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68話 校庭の番人 悪愚哩

 屋上から飛び降りて来るのは人型のナニカ。

 されど、その気配は強い魔の気配。おそらくは魔人になった現地の人間だろう。


 気配からかなりの強敵だと思う。けど空から降ってくるのなら、対処はたやすい。

 スキル【竜肢飛び】で大ジャンプ。急接近で交差した瞬間に迎撃だ!


 接近し間近に見るその姿は、体は細身ながら筋肉が程よく発達した人間。されど顔はデーモンのそれ。やはり仮面と化したグレーターデーモンを被った人間か。


 相手は長い爪が武器のようで、それを私目がけてせまり来る。

 されどメガデスは、そんな貧弱な武器などもろとも砕き潰す!


 「スキル【瞬雷光(しゅんらいこう)】!」


 ブウゥンッ


 「なにっ!? 空中で曲がった!?」


 射程に入る前に、なんと奴は空中で軌道を変えた。

 むなしく空を斬る私を置いて奴は下へ。


 交差した数秒後に、下から「ぎゃっ!」という声とどよめく声。

 見ると、自衛隊員の一人が奴に爪で貫かれ絶命していた。


 「くっ、私がいながら早くも犠牲者を出してしまった」


 「スタッ」と私も地上に降りると、奴は殺した自衛隊員の上でしゃがんでリラックス。

 大物だな。まわりを自衛隊員が小銃を突きつけて囲んでいるのに。


 「よォ、さすがウワサのブラックちゃん。すっげぇブン回しだ。ビビッて逃げだすなんざ、この体になって初めてだぜ」


 私もあのタイミングでかわされるなんて初めてだよ。

 一方、いきなりの奇襲で仲間を殺された長舩さん他自衛隊員さんらは激昂して報復。


 「くっ、よくも田沢を! 撃て!」


 ガガガガガガガッ


 長舩さんの合図で部隊のみなさんは一斉斉射。

 されど、奴はそれをヒョイヒョイかわす。とんでもないスピードだ。


 「うるせェなぁ。先にゴミの掃除が必要か」


 まずい!


 「ぎあっ」「ぐええっ」「ギャッ」


 奴は弾丸をかわしながら、八艘飛びに隊員を爪で次々に殺害していく。

 ダメだ! 住んでいる時間がぜんぜん違う。相手になるのは私だけか。


 「みんな撃つのをやめて! 私がやる!」


 銃弾がやんだその中を、襲撃スタイルのスキル【疾風襲狼牙】で一直線に奴へ駆け抜ける。

 たしかに奴は速い。だけどこのくらいのスピードのモンスターなら、何度かやり合ったことはある。


 今度は必ずしとめる! 避けようと回避は許さない!!


 射程圏。目標右ナナメ下へ回避。軌道修正……とった! 


 ブゥゥゥンッ


 「……なっ!?」


 なんと奴は高スピードで回避するかたわら接近し、爪でのどを狙ってきたのだ!


 カウンター? ヤバイ! 奴の方が速い!!


 全力でそれを避け、走ってきたスピードのままゴロゴロ転がる。


 「うひょおお、アレを避けるかね。んじゃ、追撃だ」


 「なにっ!?」


 ガガガガガガガッ ガガガガガガガッ

 奴に殺された隊員が撃ってきた! ゾンビも作れるのか!


 「スキル【大切断】!」


 大型モンスター討伐用スキルの衝撃で銃弾をたたき落とす。

 されど即興だったので威力が足らず、何発かは当たった。

 もっとも威力は落ちていたし、【プロテクション】のスキルがあるから無傷だ。

 でも痛い。


 「こんのォ!」


 モミジが浄化ビームを発射。ゾンビ隊員はめでたく崩れて成仏だ。

 そのまま奴にまで当てないのはさすがだ。さっきのように避けられて惨殺だからね。


 「まぁ、これで死ぬとは思わなかったがね。まさか無傷とは。本当に()ぇえなあ、ブラックちゃん」


 それは私の方が言いたい。ゾンビ化能力なんかより、その前のカウンターが信じられない。

 剣術LV10の、それも強襲スキル発動中の私の剣に、カウンターを合わせることが出来るなんて!

 いったい何だコイツ? お兄ちゃんの作戦書には書いてなかったぞ。


 「あなたは何者? いったい何の目的でここに居るの?」


 ――「その人は【悪愚哩(あぐり)】さん。元格闘家だがリングで相手を大ケガさせてクビになったって経歴で、仮面をつけたまま魔人になったお人だ。アンタと戦いがために、昨日俺らの祭りに合流してきたんだよ」


 「えっ?」


 校舎から出てきて解説するそいつを見て驚いた。そいつこそルルアーバと共にこの事件の主犯格とみられる高校生。


 「メラ!」


 相変わらずの金髪おかっぱで、高そうなコートを羽織っている。ファントム・マスクっていうチ-ムのサブリーダーって肩書きだけど、実質コイツがリーダーだろう。


 「よぅ咲夜さん。アンタでもあの人は手強そうだな」


 「君が直接出てくるとはね。いちばん奥に引っ込んでいるものだと思っていた」


 「ま、そのつもりだったんだがな。悪愚哩さんがチームに来たことで、少し趣向を変えにゃならなくなった。咲夜さん、その悪愚哩さんとタイマン(一対一)してくれませんかね」


 「……へえ? どうして」


 「俺らの間でも格付けってやつが必要でね。無論、タダとは言わない。アンタが勝ったなら、校舎内の好きな場所に俺が案内してやる。それが人質の居る場所でもピエロの場所でもな」


 罠くさい話ではあるね。けど、これは好都合。

 奴のスピードについていけるのは私だけだし、他の誰かが手を出せば大きな犠牲が出る。


 「いい提案だね。それに乗ろう。奴と決着がつくまで、みんなは手を出さないで。悪愚哩、アンタも私を倒すまでは他のみんなに手を出すな」


 「どうすっかな……ま、俺は新参者。ここは大将の顔をたててやるか。いいぜ、やろうか。久しぶりにルールのあるバトルも楽しそうだ」


 私と悪愚哩が対峙するまわりをみんなが囲む。

 ラムスと丹沢さんは相変わらずスマホで撮影してるね。アイツの動きやカウンターは私目線以外でも見たいから、あとで見せてもらおう。


 それにしても、魔人になった元格闘家・悪愚哩か。プロがあの仮面を被って力を得たなら、こうも手強い存在になるとは。


 それが昨日あっちに合流してきて、こちらは何の情報もないままやり合わなきゃならないなんて、なんて運が悪い――


 いや、ここは逆に考えよう。こんな奴が街中に野放しになっていたらどれだけ被害が出るか。見つけ出して始末する間にも相当犠牲者は出るだろうし、ここでケリをつけられるのはむしろ僥倖だ。


 そしてメラ。どういうつもりか知らないけど、わざわざ最大の手がかりになりそうな奴がひとりで来てくれた。悪愚哩を倒せば情報をガッツリいただける。


 よし、幸先は悪くない。かなりツイている。

 ここは元気に魔人退治といこうか!

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >罠くさい話  臭いますね。ぷんぷん臭う。 きっと裏がある。
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