベルク三羽が落ちてきて、「グシャッ」と音をたてて潰れた。

 愛する子供達を全滅させられて、魔物使いは可哀そうな状態でへたり込んでいる。


 「バ、バカな! 何なのです、その羊人の魔法師は! そんなのがいるだなんて聞いてませんでしたよ!」


 「そりゃそうだよ、今回から参加したんだもん。運が悪かったね。もうちょっと早くこの作戦を実行してたら、予定通りになってたかもね」


 「ガハハハッお前ごとき雑魚魔物使いが、【栄光の剣王】の深淵にふれることは出来ん! これが我がパーティーの力だ!」


 いやラムス。あんた、戦闘で何もしてないじゃん。

 あ、でも、砂山を作るのは上手かったね。

 力があって、さすが男の人だよ。


 「くっ、くうううううっ、おのれ!」


 魔物使いは「パッ」と自分の被っていた帽子を空高く放り投げた。

 その帽子の中から、鳥が一羽飛び出す。


 「行きなさい、わが師の元へ!!」


 「百歩飛剣!」


 何か不味まずそうなので、とりあえずそれを撃ち落した。


 ベチャッ

 可哀そうに、鳥は地に落ちてピクピク痙攣している。


 「ええっと、何をしようとしてたの? この鳥をどこに飛ばそうと?」


 「フン、そんなもの黒幕の元に決まっておろう。よし、コイツを連れて帰ろう。こんな何やら企んでいる悪そうな奴を連れて帰れば、さらに追加料金をせびることが出来るぞ。ガハハハッ」


 そうだね。

 いい加減、村人や家畜が襲われるモンスター襲撃にケリをつけよう。

 あれを人間が起こしていることは、本気で腹が立っているからね。


 「あっサクヤ様! このおじさん、なんか震えていますよ!」


 「ええっ!?」


 ノエルの言う通り、魔物使いはピクピク痙攣している。

 顔色は土気色で、今にも死にそうだ。

 そしてその体から、何やらでっかい蛇が這い出てきた。


 「ちいっ毒蛇だ! 自害しやがった!!」


 すぐさまラムスは蛇に剣を突き立てた。

 だが、魔物使いの方は絶望的だ。


 「わが……師、ザルバドネグザルよ……与えられた使命を……果たすことなく……何一つ伝えることもできず……まこと申し訳ございま……」


 ガクリッ


 こと切れる魔物使い。

 されど私は彼の死より、最期につぶやいたその名前に衝撃をおぼえた。


 「【ザルバドネグザル】……ここでその名が出てくるとはね」


 【ザルバドネグザル】

 それは召喚した魔界の魔物すら操る、帝国最強の魔物使いの名。

 そしてのちに【魔人王】となって全世界を恐怖におとしいれる、『鬼畜勇者ラムスクエスト』のラスボスだ。



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― 新着の感想 ―
[気になる点] >あらかじめここらの砂をかき集め、砂山を作っておいた。 そんな伏線在ったっけ? [一言] >ラスボス もう、その名前が出てきましたか。戦う時は意外と近いかも。 と言ってもサクヤの…
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